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CIDPの診断と検査

<p>CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー)</p>

領域別情報・医療情報

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監修:國分 則人 先生(獨協医科大学 脳神経内科 教授)


CIDPの診断

CIDPの診断は、「慢性経過の末梢神経障害を⽰す臨床経過と症候」、「脱髄を⽰唆する電気⽣理学的所⾒」、及び「他疾患の除外」に基づいて⾏われます。⽀持基準として、「免疫修飾療法施⾏後の客観的な改善」、「神経画像検査(超⾳波検査、MRI)による神経肥厚の証明」、「脳脊髄液の蛋⽩濃度の上昇」、及び「神経⽣検による脱髄の証明」があります1)

EAN/PNS 2021 診療ガイドラインにおける診断プロセス

EAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインにおける診断プロセスは、臨床診断基準、電気診断基準、他疾患の除外で進められています(図1)2,3)

図1. EAN/PNS 2021 診療ガイドラインにおける診断プロセス

画像(PC)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3):242-268. 及び⽇本神経学会(監): 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン 2024, 南江堂. 2024: 7-11, 124.より作図

画像(SP)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3):242-268. 及び⽇本神経学会(監): 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン 2024, 南江堂. 2024: 7-11, 124.より作図

CIDP診断基準は、CIDP検査の項⽬にある、「臨床診断基準」、「運動神経伝導検査基準」「感覚神経伝導検査基準」の3つに⽀持基準を加えて構成されています。

表1. EAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインにおけるCIDP診断基準

画像(PC)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268.
桑原基: ⽇本臨牀. 2022; 80(5): 246-252.

画像(SP)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268.
桑原基: ⽇本臨牀. 2022; 80(5): 246-252.


CIDPの検査

臨床診断基準

典型的CIDPとCIDPバリアントのそれぞれに臨床診断基準があります(図2)。「8週間以上の進⾏性⼜は再発性の慢性経過」及び「罹患肢の腱反射の減弱ないし消失」はすべてに共通します。さらに診断特異度をあげるために、臨床病型分類ごとに他疾患の鑑別を⾏います1)。他疾患を⽰唆する検査異常(red flag)がないか確認します。

図2. EAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインにおけるCIDPの臨床診断基準

画像(PC)
本文

Lewis RA, et al.: J Neurol Sci. 2022; 443: 12048.
Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268.
⽇本神経学会(監): 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 南江堂. 2024: 74-76.

画像(SP)
本文

Lewis RA, et al.: J Neurol Sci. 2022; 443: 12048.
Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268.
⽇本神経学会(監): 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 南江堂. 2024: 74-76.

表2. 考慮すべき検査

画像(PC)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268.
⽇本神経学会(監): 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 南江堂. 2024: 76.より改変

画像(SP)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268.
⽇本神経学会(監): 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2024, 南江堂. 2024: 76.より改変

他疾患を示唆するred flag

電気診断基準

電気診断基準(表3)では、脱髄で⽣じる伝導の遅延や伝導ブロックを電気⽣理学的に判定します。臨床診断基準を満たした上で、運動神経で2神経以上の脱髄所⾒、感覚神経で2神経以上の異常所⾒があれば、CIDPと診断されます。しかし、電気診断基準を満たさない場合は「Possible CIDP」となり、⽀持基準の判定に進みます2,3)

表3. EAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインにおける電気診断基準

画像(PC)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: Eur J Neurol. 2021; 28(11): 3556-3583. ⼀部改変

画像(SP)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: Eur J Neurol. 2021; 28(11): 3556-3583. ⼀部改変

⽀持基準の検査2,3)

⽀持基準は、CIDPの臨床診断基準を満たしているが、電気診断基準で1神経しか満たさず「Possible CIDP」と分類される場合に、診断を⽀持する追加の根拠として利⽤されます。運動神経に異常が⾒られない「感覚型 CIDP」はpossibleまでで、⽀持基準は適⽤されません。
⽀持基準は、①免疫修飾療法(IVIg、⾎漿交換、副腎⽪質ステロイド薬)施⾏後の客観的な改善、②神経画像検査(超⾳波検査、MRI)による神経肥厚の証明、③脳脊髄液の蛋⽩濃度の上昇、④神経⽣検による脱髄の証明があります。

