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<p>大阪警察病院<br>取材当時)大阪警察病院副院長、消化器外科部長<br>(現:獨協医科大学 外科学(下部消化管)講座 主任教授)<br>水島 恒和 先生</p>

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【PC】Dr-INOUE-case01-POEM-chapter01
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クローン病に伴う肛門病変

クローン病に伴う肛門病変
クローン病肛門病変の疫学
クローン病肛門病変の特徴
診断
治療目標
治療の概要
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本文

大阪市を中心とした救急医療・地域医療の中核を担う大阪警察病院では、短腸症候群(Short Bowel Syndrome:SBS)の治療経験が豊富な医師を中心に、チームによるSBS診療を展開している。三次救急医療機関でもある同院では、救急治療の過程で腸管の大量切除によりSBSへと至る症例も散見され、その慢性期における治療についても検討が進められてきた。また、地域医療支援病院として、近隣の医療機関との連携のもと、それぞれの患者に合ったSBS治療の実現を目指している。
そこで今回は、同院の副院長、消化器外科 部長である水島 恒和先生に、大阪警察病院におけるSBS診療が目指す方向性や地域連携への取り組み、今後の展望などについてお話しを伺った。

取材日:2022年11月8日(火)

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大阪市を中心とした救急医療・地域医療の中核を担う大阪警察病院では、短腸症候群(Short Bowel Syndrome:SBS)の治療経験が豊富な医師を中心に、チームによるSBS診療を展開している。三次救急医療機関でもある同院では、救急治療の過程で腸管の大量切除によりSBSへと至る症例も散見され、その慢性期における治療についても検討が進められてきた。また、地域医療支援病院として、近隣の医療機関との連携のもと、それぞれの患者に合ったSBS治療の実現を目指している。
そこで今回は、同院の副院長、消化器外科 部長である水島 恒和先生に、大阪警察病院におけるSBS診療が目指す方向性や地域連携への取り組み、今後の展望などについてお話しを伺った。

取材日:2022年11月8日(火)


大阪警察病院におけるSBS治療の特徴を教えてください

救急医療・地域医療を担う総合病院として
幅広い背景を有する患者さんに合わせたSBS治療の提供を目指す

大阪市を中心とした地域の中核病院である大阪警察病院は、これまで救急・高度医療を含む幅広い診療を展開してきました。なかでもER・救命救急センターは、一次から三次までの救急を24時間受け入れる体制を構築しており、約1万件の救急受入れを行っており、地域の救急医療を支えています。こうした背景もあり、当院には救急医療に対して意欲的な若い人材が集まっており、院内での勉強会や疾患鑑別のトレーニングといった研鑽も活発に行われていることから、レベルの高い救急医療を実施できる環境が整っています。SBSに関しても、従来から消化器外科において成人SBS患者さんの診療を行っており、私が着任した2021年以降は、薬物療法を活用した腸管リハビリテーションなども行えるよう多職種チームによる診療体制も整えてきました。現在のところ、当院で継続して治療を行うSBS患者さんの数は多くはありませんが、消化器がんの術後合併症によって小腸の大量切除を余儀なくされSBSへと至ったケースなど、クローン病などの炎症性腸疾患のみならず、さまざまな背景を有するSBS患者さんに対応しています。そのため、看護師や管理栄養士、メディカルソーシャルワーカーなど多職種によるかかわりのなかで、それぞれの患者さんの問題点や悩みを拾い上げながら、個々の状況に合わせた治療を提供できるよう努めてきました。

