TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)の診断・検査
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TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)の診断・検査
診断基準
以前は、血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害、発熱、動揺性精神神経症状という古典的5徴候(→主な臨床所見、症状)の存在によって、TTPが診断されていた(図1A)1)。現在では、ADAMTS13とVWFによる病態メカニズムが明らかとなり、ADAMTS13 がTTPの疾患特異的マーカーであることが報告されたため、原因不明の溶血性貧血と血小板減少の2つの症状と、ADAMTS13検査に基づいて診断されるようになった(図1B)1,2)。
図1:TTPの診断

2) 酒井和哉, 松本雅則. 日本内科学会雑誌 2020; 109(7): 1355-1362.より作成
3) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」 班
TTPグループ. 臨床血液. 2017; 58(4): 271-281.より作成

2) 酒井和哉, 松本雅則. 日本内科学会雑誌 2020; 109(7): 1355-1362.より作成
3) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」 班
TTPグループ. 臨床血液. 2017; 58(4): 271-281.より作成
原因不明の溶血性貧血と血小板減少を認め、ADAMTS13活性が10%未満に低下している症例で、ADAMTS13インヒビターが陰性の場合に先天性TTPを疑い、ADAMTS13インヒビターが陽性の場合に後天性TTPを疑う4)。
先天性TTP患者の両親はヘテロ接合体異常であることから、ADAMTS13活性は30〜50%を示す場合が多い4)。
後天性TTPで、基礎疾患などを認めない場合は原発性の後天性TTPと診断し、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患やチクロピジンなどの薬剤に関連してADAMTS13インヒビターが産生される場合には二次性の後天性TTPと診断する4)。
鑑別すべき診断
TTPは急性期に重篤な血栓症を発症することや、無治療の場合には極めて予後不良な疾患であることから、適切な診断を行い、速やかに治療を行う必要がある5)。しかし、TTPには、臨床症状や検査所見が類似する疾患があるため、類似疾患との鑑別が早期に必要となる5)。
代表的な類似疾患として、TTP とともに血栓性微小血管症(TMA)に分類され、血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害を共通して認める溶血性尿毒症症候群(HUS)がある(表1)5)。
表1:TTPとその類似疾患

5) 久保政之, 他. 血栓止血誌. 2022; 33(4): 399-407.より作成

5) 久保政之, 他. 血栓止血誌. 2022; 33(4): 399-407.より作成
国内における先天性TTP診断の流れとポイント
監修:奈良県立医科大学 輸血部 講師 酒井和哉 先生
先天性TTPと後天性TTPでは治療法が大きく異なるため、その診断が重要となる。
国内における先天性TTP診断の流れを図2に示す。
ADAMTS13に対する自己抗体には、その活性を阻害する抗体(インヒビター、中和抗体)と、結合するが活性は阻害しない抗体(結合抗体)が存在する6)。結合抗体は、ADAMTS13に結合しクリアランスを高めるという、インヒビターとは別のメカニズムでADAMTS13活性著減に関与していると考えられている6)。日本国内では保険収載されているインヒビター力価の測定が一般的であり、結合抗体の解析は研究室レベルでのみ可能である4)。
血小板減少と溶血性貧血を認める症例において、ADAMTS13活性10%未満かつADAMTS13インヒビター陰性(<0.5BU/mL)であれば、先天性TTPが疑われる4)。ただし、インヒビター陰性でも結合抗体陽性の後天性TTPが存在することに留意すべきである。
自己抗体陰性の判断は必ずしも容易ではなく、ADAMTS13遺伝子解析を実施せずに先天性TTPと診断されるも、経過中にADAMTS13活性の回復を認め、後天性TTPと判断される症例も少数ながら存在する5)。先天性TTPであることを明確にするために、両親のADAMTS13活性や、結合抗体も検出可能な抗ADAMTS13 IgG自己抗体検査(国内ではごく一部の研究室でのみ実施)を行う7)。
両親のADAMTS13活性が30~50%かつ抗ADAMTS13自己抗体陰性の場合に、ADAMTS13遺伝子解析を行い、先天性TTPの確定診断を行う。
図2:国内における先天性TTP診断の流れ

2)酒井和哉, 松本雅則. 日本内科学会雑誌. 2020; 109(7): 1355-1362.
4)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループ. 臨床血液. 2023; 64(6): 445-460.
5)久保政之, 他. 日本血栓止血学会誌. 2022; 33(4): 399-407.
7)小亀浩市. 日本血栓止血学会誌. 2018; 29(6): 586-588.
8)Sakai K, Matsumoto M. J Clin Med. 2023; 12(10): 3365.
著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。
9)Sakai K, et al. Ann Blood. 2023; 8: 24.
著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。著者に武田薬品工業株式会社より資金援助を受けている者が含まれる。
10)小亀浩市, 他. 血栓と循環. 2016; 24(1): 20-24.

2)酒井和哉, 松本雅則. 日本内科学会雑誌. 2020; 109(7): 1355-1362.
4)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループ. 臨床血液. 2023; 64(6): 445-460.
5)久保政之, 他. 日本血栓止血学会誌. 2022; 33(4): 399-407.
7)小亀浩市. 日本血栓止血学会誌. 2018; 29(6): 586-588.
8)Sakai K, Matsumoto M. J Clin Med. 2023; 12(10): 3365.
著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。
9)Sakai K, et al. Ann Blood. 2023; 8: 24.
著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。著者に武田薬品工業株式会社より資金援助を受けている者が含まれる。
10)小亀浩市, 他. 血栓と循環. 2016; 24(1): 20-24.
参考文献
1)宮川義隆. 日本血栓止血学会誌. 2020; 31(1): 28-36.
2)酒井和哉, 松本雅則. 日本内科学会雑誌 2020; 109(7): 1355-1362.
3)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループ. 臨床血液. 2017; 58(4): 271-281.
4)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループ. 臨床血液. 2023; 64(6): 445-460.
5)久保政之, 他. 日本血栓止血学会誌. 2022; 33(4): 399-407.
6)Scheiflinger F, et al. Blood. 2003; 102(9): 3241-3243.
7)小亀浩市. 日本血栓止血学会誌. 2018; 29(6): 586-588.
8)Sakai K, Matsumoto M. J Clin Med. 2023; 12(10): 3365.
著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。
9)Sakai K, et al. Ann Blood. 2023; 8:24.
著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。著者に武田薬品工業株式会社より資金援助を受けている者が含まれる。
10)小亀浩市, 他. 血栓と循環. 2016; 24(1): 20-24.