病院薬剤師をとりまく環境の変化
Q.本企画第1回(2014年11月掲載)では、医療経済的視点から見た病院薬剤師業務の付加価値についてお話を伺いました。その後4年間が経過しましたが、病院薬剤師をとりまく環境は当時と比べてどのように変化してきましたか。
ファーマシューティカルケアの
薬剤経済学的研究に関する検討(最終報告)
一般社団法人日本病院薬剤師会 平成21年度学術委員会学術第5小委員会報告
https://www.jshp.or.jp/gakujyutu/houkoku/h22gaku5.pdf(2019年1月17日現在)
学術第5小委員会「ファーマシューティカルケアの薬剤経済学的研究に関する検討」は、日本におけるファーマシューティカルケアの現状とその薬剤経済学的な効果を行うことを目的として2007年度に開始された。本稿は、第20回日本医療薬学会年会のシンポジウム(2010年開催)にて発表された当委員会の最終報告である。薬剤師業務や臨床薬学的介入の有用性を可視化する意義と課題について、委員会メンバーがそれぞれに考察する。(文献より抜粋)
今後の展望
Q.薬剤師の果たすべき役割の根幹は変わっていないけれど、社会の変化によって、薬剤師が貢献できる範囲が広がり、期待される専門性も変わってきたということですね。これからの薬剤師に期待されるスキルや専門性にはどのようなものがあるでしょうか。
Q.フォーミュラリーに関して、薬剤師はどのように貢献していけるのでしょうか。
フォーミュラリーの考え方とその必要性 :
新薬およびジェネリック・バイオシミラーの適正使用を推進するために
青野 浩直 , 八木 達也 , 見野 靖晃 , 川上 純一
日本病院薬剤師会雑誌 54(9), 1113-1116, 2018-09
フォーミュラリーの概念と意義について検討した総説。フォーミュラリ-とは、わかりやすく言えば、「医師が多くの患者に処方する『手持ちの医薬品』を、診療科単位、病院単位へと発展させたもの」で、薬物療法を標準化でき、医療効果、経済効果をもたらすメリットがある。今後、医療資源を効果的に配分していくために、高度な医療を必要とする症例には高額薬剤を使用する一方で、降圧薬をはじめ生活習慣病治療薬においては、フォーミュラリ―を使用して標準的で経済的な治療を行うことが求められる。(文献より抜粋)
Q.高額医薬品についてもフォーミュラリーについても、常に勉強して最新の知識を得ていく、まさしく「生涯教育」が必要になるということですね。薬剤師の教育についてはどのようなことがポイントとなっていくでしょうか。
薬剤師による病院経営への貢献
(特集 チーム医療における病院薬剤師の役割)
川上純一 病院 73(10), 774-778, 2014-10
病院薬剤師と診療報酬や病院管理・経営との関係についての概説。近年では、病棟、外来、集中治療部など、様々な部門において薬剤師へのニーズが高まっている。一方で、薬剤師職能や薬事関連法規への理解不足から、薬剤師でなくても実施できる業務を薬剤師に担当させ、経営的に非効率な人員運用をしている病院もある。著者は、病院薬剤師の経済効果について言及し、「各病院においては優秀な薬学人を確保できるような魅力なる病院づくりや運営を行っていただきたいと願う」と結んでいる。(文献より抜粋)
Q.薬剤師自身も、病院も、社会のニーズに対応して自らをアップデートしていくことが必要ということですね。
ファーマシューティカルケアにおける機会と責任【再掲】
Opportunities and responsibilities in pharmaceutical care.
Hepler, C. D., & Strand, L. M. (1990) Am J Hosp Pharm, 47(3),533 –543.
ファーマシューティカルケアの概念を世界で初めてヘプラーが提示した論文。薬剤師は調剤等の内向きな役割にとどまらず、社会善に対する貢献こそがその本分であると、当論文を通し喝破している。90年当時、米国では、投薬エラーに起因した副作用により、12,000人の死者、15,000件の入院が毎年報告されており、その社会的課題を背景に、薬物治療の安全に責任を持つ事こそ薬剤師の本分であるとした。(文献より抜粋)
医療機関が薬局と連携して取り組む薬物治療管理の評価 :
文書合意に基づく院外処方せんを介した
薬物治療管理プロトコールの実践掲載誌
平井 利幸, 西野 理恵子, 渡邉 文之, 藤貫 晴奈, 佐藤 和人, 篠原 久仁子, 亀井 美和子, 関 利一
日本病院薬剤師会雑誌53(11):2017.11 1355-1362
本連載第11回でご登場いただき、ICT活用による効果的な地域連携についてお話いただいたひたちなか総合病院薬局長 関利一先生らの最新論文。
著者らの施設では、2014年1月より、規格変更や一包化、残薬調整など問い合わせに関する7項目について、報告不要や事後報告を可とした薬物治療管理プロトコールを構築し、保険薬局76店舗と開始した。今回プロトコール開始前の1ヵ月間と開始後の6ヵ月の問い合わせ内容の変化を調査した。その結果、プロトコール導入により、保険薬局の業務時間は1カ月あたり19.2時間短縮していた。項目別にみると、残薬調整以外の項目についてはプロトコール使用率が高く、薬局薬剤師へのアンケート調査でも高い評価が得られた。残薬調整については、残薬調整の使用に制限を設けたことが影響していると推察され、修正が必要と思われるが、それ以外の項目については、保険薬局化の業務効率可に貢献できると考えられる。(文献より抜粋)
クリニカルラダーを用いた
病院薬剤師の個人能力の評価と育成計画への応用
新井 亘, 土屋 裕伴, 田坂 竜太, 小林 理栄, 増田 裕一
日本病院薬剤師会雑誌 53(10号):2017.10, p.1231-1239
本連載第13回でご登場いただき、人材育成への取り組みについてお話いただいた上尾中央医科グループ薬剤部部長 増田裕一先生らの最新論文。
著者らの施設では、薬剤師の人材育成と能力評価、人材の効果的な活用のためにクリニカルラダーを導入している。今回は、ジェネラル薬剤師育成を目的としたジェネラルラダーを新たに作成した。効率的なラダー運用のため、ラダーの項目と連動した個人目標を病院薬剤師の個人能力の評価と育成計画へ利用した。今回評価対象とした42名のレベルごとの到達者数は、レベル1は42名(全員)、レベル2は27名、レベル3は7名であった。ラダーレベルは1年間で有意に上昇していた。ジェネラルラダーの導入により、薬剤師としての到達目標が具体的に示され、個人の能力の向上および業務の標準化に繋がると考えられる。(文献より抜粋)
Last Update:2019年2月