消化器系・炎症性疾患
<p>メディカルアフェアーズで実施した研究などの活動を紹介しています。</p>
研究のポイント
- 日本人UC患者さんを対象としたベドリズマブ(VDZ)の有効性と安全性を検討する多施設共同、後ろ向きのカルテレビュー研究を実施しました。
研究は以下4つの論文にまとめ、公表しました。
研究1:VDZの継続率、投与中止理由とその割合、二次無効の予測因子の検討
研究2:VDZ投与2週後の有効性の長期寛解への影響の検討
研究3:前治療(抗TNFα抗体製剤)のVDZ治療への影響の検討、および、bio-naive患者とbio-non-naive患者における有効性の評価
研究4:70歳以上と70歳未満のVDZの有効性と安全性の比較
背景
日本人UC患者さんを対象としたVDZの実臨床における有効性と安全性を評価した多施設共同研究の報告は限られています。武田薬品ジャパンメディカルオフィスは、日本人UC患者さんに対する寛解導入期と寛解維持期のVDZの有効性と安全性を明らかにすることを目的として多施設共同、後ろ向きのカルテレビュー研究を実施しました。VDZをより適切な患者さんにお役立ていただけるよう、様々な切り口から実臨床で得られたデータを解析し、4つの研究として論文にまとめました。
方法
本研究では、中等症から重症のUCと診断され、2018年12月1日から2020年2月29日までに国内16施設でVDZの静脈内投与を1回以上受けた20歳以上の患者を対象としました。また、治験または介入を伴う臨床試験への参加、VDZ投与開始時の部分Mayoスコアの欠測、正確な医療情報の収集が不可、患者自身により本研究への不参加を選択した患者は除外されました。
なお、導入療法としてVDZ 300mgを0、2、6週目に静脈内点滴投与し、以後8週ごとに維持療法として静脈内点滴投与を行いました1)。
評価項目
★事後解析のため結果を掲載していません。研究の詳細は文献にてご確認いただけます。
★事後解析のため結果を掲載していません。研究の詳細は文献にてご確認いただけます。
患者背景
370例の患者さんが解析対象となりました。bio-naiveは197名、bio-non-naiveは173名でした。
全体の患者背景は表1にお示しする通りです。
*研究2~4の患者背景は各文献をご確認ください。
4つの各研究の結果と結論を以下にお示しします。
4つの各研究の結果と結論を以下にお示しします。
研究1:UC患者に対するVDZの1年間の継続率に影響を与える要因1)
結果
- VDZの継続率は64.5%で、追跡期間の中央値は53.2週でした。
- 一度臨床的寛解に至った患者の61.2%(172/281例)が54週時点で臨床的寛解を維持していました。
- VDZの4回目投与後に治療を中止した131人の患者のうち、治療中止の主な理由は、一次無効(55人、42.0%)と二次無効(36人、27.5%)、および有害事象(AE)(15人、11.5%)でした。投与中止に至ったAEの一覧は下記の表2の通りです。
結論
- VDZの継続率は過去の報告と大きく異ならず、タクロリムスの併用と罹病期間の短さが継続率低下の主な予測因子と考えられました。
リミテーション
- 日本では8週から4週への投与間隔の短縮が承認されていないため、投与間隔の短縮が認められている他国への結果の一般化が難しい可能性があります。投与間隔の短縮が認められている環境では、二次無効が過小評価されている可能性があり、これは前向き臨床試験での確認が必要です。
- 観察研究であるため、選択バイアスの可能性があります。
- 医療記録からMayoスコアや部分Mayoスコアを推定したが、二次無効の客観的な臨床基準は使用されず、症状の悪化に基づく医師の判断に依存しており、評価にばらつきが生じた可能性があります。
- ロジスティック回帰分析に含まれた一部のサブグループの患者数が少なく、予測因子の特定に限界がある可能性があります。
観察期間が最大54週間であり、さらなる長期的な治療継続データが必要です。
研究2:UC患者に対するVDZ投与2週後の寛解が長期寛解の予測因子となる2)
結果
- VDZ投与2週後の臨床的寛解率は、bio-naive患者がbio-non-naive患者よりも有意に高く(36.9% vs. 28.2%; OR: 1.43; 95% CI: 1.05–1.94; p*= 0.0224)、寛解達成の差が認められました。