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SBS診療における課題にはどのようなものがありますか

SBS患者さんに漂う「あきらめ」の心情

私がSBS診療に携わるようになったのは大阪大学に勤務していた時代にさかのぼり、これまで15年近くにわたり数多くのSBS患者さんと接してきました。そのなかで感じていたのは、治療が軌道に乗り、社会復帰を果たしているようなSBS患者さんであっても、ある種の「あきらめ」のようなものを抱えており、たとえば「睡眠薬がないとよく眠れないけれど、生活に大きな支障をきたすほどではないから放置してしまう」、「旅行をしたい気持ちはあるけれど、その準備などの煩わしさを考えると、実現を躊躇してしまう」といった状況も認められました。過去には、私の患者さんが新婚旅行に行くために、飛行機に乗った際の気圧の影響や機内への注射針の持ち込みなどを1つひとつ調べていた様子を目の当たりにしたこともあり、患者さんがあきらめてしまいたくなる気持ちも理解できます。ただ、診療のなかでは、長く治療を続ける患者さんから「私は平均寿命まで生きることは期待していないので」というような声を聞くこともあり、医師としてとても気になっていました。

現状維持の「守りの治療」から、より良い状態を目指す「攻めの治療」へ

こうした患者さんの「あきらめ」の一因は、かつてSBS治療はその選択肢が限られ、現状維持のための「守りの治療」をせざるをえない状況が続いていたことも影響しているのではないかと思います。近年は、SBSに対する薬物治療を用いた腸管リハビリテーションなど、患者さんのQOLを保ちながら、より良い状態を目指していくこともできるようになりました。SBS治療は、以前の守りの治療から「攻めの治療」へと変化したと言えるでしょう。こうした変化を受けて、私たちはSBS患者さんの苦労やあきらめの気持ちに寄り添いながらも、患者さんのより良い生活、人生を実現できるよう支援していきたいと思っています。 もちろん、患者さんによっては「現状維持で十分だ」と考える方もおり、それも治療選択の1つとして尊重されるべきです。しかしながら、何も知らないまま治療をあきらめるのではなく、こうした治療環境の変化を患者さんに紹介し、そのうえで治療を選択していくことが重要だと考えています。

 


SBS治療において大切にしているポイントを教えてください

合併症を起こさない安全な治療が第一
SBSにおいて、より良い状態を目指す「攻めの治療」が可能になりつつあるとはいえ、その実現は、これまでの標準的な治療を安全に継続できていることが大前提となります。特に、カテーテル感染症や代謝関連の合併症を起こさずに在宅中心静脈栄養(HPN:Home Parenteral Nutrition)を継続することは治療の基本であり、私たちも患者さんへの教育面を含め、慎重に対応してきました。たとえば、原疾患がクローン病の患者さんについては、皮膚の状態が悪いことも多く、カテーテル挿入部の感染リスクが高い状態にあるため、感染予防対策として、皮下埋め込み型の中心静脈アクセスポートではなく、皮下トンネル型中心静脈カテーテルを使用するなどの工夫も行っています。

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栄養状態の改善によりHPNからの離脱も検討

また、感染予防の観点からは栄養状態の改善も不可欠ですが、投与カロリーを増量することによりトランスアミナーゼの上昇を認めることもあるため、管理栄養士とともに経口摂取を含めた栄養面での検討を行いながら、薬物治療なども含め慎重に調節しています。さらに、クローン病の患者さんについては、栄養状態の改善に向けた腸管の炎症コントロールも重要であり、術後に長期にわたってHPNを実施していたクローン病の患者さんが、生物学的製剤を導入することによってHPNから離脱できたという経験もあります。患者さんの体調を第一に考えつつ、可能であればHPNからの離脱も目指した治療を検討していきたいと考えています。

 

 


