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PRIME 試験(検証試験、海外データ)

PRIME 試験(検証試験、海外データ)の概要と患者背景

PRIME試験は、化学療法未治療の切除不能進行・再発大腸癌患者を対象に、FOLFOX4に対してベクティビックス®を併用投与したときの有効性及び安全性を検討した海外第Ⅲ相試験です。本試験はKRAS遺伝子変異状況によらず全症例に対する治療効果の比較検討として2006年8月に開始されましたが、2007年9月に20020408試験の後ろ向き解析によりベクティビックス®の臨床的ベネフィットがKRAS遺伝子野生型患者に限定されることが示されました1)。そのため、2009年1月に本試験の目的及び仮説が変更され、目的はFOLFOX4に対するベクティビックス®の併用効果のKRAS遺伝子変異有無別の評価、主要評価項目はKRAS遺伝子野生型及び変異型患者におけるPFSとされました。

試験デザイン

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試験概要

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KRAS遺伝子解析は1,183例中1,096例(93%)で施行可能でした。このうちKRAS遺伝子野生型患者は656例(60%)であり、ベクティビックス®+FOLFOX4群325例、FOLFOX4群331例でした。なお、ベースラインの患者背景は、両群及びKRAS遺伝子変異状況別でバランスがとれていました。

患者背景

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有効性

KRAS遺伝子野生型患者における解析

主要評価項目であるPFSの中央値は、ベクティビックス®+FOLFOX4群10.0ヵ月、FOLFOX4群8.6ヵ月であり、ベクティビックス®+FOLFOX4群のFOLFOX4群に対する優越性が検証されました(HR=0.80、95% CI: 0.67-0.95、p=0.01、層別log-rank検定)。副次評価項目であるOSの中央値は、ベクティビックス®+FOLFOX4群23.9ヵ月、FOLFOX4群19.7ヵ月であり、両群に有意差は認められませんでした(HR=0.88、95% CI: 0.73-1.06、p=0.17、層別log-rank検定)。

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〔サブグループ解析〕RASKRAS及びNRAS)遺伝子野生型患者における解析

RASKRAS及びNRAS)遺伝子解析は1,183例中1,060例(90%)で施行可能でした。RAS遺伝子野生型/変異型*患者におけるレトロスペクティブな解析結果は以下の通りでした。
*KRAS遺伝子コドン12, 13, 61, 117, 146及びNRAS遺伝子コドン12, 13, 61, 117, 146の変異が検討された。

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安全性

KRAS遺伝子野生型患者において、ベクティビックス®+FOLFOX4群における副作用は322例中321例に認められ(100%)、主な副作用(30%以上)は、好中球減少症189例(59%)、下痢181例(56%)、発疹175例(54%)、悪心133例(41%)、疲労106例(33%)、ざ瘡様皮膚炎103例(32%)、錯感覚102例(32%)、食欲不振98例(30%)でした。重篤な有害事象は、ベクティビックス®+FOLFOX4群130例、FOLFOX4群118例に認められ、ベクティビックス®+FOLFOX4群の主な有害事象は、下痢28例、嘔吐9例、発熱、腸閉塞、腹痛、脱水、肺塞栓症各8例でした。投与中止に至った有害事象は、ベクティビックス®+FOLFOX4群59例に認められ、主な有害事象は、発疹14例、ざ瘡様皮膚炎、疲労各5例、下痢4例でした。試験期間中の死亡(投与期間中または最終投与後30日以内の死亡)は、ベクティビックス®+FOLFOX4群35例、FOLFOX4群28例に認められ、ベクティビックス®+FOLFOX4群の主な死因は、転移性大腸癌8例、肝不全、心肺停止、肺塞栓症各2例でした。

