TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)の治療
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TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)の治療
先天性TTPの治療
新鮮凍結血漿(FFP)による治療について
先天性TTPの主な治療法は、遺伝子変異によって欠損または活性低下しているADAMTS13を補うため、新鮮凍結血漿(FFP)を輸注し、ADAMTS13酵素を補充することである1-5)。急性エピソードが生じた際にはFFPによる一時補充療法を行い4,5)、頻繁に再発する患者には定期的なFFP投与(定期補充療法)を行う1,3,5)。
図1:先天性TTPの治療

1) Mansouri Taleghani M, et al. Hamostaseologie. 2013; 33(2): 138-143.
2) Peyvandi F, et al. Am J Hematol. 2013; 88(10): 895-898.
3) Kremer Hovinga JA, et al. Nat Rev Dis Primers. 2017; 3: 17020.
4) Congenital thrombotic thrombocytopenic purpura. https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?Expert=93583
5) Blombery P, et al. J Blood Medicine. 2014; 5: 15-23.

1) Mansouri Taleghani M, et al. Hamostaseologie. 2013; 33(2): 138-143.
2) Peyvandi F, et al. Am J Hematol. 2013; 88(10): 895-898.
3) Kremer Hovinga JA, et al. Nat Rev Dis Primers. 2017; 3: 17020.
4) Congenital thrombotic thrombocytopenic purpura. https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?Expert=93583
5) Blombery P, et al. J Blood Medicine. 2014; 5: 15-23.
なお、ISTH治療ガイドラインでは、定期投与時のFFP推奨量は20~30mL/kg/月とされているが(図2)6)、本邦におけるFFPの定期投与量は13.2mL/kg/月であり、推奨量よりも少ない(図2)7)。
図2:本邦におけるFFP定期投与量とISTH治療ガイドラインのFFP推奨量

6) Zheng XL, et al. J Thromb Haemost. 2020; 18(10): 2496-2502.
7) Sakai K, et al. Br J Haematol. 2021; 194(2): 444–452.を参考に作成 著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。

6) Zheng XL, et al. J Thromb Haemost. 2020; 18(10): 2496-2502.
7) Sakai K, et al. Br J Haematol. 2021; 194(2): 444–452.を参考に作成 著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。
FFPによる治療を実施する際は、患者やその家族に対して、必要性やリスクを説明することが必要である8)。患者の同意を得てから、必要な検査を行い、治療を行うようにする8)。FFP投与後は、効果と副作用の有無を確認する9)。FFP投与の例を以下に示す(図3)8,9)。
図3 : FFP投与の流れ(例)

8) 日本赤十字社 どうやって輸血するの?
https://www.jrc.or.jp/transfusion/howto/ 2023年11月6日閲覧より作成
9) 日本赤十字社 輸血用血液製剤取り扱いマニュアル(2019年12月改訂版)
https://www.jrc.or.jp/mr/news/pdf/handlingmanual1912.pdf 2023年11月6日閲覧より作成

8) 日本赤十字社 どうやって輸血するの?
https://www.jrc.or.jp/transfusion/howto/ 2023年11月6日閲覧より作成
9) 日本赤十字社 輸血用血液製剤取り扱いマニュアル(2019年12月改訂版)
https://www.jrc.or.jp/mr/news/pdf/handlingmanual1912.pdf 2023年11月6日閲覧より作成
FFP投与は、TTP治療で広く使用されている一方、患者、医療者双方にいくつかの課題があると考えられる(図4)10)。患者にとっては、複数回の通院が必要であること、一回の治療に長い時間を要すること、アレルギー反応などが、治療において負担となる。医療者にとっては、長期的な臓器保護に対する治療レジメンが未確立であることなどが挙げられる。
図4 : TTP治療の課題

10) Sakai K, et al. J Clin Med. 2023; 12(10): 3365. 著者に武田薬品とサノフィのアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。

