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リンパ腫の診断・検査
リンパ節スタンプ標本
生検で採取したリンパ節の割面を、スライドガラスに軽く押し当てて作る標本のこと。捺印標本ともいいます。スタンプ標本は、低悪性度リンパ腫と反応性リンパ過形成(RLH)との鑑別や、転移がんとの鑑別などに役立ちます。
リンパ節生検の処理と保存
採取されたリンパ節組織は、病理検査室へ提出する前に、リンパ節長軸に対して直交するように厚さ3~5mmで割を入れ、病変の有無を確認することが重要です1)。
検体が大きい場合は、一部を染色体検査やフローサイトメトリー解析用に確保し、残りを病理検査室に提出します1)。また、Southern blotting法による遺伝子再構成検索などの遺伝子解析や将来の研究使用の可能性を考慮して、検体の一部を凍結保存しておくことも望ましいです1)。
小さい検体の場合は、病理組織検査を優先します1)。
検体が病理検査室に提出されてから病理組織診断が確定するまでには、多くの工程を要します1)。


リンパ節スタンプ標本の観察ポイント
転移がんとの鑑別:
転移がんの細胞の特徴である、重積した集塊があるかどうかを鑑別する際に有用です。また、転移性腺がんに見られる粘液がある場合は、リンパ腫を否定する所見が得られます2)。
lymphoglandular bodiesの存在:
リンパ球系細胞の細胞質が断片化したlymphoglandular bodiesの有無を見ることが、転移がんかリンパ腫かの鑑別に有用でlymphoglandular bodiesが認められた場合はリンパ腫を支持する所見となります。ただし、悪性・良性の鑑別指標にはなりません2)。
低悪性度リンパ腫と反応性リンパ過形成(RLH)の鑑別:
低悪性度リンパ腫では、中ぐらいの大きさのリンパ腫細胞が単調に現れます。これに対し、非腫瘍性の反応性リンパ過形成では胚中心が存在するため細胞が小型~大型まであり、成熟リンパ球が混在します2)。


参考文献
1)飛内賢正、木下朝博、塚崎邦弘(編). 悪性リンパ腫治療マニュアル(改訂第5版). 南江堂; 2020. 11-17.
2)日本リンパ網内系学会(編). リンパ腫セミナー ー基本から学べるWHO分類改訂第4版(2017年). 南江堂. 2018. 14-17および43-46.