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タケキャブ錠 薬物動態
薬物動態
1 .血漿中濃度
(1)単回投与時(健康成人)17)18)
健康成人男子(15例)を対象に、ボノプラザン10mg又は20mgを朝食絶食下で単回投与した場合のボノプラザンの血漿中濃度推移及び薬物動態学的パラメータを以下の図表に示す。
■単回投与時のボノプラザンの血漿中濃度推移

■単回投与時のボノプラザンの薬物動態学的パラメータ

(2)反復投与時(健康成人)19)20)
健康成人男子(18例)を対象に、ボノプラザン10mg又は20mgを1日1回7日間投与したときのボノプラザンの血漿中濃度推移及び薬物動態学的パラメータを以下の図表に示す。ボノプラザンの血漿中濃度のトラフ値は、投与3日目から7日目まで一定であり、投与3日目までに定常状態に達していると考えられた。
■反復投与時のボノプラザンの血漿中濃度推移

■反復投与時のボノプラザンの薬物動態学的パラメータ

2 .食事の影響(健康成人)21)
健康成人男子(12例)を対象に、ボノプラザン20mgを単回投与したときの薬物動態に及ぼす食事の影響について、2×2クロスオーバー試験により検討した。ボノプラザンの血漿中濃度推移及び薬物動態学的パラメータを以下の図表に示す。
ボノプラザンのTmaxは、絶食下投与と比較して食後投与で延長した。ボノプラザンのAUC0-48は、絶食下投与と食後投与でそれぞれ222.1ng・h/mLおよび238.3ng・h/mLであった。Cmaxは、絶食下投与と食後投与でそれぞれ24.27ng/mLおよび26.81ng/mLであった。
■絶食下及び食後単回投与時のボノプラザンの血漿中濃度推移

■絶食下及び食後単回投与時のボノプラザンの薬物動態学的パラメータ

3.薬物間相互作用
(1)ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシン併用時の検討(健康成人)22)
H. pylori 陰性の健康成人男子(12例)を対象に、ボノプラザン20mg、アモキシシリン水和物750mg(力価)及びクラリスロマイシン400mg(力価)をそれぞれ1日2回、7日間併用投与したときの薬物動態を、各薬剤単剤投与時と比較する目的で4×4クロスオーバー試験により検討した。ボノプラザンの血漿中濃度推移及び薬物動態学的パラメータを以下の図表に示す。
3剤併用投与時のボノプラザンのAUC0-12及びCmaxはボノプラザン単剤投与と比較してそれぞれ約1.8倍及び約1.9倍増加した。
■ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤併用投与時のボノプラザンの血漿中濃度推移

■ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤併用投与時のボノプラザンの薬物動態学的パラメータ

アモキシシリン未変化体の血漿中薬物動態は、3剤併用投与時とアモキシシリン水和物単剤投与の間で違いがみられなかった。
また、クラリスロマイシン未変化体の血漿中薬物動態は、3剤併用投与時のAUC0-12及びCmaxはクラリスロマイシン単剤投与と比較してそれぞれ約1.5倍及び約1.6倍増加した。
(2)ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びメトロニダゾール併用時の検討(健康成人)22)
H. pylori 陰性の健康成人男子(12例)を対象に、ボノプラザン20mg、アモキシシリン水和物750mg(力価)及びメトロニダゾール250mgをそれぞれ1日2回、7日間併用投与したときの薬物動態を、各薬剤単剤投与時と比較する目的で4×4クロスオーバー試験により検討した。ボノプラザンの血漿中濃度推移及び薬物動態学的パラメータを以下の図表に示す。
3剤併用投与時のボノプラザンのAUC0-12及びCmaxへの影響はほとんどみられなかった。
■ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びメトロニダゾールの3剤併用投与時のボノプラザンの血漿中濃度推移

■ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びメトロニダゾールの3剤併用投与時のボノプラザンの薬物動態学的パラメータ

