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松井 あや香 に投稿

IBD(炎症性腸疾患)

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炎症性腸疾患(IBD)

炎症性腸疾患(IBD)
潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より(図と解説)

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IBD(炎症性腸疾患)
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IBD(炎症性腸疾患)

目次

 


潰瘍性⼤腸炎の多様な影響   


潰瘍性⼤腸炎は⼈間関係、仕事、家庭⽣活など、多岐にわたって影響を及ぼす疾患で、症状がコントロールされていても、重⼤な⼼理社会的影響があることが報告されています。
そのため、QOLなどを患者さん⾃⾝の評価すなわち患者報告アウトカムによって評価することがIBD治療で不可⽋であると⾔われています。そして、患者さん、医療従事者の双⽅がそれらの負担がどう変化するかを知ることが重要です。

図1. 潰瘍性⼤腸炎が患者さんに及ぼす影響は多岐にわたる

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より(図と解説)
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より(図と解説)


 


YOURS研究とは


YOURS研究は、⽇本で⾏われた「患者報告アウトカム」に関する⼤規模観察研究で、⽇本炎症性腸疾患学会(JSIBD)と武⽥薬品の共同研究として実施されました。⽬的は、潰瘍性⼤腸炎患者さんの「⽣活習慣」、「⼼理社会学的因⼦」、「診療パターン」、「患者さんの求めるケアと医療従事者の診療とのギャップ」が、再燃や増悪、⼊院・⼿術、患者報告アウトカムにどのような影響を与えるかを明らかにすることで、5つの病院から2,006⼈の患者さんが参加し、約3年間、定期的に追跡調査が⾏われました。

図2. YOURS研究とは

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

YOURS研究では、3つの要因が患者さんに与えている負担を、患者報告アウトカムを⽤いて定期的に評価しました。
3つの要因とは、患者さんの社会経済的状況、社会的サポート、ストレスなどの「社会的要因」、⾝体活動、喫煙、睡眠、仕事などの「⽣活習慣要因」、排便回数、出⾎、腸管外合併症、疼痛などの「疾患活動性要因」です。

図3. YOURS研究で評価された要因及びアウトカム

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

YOURS研究のベースライン解析は、2023年にJournal of Gastroenterologyに掲載されました。
その内容についてご紹介します。

図4. YOURS研究ベースライン解析

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

 


YOURS研究ベースライン解析結果


YOURS研究のベースライン解析では、初回調査時のデータに基づき、疾患の重症度および⼤腸全摘術が、「患者報告アウトカム」すなわち患者さんのQOLや疲労・不安・抑うつ、労働⽣産性などに、どのような影響を与えているかを調べました。

図5. YOURS研究ベースライン解析結果

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

1,971例の患者さんについて解析しました。内訳は寛解期の患者さんが1,346例(68.3%)、疾患活動性のある患者さんが583例(29.6%)、⼤腸全摘術を受けた患者さんが42例(2.1%)でした。
年齢、性別、診断時の年齢、病型、現⾏の治療薬は表1のとおりです。

表1. 患者背景・疾患の特徴

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

寛解期の患者さん、疾患活動性のある患者さん、⼤腸全摘術を受けた患者さんのいずれにおいても、約70%が就業していました。無職の患者さんは寛解期の患者さんで20.4%、疾患活動性のある患者さんで22.3%、⼤腸全摘術を受けた患者さんで28.6%でした。
年収500万円未満の割合は寛解期の患者さんで36.2%、疾患活動性のある患者さんで44.9%、⼤腸全摘術を受けた患者さんで52.3%でした。
労働時間については、いずれの群においても40時間/週でした。

表2. 社会的背景とライフスタイル

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

患者さんの症状の重症度や⼤腸全摘術が患者報告アウトカムへどのような影響を及ぼすかを検討した結果、症状の重症度が⾼い患者さんほどQOL、疲労、抑うつ、不安の各スコアに悪い影響を及ぼしていました。  
項目別にみると、QOL(SIBDQ)※1が低いと評価された患者さんの割合は、症状の重症度が軽度の患者さんの17.1%、症状が中等症の患者さんの39.0%、および症状が重症の患者さんの61.5%でした。一方、寛解中の患者さんおよび大腸全摘術を受けた患者さんでは、それぞれ5.7%および35.7%でした。  
疲労(FACIT-F)※2 については、症状の重症度が軽症、中等症、および重症の患者さんのそれぞれ6.6%、13.8%、および11.5%で疲労が重度と評価され、寛解中の患者さんおよび⼤腸全摘術を受けた患者さんではそれぞれ3.3%および14.3%でした。  
抑うつと不安(HADS)※3 については、症状の重症度が軽症から重症の患者さんの約22%が軽度から中等度の抑うつと報告され、約24%が軽度から中等度の不安と報告されました。

