ログイン・会員登録

会員の方

ID・パスワードをお持ちの方は、
こちらからログインください。

パスワードをお忘れの方はこちら

認証キーの承認をされる方はこちら

2016年1月より会員IDがメールアドレスに統一されました。

会員登録されていない方

会員限定コンテンツのご利用には、会員登録が必要です。

新規会員登録

サイトマップお問合わせ

  • 新規会員登録
  • ログイン

会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第20回 多職種チームにより高齢者のポリファーマシーを解消- 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 薬剤部の取り組み -

経済学から見る病院薬剤師業務第20回は、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 薬剤部 溝神文博先生にご登場いただき、国立長寿医療研究センターにて実施しておられるポリファーマシー削減チーム(現在は薬物療法適正化チームに改称)のお取り組みと、今後の展望についてお話しいただきました。

Interview

ポリファーマシーとは単なる減薬ではなく、薬物療法を適正化すること

Q.まず、国立長寿医療研究センターで考えておられる「ポリファーマシー対策」の概念についてお聞かせください。

溝神先生:以前は、欧米の論文では5剤以上を、日本では6剤以上をポリファーマシー(Polypharmacy)と定義されていました。そのため、ポリファーマシー対策というと、ともすれば「処方されている薬剤の数を減らす」ことばかりに焦点があてられがちですが、数に注目するのは本質的ではないと考えています。例えば、薬の数を減らして2剤、3剤にしたとしても、飲み合わせが悪くて有害事象が発現したり、あるいは処方を適切に変更したとしても患者さんがしっかり服用できていなければ、薬物療法が適正化されているとはいえません。多剤併用の問題点が周知されてきたのは良いことですけれども、ポリファーマシーについて考える時には「多剤」という枠を超え、「有害事象、アドヒアランス不良、不要な処方、あるいは必要な薬が処方されない、過量・重複投与など薬剤のあらゆる不適正問題を含む概念」へと発展させていく必要があるでしょう。私たちの目指すポリファーマシー対策とは、端的に言うならば、薬物療法を適正化し、有効性と安全性を担保することです。

【注】2018年5月30日に厚生労働省より発出された「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11125000-Iyakushokuhinkyoku-Anzentaisakuka/0000209385.pdfの中でもポリファーマシーの概念について詳細に言及されている。

Q.2016年9月に、多職種によるポリファーマシー削減チームを立ち上げられましたが、その経緯と具体的な活動内容について教えてください。

2016年にポリファーマシー削減チームを
立ち上げた国立長寿医療研究センター(外観)

神村先生:高齢の患者さんの薬物療法は大変複雑です。病態や併存疾患はもちろんですが、服薬管理の際に問題となりうる認知機能、視力や聴力、嚥下機能から、家庭や介護者の有無といった生活環境などまで、実に多面的な情報が必要になります。こうした情報を収集するには多職種チームで取り組むのが有効であると考え、まずは高齢者総合診療科の医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士からなるチームで活動を開始しました。2017年の5月からは循環器科の先生にもチームに加わっていただき、より専門的で濃密な議論ができるようになってきています。

 具体的な活動の流れとしては、まず、ポリファーマシー状態でリスクの高い患者さんをピックアップし、患者さんの合意を得たうえで、それぞれの職種が日々の業務の中で患者さんの情報を収集します(図1)。
 週に1度、カンファレンスでその情報を集約して処方医への意見をまとめ、チームからの処方提案という形で処方医に伝えます。ただし、チームで行うのはあくまで提案という位置づけで、最終的な判断は処方医に委ねます。

高齢者の薬物療法では個別化した対応が求められる

溝神先生:高齢者の薬物療法の難しさとして、エビデンスが乏しく、個別に対応する必要があるということがあります。例えば、高血圧の患者さんの場合、比較的健常な方であれば、降圧治療により生命予後の改善効果や心血管疾患発症に対する予防効果が期待できますが、要介護の患者さんの場合、降圧治療により併存疾患が悪化するリスクや、過降圧により認知機能が悪化する、あるいは転倒や骨折に至る可能性も検討しなくてはなりません。そのほか、生活や服薬サポートをしてくれる人がいるかどうかという環境面の問題、さらには、患者さんご本人やご家族の希望によっても、選択すべき治療が変わってきますから、検査値やバイタルだけで判断するのではなく、患者さんを包括的にみて、エンドオブライフを見据えた治療方針をたてる必要があります。だからこそ、多職種が連携して情報を収集することが必要なのです。