KRAS遺伝子野生型患者においてベクティビックス®+FOLFOX4群で5%以上に認められた副作用

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Doctor’s Comment

小谷 大輔 先生小谷 大輔 先生
国立がん研究センター東病院 消化管内科

現在、切除不能進行・再発大腸癌治療では様々なバイオマーカー開発が進み、個別化医療が加速していますが、その先駆けとなったのが本試験でした。KRAS遺伝子変異別の解析、そしてRAS遺伝子変異別の解析によりバイオマーカーを確立し、薬剤の有効性がより期待できる患者に対して抗EGFR抗体薬を投与できるようになりました。
ベクティビックス®の使用開始当初は皮膚障害に対するマネジメントが十分とは言えませんでしたが、現在は当院でもチーム医療も進み、チーム全体の皮膚ケアに対する習熟度も向上しています。皮膚障害のなかでも皮膚乾燥や皮疹、爪囲炎は、比較的発症頻度が高く患者のQOLを低下させるため特に注意が必要です。保湿剤や抗生剤投与、ステロイドの適正な使用による皮膚マネジメント、そして発症時におけるベクティビックス®の休薬や減量、再開などを適切に行うことにより、以前より長く治療継続できるようになりました。
かつてベクティビックス®投与は三次治療が中心でしたが、バイオマーカーの開発によりベクティビックス®投与の主体は一次治療に移行しており、当院においてもRAS遺伝子野生型で原発巣占居部位が左側の患者に対して一次治療での投与を検討しています。そのため、ベクティビックス®の最終投与から後方ラインまでの間隔が広がり、後方ラインで再投与するリチャレンジの有用性も期待できるようになりました。これまでリチャレンジの有効性の指標としては、前治療の効果や最終投与からの間隔などが挙げられてきましたが、本来は後方ラインにおいて再度RAS遺伝子検査を行ったうえで投与可否を判断することが望まれます。2019年8月には、リキッドバイオプシーによるRAS遺伝子検査である「OncoBEAM RAS CRCキット」が承認され、2020年8月1日からは保険償還されることになりました。本検査は初回治療時1回、再治療時複数回の検査が可能であることから、リチャレンジに対してもバイオマーカーが用いられるようになり、有効性がより期待できる患者に対して投与できるようになることが期待されます。

馬場 秀夫 先生馬場 秀夫 先生
熊本大学大学院生命科学研究部 消化器外科学講座 教授

本試験における最初のインパクトは、一次治療においてFOLFOXに対する抗EGFR抗体薬の上乗せ効果を示したことでした。抗EGFR抗体薬は単剤でも有効性を示していることから1,2)、一次治療においては腫瘍縮小により切除を目指すコンバージョンを中心に使用が検討されていました。当時用いられていた2剤併用化学療法はFOLFOXが中心であったことから、ベクティビックス®+FOLFOXは実臨床に即した治療法と言え、全身状態が比較的良好で腫瘍量が多く腫瘍縮小によりコンバージョンが望める患者に対しては積極的に投与を検討してきました。
そして2つ目のインパクトとして、個別化医療への道筋を示したことが挙げられます。本試験はKRAS遺伝子野生型、さらにRAS遺伝子野生型に対象集団を絞ることで、抗EGFR抗体薬の有効性がより大きくなることを示しました。バイオマーカーを用いて効果がより期待できる患者に対して治療を行うという、個別化医療の認識を大腸癌領域に与えた、非常に意義のある解析だったと思います。
近年、原発巣の占居部位別の解析結果が報告され、「大腸癌治療ガイドライン2019年版」の「一次治療の方針を決定する際のプロセス」においてもRAS/BRAF遺伝子野生型で原発巣の占居部位が左側の患者に対して抗EGFR抗体薬+2剤併用化学療法が推奨されています。一方、右側の患者は左側の患者と比べて予後不良であることが知られていますが、当院で根治的な肝切除を施行した患者について原発巣の占居部位別に解析したところ、肝切除前に薬物療法を行っていた患者におけるOS及びDFSは左側群と右側群で有意差を認めませんでした(それぞれp=0.355、p=0.444、log-rank検定)3)。すなわち、薬物療法によりコンバージョンできた患者の予後は右側でも左側と同程度であることを示しており、右側においても腫瘍縮小によりコンバージョンが期待できる場合は積極的に検討すべきであることが示唆されています。実際に当院では、右側であってもコンバージョンが期待できる患者に対しては抗EGFR抗体薬+2剤併用化学療法も検討していますが、今後は右側に対する治療のさらなるデータが報告されることを期待します。

  • 1)Amado RG, et al.: J Clin Oncol. 2008; 26(10): 1626-1634
  • 2)Karapetis CS, et al.: N Engl J Med. 2008; 359(17): 1757-1765
  • 3)Imai K, et al.: HPB(Oxford). 2019; 21(4): 405-412