ログイン・会員登録

会員の方

ID・パスワードをお持ちの方は、
こちらからログインください。

パスワードをお忘れの方はこちら

認証キーの承認をされる方はこちら

2016年1月より会員IDがメールアドレスに統一されました。

会員登録されていない方

会員限定コンテンツのご利用には、会員登録が必要です。

新規会員登録

サイトマップお問合わせ

  • 新規会員登録
  • ログイン

会員限定薬剤師の「今」─在宅医療編─

第8回 ゼロから始める在宅医療

Interview

奈良 健先生写真

現場と経営の観点からの工夫

患者さんが自宅に帰られてからも見守り支える――
薬剤師が求められている、一貫したファーマシューティカルケアにおいて欠かせない在宅業務。
一方で厚生労働省の調査などから、人員・時間の不足など実施にあたっての課題も明らかになりつつあります。
横浜で47年間地域を支えてきた薬局の2代目であり、かつ現場のプレーヤーでもある奈良先生は、ひとり始めた在宅業務を拡大し、多くの仲間たちと一緒に2018年に訪問薬剤管理指導の専門薬局を開設するに至りました。
経営と現場の双方の実情をお話しいただきます。

一般社団法人 日本在宅薬学会 理事
株式会社サン薬局 在宅療養支援部長

奈良 健先生(薬剤師)

求められることと実情のギャップ

在宅医療は確かに注目を浴びていますが、求められていることと、これまで私たち薬剤師が行ってきたことには大きなギャップがあります。
「薬を渡して終わりではなく、地域包括ケアシステムのなかで役立つ存在となるよう求められている」と言われても…と考えられる先生方も多いのではないでしょうか。また、在宅業務を始めたくても、人も時間もないという声も聞きます。

薬局経営を担うことになる2代目として、また現場を走り回るプレーヤーとして、私も日々頭を悩ませています。胸を張って、うまくいっているとは言えません。

経営サイドの悩み

これまでの仕事に加えて、単純に新しく在宅を始めれば、確かに採算は悪くなることは多いと思います。
調剤報酬の点数が低いことが、その要因のひとつですが、「在宅と言っても薬を運ぶだけ」という、私自身も含めたこれまでに対する評価の結果だと思うので、甘んじて受け止めています。これからの動きが次につながっていくと思っています。

現場サイドの悩み

人と時間が足りない状況は現場で多々あります。
9時から5時までといったこれまでの仕事から、24時間対応など、在宅に携わる医療者としての業務に対峙する事になったとき起きる感覚のギャップもあるでしょうが、確かに、現状で採算が取れる人員配置をすれば、無理が生じがちです。

*  *  *

採算がとれなくても、効率が悪くても、薬剤師の本分は一貫したファーマシューティカルケアの提供。そのために在宅業務は必須です。
採算と言っても、利益追求というわけではありません。いくらよい医療を提供しても、持続できなければ元も子もないという思いです。

求められる薬剤師の在りかたは、1人だけで実現できるものではありません。どんな方の力をお借りし、工夫しているか、経営と現場の観点からお伝えしたいと思います。

1日の訪問回数をクリアするために【経営の工夫】

訪問回数と業績はリンクする面はあるとは思いますが、毎日の訪問回数にこだわりすぎて患者さんへの関わり方の質が低下しては本末転倒です。
そこで力を借りたのは…「パートナー」
効率を上げるために導入した当薬局の「パートナー制度」を紹介します。
パートナーとは一般事務とは違い薬剤師の秘書のような存在です。周辺業務をフォローしてもらうことで、薬剤師が専門職にしかできない業務に専念できるようにする試みです。

表:業務から見るパートナーの役割
モーニングカンファに参加患者さん状態と効率面で訪問計画は重要。刻々と状態は変わるので毎朝訪問順を決める
電話でその日訪問する患者さん宅に訪問アポイントメントをとる他人のご自宅にお伺いするにあたり、訪問アポは重要だが手間がかかる。これをパートナーにやってもらう
訪問先駐車している車の管理薬剤師は止めた車を気にせず患者さんに集中できる
移動中運転移動中にカルテ入力ができるので薬局に帰る必要がなくなる

定期的に薬剤師とパートナーで連携会議このほか、重い荷物を一緒に運んだり、夜間の異性独居患者宅の訪問も安心といった利点もあります。パートナーの人件費はコストアップ要因ではありますが、ある程度これによって訪問回数が増えれば賄えました。これによって薬剤師の残業も増やさず給与維持が可能になりました。

在宅業務によるアウトカムの向上【現場の工夫】

在宅医療を始めることで得られる情報は多くなり、かつ活用できる場面は格段に増えます。例えば、睡眠、食事、排泄、同居者の様子など、薬局カウンターでは得にくい情報を把握しやすくなります。
そして、これらの情報をもとに処方提案できるのは薬剤師だけです。

●実際の介入のポイント

以前の症例をご紹介します。
がん末期、40代男性の終末期緩和ケアです。
入院加療を終え、最期をご自宅で迎えるため退院。訪問先である一戸建てを見上げ、最近購入されたんだな、と、自分自身40代であり一家の主である身としてさまざまな思いを抱えながらドアを開けると、小さな子どもに迎えられました。

挨拶しながら、「この子に、服薬によってせん妄が出たり、悶え苦しんで嘔吐するような父親の姿を見せないために何でもしよう」と心に決めました。せっかく自宅に帰れたのだから、「いつも笑顔で抱きしめてくれるお父さん」のままで思い出に残ってほしいと強く思いました。

――この緩和領域に加え、排便・褥瘡・精神の4領域は患者さん・家族のつらさが大きく、その分アウトカムが向上したときのご本人や多職種も含めた周りの喜びは大変なものです。また、終末期まで口から食べられる食支援など、今後の医療に求められる役割に深く影響しています。まさに医療者としての介入ポイントと言えるでしょう。

医療において薬剤師しかできないこと

薬がなければ薬剤師は何もできない、という嘆きを聞くことがあるのですが、そうでしょうか。
「対物から対人へ」と近年よく表現される薬剤師の仕事ですが、私はモノを確実に調達し管理することがまずは一番大切だと思います。「対物だけでなく対人も」といった捉えかたです。
医療は薬をうまく使うことでよりよくなります。そして、患者さんの状態をアセスメントし、適切に処方提案し、使用量を予測して薬を届け、確実な服薬支援ができるのは薬剤師だけです。
医師が、看護師が、何より患者さんが望む、一連の医療を、モノを介して完結させるのが今後必要な薬剤師の役目だと思います。

*  *  *

調剤報酬は、現場でのアウトカムが反映されていきます。薬剤師が現場でどれだけ医療に貢献したかが「見える化」され、積みあがると報酬に反映され、結果的に経営にリターンします。
一例が残薬に関する評価です。地域の多職種で、残薬に関する啓発を目的とするさまざまな取り組みをしてきただけに、今回の評価は嬉しく思います。
こうした薬剤師業務の見える化を、全国の薬剤師の皆さんとやっていきたいと思います。