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TTP(⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病)

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紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したものであり、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

画像(PC)
タイトル画像
画像(SP)
タイトル画像

ADAMTS13非定期輸注下で、無症候性脳病変及び腎梗塞をきたしたcTTPの一例 

【監修】日本海総合病院 小児科 診療部長/小児科部長 田邉 さおり 先生

Tanabe, S et al. Int J Hematol. 2012; 96(6): 789-797. 
Tanabe, S et al. Int J Hematol. 2020; 112(5): 603-604. 
(本研究は武田科学振興財団より資金援助を受けた。)

12歳女児。右腹痛を主訴に来院。血小板減少と、腹部CTで左右腎梗塞を認めたため入院した。精神神経症状はなかったが、スクリーニングのため頭部MRIを施行したところ、陳旧性多発性脳梗塞を認めた。
本症例は新生児期に原因不明の重度黄疸を呈し、交換輸血及び血小板輸血を受けていた。また、4歳時に先天性血栓性血小板減少性紫斑病(congenital thrombotic thrombocytopenic purpura:cTTP)と診断されていたが、臨床症状が軽度であったため予防的新鮮凍結血漿(FFP)の輸注は行っていなかった。そのため、新たな血栓形成発作の予防として2週間ごとのFFP定期輸注を開始した。その後4年間にわたり、顕著なTTP症状や虚血性脳病変は認められていない。
現時点では、一見無症状の患者においても定期的な脳画像検査を実施し、予防的治療を開始することが望ましいことを示唆している。



患者背景など

患者:12歳女児
主訴:右腹痛、嘔吐
既往歴:新生児期に動脈管開存症とうっ血性心不全を合併し、生後29日目に動脈管結紮術を施行。周術期に肝機能障害を認め、凝固因子補充のためFFP輸注を受けた。
家族歴:両親と兄1人、血液疾患の家族歴なし
現病歴:生後1日目に重症黄疸、チアノーゼ、血小板減少を認め、交換輸血及び血小板輸血を施行した。重症黄疸の原因は特定できなかった。
生後14ヵ月時に軽度の血小板減少症を伴う水痘を発症し、数週間後に発熱、咳嗽を呈し重度の血小板減少(1.7万/μL)及びLDH上昇(1,007IU/L)を認めたが、CRPは陰性であった。骨髄検査では有核細胞中3.8%に血球貪食像を認めた。補液により血小板数は14.4万/μLに改善し、ウイルス感染関連血球貪食症候群と診断された。その1ヵ月後、軽度の貧血と血小板減少症(ヘモグロビン9.7g/dL、血小板数7.5万/μL)を認めたが、経過観察のみで軽快した。
2歳2ヵ月時にインフルエンザA型に罹患して重度の血小板減少を認めたが、抗インフルエンザ薬投与により徐々に軽快した。
新生児期重症黄疸及び感染を契機に点状出血、血小板減少、溶血性貧血のエピソードを繰り返したことから、4歳時にcTTPを疑いADAMTS13検査を実施したところ、ADAMTS13活性の著減及びADAMTS13インヒビター陰性を認め、cTTPと確定診断した。
しかしながら、成長に伴い発熱の頻度が減少するにつれて点状出血も減少したこと、及び臨床症状が軽度であったことから、予防的FFP輸注は行わず、無治療で経過観察中であった。8歳時においても腎不全や神経学的異常などの重大な合併症は発症していなかった。



遺伝子検査結果

患者家族のADAMTS13活性は患者0.5%未満、父50%、母44%、兄38%であった。
ADAMTS13遺伝子解析により、患者はexon12の変異(p.Q449X)を父から、exon29の変異(p.Q1374Sfs)を母から引き継いだ複合ヘテロ接合性変異によるcTTPであるとの診断に至った。

画像(PC)
遺伝子検査結果
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遺伝子検査結果


各種所見

【臨床徴候】

・右下腹部の激しい腹痛
・腹膜炎徴候なし、血尿なし
・肋骨脊柱角叩打痛なし

【血液・尿検査所見】

画像(PC)
【血液・尿検査所見】
本文

・D-ダイマー、BUN、Cre、CRPは正常範囲内
・尿蛋白1+、尿潜血陰性

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【血液・尿検査所見】
本文

・D-ダイマー、BUN、Cre、CRPは正常範囲内
・尿蛋白1+、尿潜血陰性

【画像検査所見】

画像(PC)
【画像検査所見】
本文

・腹部CT検査所見(左図):右腎下部に大きな梗塞(疼痛あり)、左腎に小さな梗塞を認めた(矢印)
・脳MRI検査所見(右図):神経学的症状がないにもかかわらず、複数の陳旧性虚血性梗塞の存在が示された(矢印)

