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PEAK 試験(海外データ)

PEAK 試験(海外データ)の概要と患者背景

PEAK 試験は、KRAS遺伝子野生型の切除不能進行・再発大腸癌患者に対する一次治療として、ベバシズマブ(BEV)+mFOLFOX6とベクティビックス®+mFOLFOX6 を比較検討した海外無作為化比較第Ⅱ相試験です。本試験の対象は、18 歳以上、ECOG PS 0/1でKRAS遺伝子exon 2(codon 12, 13)野生型の切除不能進行・再発大腸癌患者であり、BEV+mFOLFOX6群とベクティビックス®+mFOLFOX6 群に1:1の割合で無作為に割り付けられました。事前にRAS およびBRAF 遺伝子変異の解析が計画されており、主要評価項目はKRAS遺伝子野生型におけるPFS、副次評価項目はKRAS遺伝子野生型におけるOS、奏効率、切除率、安全性など、RAS遺伝子野生型におけるPFS、OS、奏効率、安全性などでした。

試験デザイン

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試験概要

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2009年4月~2011年12月の間に60施設から285例が登録され、BEV+mFOLFOX6群143例、ベクティビックス®+mFOLFOX6群142例に割り付けられました。なお、KRAS遺伝子exon 2野生型でRAS遺伝子検査の結果を有する221例のうち170例(77%)がRAS遺伝子野生型でした。ベースラインの患者背景は、下記の通りでした。

患者背景

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有効性

ITT集団(KRAS遺伝子exon 2野生型)

主要評価項目であるPFSの中央値は、ベクティビックス®+mFOLFOX6群10.9ヵ月、BEV+mFOLFOX6群10.1ヵ月でした(HR=0.87、95% CI: 0.65-1.17、p=0.353)。副次評価項目であるOSの中央値は、ベクティビックス®+mFOLFOX6群34.2ヵ月、BEV+mFOLFOX6群24.3ヵ月でした(HR=0.62、95% CI: 0.44-0.89、p=0.009)。

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RAS遺伝子野生型(サブグループ解析)

RAS遺伝子野生型におけるOSの中央値は、ベクティビックス®+mFOLFOX6群36.9ヵ月、BEV+mFOLFOX6群28.9ヵ月でした(HR=0.76、95% CI: 0.53-1.11、p=0.15)。

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RASおよびBRAF遺伝子野生型(サブグループ解析)

RASおよびBRAF遺伝子野生型におけるOSの中央値は、ベクティビックス®+mFOLFOX6群41.3ヵ月、BEV+mFOLFOX6群28.9ヵ月でした(HR=0.70、95% CI: 0.48-1.04、p=0.08)。

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安全性

KRAS遺伝子野生型患者において、ベクティビックス®+mFOLFOX6群の7例(5%)で治療期間中に致死的な有害事象が認められました。致死的な有害事象は、心停止、大腸癌、誤嚥性肺炎、肺塞栓症、直腸穿孔、呼吸不全、敗血症が各1例に認められ、そのうち3例(2%)は試験治療に関連しているとみなされました(直腸穿孔はベクティビックス®に関連、敗血症は化学療法に関連、呼吸不全はベクティビックス®および化学療法に関連していると考えられました)。また、ベクティビックス®+mFOLFOX6群ではGrade 3のInfusion reactionが3例(2%)で認められましたが、Grade 4/5のInfusion reactionは認められませんでした。

有害事象の要約

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RAS遺伝子野生型患者における有害事象の発現率は、上記の通りでした。RAS遺伝子野生型患者において、ベクティビックス®+mFOLFOX6群では、重篤な有害事象は43%、治療中止に至った有害事象は24%に認められ、ベクティビックス®+mFOLFOX6群におけるGrade 3/4の有害事象として、皮膚障害(34%)、疲労(12%)、低カリウム血症(8%)、低マグネシウム血症(8%)、粘膜炎(7%)、口内炎(7%)などが認められました。

有害事象(RAS遺伝子野生型)(サブグループ解析)