今後、どのようなSBS診療に取り組んでいきたいと考えていらっしゃいますか

緊急手術によりSBSへと至った患者さんに対する慢性期管理のニーズ

当院は救急患者さんを多数受け入れていることもあり、緊急手術を実施する機会も多いのですが、そのなかには上腸間膜動脈血栓症や絞扼性イレウスなどによって腸管大量切除を余儀なくされ、SBSへと至ってしまう患者さんも散見されます。特に、当院は循環器疾患の治療にも強みをもつため、血栓症リスクの高い患者さんも多く、他院に比べても、その頻度は高いのではないかと推測されます。以前は命を落とすことが多かったこれらの疾患も、最近は適切な処置により救命できる患者さんが増加しています。
しかしながら、緊急手術で腸管の大量切除を行い、一命を取り留めたとしても、当院のような急性期病院の場合、現在の医療制度のもとでは、病状がある程度コントロールされれば、療養やリハビリテーションを目的とした医療機関への転院、在宅での管理へと移行しなければなりません。そのため、当院を退院後は、SBSに詳しい医師のいない医療機関や在宅において、従来の守りの治療を継続している患者さんも多いと考えられ、近年の治療の進歩の恩恵を受けることができないケースもあるようです。
これまで当院では、緊急手術によりSBSとなった患者さんが転院したあとの状況を追跡する体制が整っておらず、そうした患者さんに対して十分なフォローアップを行うことができない状態にありました。しかしながら、こうした患者さんに対して最新のSBS治療に関する情報提供を行い、より良いSBS治療を提案・実施していくことも、地域の中核病院として大切な役割だと考えています。今後は、救急部門のスタッフとも情報を共有しながら、患者さんに対する適切な情報提供や、退院後の相談体制を整えていく予定です。

合併症を有するSBS患者さんへの臨機応変な対応

さらに、近年は、SBS治療の進歩に加え、クローン病などのSBS原因疾患に対する治療選択肢も増えて予後が延長1)したことから、SBS患者さんの高齢化も進んできました。また、上腸間膜動脈血栓症などは、背景に循環器疾患を有するケースも多いことから、今後は、何らかの合併症を有するSBS患者さんも増加すると考えられます。
そうしたなかでは、SBSのみならず、合併症にかかわる診療科と臨機応変に連携しながら対応できる治療環境が求められるようになると予想されます。当院は従来から救急医療などで培った診療体制もあり、急な体調不良をきたした際の入院にも迅速に対応できるのに加え、総合病院としてさまざまな専門医による治療も受けられることから、合併症も含めたSBS患者さん全体を診ることができるという強みもあります。

1)Modi BP, et al. J Pediatr Surg. 2008; 43(1): 20-24.

地域におけるSBS診療ネットワークの「ハブ」として頼れる医療機関に

幸いなことに、大阪警察病院は地域医療支援病院として、これまで近隣の1,000を超える医療機関と連携しながら地域医療を支えてきました。私も副院長として地域の医療機関を訪問する機会が多く、少しずつではあるものの、地域のSBS患者さんや各医療機関における治療の状況も見えるようになってきました。そのなかで感じることは、地域の医療機関のSBS患者さんは、人数が限られていることもあり、患者さん同士で病気について話し合ったり、情報を交換したりする機会が限られていること、また、SBS治療に詳しい医師がいなければ、従来の治療をそのまま継続せざるをえないケースも多く、患者さんの生活の変化に合わせた調節が難しかったり、新しい治療に関する情報が届きにくかったりという環境があるということです。
そうしたなかで、SBS治療に詳しい医師に加え、栄養療法に詳しい栄養サポートチームなど多くの医療スタッフを擁する当院には、SBS患者さんの抱える問題を気軽に相談することができる「SBSに関して頼れる地域の医療機関」としての役割が求められているのではないかと思います。また、SBS治療は、その内容によっては医療費の負担が心配な患者さんもいらっしゃると思いますが、当院ではメディカルソーシャルワーカーによる相談も可能で、適切な助成を受けることができれば、それまであきらめていた新しい治療に挑戦する方も増えていくのではないでしょうか。
さらに、より専門的な検査が必要な場合や、小腸移植など高度な医療を必要とするケースについては、大阪大学の腸管不全治療センターなどと連携しながら治療を進めていくことも可能で、当院は地域におけるSBS診療ネットワークの「ハブ」としての役割を担うこともできるのではないかと考えています。私たちは、これからも患者さんの生活や希望に沿った良質な医療と、安心して治療を続けることができる環境を提供しながら、より良いSBS診療を目指していきたいと思います。