Q.処方を見直す際のポイントはどのようなところにありますか。

溝神先生:まずは、処方意図を確認することです。複数の医療機関を経て当センターにいらした患者さんの場合、何らかの理由があって処方された薬剤が、転院された際に必要性を検討されないまま処方され続け、現在に至っているというケースは珍しくありません。そして、そうした薬剤が有害事象の原因になっている可能性は少なくないものです。ですから、ひとつひとつの薬剤について、処方意図をはっきりさせることがポリファーマシー対策のひとつのポイントではないかと思います。カルテや診療情報提供書に処方意図の記載がない場合には、以前に通院されていた病院に問い合わせて確認します。
 もうひとつは、薬物有害事象の発現を見過ごさないことです。ここでいう有害事象というのは「薬剤起因性老年症候群」と呼ばれるもので、ふらつき・転倒、記憶障害、抑うつ、食欲低下など、医療や介護・看護を要する高齢者に頻度の高い症状です。「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」※1には薬剤起因性老年症候群とその原因薬剤のリストが掲載されているので、患者さんに疑わしい症状があって、原因薬剤が処方されているならば、中止や減量の可能性を検討します。

Q.処方医の先生の反応はいかがですか。

溝神先生:処方提案の採択率は6割強といったところですが、実は、チームの活動を開始してから、私たちが介入する以前に先生方が自ら処方を見直し、不要な薬剤を減らすケースが増えてきたことがわかりました(図2)。専門チームの存在がなくともポリファーマシーを回避できる、理想的な状態に一歩近づいているというのは、大変嬉しいことです。
 また、活動開始当初は、こちらから患者さんをピックアップしてご提案させていただく形でしたが、処方医の先生方の方から、この患者さんにアプローチしたいというお声をいただくことも増えてきました。ポリファーマシー対策は患者さんのメリットにつながるという意識が院内に浸透しつつあるように感じています。

患者さんの服薬環境を整えるのは薬剤師の役割

Q.ポリファーマシー対策における薬剤師の役割はどのようなところにありますか。

溝神先生:患者さんの服薬環境をアセスメントし、必要に応じて介入すること、そのために、患者さんとご家族の話を聞き、情報を引き出すことです。当センターでは火曜日の朝にカンファレンスを実施していますが、薬剤師は月曜の午後、3~4時間かけて情報収集します。雑談を交えながら患者さんの全身状態を見て、薬が本当に飲めているかをチェックし、困っていることはないか、あるとしたら、その原因は何かを探っていきます。
 例えば、不眠を訴える入院患者さんの話を聞いてみると、実は、ご自宅にいらした時と生活リズムが変わって就寝時間が早くなり、早朝に目覚めてしまうようになっていたことがありました。このケースでは、元のリズムに戻すことで、睡眠剤が不要になりました。このように、特に対症療法的に使われる睡眠剤や鎮痛剤などについては、患者さんから話を聞き、真の原因を探っていけば、非薬物療法で対処できる部分はかなりあります。
 もうひとつ、薬剤についての情報を患者さんにしっかりとお伝えすることも必要です。医療従事者の視点からは適切だと思って減薬していても、患者さんのなかには、薬が減らされることに不安を感じていて、実は退院してから他の病院で処方を受けていたという方もいます。それでは本質的なポリファーマシー対策にはなりません。そのようなことがないよう、減薬するならばその理由をしっかり説明すること。患者さんが減薬に対して不安をもっていらっしゃるのであれば、それを解消する支援をすることも薬剤師の仕事です。

Q.そうした役割は、病院薬剤師のみならず、薬局薬剤師にも大いに期待されるところではないかと思います。先月の第2回日本老年薬学会学術大会にて、国立長寿医療研究センター-で実施された意識調査の結果、実際に減薬アプローチを行っている薬局薬剤師は7.2%であったとの報告がされています※2。なかなか実施に至らない背景にはどのような原因が考えられますか。また、こうした状況を改善していくためには、どのようなことが必要でしょうか。