アモキシシリン未変化体及びメトロニダゾール未変化体の血漿中薬物動態は、3剤併用投与時とアモキシシリン水和物及びメトロニダゾール単剤投与の間で、いずれも違いがみられなかった。
(3)ボノプラザン、低用量アスピリン又はボノプラザン、非ステロイド性抗炎症薬併用時(健康成人)23)
健康成人男子(64例)を対象に、ボノプラザン40mg、低用量アスピリン※1又は非ステロイド性抗炎症薬※2を単回併用投与したとき、ボノプラザンの薬物動態に及ぼす低用量アスピリン又は非ステロイド性抗炎症薬の影響、及び低用量アスピリン又は非ステロイド性抗炎症薬の薬物動態に及ぼすボノプラザンの影響について、いずれも明らかな影響はみられなかった。
※1:低用量アスピリン:アスピリン100mg
※2:非ステロイド性抗炎症薬:ロキソプロフェンナトリウム60、180mg、ジクロフェナクナトリウム25、75mg又はメロキシカム10mg
注意 6. 用法及び用量(抜粋)
〈低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制〉
通常、成人にはボノプラザンとして1回10mgを1日1回経口投与する。
〈非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制〉
通常、成人にはボノプラザンとして1回10mgを1日1回経口投与する。
4.腎機能障害時の検討(外国人データ)24)
腎機能正常者、軽度、中等度及び高度腎機能障害患者、並びに末期腎不全(ESRD)患者(計45例)を対象にボノプラザン20mgを単回投与したとき、血漿中総ボノプラザンのAUC0-inf及びCmaxについて、軽度、中等度及び高度腎機能障害患者並びにESRD患者の腎機能正常者に対する調整済み幾何平均値の比は、AUC0-infではそれぞれ1.675、1.296、2.388及び1.260、Cmaxではそれぞれ1.326、1.218、1.802及び1.212であり、最大でそれぞれ約2.4倍及び約1.8倍増加した。
なお、血漿中非結合型ボノプラザンのAUC0-inf及びCmaxについて、軽度、中等度及び高度腎機能障害患者並びにESRD患者の腎機能正常者に対する調整済み幾何平均値の比は、AUC0-infでは1.175~2.593、Cmaxでは1.127~1.958であった。
■血漿中総ボノプラザンの薬物動態に及ぼす腎機能の影響(投与1日目のパラメータ)

[腎機能障害の程度]
腎機能正常者 | :eGFR 90mL/min/1.73m2 以上 |
軽度腎機能障害患者 | :eGFR 60~89mL/min/1.73m2 |
中等度腎機能障害患者 | :eGFR 30~59mL/min/1.73m2 |
高度腎機能障害患者 | :eGFR 15~29mL/min/1.73m2 |
ESRD患者 | :eGFR 15mL/min/1.73m2 未満 |
5.肝機能障害時の検討(外国人データ)25)
肝機能正常者、並びに軽度、中等度及び高度肝機能障害患者(計34例)を対象に、ボノプラザン20mgを単回投与したとき、血漿中総ボノプラザンのAUC0-inf及びCmaxについて、軽度、中等度及び高度肝機能障害患者の肝機能正常者に対する調整済み幾何平均値の比は、AUC0-infがそれぞれ1.204、2.384及び2.605であり、Cmaxがそれぞれ1.237、1.747及び1.758であった。
■血漿中総ボノプラザンの薬物動態に及ぼす肝機能の影響(投与1日目のパラメータ)

6.吸収・分布・代謝・排泄(外国人データ)
外国人の健康成人男性を対象としてボノプラザンフマル酸塩の吸収・分布・代謝・排泄を検討した結果(マスバランス試験)を示す。
(1)吸収26)
ボノプラザンの放射性標識体(ボノプラザンとして15mg)を経口投与したとき、放射性標識されたボノプラザンは投与後速やかに吸収され、初回の検体採取時点(全血中及び血漿中では投与0.5時間後、赤血球中では投与2時間後)においても検出された。ボノプラザンの血漿中濃度は、概ね投与後1.0時間(中央値)でCmaxに到達した。主要代謝物M-Ⅰ、M-Ⅱ、M-Ⅲ及びM-Ⅳ-Sulの血漿中濃度は、それぞれ概ね投与後1.0時間、3.5時間、1.25時間及び1.5時間(いずれも中央値)でCmaxに到達した。
(2)分布26)
ボノプラザンの放射性標識体(ボノプラザンとして15mg)を経口投与したとき、全血中、血漿中及び赤血球中の総放射能濃度から、赤血球への放射能の選択的取込みがないことが示された。
(3)代謝26)
ボノプラザンは、体内でM-Ⅰ、M-Ⅱ、M-Ⅲ、M-Ⅳ-Sul及びその他の成分に代謝される。ボノプラザンの放射性標識体(ボノプラザンとして15mg)を経口投与したとき、ボノプラザンの血漿中曝露量は血漿中総放射能の13.9%であり、主要代謝物M-Ⅰ、M-Ⅱ、M-Ⅲ、M-Ⅳ-Sul及びM-Ⅰ-Gの血漿中曝露量は血漿中総放射能のそれぞれ8.2%、6.8%、4.3%、16.9%及び19.2%であった。
なお、in vitro の検討では、主要代謝物M-Ⅰ、M-Ⅱ、M-Ⅲ及びM-Ⅳ-SulのH+,K+-ATPase阻害活性はボノプラザンの1/150以下であった。
(参考)
推定代謝経路(ラット、イヌ、in vitro)
ボノプラザンフマル酸塩は酸化的脱アミノ化によりM-Ⅰに、M-Ⅰは更にスルホンアミドの開裂によってM-Ⅱに代謝されると推定され、側鎖アミンがニトロンに酸化されることでM-Ⅲを生成すると推定された。M-Ⅰ及びM-Ⅱは、グルクロン酸抱合を受けてそれぞれM-Ⅰ-G及びM-Ⅱ-Gに代謝されると推定された。さらにボノプラザンフマル酸塩は側鎖アミンの硫酸抱合とそれに続くフェニル基の水酸化によりM-Ⅳ-Sulに代謝されると推定された。
■ボノプラザンフマル酸塩の推定代謝経路