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Doctor’s Comment

渡邉 純 先生渡邉 純 先生
横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター外科 講師

ベクティビックス®の発売当初は三次治療の投与が中心でしたが、腫瘍縮小により切除を目指すコンバージョンを期待し、一次治療でも使用し始めるようになりました。腫瘍縮小により切除可能になるケースは様々あります。例えば、下大静脈に広範に接するような肝転移を認めていても、腫瘍縮小により下大静脈再建で切除することが可能になった症例、また、腸腰筋に浸潤を認める上行結腸癌では神経をともに切除することで歩行障害を認める可能性がありますが、腫瘍縮小により腸腰筋を温存し歩行障害なく切除することが可能になった症例など、腫瘍縮小により切除が可能になる様々な症例を経験しています。臨床試験の結果などでは切除率として一括りにされがちですが、個々の症例では80%以上縮小することで切除可能になったり、腫瘍縮小により機能障害を免れたり、臓器温存が可能になるケースもあります。たとえ臨床試験の結果における差は小さかったとしても、患者ひとりひとりに対する切除の可否は0か100であり、非常に大きな差になるのです。
当院では、一次治療における2剤併用化学療法は基本的にオキサリプラチンベースを用いていたため、PEAK試験の結果は非常にインパクトがありました。また、ベクティビックス®の発売から10年が経過しましたが、その間に当院でもチーム医療が進み皮膚障害のマネジメントも改善されたため、治療期間の延長に対する懸念も払拭されました。したがって、現在は「大腸癌治療ガイドライン2019年版」の「一次治療の方針を決定する際のプロセス」で推奨されているように1)RAS/BRAF遺伝子野生型で原発巣の占居部位が左側の患者に対しては、コンバージョン狙いでなくてもOS延長を目指して、抗EGFR抗体薬+2剤併用化学療法の投与を検討しています。
ガイドラインにも推奨されているように、原発巣の占居部位が左側の患者に対する抗EGFR抗体薬の有効性はメタ解析で示されていますが2)、最終的には前向きに検討された臨床試験の結果が望まれます。したがって、現在進行中であるRAS遺伝子野生型を対象にベバシズマブ+mFOLFOX6とベクティビックス®+mFOLFOX6を比較する国内第Ⅲ相試験、PARADIGM試験3)の結果に注目したいと思います。

吉野 孝之 先生吉野 孝之 先生
国立がん研究センター東病院 消化管内科長

PEAK試験は第Ⅱ相試験であるものの、切除不能進行・再発大腸癌治療に大きな影響を与えました。まず、KRAS遺伝子野生型からRAS遺伝子野生型、そしてRAS/BRAF遺伝子野生型に患者集団を絞り込むことにより、ベクティビックス®+mFOLFOX6群におけるPFSおよびOSが延長することを示しました。また、本試験と同じくベバシズマブ+2剤併用化学療法と抗EGFR抗体薬+2剤併用化学療法を比較した第Ⅲ相試験であるFIRE-3試験4)の結果と同様の傾向を示したことから、一次治療における治療選択に示唆を与えました。さらに、本試験を含む6試験のメタ解析2)の結果から、「アジア版ESMOコンセンサスガイドライン」5)、本邦の「大腸癌治療ガイドライン2019年版」1)において原発巣の占居部位による治療選択が提唱され、「一次治療の方針を決定する際のプロセス」ではRAS遺伝子野生型で左側の患者に対しては抗EGFR抗体薬+2剤併用化学療法が推奨されることになりました。加えて、本試験における2剤併用化学療法がmFOLFOX6と本邦の実臨床に即したレジメンであったことから、ベバシズマブ+mFOLFOX6とベクティビックス®+mFOLFOX6を比較するPARADIGM試験3)の計画が推進されました。PARADIGM試験は現在進行中ですが、全例OSの共主要評価項目としてRAS遺伝子野生型で原発巣の占居部位が左側の患者に対するOSが設定されており、この結果が本邦だけでなく世界に与える影響は非常に大きいと考えています。
今後は、ベクティビックス®を一次治療で使用した後に、後方ラインで再投与するリチャレンジの可能性も広がるでしょう。現在も抗EGFR抗体薬投与中に有効性を認めたものの副作用などにより休薬し、その後に再導入するケースは多いかもしれません。しかしリチャレンジでは、一次治療で抗EGFR抗体薬がPDになった後に、後方ラインで抗EGFR抗体薬を再投与します。現在はまだリチャレンジに関する明確な指標はありませんが、後方ラインにおけるRAS遺伝子検査が可能になれば、RAS遺伝子野生型であることが確認された際に抗EGFR抗体薬を投与する判断が可能になります。なお、2020年8月1日にリキッドバイオプシーによるRAS遺伝子検査である「OncoBEAM RAS CRCキット」が保険償還されました。本検査は初回治療時1回、再治療時複数回の検査が可能であることから、今後はRAS遺伝子野生型患者における後方ラインの治療選択肢が大きく広がることになり、非常に意義があることだと考えています。

  • 1)大腸癌研究会編:大腸癌治療ガイドライン2019年版.金原出版,2019
  • 2)Arnold D, et al.: Ann Oncol. 2017; 28(8): 1713-1729
  • 3)Yoshino T, et al.: Clin Colorectal Cancer. 2017; 16(2): 158-163
  • 4)Heinemann V, et al.: Lancet Oncol. 2014; 15(10): 1065-1075
  • 5)Yoshino T, et al.: Ann Oncol. 2018; 29(1): 44-70