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リンパ腫の診断・検査
リンパ腫染色体検査
染色体検査はゲノム(Genome=遺伝子geneと染色体chromosome)の異常を形態学的に解析する検査法です。染色体検査は病型診断のみならず、病態の理解、予後予測や治療選択に用いられます1)。
染色体検査法: G-Band法
染色体検査法には主に分染法やFISH法などがあります。
分染法は、検体を培養・染色し、染色体上の白黒のバンドパターンを表示させ、染色体を解析する検査法のことです。血液腫瘍細胞の分染法には、無添加・短期培養によるギムザ染色のG-Band法が基本です1)。


染色体の異常
染色体の異常には、数的異常と構造的異常があります。数的異常は、細胞周期M期(分裂期)での染色体分配異常に起因します。親細胞(2n)から分裂した2つの娘細胞は、一方は相同染色体が1本少ない欠失(2n-1、モノソミー)、他方は1本多い増幅(2n+1、トリソミー)となります。
構造的異常はG1期(DNA合成[複製]の準備)からS期(DNAの合成[複製])に生じます。
1つまたは複数の染色体に切断を生じ、その切断片が消失したり、元とは異なる状態で再接合します。これらの構造異常を生じた細胞はその後M期(分裂期)で2つの娘細胞に、親細胞と同一の異常が現れます。これらの欠失/増幅や転座が腫瘍化に関与し、病型の決定に重要な役割を果たしています。染色体分染法はゲノム全体の異常を知ることが可能ですが、分裂像が得られなければ分析できません。遺伝子の異変まではわかりません1)。




染色体検査法: FISH法(fluorescence in situ hybridization)
人工的に作製したDNA(プローブ)を蛍光色素で標識し、患者検体のDNAと結合(ハイブリダイズ)させ、遺伝子の位置を蛍光顕微鏡で認識して染色体の数的異常や構造異常を検出します。判定は、赤や緑などの色のシグナルで視覚的に行います。FISH法は、DNAの合成(複製)の間期に検査することができます。臨床所見から染色体異常が疑われる場合、特定の染色体部位を狙って標識するため標識部位以外の異常は検出することができません。
動原体FISH | 動原体付近を特異的に標識し染色体の異数性を検出 |
分離FISH | 転座切断点付近を異なる蛍光色素(赤と緑→蛍光顕微鏡下では融合して黄)で標識し転座によるシグナル分離(黄→赤と緑)を検出 |
欠失FISH | 同一染色体の2ヵ所を標識し部分的な欠失を検出 |
融合FISH | 転座に関係する2つの染色体の切除点付近を異なる蛍光色素(赤と緑)で標識し、転座で生じるシグナル融合(赤+緑→黄)を検出 |


参考文献
1)日本リンパ網内系学会(編).リンパ腫セミナー 基本から学べるWHO分類改訂第4版(2017年).2018.南江堂. 30-36.
2)https://huhp-hokudai-lab.com/遺伝子染色体検査室/
3)松田和之. : Medical Technology. 2012; 40(13) : 1603-1608.