代謝に関する酵素の分子種(in vitro)
(1)ボノプラザンは主としてCYP3A4で代謝され、一部CYP2B6、CYP2C19及びCYP2D6で代謝される。また、硫酸転移酵素SULT2A1でも代謝される27)28)。
(2)ボノプラザンは、CYP2B6、CYP2C19及びCYP3A4/5に対して時間依存的な阻害作用を示す29)。
(3)ボノプラザンは、濃度依存的なCYP1A2誘導作用をわずかに示すが、CYP2B6及びCYP3A4/5誘導作用はほとんど示さない30)。
(4)排泄26)
ボノプラザンの放射性標識体(ボノプラザンとして15mg)を経口投与したとき、投与168時間後までに、投与された放射能の98.47%が尿中及び糞便中に排泄された。このうち、67.38%が尿中へ、31.08%が糞便中へ排泄され、主な排泄経路は尿であった。また、ボノプラザン、M-Ⅰ、M-Ⅱ、M-Ⅲ、M-Ⅳ-Sul及びM-Ⅰ-Gが尿中総放射能に占める割合はそれぞれ12.0%、2.8%、0.1%、1.1%、11.4%及び20.6%であり、糞便中総放射能に占める割合はそれぞれ4.4%、1.0%、0.2%、2.4%、15.9%及び未検出であった。ボノプラザン、M-Ⅰ、M-Ⅱ、M-Ⅲ、M-Ⅳ-Sul及びM-Ⅰ-Gの消失に及ぼす尿中及び糞便中排泄の寄与は小さいことが示された。
17) | ボノプラザンの薬物動態試験成績(単回投与試験)(社内資料、承認審査時評価資料) |
18) | Sakurai Y, et al.: Clin Transl Gastroenterol. 2015;6:e94. |
19) | ボノプラザンの薬物動態試験成績②(反復投与試験)(社内資料、承認審査時評価資料) |
20) | Jenkins H, et al.: Aliment Pharmacol Ther. 2015;41(7):636-48. |
21) | ボノプラザンの薬物動態試験成績①(食事の影響検討試験)(社内資料、承認審査時評価資料)
|
22) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑫(国内第Ⅲ相試験 H. pylori 除菌3剤療法における薬物間相互作用試験)(社内資料、承認審査時評価資料) |
23) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑬(国内第Ⅱ相試験 LDA又はNSAIDとの薬物間相互作用試験)(社内資料、承認審査時評価資料) |
24) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑩(腎障害PK試験、海外)(社内資料、承認審査時評価資料) |
25) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑨(肝障害PK試験、海外)(社内資料、承認審査時評価資料) |
26) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑧(単回投与マスバランス試験、海外)(社内資料、承認審査時評価資料) |
27) | ボノプラザンの薬物動態試験成績④(CYP分子種の同定)(社内資料、承認審査時評価資料) |
28) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑤(SULT分子種の同定)(社内資料、承認審査時評価資料) |
29) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑥(CYP阻害)(社内資料、承認審査時評価資料) |
30) | ボノプラザンの薬物動態試験成績⑦(CYP誘導)(社内資料、承認審査時評価資料) |
本剤の効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む使用上の注意等は「添付文書」をご参照ください。