10) Sakai K, et al. J Clin Med. 2023; 12(10): 3365. 著者に武田薬品とサノフィのアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。
遺伝子組換えヒトADAMTS13補充療法について
先天性TTP患者にADAMTS13を補充する治療法として、遺伝子組換えヒトADAMTS13製剤であるアジンマが2024年3月に承認された。アジンマは、定期補充療法、一時補充療法のいずれにも使用が可能である。
アジンマの詳細を見る
後天性TTPの治療
後天性TTPの治療では、血漿交換療法など自己抗体を除去する治療を行う11,12)。治療開始が遅れると、その後の経過に影響があるため、早急に治療開始する必要がある12)。
表1:後天性TTPの適応を持つ主な治療薬12)
- FFPによる血漿交換
- カプラシズマブ
- リツキシマブ(難治例・再発例の場合)
12) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「血液凝固異常症等に関する研究班」 TTPグループ. 臨床血液. 2023; 64(6): 445-460.より作成
急性期の治療について
TTPの発作がみられる急性期には、ADAMTS13を補い、インヒビターやADAMTS13で切断されなかった大きなフォン・ヴィレブランド因子を取り除くことなどを期待して血漿交換療法を行う12)。
治療は新鮮凍結血漿FFPを用いて1日1回毎日実施し、治療開始から1ヵ月を限度として、血小板数が正常化(15万/μL以上)して2日後まで実施する12)。抗VWFモノクローナル抗体(カプラシズマブ)を血漿交換の前後に投与する場合がある。薬剤性の後天性二次性TTPでは、原因となる薬剤を中止し、原因疾患がある場合は、その疾患の治療を継続する12)。この場合もADAMTS13活性の著減がみられるため、血漿交換療法を行う12)。
難治性、早期再発時の治療について
血漿交換療法を5回以上行っても血小板数が十分(5万/μL以上)に回復しない、または15万μL以上に回復しても再度血小板数が5万/μL未満に低下したといった難治性の場合や、早期に再発がみられた場合には、血漿交換療法に加えて、インヒビター産生細胞を標的とした分子標的薬(リツキシマブ)が用いられる場合がある12)。
寛解期の治療について
血小板数が回復し、寛解が得られれば治療終了となることが多いが、再発の可能性を考慮し、少なくとも数年間は定期的に血小板数とADAMTS13活性などをモニタリングすることが望ましいとされる12)。
図5:後天性TTPの治療

11) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64) https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年11月6日閲覧より作成
12) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「血液凝固異常症等に関する研究班」
TTPグループ. 臨床血液. 2023; 64(6): 445-460.より作成

11) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64) https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年11月6日閲覧より作成
12) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「血液凝固異常症等に関する研究班」
TTPグループ. 臨床血液. 2023; 64(6): 445-460.より作成
血小板輸血について
TTPは血小板減少がみられる疾患であるが、血小板輸血は禁忌である。
TTPではADAMTS13の活性が著減するために、VWFの分子サイズが巨大となり、血小板が凝集しやすい状態である(図6左)11)。血小板数の減少は、血小板産生の減少ではなく、血小板血栓形成による血小板消費の亢進に起因する11)。血小板輸血を行うと、血小板数が増加することで、血小板血栓を助長し、症状が悪化する(図6右)11)。TTP患者で血小板輸血がどうしても必要と判断される場合は、血漿交換後に行うのがよいとされている11)。
図6:TTPへの血小板輸血

11) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年11月6日閲覧より作成

11) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年11月6日閲覧より作成
参考文献
1) Mansouri Taleghani M, et al. Hamostaseologie. 2013; 33(2): 138-143.
2) Peyvandi F, et al. Am J Hematol. 2013; 88(10): 895-898.
3) Blombery P, et al. J Blood Medicine. 2014; 5: 15-23.
4) Kremer Hovinga JA, et al. Nat Rev Dis Primers. 2017; 3: 17020.
5) Congenital thrombotic thrombocytopenic purpura.
https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?Expert=93583 2023年11月6日閲覧
6) Zheng XL, et al. J Thromb Haemost. 2020; 18(10): 2496-2502.
7) Sakai K, et al. Br J Haematol. 2021; 194(2): 444-452.
著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。
8) 日本赤十字社 どうやって輸血するの?
https://www.jrc.or.jp/transfusion/howto/ 2023年11月6日閲覧
9) 日本赤十字社 輸血用血液製剤取り扱いマニュアル(2019年12月改訂版)https://www.jrc.or.jp/mr/news/pdf/handlingmanual1912.pdf 2023年11月6日閲覧
10) Sakai K, et al. J Clin Med. 2023; 12(10): 3365. 著者にアドバイザリーボードのメンバー1名が含まれる。
11) 難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(指定難病64)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/87 2023年11月6日閲覧
12)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 「血液凝固異常症等に関する研究班」 TTPグループ. 臨床血液. 2023; 64(6): 445-460.