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会員限定薬剤師の「今」─在宅医療編─

第5回 臨床薬学における在宅医療

QA

手嶋 無限先生写真

現場で「在宅薬学」を実践するポイント

整備されつつある、薬学教育における在宅医療の臨床教育体制
教育システムの特徴や医療全体から見た薬学教育のポイントを
Q&A形式で解説いただきます

一般社団法人 日本在宅薬学会 副理事長
アイビー薬局取締役 副社長

手嶋 無限先生(薬剤師)

Q1:在宅医療で必要な、薬剤師としての力を身に付けるコツはありますか?

A研修を受ける際に、目的に合わせた「形式」まで選ぶと効率的です。
在宅の現場でさまざまな患者さんの課題に相対するとき、常に大切なのは「個別性への対応力」だと思っています。医療のどの分野でもそうですが、患者さんの生活に入っていく在宅では特に大切になります。
系統立ったガイドラインや、ひとつのパターンで問題解決に至ることはありません。
ただもちろん、個別性への対応に先立つ基本的な部分として、ある程度身に付けておくべき知識やスキルの必要性はあると感じています。
こうした「薬剤師としての体力づくり」をするにあたり、意識するとよいことは、学会や薬剤師会などで実施されている研修を受ける時、身に付けたい力に合わせて講義・演習・実習といった形式を選ぶことです。

STEP1 講義による「知識の習得」

反復的に学べるeラーニングを活用するとよいでしょう。

STEP2 演習による「イメージトレーニング」

個別性への対応力を身に付けるにあたり、一方通行の講義では難しい部分がありますが、双方向性のワークショップ演習を選ぶとよいでしょう。

STEP3 実習による「個別対応できる実践力づくり」

講義と演習で個別性がイメージできた後、現場に出る前に実習を受けられれば望ましいです。

講義・演習・実習といった形式の図

ただ、ステップ3の実習については、まだまだ整備が整っていないのも現状です。日本在宅薬学会でも、具体的な内容を検討し始めた段階で、在宅療養支援認定薬剤師がいる研修薬局のような施設を想定しています。1日も早く、教育体制を整えたいと思っています。

Q2:教える立場から「在宅薬学」を実践できる薬剤師を育てるコツは?

A「在宅医療の現場とはこんな感じ」がまずはイメージできると良いでしょう。
これから在宅医療を始める薬学生、薬剤師は、身に付けている知識をどう実践するのか想像しにくいと悩んでいるかたが多いです。
実際、薬学生を対象に「在宅薬学」に関連した講義をしたとき、それまでの授業だけでは想像できなかった現場での薬学の活用がイメージできるようになったとの感想がありました。医学・看護学ではこうした教育が随所に入っていますので、薬学でも積極的に伝えると良いでしょう。

「在宅医療の現場とはこんな感じ」がイメージしやすくなる具体例

① お財布事情(社会保障)
在宅医療を始めた当初、経済的な負担を理由に患者さんがケアを拒否することが少なくないことに驚きました。生活の場である在宅での療養は、患者さん自身がどう生きたいかを選択しながら過ごし、薬剤師を含む療養支援の関係者は適切なアドバイスができることが望ましいです。なかでも、在宅医療では病院医療とお金の流れが違います。
患者さんの経済負担をどのように支援できるか、社会保障制度の知識があるとイメージしやすくなります。

具体的には、メディカルソーシャルワーカー(MSW)や地域連携担当者などの話を聞く機会を作ると良いでしょう。高額療養費制度や特定疾患への医療費助成などを学ぶことで、公的支援の利用を提案するなど、解決策につなげることも可能になります。

② 地域にどんな職種がいてどう動くのか(地域包括ケアシステム)
地域包括ケアシステムのイメージができると、その中で薬剤師としてどう動くかがわかりやすくなります。
例えば、在宅医療で言語聴覚士がどんな役割を果たしているか? それぞれの職種について知ることで現場がより身近になります。

全体像については、地域包括支援センターの業務を教えると良いでしょう。
各論としては、在宅医療で注目されているリハビリと栄養について、それぞれ
リハビリ:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 など
栄養面:歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士 など
がどのような役割を果たしているかの理解を深め、生活支援の観点からこうした専門職の話を聞く機会があるとイメージしやすくなります。

Q3:実際、在宅医療はどのように始めるのでしょうか?

