〈クリニックDX術1〉待ち時間5分!スタッフの残業なし!を実現
近年、多くのクリニックがウェブサイトやSNSなどを使ったオンラインでの情報発信をされていますが、「導入したものの思うような成果が得られない」と悩む声も少なくありません。また、ウェブ予約などのデジタルツールを導入したいと考えているが、運用面の負担や対応の不安から踏み切れずにいるというケースも見られます。
そこで今回は、医師・スタッフの業務負担を軽減し、患者さんにも利点をもたらすために、クリニックDXとオンラインの情報発信に取り組んでおられる、いわもと内科おなかクリニック院長 岩本史光先生に、導入の道筋や改善の工夫についてご経験を交えてお話を伺いました。
第1回は、同クリニックで実際に活用しているデジタルツールやオンラインコンテンツ、その導入によって診療時間や待ち時間、患者さんとのコミュニケーション、スタッフの働き方、そして集患にどのような変化があったのかを中心にご紹介いただきます。
本記事は、2025年9月25日時点(インタビュー日)の情報に基づいています。本記事にはインタビューに応じた医師個人の見解が含まれますが、所属医療機関を代表するものではありません。また、あくまで参考意見であり、弊社として当該意見の妥当性を保証したり、所属医療機関や記載のサービス等を推奨するものではありません。生成AIを用いたサービス等には、入力情報の学習用データとしての取り込み等による情報漏洩の可能性、誤情報の出力、生成物による著作権侵害等のリスクが含まれる場合があります。これらのリスクの一部は、ファクトチェックや学習用データとして利用されないための「オプトアウト申請」等で低減できる可能性があります。AI技術の発展とその適用には予測不能の面があり、本記事から得た情報に基づき生じた結果に関して、弊社等は一切の責任を負いかねます。ご了承の上、ご自身の責任にてご利用ください。
「待つのも待たせるのも当たり前」ではない
当院は、山梨県甲府市で2020年に開業した消化器内科・内科・胃腸科クリニックです。地域に根ざした医療機関として、一般的な消化器症状から炎症性腸疾患(IBD)などの難病まで、「おなか」に関する幅広い診療を行っています。
私自身、高校生の頃にIBDを発症したことが医師を志すきっかけでした。その経験もあり、IBD診療をはじめ、麻酔内視鏡検査や日帰り大腸ポリープ切除治療には特に力を入れています。
祖父が開業医だったこともあり、私にとって「開業」は比較的早い段階から意識していた目標でした。その中で強く抱いていたのが、「患者さんを待たせないクリニックにしたい」という思いです。
患者として通院していた頃も、勤務医だった頃も、常に感じていたのは「待ち時間の長さ」でした。大学病院や市中病院では、診察までに何時間もかかり、通院が1日がかりになることも珍しくありません。いつしか、それが「当たり前」になっている現状に疑問を抱くようになりました。
こうした課題を解決する手立てとして、まず注目したのがウェブ予約です。来院時間をあらかじめ管理できれば、待ち時間の短縮につながると考えました。さらに、オンライン診療にも可能性を感じました。予約から診療、処方箋発行までをオンラインで完結できれば、患者さんの負担は大きく減らせる――。そうした構想を、実は10年ほど前から温めていたのです。

デジタルツールで効率化と利便性を図る
開業の準備期に入ると、クリニックのDX(デジタルトランスフォーメーション)について徹底的に情報を集めました。ウェブ予約やオンライン診療を導入しているクリニックのサイト、医療者向けの開業支援ページなどを調べると、魅力的なシステムがいくつも見つかりました。どれも導入したくなりましたが、最終的には「まずはウェブ予約だけ」としました。あれもこれも一度に導入してしまうと、スタッフも患者さんも混乱するだろうと考えたからです。理想のクリニックを早く形にしたい気持ちはありましたが、自分の理想を優先して現場がついてこなければ、本末転倒です。
幸か不幸か、開業した2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、社会全体のオンライン化が一気に進んだ年でした。その流れもあり、ウェブ予約は患者さんにも比較的抵抗なく受け入れられたように思います。