*名目上のp値、ロジスティック回帰分析、共変量:部分Mayoスコア、ヘモグロビン - VDZ投与2週後時点の寛解群と非寛解群の54週目の臨床的寛解率は、(全患者: OR: 2.41; 95% CI: 1.30–4.48; p**= 0.0052)有意に寛解群の方が高いことが示されました。
- 2週後の臨床的寛解予測因子には、抗TNFα抗体製剤未投与、正常/または軽度の内視鏡所見が含まれました。
- 54週目の寛解は、2週目の寛解(OR: 4.3767; 95% CI: 2.6278–7.2898; p** <0.0001)およびタクロリムス未投与であること(OR for use vs. no use: 0.3292; 95% CI: 0.1216–0.8915; p**=0.0288)と有意に関連していました。
**名目上のp値、ロジスティック回帰分析
結論
- VDZ投与2週後の寛解は54週目の寛解の予測因子となり得ることが示されました。
リミテーション
- 本研究は多施設によるレトロスペクティブなカルテレビューであるため、施設間や観察者間の製剤のバイアスが生じる可能性があります。
- 内視鏡所見に関するデータが限られており、内視鏡的寛解の評価ができませんでした。
粘膜の評価が行われていないため、今後の研究では粘膜評価を考慮する必要があります。
研究3:UC患者に対するVDZの有効性は、前治療の抗TNFα抗体製剤の使用期間と関連している3)
結果
- bio-naive患者(n=197)の臨床的寛解率は、bio-non-naive患者(n=173)よりも有意に高い結果となりました(p*<0.05)(主要評価項目)。
- 臨床的寛解率の向上は、病状の軽度(部分Mayoスコア≤4、p*=0.001)、アルブミン値≥3.0(p*=0.019)、および過去の抗TNFα抗体製剤療法期間(p*=0.026)と関連していました(探索的評価項目)。
*名目上のp値、ロジスティック回帰分析 - 抗TNFα抗体製剤療法の期間が3ヵ月未満、3~12ヵ月未満、12ヵ月以上の患者で、それぞれ28.1%、32.7%、60.0%の寛解率が示されました(群間p**=0.001)(探索的評価項目、図1)。
**名目上のp値、Kruskal-Wallis検定
抗TNFα抗体製剤を3ヵ月以内に中止し、その後3ヵ月以内にVDZを中止した患者の中で、VDZを中止した主な理由は、一次無効(7人)とAE(3人)でした(探索的評価項目)。
結論
- VDZの有効性は、前治療の抗TNFα抗体製剤の投与期間と関連していました。
リミテーション
- 過去の診療記録をもとにしているため、患者ごとにフォローアップの時期が異なっており、治療効果が現れた時期や症状の変化が記録されたタイミングにばらつきがある可能性があります。そのため、治療の効果や反応のタイミングを正確に比較・評価することが難しく、結果の信頼性に影響を与える可能性があります。
- 臨床的寛解は完全なMayoスコア ≤2(かつサブスコア >1なし)で定義されましたが、レトロスペクティブ研究であるため、内視鏡所見のデータが限られており、完全なMayoスコアを使った他の定義や基準を検討することができませんでした。
- 生物学的製剤未治療患者の98.8%が過去に抗TNFα抗体製剤を使用していましたが、39.9%は複数の生物学的製剤に失敗しており、今後の解析では前治療の抗TNFα抗体製剤の数がVDZの治療効果に与える影響を検討する必要があります。
抗TNFα抗体製剤の治療期間や中止理由に一貫性のない症例が一部存在し、これらは解析から除外されました。
研究4:UC患者に対するVDZの70歳以上と70歳未満での実臨床での有効性および・安全性4)
結果
事後解析のため、適正使用に関する結果のみ掲載しています。
- 70歳以上のグループにおけるAEの発現率は、ステロイドを併用している患者で100患者年あたり32.3、併用していない患者で100患者年あたり25.9でした。
- 高齢発症UC患者における手術率は23.1%、入院率は38.5%、非高齢発症患者における手術率は7.7%、入院率は23.1%でした。
結論
- 高齢発症UC患者に対するVDZ使用時には慎重な対応が必要とされる可能性があります。
リミテーション
- 70歳以上と70歳未満の患者の人数や背景を一致させることが困難であり、今後はより大規模な研究による検証が必要です。
- 70歳以上と70歳未満の患者数に大きな差があるため、安全性のアウトカムを統計的に比較することができませんでした。