①免疫修飾療法(IVIg、⾎漿交換、副腎⽪質ステロイド薬)施⾏後の客観的な改善

「客観的な改善」とは、能⼒障害(disability)と機能障害(impairment)の原因である⾝体的能⼒の低下の両⽅で改善が⾒られることを意味します。なお、治療に反応がなかったとしても、CIDPを否定するものではありません。また、反応があったとしてもCIDPに特有とは限りません。

・主な評価スケール(尺度)

・改善とみなすための⽬安(臨床試験で使⽤された基準)

②神経画像検査:超⾳波検査、MRI

神経画像検査には、超⾳波検査と末梢神経MRIの2つがあります。EAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインでは、超⾳波検査による神経肥厚の検出が推奨されています2,3)。MRIは推奨項⽬ではないものの、⽀持基準の⼀つとして採⽤されています2,3)。MRIでは、T強調画像(DIXON/STIR法、冠状断及び⽮状断)において、神経根の肥厚⼜は信号強度の上昇が認められた場合、CIDPの可能性が⾼くなります。ただし、神経の肥厚や信号変化について、定量的な基準は確⽴されていません。また、⼩児における超⾳波検査やMRI検査の有効性を⽰すエビデンスは現在のところありません。
なお、神経肥厚を引き起こす他疾患の除外が必要です。

超⾳波検査で以下の所⾒が認められた場合、CIDPの可能性がより⾼くなると考えられます:
近位正中神経の少なくとも2箇所、および∕または腕神経叢での神経肥厚

表4. 神経肥厚の定義(参考値)

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本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268. 及びVan den Bergh PYK, et al.: Eur J Neurol. 2021; 28(11): 3556-3583. より作表

※ただし、このEAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインに⽰された基準は、前腕部、上腕部の計測部位や、どの神経幹、神経根を計測するか等の詳細な情報は⽰されておらず、また、年齢、体格、⼈種差なども考慮されていない。この基準を使⽤するに当たっては注意を要する。

画像(SP)
本文

Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268. 及びVan den Bergh PYK, et al.: Eur J Neurol. 2021; 28(11): 3556-3583. より作表

※ただし、このEAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインに⽰された基準は、前腕部、上腕部の計測部位や、どの神経幹、神経根を計測するか等の詳細な情報は⽰されておらず、また、年齢、体格、⼈種差なども考慮されていない。この基準を使⽤するに当たっては注意を要する。

③脳脊髄液検査

CIDPでは脳脊髄液検査で蛋⽩細胞解離所⾒(蛋⽩濃度の上昇と細胞数正常)を認めます。電気⽣理学的検査などで診断が確実な場合は省略可能ですが、感染症や他の炎症性疾患を除外するために検査を実施することが推奨されています。
また、糖尿病4)や50歳以上の場合は、CIDPでなくても蛋⽩濃度の上昇を⽰すことがあります5,6)。そのため、結果の解釈には慎重な判断が必要です。

④神経⽣検

神経⽣検は侵襲を伴う検査であるため、CIDPが疑われるが、免疫修飾療法施⾏後の客観的な改善を認められなかった例、⼜は病理学的に特異的所⾒が⾒られる他疾患(アミロイドーシス、⾎管炎、サルコイドーシス、神経鞘腫瘍など)との鑑別が難しい場合に適応となります。
CIDPの神経⽣検では、マクロファージによる髄鞘の貪⾷を伴う脱髄像が特徴的な所⾒です7)
EAN/PNS 2021 CIDP診療ガイドラインでは、以下の所⾒がCIDPの診断を⽀持する可能性があるとされています2,3)

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参考⽂献

1)⽇本神経学会(監): 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー, 多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン 2024, 南江堂.2024: 7-11, 23-29, 74-76, 124.

2)Van den Bergh PYK, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2021; 26(3): 242-268.

3)Van den Bergh PYK, et al.: Eur J Neurol. 2021;28(11): 3556-3583.

4)Kobessho H, et al.: Eur Neurol. 2008; 60(3): 132-136.

5)Liberatore G, et al.: J Peripher Nerv Syst. 2020. Online ahead of print.

6)Breiner A, et al.: J Neurol. 2019; 266(3): 616-624.

7)Koike H, et al.: Neurology. 2018; 91(23): 1051-1060.