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会員限定薬剤師の「今」─在宅医療編─

第13回 ピンとくる! バイタルサインを活用した「今後の薬剤師業務」

QA

安澤泰永先生写真

便利なツールと活用ポイント

チーム医療では互いに理解できる「共通言語」を使用した情報共有がスムーズな連携の第一歩。多職種との連携が求められる今後の薬剤師業務において、バイタルサインは最低限必須の共通言語です。
在宅医療の現場において、バイタルサインをとる手技「フィジカルアセスメント」と連携にあたっての情報共有の実際という観点で、ポイントや便利なツールを解説いただきます。

株式会社エーアンドエム
しなの薬局 長岡赤十字病院前店

安澤 泰永先生(管理薬剤師)

Q1:フィジカルアセスメントのポイントと便利なツールを教えてください

A私が日常的にチェックするバイタルサインは血圧、脈拍、「経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)」で、場合により聴診も行います。

本テーマの前半編の総論でも触れましたが、初心者の方が始めやすいのは血圧とSpO2の2つです。どちらもガイドラインの数値にとらわれすぎず、その患者さんにとっての「普段」と比べて変化があるか? に注目すること、そして変化があれば度合いと原因を薬剤以外の要素も踏まえて考えることが大切です。

<血圧のポイント>

手技の練習が必要になりますが、電子血圧計でなくアネロイド血圧計(※)が使いこなせるようになると、年齢、性別、疾患も含め個々人で脈拍音が違い、さらには同じ患者さんでも日によって異なることがよくわかります。
※アネロイド血圧計:アネロイドは「液体を使わない」を意味するギリシャ語で、水銀を使用せずに測定できるタイプの血圧計。正確性が水銀を使用する血圧計に比べ劣るときがあるが、コンパクトで安全性が高い。

<SpO2のポイント>

血圧にもいえることですが、在宅医療においてはあまりガイドラインの基準値が参考にならないときが多々あります。
SpO2も基準値は95%以上と言われていますが、在宅医療では呼吸器、循環器疾患の患者は少なくありません。そこで、呼吸不全の定義に当てはまる1つの目安として90%をクリティカルな指標にしてもよいでしょう。

<便利なツール>

訪問薬剤管理指導に持ち運びしている血圧計、パルスオキシメーターといったフィジカルアセスメントに使用しているツールのなかで、1つご紹介したいのは、血圧測定時に腕をのせるツールとしてのマニキュア台です。
数千円台でインターネットでも入手でき、これがあることで血圧測定時の安定感がまったく変わるのでお勧めです。

Q2:実際の情報共有に便利なツール「トレーシングレポート」について活用法と合わせ教えてください

A「トレーシングレポート」とは?

  • ・服薬情報提供書ともいう
  • ・患者やご家族から聞き取ったアドヒアランスや医薬品以外の食品やサプリに関する情報など、比較的即時性は低いものの医師にフィードバックしたほうがよい内容をFAXなどでフィードバックする
  • ・疑義照会と異なり、すでに別の患者の診察に移っている医師の手を止めずにすむなどの利点がある
<トレーシングレポートの記載内容>

私は、バイタルサインを含め、例えばこのようなことを記載しています。

患者さん、ご家族の主観的な内容
  • ・食欲不振
  • ・薬を飲む回数が多く実際はつらい
  • ・飲める時間帯や量など
  • ・好きな食べ物や嫌いな食べ物、食事の回数や内容
客観的な内容や事実
  • ・薬以外のサプリやOTC等の摂取状況
  • ・血圧や体温の1日の測定回数、測定時間、日内変動
  • ・錠剤は飲めないがOD錠なら飲めるなど剤形の情報
  • ・別の処方医から提供された情報
その他
  • ・性格や理解力、家庭背景

大切な点として、レポートには薬剤師の所見を記載することが挙げられます。
私は、処方に対する実際の服薬状況から、処方変更の必要性を提案したり、皮膚症状や食欲不振など、薬が原因と思われる症状を喚起したりするなど、次回の処方時に役立つような情報を連絡しています。
単なる情報提供だけでなく、薬剤師としての考えを併せて伝えることで初めて、トレーシングレポートは多職種連携のツールとなります。

<活用事例>

トレーシングレポートの活用によって、バイタルサインをはじめとする情報の共有と連携がスムーズになると、在宅医療の観点では、訪問薬剤管理業務が始まるきっかけになることも少なくありません。
急性期と異なり、薬局や在宅医療ではバイタルサインが差し迫った生命の危機に関する情報となることは稀ですが、トレーシングレポートをきっかけに始まった在宅業務の結果、血圧やQOLといったアウトカムが向上した例をご紹介します。

【症例】70歳代、男性。透析の可能性あり。食欲不振で悩まれている。
服薬管理者:
本人・家族(奥様)・担当ケアマネ
管理方法:
奥様から本人へ手渡し、もしくは専用カップに準備し本人が服用
調剤形態:
錠剤は粉砕して完全分包、他は分包

粉砕の錠剤は、1ヶ月の処方でも薬局に薬を取りにいらっしゃるまでの間隔が3ヶ月ほど空くため、ほとんど飲めていない様子でした。
また、処方薬は10剤近くあり、訴えにある食欲不振の原因となっている可能性がある利尿剤や降圧剤を一部、減らすか変更するなどの検討を行う必要がありました。
これらの食欲不振・服用困難の状況をトレーシングレポートで医師に提供し、薬剤師による薬剤の管理と訪問の必要性を伝えたところ、訪問薬剤管理指導が始まりました。

実際にご自宅にお伺いし、服薬状況や生活状況を医師に報告、相談し、減薬や薬剤変更が行われました。
飲みづらかった粉砕の錠剤も、薬剤変更によって飲み残しがなくなったばかりか、「おいしくて飲みやすい」とまで言っていただけるようになりました。

医薬品だけでなく、食生活に関する情報がより詳細に得られるようになったことで改善したアウトカムもありました。透析寸前でK値が異常に高値だったにもかかわらず、バナナを毎日召し上がっていることがわかり、医師にすぐ相談してスイカなど患者さん本人もお好きでK値が低い果物に変更いただいた結果、数値の改善がみられました。

こうした毎日の生活をより安心して快適に過ごしていただくための支援の中で、バイタルサインも安定するようになり、特に血圧は、訪問当初は収縮期で180mmHgありましたが、120mmHg前後で保たれるようになりました。
バイタルサインを含め、多職種との情報共有による薬剤師業務として「ピンとくる!」事例の1つになれば幸いです。