画像(SP)
【画像検査所見】
本文

・腹部CT検査所見(左図):右腎下部に大きな梗塞(疼痛あり)、左腎に小さな梗塞を認めた(矢印)
・脳MRI検査所見(右図):神経学的症状がないにもかかわらず、複数の陳旧性虚血性梗塞の存在が示された(矢印)



経過

【入院経過】

FFP240mL(6mL/kg body weight)を2日間連日輸注し、鎮痛薬を投与した。翌日、腹痛・後腹膜痛は消失した。

【退院後経過】

外来で2週間ごとのFFPの定期輸注を実施、継続中。その後4年間にわたり、顕著なTTP症状や虚血性脳病変は認められていない。



報告Dr.からのメッセージ

cTTP患者では、MRIによるモニタリングが日常的に行われていないため、無症候性虚血性脳血管イベントの発生はあまり報告されていない。
本症例では、片側の急性腹痛及び後腹膜痛により、両側の虚血性腎梗塞が発見された。一方で、多発した虚血性脳梗塞は臨床的には無症状であり、MRI撮影により偶然発見されたものであった。
その後は予防的なFFPの定期輸注により、4年間にわたり顕著なTTP症状や虚血性脳病変を認めていない。
本症例は、現時点では一見無症状の患者さんであっても定期的に脳画像検査を行い、病変の早期発見に努めるとともに、予防的治療の必要性や開始時期を患者・家族と共有していくことが望ましい。



参考

【cTTP患者における年代別の動脈血栓閉塞性イベント経験1)

若年層を含むすべての年齢層において、動脈血栓による閉塞性イベントが認められていた。


動脈血栓閉塞性イベント経験の有無別cTTP患者数(年齢別)(海外データ)

画像(PC)
動脈血栓閉塞性イベント経験の有無別cTTP患者数(年齢別)(海外データ)
本文

【試験概要】
目的:Hereditary TTP Registryデータを用いてcTTPコホートの人口統計学的及び臨床的特性を報告する。また、ADAMTS13 c.4143_4144dupA変異の保有者を中心に、ADAMTS13活性と見かけ上の疾患発症との関連性を評価する。
対象:登録開始から2017年末までに登録されたcTTP患者123例(欧州55例、アジア52例[うち日本47例]、アメリカ大陸14例、アフリカ2例)
試験方法:Hereditary TTP Registryは、cTTPが確定又は疑われる患者とその家族を登録する国際的な公開・双方向コホート研究で、2006年に開始された。本レジストリにおけるcTTPの診断は以下とした。1.患者又は家族の病歴、2.ADAMTS13阻害剤非投与でADAMTS13活性の重度欠損(正常値の10%以下)、3a.両アレルのADAMTS13遺伝子変異、3b.血漿輸注によるADAMTS13の完全回復(ADAMTS13活性半減期2~3日)のうち、1、2及び3a又は3bのいずれかを満たした患者を確定患者、1、2を満たし、ADAMTS13遺伝子変異が確認されない又は1つのみ確認され、ADAMTS13の回復及び半減期に関する検査が行われていない患者を疑い患者とした(2例はデータなし)。登録までの併発疾患の情報は120例で利用可能であった。
Limitation:文献中に記載なし。

画像(SP)
動脈血栓閉塞性イベント経験の有無別cTTP患者数(年齢別)(海外データ)
本文

【試験概要】
目的:Hereditary TTP Registryデータを用いてcTTPコホートの人口統計学的及び臨床的特性を報告する。また、ADAMTS13 c.4143_4144dupA変異の保有者を中心に、ADAMTS13活性と見かけ上の疾患発症との関連性を評価する。
対象:登録開始から2017年末までに登録されたcTTP患者123例(欧州55例、アジア52例[うち日本47例]、アメリカ大陸14例、アフリカ2例)
試験方法:Hereditary TTP Registryは、cTTPが確定又は疑われる患者とその家族を登録する国際的な公開・双方向コホート研究で、2006年に開始された。本レジストリにおけるcTTPの診断は以下とした。1.患者又は家族の病歴、2.ADAMTS13阻害剤非投与でADAMTS13活性の重度欠損(正常値の10%以下)、3a.両アレルのADAMTS13遺伝子変異、3b.血漿輸注によるADAMTS13の完全回復(ADAMTS13活性半減期2~3日)のうち、1、2及び3a又は3bのいずれかを満たした患者を確定患者、1、2を満たし、ADAMTS13遺伝子変異が確認されない又は1つのみ確認され、ADAMTS13の回復及び半減期に関する検査が行われていない患者を疑い患者とした(2例はデータなし)。登録までの併発疾患の情報は120例で利用可能であった。
Limitation:文献中に記載なし。

1)van Dorland HA, et al. Haematologica. 2019; 104(10): 2107-2115. 
本研究はBaxalta US社(Takedaグループ)の資金助成を受けている。
著者に武田科学振興財団より資金援助を受けている者が含まれる。