MMNとは
<p>MMN(多巣性運動ニューロパチー)</p>
監修:三澤 園子 先生(東京科学大学 脳神経病態学分野 教授)
MMNの概要
多巣性運動ニューロパチー(multifocal motor neuropathy:MMN)は、感覚障害を伴わない左右⾮対称性の上肢遠位優位の筋⼒低下と筋萎縮を主徴とする、後天性の慢性脱髄性末梢神経疾患です1)。典型的な臨床症状として、握⼒低下など上肢遠位の筋⼒低下が数ヵ⽉〜数年かけて緩徐に進⾏します2)。筋⼒低下は主に上肢遠位(61%)⼜は下肢遠位(34%)に発症し、まれに上腕(5%)にも起こります3)。発症初期は筋⼒低下に⽐べて筋萎縮は⽬⽴ちませんが、進⾏に伴い⼆次的な軸索変性が⽣じ、萎縮が明確になります。筋痙攣‧線維束性攣縮を伴うことが多く、寒冷による⿇痺の悪化や易疲労性も重要な臨床的特徴です2)。
本疾患は免疫学的機序による発症が推察され、免疫グロブリン静注療法が第⼀選択の治療法です4)。
図1. MMNの運動障害
対象/⽅法:オランダのMMN患者88例を対象とした全国横断研究を実施し、臨床スペクトル、IVIg療法への反応、及び予後因⼦について調査しました。Limitation:記載なし。
Cats EA, et al.: Neurology. 2010; 75(9): 818-825.
対象/⽅法:オランダのMMN患者88例を対象とした全国横断研究を実施し、臨床スペクトル、IVIg療法への反応、及び予後因⼦について調査しました。Limitation:記載なし。
Cats EA, et al.: Neurology. 2010; 75(9): 818-825.
MMNの病態
MMN患者の約半数において、ガングリオシドGM1に対するIgM⾃⼰抗体が検出されます。この抗GM1 IgM抗体が陽性のMMN患者は、陰性の患者と⽐べてより重症な経過をたどることが分かっています2,5)。病態メカニズムは解明されていませんが、伝導ブロック(conduction block:CB)の病態⽣理は、ランビエ絞輪の機能障害によって引き起こされると考えられています6,7)。
有髄神経(運動神経や知覚神経)では、活動電位(神経の興奮)はランビエ絞輪でのみ発⽣します。この活動電位がランビエ絞輪を⾶び⾶びに伝わることを跳躍伝導といいます。ランビエ絞輪の機能が障害されると、跳躍伝導ができなくなり、活動電位の伝達が遮断されます。
図2. MMNの病態(イメージ図)
Vlam L, et al.: Nat Rev Neurol. 2011; 8(1): 48-58.
Vlam L, et al.: Nat Rev Neurol. 2011; 8(1): 48-58.
MMNの疫学
⽇本における2021年の全国疫学調査結果によると、MMNの推定患者数は約507名で、有病率は10万⼈あたり0.4⼈です。発症年齢の中央値は42歳、男⼥⽐は2.3:1となっています8)。海外の報告によると、発症年齢の中央値は40歳(範囲22〜66歳)で、上肢遠位部に初発することが多く、男性は⼥性より発症年齢が若いとされています3)。
図3. MMN患者さんの発症年齢と性別の分布
対象/⽅法:2021年に全国疫学調査を実施し、⼀次質問票(9⽉)と⼆次質問票(12⽉)を⽤いました。アンケートは⽇本国内のすべての神経科及び⼩児神経科に送付され、⼀次質問票でMMNの患者数と発⽣率を、⼆次質問票で臨床情報を収集しました。Limitation:後ろ向き研究による臨床データの制限があること、低回答率と限られた患者数(n=120)であること、治療反応患者に関する選択バイアスの可能性がある。
Aotsuka Y, et al.: Muscle Nerve. 2024; 70(5): 1027-1033.
対象/⽅法:2021年に全国疫学調査を実施し、⼀次質問票(9⽉)と⼆次質問票(12⽉)を⽤いました。アンケートは⽇本国内のすべての神経科及び⼩児神経科に送付され、⼀次質問票でMMNの患者数と発⽣率を、⼆次質問票で臨床情報を収集しました。Limitation:後ろ向き研究による臨床データの制限があること、低回答率と限られた患者数(n=120)であること、治療反応患者に関する選択バイアスの可能性がある。
Aotsuka Y, et al.: Muscle Nerve. 2024; 70(5): 1027-1033.