A①始めることを困難にしているのは何か、②薬局内での対応から始まる在宅医療という2つの観点からお伝えします。

① 始めることを困難にしているのは何か

在宅医療を始められないという薬剤師の方に話を聞くと、患者情報や病状などすべて状況が整わなければ不安なのかな、と感じる時があります。在宅医療では、全部の状況と準備が整うケースは極めて稀です。

考え終わった後に行動するのではなく、行動しながら考え、訪問してから情報収集することもあります。
処方薬の全容を把握できていなくても、残薬の有無を確認し、情報が不確かであることも多い認知症の方のお薬手帳を確認し、病院で処方内容を聞くなどして、関係する人たちが全員で情報を集め、支援体制を構築していきます。

外来調剤の業務とはギャップがありますから、心の準備がむずかしいかもしれません。また、在宅医療の依頼は突然発生することもあるので、事前の準備ができずに開始するのは心理的なプレッシャーにもなります。

こうした、心理面での要因は、日本在宅薬学会をはじめ、地域薬剤師会などでスキルやネットワーク面から支援できたらと考えています。

② 薬局内での対応から始まる在宅医療

「患者さんの住まいに行くこと」が在宅医療の始まりでも、すべてでもありません。
始め方の一つとして、実は薬局の中で、すでに在宅医療は始まっていることをお伝えします。

【例】薬局の中で接する目の前の高齢者の方
薬剤師は服薬指導の一環として情報提供し、生活改善を支援します。「介護度が悪化し、在宅療養しなければならなくなる状態を防ぐ」、このことはいずれ訪れるその方の「在宅医療」に、経時的にかかわり始めていることにほかなりません。

Q2でもお伝えしたように、経済状況は患者さんの行動選択、行動変容を左右します。病院や診療所と違って、薬局は費用をかけずに医療者に相談が可能です。必要に応じて、適切なサービスや他職種につなげることもあるでしょう。薬局内での対応から、患者さん支援の相談の輪を広げましょう。

この時、日常のケアに必要な医薬品に関わる生活上の観察ポイントや注意点などを、しっかりと他職種や本人・家族に伝えることが重要です。
副作用とその初期症状などに気を付ければ、変えられる未来があります。アンテナとネットワークを広げ、観察力と洞察力を持つことです。

Q4:在宅医療を実際に進める上で気を付けたいことは?

A実際に在宅訪問している人だけが「在宅医療をしている」ととらえないこと。
在宅医療に取り組み始める上で、薬局内連携ができていなければ難しい局面が多くあります。在宅医療では、訪問する薬剤師のほかに、薬局内での薬剤師と事務スタッフが連動して後方支援にあたっているのが現状です。イレギュラーな状況が発生することもありますし、在宅訪問に行く間、薬局を留守にすることでスタッフの負担も増えます。
よりよい連携と支え合いが必要となります。

工夫の一つとして、事務スタッフに在宅訪問へ同行してもらうことは良いと思います。
在宅訪問に同行してもらい、薬剤師が患者さんの状態確認や薬物治療の評価に注力できるよう、事務スタッフにもできるお薬手帳のセットなどを薬剤師と連携して関わっていくことで、在宅療養の質が上がります。
実際に以前は連携しようとしても、現場を知らない事務スタッフとの理解が深まらなかった部分がありましたが、お互いの意思疎通が急速に進んだことを私も経験しています。

現在は、薬局内でかなり細かい指示を出せるようになりました。
例えば、PTP包装をそのまま渡して飲める患者さんでも、薬剤情報提供書の中に写真が2錠載っていると、用法・用量が1錠でも、視覚的な判断から2錠飲んでしまうことがあります。
薬袋の表示も含め患者さんに提供する情報の個別最適化は重要です。事務スタッフが現場経験を通じてその意味を理解することで、薬局内での日常業務にも行動変容が起きました。
この好循環を大切にしたいと思っています。

図 薬剤情報提供書での表示の徹底(例)

薬剤情報提供書での表示の徹底(例)