その後は段階的にDXを進め、2025年現在では、予約・問診・診察・検査説明までを全てウェブ上で行えるほか、アプリを活用した検査結果の共有や医療費のオンライン決済にも対応できる体制を整えています。
もちろん、ウェブ操作に不安のある患者さんもいらっしゃるため、電話予約や紙の問診票といったアナログな手段も並行して活用しています。
ブログやSNSで患者さんとの距離感を縮める
当院では、ウェブ予約などのツールに加え、公式サイトやブログ、SNSといったオンラインコンテンツを積極的に活用しています。これは、当院で主に注力したいと考えている疾患が10代~20代に多く、その世代の「病院」に対する不安や抵抗感を和らげ、距離感を縮めたいという思いからです。
若い世代の情報収集は、もはやインターネットが主流です。自分の症状が何か、どこで治療を受けられるかをまずネットで調べます。その際、クリニックのサイトに医師の顔が掲載されていたり、漫画や動画で症状や検査方法が分かりやすく説明されていたりすると、安心感につながるのではないかと考えました。
実際、患者さんから「サイトに載っている漫画を見て来ました」「内視鏡検査は麻酔を使うからつらくないんですよね」といった声を聞くこともあります。こうした反応から、患者さんの理解を深める効果を実感しています。
現在は、LINE公式アカウント、Instagram、Facebook、YouTubeなどのSNSでも情報発信しています。「そんなにあれこれ使う意味はあるのか」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、各コンテンツの特性を踏まえ、情報を適切に振り分けて発信しています。
具体的にどのツールをどのように使い分けているかについては、次回以降で詳しくご紹介します。

効果が上がらないDXは自己満足
当院のクリニック運営の特徴は、大きく分けてデジタルツールを用いた効率化・利便性向上と、オンラインコンテンツを活用した情報発信からの集患と教育という2本柱です。この2つを組み合わせることで、患者数の増加と同時に、待ち時間の短縮や業務効率化も実現しています。
例えば利用状況を見てみると、新規患者さんの7~8割がウェブ予約を利用し、そのほとんどがウェブ問診も活用しています。内視鏡検査を受ける患者さんの半数程度は、事前に公式サイトの検査説明を読んでから来院しているようです。
特に過敏性腸症候群や慢性腹痛の20代~30代の患者さんは、デジタルツールに慣れており、むしろ対面や電話でのやり取りが苦手、また、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する傾向があります。そのため、来院前にある程度の準備ができることは、患者さんにとっても大きなメリットになっています。
実際、ウェブ予約の導入により極端な混雑はほぼ解消され、ウェブ問診で事前に患者情報を把握できるため、診察時間の圧縮も可能になりました。現在の患者さんの待ち時間は、空いているときで5分程度、混雑時でも30分程度です。「単に患者数が少ないのでは?」と思われるかもしれませんが、こうしたDXを経て患者数は大幅に増加しています。それにもかかわらず、スタッフの残業はほとんど発生していません。
どれだけ優れたDXも、効果が伴わなければ自己満足に過ぎません。幸い当院のDXは、患者さんにもスタッフにも、そしてクリニック経営にも好影響をもたらしています。加えて、私自身も以前から取り組みたかった治療や研究に時間を割けるようになってきました。
なぜこれほどの効果を得られたのか。それは、各ツールやコンテンツの役割を明確にし、相乗効果を出しやすい動線設計を行っているからだと考えています。第2回では、この点を中心に詳しく解説していきます。
岩本 史光 先生
いわもと内科おなかクリニック 院長
2011年山梨大学医学部卒業。同附属病院での研修を経て第1内科に勤務。その後、山梨県立中央病院消化器内科、東京医科歯科大学(現:東京科学大学)消化器内科/炎症性腸疾患センターなど、大学病院、市中病院、クリニック、健診施設などの勤務を経て、2020年にいわもと内科おなかクリニックを開業。経営(集客)と患者コミュニケーションの両輪でさまざまなデジタルツールを駆使し、単なる効率化にとどまらず“つながりのある医療”を維持・発展させている。
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