治療の概要
『クローン病治療指針(2026年3月改訂)』では、クローン病肛門病変診療フローチャートが示されています(表1)1)。内科的治療による腸管病変の寛解導入に努めるとともに、肛門病変は外科医・肛門科医と連携し個々の患者の病態に応じて治療を選択する、とされています1)。
『クローン病肛門病変に対する治療指針(2026年3月改訂)』では、クローン病肛門病変の治療に対する一般的事項として、クローン病において、肛門部は回盲部と同様に罹患頻度の高い部位であり、その病変は再発を繰り返し、難治化することから、長期的にQOLを維持するためにも管理が重要となること、治療に際しては、「クローン病による原発性病変」(primary lesion)、「続発性病変」(secondary lesion)、通常型病変(incidental lesion)の鑑別など、局所の病態を的確に診断するだけでなく、腸管病変とくに直腸病変の活動性を評価して治療法を決定し、腸管病変も考慮に入れて肛門病変の治療法を決定し、局所の外科治療の選択には病変の制御とともに長期成績や肛門機能にも配慮することなどが記載されています(表2)1)。
また、病態別の治療指針が示されており軽症例の場合、切開排膿とともにメトロニダゾールや抗菌薬の投与を行います。中等症以上の症状がある場合は、seton(シートン)法によるドレナージを第1選択とし、ドレナージ後には分子標的薬(主に抗TNFα抗体製剤を用いる)や免疫調節薬による治療を考慮、生物学的製剤の使用に際しては直腸肛門狭窄の有無にも留意します。直腸に活動性病変がなく単純な痔瘻であれば、痔瘻根治術も選択肢の一つとなりますが、術後創治癒に時間がかかる場合があること、および再発の可能性があることを十分に考慮して適応を決定します。
複雑多発例や再発を繰り返す場合は、痔瘻根治術の適応は控え、seton(シートン)法ドレナージを継続します。肛門病変に対し分子標的薬(主に抗TNFα抗体製剤を用いる)や免疫調節薬による治療を導入する場合は、ドレナージによって局所の感染巣を制御した後に開始します。
既存治療で効果のない複雑痔瘻では、ダルバドストロセル(アロフィセル注)(ヒト体性幹細胞加工製品)が治療選択肢として追加され、適正治療指針を遵守して使用します。
日常生活を制限するほどの重症例で他の治療法によっても制御できない場合は、人工肛門造設術を検討します(表3)1)。
日本大腸肛門病学会の『肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版(改訂第2版)』では、クローン病合併痔瘻・肛門周囲膿瘍治療がフローチャートにまとめられています(図)2)。
クローン病の痔瘻に対して、「浅い」「単独」の瘻孔であれば lay open(切開開放術)などを考慮することもありますが、治療は基本的にシートンドレナージを行います。
シートンドレナージ等でも再発・再燃、治癒遅延、複雑化する場合には、持続シートンドレナージにより経過観察します。この場合、直腸病変があれば生物学的製剤を併用されるケースもあります。
持続シートンドレナージによっても、日常生活を制限する直腸肛門部の症状を制御できない場合には、人工肛門造設術が考慮されます。
■表1.クローン病治療指針(2026年3月改訂)
クローン病肛門病変診療フローチャート
■表2.クローン病肛門病変に対する治療指針(2026年3月改訂)
一般的事項、診断的事項
■表3. クローン病肛門病変に対する治療指針(2026年3月改訂)
クローン病肛門病変治療指針
■図.肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診断ガイドライン 2020年版(改訂第2版)
クローン病合併痔瘻・肛門周囲膿瘍治療のフローチャート
肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン 2020年版(改訂第2版), 南江堂, 45, 2020.
肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン 2020年版(改訂第2版), 南江堂, 45, 2020.
1)令和7年度 改訂版(令和8年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針〔厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書〕,41-51,56-58 ,2024,
2)肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン 2020年版(改訂第2版), 南江堂, 45, 2020.