溝神先生:薬局薬剤師さんの中には、薬物療法の適正化に貢献したいという気持ちはあっても、実際に処方提案をするとなると、どのようにしたらよいのかわからないという方も多いのかもしれません。当センターでは、そうした薬剤師さんに最初の一歩を踏み出していただくための試みとして、服用薬剤調整支援料の支援を行っていこうと思っています。処方提案文書のフォーマットをホームページで公開し、近隣の薬局薬剤師さんにそのフォーマットを使って文書を作成していただき、当センターに送っていただけば、私がチェックし、処方医に提案させていただきます。そうして経験を積み、自信をもって処方提案できる薬剤師さんが増えていけば、医療の向上につながるのではないかと考えています。
 もうひとつのアプローチとして、薬剤師さんだけでなく、さまざまな職種の方、そして医療を受ける立場にある患者さんやご家族に、ポリファーマシーに対する問題意識をもっていただくことも重要ではないかと考えています。当センターでは、2018年10月には、高齢者のポリファーマシー問題をテーマにした市民公開講座を、11月には地域連携多職種研修会「みんなで考えようポリファーマシー ~職種と地域の連携~」を開催する予定です。高齢化が進む中、薬と正しく付き合うことの重要性は誰にとってもますます身近な問題となってきていますので、社会全体で理解を深め、積極的に取り組んでいくことが必要だと考えています。

ポリファーマシーの処方見直しツール
:薬効分類のマッピングアプローチ

Clinical medication review tool for polypharmacy: Mapping approach for pharmacotherapeutic classifications.
Mizokami F et al.
Geriatr Gerontol Int. 2017 Nov;17(11):2025-2033
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28371121

不適切な可能性のある処方を検出するための処方見直しツールを新たに開発し、その有効性を検討した結果の報告。著者らが開発したMAP法では患者の服用薬のATCコード(薬効分類番号)を高齢者に多い慢性疾患のATCコードとマッチングさせ、患者の罹患している疾患に適した処方がされているかどうかをスクリーニングする。65歳以上で多剤併用(5剤以上)の日本人患者5667例について、MAP法によるPIMのスクリーニング結果をBeer criteria 2012と比較したところ、MAP法では全体の73.2%でPIMが検出されたのに対し、Beers criteriaによりPIMが検出されたのは全体の43.8%であった。
 MAP法で検出されたPIM平均値は3.1 ± 2.6剤であり、Beers criteria 2012により検出されたPIM平均値0.6 ± 0.8剤に比べて有意に増加していた。著者らは、特定の薬剤を除外するのではなく、慢性疾患を考慮して薬剤の不適切な使用を検出していくことが必要であるとの見解を述べている。(文献より抜粋)

薬剤師を加えた多職種チームの
有効性を検討したランダム化比較研究

Handling drug-related problems in rehabilitation patients: a randomized study.
Willoch K, et al.
Int J Clin Pharm. 2012 Apr;34(2):382-8
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22388601

オスロ(ノルウェー)の総合病院のリハビリテーション病棟において、薬剤師を加えた多職種チームによる介入がDRPおよび退院後の適切な薬剤使用に与える影響を検討したランダム化比較研究の結果。リハビリテーション病棟入院患者77例を、通常の多職種チームに薬剤師を加えた介入群と標準ケア(薬剤師なしの多職種チーム)群にランダムに割り付けた。介入群においては、薬剤師が患者の診療記録とヒアリングを通して服薬管理を行い、特定したDRPと適正化案を多職種チームミーティングにて提案した。さらに、退院時には、退院後の薬剤使用についてのカウンセリングも実施した。入院時、退院時、退院後3カ月時点でのひとりあたりのDRP数を評価したところ、介入群において、入院中および退院後のDRPの有意な減少が認められた。(文献より抜粋)

※1「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11125000-Iyakushokuhinkyoku-Anzentaisakuka/0000209385.pdf
※2 第2回日本老年薬学会学術大会 2018年 抄録集 P93 OS2-1

Last Update:2018年10月