※1:SIBDQ(Short Inflammatory Bowel Disease Questionnaire)は、IBDの影響を評価するための簡便な質問票。腸症状、全⾝症状、感情機能、社会機能の4つのサブスコアから構成されており、総スコアが⾼いほどIBDに関連するQOLが良好であることを⽰す。  
Irvine EJ, et al.: Am J Gastroenterol. 1996; 91: 1571-8.   

※2:FACIT-F(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue)は、慢性疾患における疲労の指標。合計スコアは0-52で、⾼いほど疲労が少ないことを⽰す。   
Tinsley A, et al.: Aliment Pharmacol Ther. 2011; 34: 1328-36.   

※3:HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)は、うつ病や不安の⾃⼰評価尺度。不安(Anxiety)と抑うつ(Depression)の2つのサブスケールから構成されており、スコアが⾼いほど不安や抑うつの症状が強いことを⽰す。  
Zigmond AS, et al.: Acta Psychiatr Scand. 1983;67(6):361-70.

図6. 重症度/⼤腸切除術が患者報告アウトカムへ及ぼす影響①

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

労働⽣産性及び活動障害(WPAI)※4と睡眠(PSQI)※5に関する患者報告アウトカムへ及ぼす影響について図7にお示しします。
労働生産性は重症度が高いほど低下していました。 

以上より、潰瘍性大腸炎の症状が軽度の患者さんでも気分、QOL、疲労、労働生産性の低下と関連していることがわかりました。 

※4:WPAI(Work Productivity and Actively Impairment)は、個⼈の仕事の⽣産性と⽇常活動への影響を評価するための質問票で、数値が⾼いほど障害の度合いが⼤きいことを⽰す。  
Reilly MC, et al.: Pharmacoeconomics. 1993; 4: 353-65.  

※5:PSQI(Pittsburguh Sleep Quality Index:ピッツバーグ質問表)は、睡眠障害の程度を評価する指標で、数値が⾼いほど睡眠の質が低いことを⽰す。 
Buysse DJ, et al.: Psychiatry Res. 1989; 28: 193-213

図7.  重症度/⼤腸切除術が患者報告アウトカムへ及ぼす影響②

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

潰瘍性⼤腸炎の症状の重症度が患者報告アウトカムにどう影響するかを図⽰したものが図8です。
寛解状態をゼロとして、値が⼤きいほどアウトカムが不良である、つまり障害が⼤きい、あるいは労働⽣産性が低いことを意味しています。
特に、「アクティビティにおける⽣産性低下」、「業務中の⽣産性低下」、「労働⽣産性低下」などの仕事⾯において、症状の重症度が⼤きく影響していました。

図8. 潰瘍性⼤腸炎の症状の重症度と患者報告アウトカムの相関

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

 


考察


以上の結果から、症状が軽度の患者さんにおいても、気分、QOL、疲労、労働⽣産性が低下すること、重症度が上がるにつれて患者報告アウトカムへの影響は⼤きくなること、患者報告アウトカムへの影響は指標ごとに異なることが⽰唆されました。

図 9. 考察①

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より

また、症状の重症度が患者報告アウトカムにおよぼす影響の中で最もインパクトが⼤きいものは労働⽣産性であり、就労している潰瘍性⼤腸炎患者さんにとって労働⽣産性の低下は⼤きな課題となるため、患者さんの労働⽣産性を気にかけることが重要であることが⽰唆されました。

図10. 考察②

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より


 


まとめ


IBD治療はより患者さん中⼼にシフトしており、患者報告アウトカムの重要性が増しています。
患者報告アウトカムは、症状の重症度や⼤腸全摘術の影響を受けやすく、重症度が増すとその影響も⼤きくなっていました。
⼀⽅で、症状が軽症でも影響が認められました。
これらのことから、潰瘍性⼤腸炎の疾患コントロールは、症状の重症度に関わらず患者報告アウトカムを改善させる可能性が⽰唆されました。

図11. まとめ

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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より
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潰瘍性大腸炎の症状が患者報告アウトカムに及ぼす影響-YOURS研究ベースライン調査より