- 副腎皮質ステロイド(コルチコステロイド)の併用がUCに対するものか、他の併存疾患に対するものかが不明でした。
- 情報バイアスや測定バイアス、その他の交絡因子が存在していた可能性があります。
安全性5)
- 研究1-4の370例において発現したAEは95例(25.7%)でした。主なAE(1%以上)は潰瘍性大腸炎10例(2.7%)、関節痛9例(2.4%)、上咽頭炎、頭痛各6例(1.6%)、上気道の炎症5例(1.4%)、胃腸炎、インフルエンザ各4例(1.1%)でした。
- 重篤なAEの発現は34例(9.2%)で、その内訳は潰瘍性大腸炎5例(1.4%)、虫垂炎2例(0.5%)、菌血症、気管支炎、エプスタイン・バーウイルス感染、胃腸炎、肝膿瘍、肺炎、腎盂腎炎、創傷感染、術後膿瘍、感染性腸炎、膀胱癌、下咽頭癌、軟部組織新生物、アナフィラキシーショック、水頭症、くも膜下出血、潰瘍性角膜炎、好酸球性肺炎、誤嚥性肺炎、気胸、肺腫瘤、胃腸出血、悪心、急性膵炎、肛門周囲痛、胆管結石、胆石症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、壊疽性膿皮症、関節痛、腎機能障害、状態悪化、発熱、処置後出血各1例(0.3%)でした。
- 誤嚥性肺炎による死亡例が1件報告されましたが、VDZとの因果関係は否定されました。
- 投与中止に至ったAEは研究1の結果をご参照ください。
今後の展望
VDZが患者さんの長期寛解維持に貢献できるようデータの蓄積とエビデンスに基づいた情報を発信して参ります。
▼詳細はこちらの文献で確認できます(外部サイトに移動します)。
1) Kobayashi T, et al.: Factors affecting 1-year persistence with vedolizumab for ulcerative colitis: a multicenter, retrospective real-world study. Intest Res. 2025. Online ahead of print.
本試験は武田薬品工業株式会社の資金提供により実施された。
本論文の著者には同社の社員4名および同社から研究助成金等を受領している者が含まれる。
2) Kobayashi T, et al.: Week 2 remission with vedolizumab as a predictor of long-term remission in patients with ulcerative colitis: a multicenter, retrospective, observational study. Intest Res. 2025. Online ahead of print.
本試験は武田薬品工業株式会社の資金提供により実施された。
本論文の著者には同社の社員3名および同社から研究助成金等を受領している者が含まれる。
3) Kobayashi T, et al.: The duration of prior anti-tumor necrosis factor agents is associated with the effectiveness of vedolizumab in patients with ulcerative colitis: a real-world multicenter retrospective study. Intest Res. 2025. Online ahead of print.
本試験は武田薬品工業株式会社の資金提供により実施された。
本論文の著者には同社の社員3名および同社から研究助成金等を受領している者が含まれる。
4) Hisamatsu T, et al.: Real-World Effectiveness and Safety of Vedolizumab in Patients ≥ 70 Versus < 70 Years With Ulcerative Colitis: Multicenter Retrospective Study. J Gastroenterol Hepatol. 2025;40(6):1435-1445.
本試験は武田薬品工業株式会社の資金提供により実施された。
本論文の著者には同社の社員4名および同社から研究助成金等を受領している者が含まれる。
5) 社内資料