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会員限定薬剤師の「今」─在宅医療編─

第10回 在宅にみる薬剤師のコミュニケーション新時代

Interview

佐藤 一生先生写真

心安らぐ毎日の暮らしを支える力

対物業務だけでなく対人業務も薬局で必須となるなか、薬剤師が臨床でもつべきコミュニケーション力が変わりつつあります。
今後、コミュニケーション力がどう変わり、薬剤師は何を身につける必要があるか? 居宅療養支援の観点から、解説いただきます。

一般社団法人 日本在宅薬学会 評議員
北海道ファーマライズ株式会社 西いぶりエリアグループ長
ひまわり薬局 店長

佐藤 一生先生(薬剤師)

医療者としてのコミュニケーション力

治療方針や処方計画といった医療現場における意思決定は、患者さん本人、家族、医療職などさまざまな立場の方の合意形成によってなされます。
一人ひとりが良かれと思うほど考え方や思いが交錯し、意見が対立して話し合いが混乱することもあれば、一方で患者さん側が医療者に言えない不安や思いを抱え込んでしまうことも少なくありません。

「医療者として」の薬剤師に必須となるコミュニケーション力は、こうしたさまざまな意見や思いを適切に把握し、薬学的観点からの知見を伝えながらアウトカムを引き出すための手段であり能力といえます。

在宅業務により起きるコミュニケーションの変化

在宅医療の観点では、特にこれまでの薬局業務と異なるコミュニケーション力が必要だと感じます。
個人宅や施設などさまざまな「住まい」で療養生活を送られる方の支援においては、医療の範疇だけで意思決定は完結しません。目的はよりよい毎日の生活であり、医療はその目的のために存在するツールのひとつ。介護従事者や福祉関係者など、医療職以外の方とともに話し合う過程で多様な考え方が存在することが明らかとなります。
住まいの場であることを最優先するため、時には添付文書やガイドラインにはない選択肢に至ることもあります。

在宅で必要となる新しいコミュニケーション力

在宅を始めることで、新しいコミュニケーション力が必要と感じる変化が業務においてさまざまに生じました。未経験の先生方には認知されていないこともあると思いますので、一例をご説明させていただきます。

図:在宅で必要となる新しいコミュニケーション力

①患者との関係変容

在宅医療は生活の中で行われるので、患者さんの「希望」もさまざまです。
例えば、細かいことですが「ついでに回覧板を持っていって」といわれたとき。医療者としては、その方に残っている生活する力をなるべく奪わないという視点から、関係性が悪くならないように留意しながら、できることはなるべく自分でしていただくことを伝える必要があるでしょう。単なるよい人として表面上のニーズに対応するのは専門職とはいえません。

業務の変化としてはインフォームド・コンセント(IC)をとる機会が多くなったことが挙げられます。調剤報酬の点数1つにしても説明と同意は必ず必要ですし、医療業界全体として日常的なことですが、在宅を始めてからいっそう機会が増え、また内容が多様化していきました。

転帰が思わしくないという同じ1つの状況でも、良質なコミュニケーションをとり、信頼関係のもと行ったICの結果であればトラブルに発展することも少ないです。そのためにもコミュニケーション力を身につける必要性を実感しました。

②他職種との関係変容

他職種との連携面でも在宅医療を始めることによってコミュニケーションに変化が生じました。薬局内の業務だけをしているときは他職種と話す機会がなかった薬剤師も、現場で頻繁にケアマネジャーなどと接するようになりました。
まだあまりよく知らないお互いが忙しい業務の中でやりとりするなか、何が正しいのかわからないまま専門性同士がぶつかってしまったときにも、うまく対応していく必要があります。

また、例えば共有するべき情報が伝わっていないことが他職種との衝突につながることもあります。薬剤師が居宅訪問した際、処方変更の経緯がわからなくて戸惑うことがありました。一方で、残薬の調整などについて患者家族と薬剤師が交わした会話内容を医師への報告だけで済ませた結果、訪問看護師やケアマネジャーが戸惑うといったこともあります。

相手の背景を知り、コミュニケーションをとりながらうまく落としどころを見つけていく中で、解決へのコツの1つは、自らが能動的になることです。お互い理解しあう関係へ向けた第一歩を薬剤師が踏み出すこと。これは後々の関係性に大きく影響します。

*  *  *

在宅医療によるコミュニケーションの増加と多様化という薬剤師業務に生じた変化。
こうしたことより、取りも直さず患者さんと他職種とのつながりが深まり、いっそう患者アウトカムに関与できる場所にいることを私は実感しています。

一方で、患者さんや多職種との関係性の変化に気づかなかったり、気づいていてもそのままにしていると不利益を生じることがあるので、注意が必要です。

併せて、特に未経験の先生方にお伝えしたいのは、こうしたコミュニケーション力が身についたから、私が在宅業務を始めたわけでないということです。葛藤しながら進んできて、今の自分があります。やっているうち徐々に培われますので、一歩ずつ進んでいきましょう。

的確な介入ポイント

コミュニケーション力の向上によるアウトカムへの介入ポイントを最後にお伝えして後半編へ続きたいと思います。
まず薬剤師がそもそも考えなければいけない「飲めるのか」「投与できるのか」という観点。
何も大きなことではなく、例えば処方提案における剤形選択の工夫も1つです。錠剤か口腔内崩壊錠か、チュアブルか、散剤か液剤か? 単純な嚥下機能や配合変化といった問題ではありません。1日何度も投与することによって家族の負担が大きくならないようにするなど、誰の生活も追い詰めず、いかに療養の場を保ちながら患者の命をつないでいくかを実現する処方提案が必要です。
そして、医師、看護師は薬の足し算をしていきますが、引き算ができるのは薬剤師です。カスケードが起きがちな処方薬に関し、薬学的観点から知見を伝えていくこと。この重要性をお伝えして終わりたいと思います。