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会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第19回 ワンステップ上の疑義照会を目指す地域的取り組み

経済学から見る病院薬剤師業務第19回は、福岡大学病院 薬剤部 神村英利先生にご登場いただき、疑義照会の現状と課題、薬剤師に求められるスキルについて、福岡大学のお取り組みを交えてお話しいただきました。

Interview

薬局薬剤師による疑義照会が医療安全の向上と医療費の削減に大きく貢献

Q.先生が実施された調査研究1)で、薬局薬剤師の薬学的判断による疑義照会は処方適正化のみならず医療経済的な側面においても大きな効果をもたらすことが示されました。このことは薬剤師の医療における貢献度が高まっている現状とその意義の大きさを表しているかと思います。その背景にどのような要因があるとお考えでしょうか。

神村先生:まず、2010年に発出された「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進」についての医政局長通知(http://www.jvnf.or.jp/1004301.pdf)の中で、薬剤師が実施することができる業務の具体例が示されたことです。この通知を契機に、病棟、在宅、薬局窓口で、副作用モニタリングのためのフィジカルアセスメントが行なわれるようになり、また、医師と薬剤師が協働して作成したプロトコールに基づく薬物治療管理が実施されるようになりました。こうしたことを背景に、薬剤師が参画できる場が格段に広がりました。

1)保険薬局による疑義照会を
処方適正化効果と医療経済の両面から検討

保険薬局における薬学的判断に基づく疑義照会の経済効果
神村 英利 他 ;
薬理と治療, 2017, Volume 45, Issue 5, 723-727
http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/45050/723

保険薬局の薬学的疑義照会には薬剤費削減効果があることは知られているが,患者の訴えや処方日数に基づく疑義が多く,薬学的判断に基づく疑義照会の成果については十分に検証されていない。そこで,福岡大学病院の近隣薬局(以下,薬局)における薬学的判断に基づく疑義照会が処方および医療費に及ぼす影響を検討した。
2016 年9 月~11 月に薬局が応需した処方せんは29,487 枚,薬学的疑義照会は1165 件,薬学的判断による疑義照会は269 件であった。薬学的判断に基づく疑義照会により,用法用量が適正化され,重複投与や禁忌薬投与が回避され,約91 万円の薬剤費が削減された。また,副作用が未然に防止された事例が120 件あり,医療費削減額は約719.6 万円であった。これらの金額と全国処方せん枚数から,薬学的判断の医療経済効果は約2200 億円と試算され,国民医療費の約0.5%に相当することが判明した。以上のことから,薬学的判断による疑義照会は処方適正化効果のみならず,医療経済効果も高いと考えられる。(文献より抜粋)

 また、その頃から、検査値が印字された処方せんを発行する医療機関が増え始め、薬局においても検査値に基づく処方監査ができるようになりました。患者さんの検査値をふまえて処方監査をするというのは、病院薬剤師にとっては病棟で仕事を始めた頃から当たり前の業務でしたが、薬局薬剤師にとっては実施したくてもできないことでしたので、この影響は大きいものでした。当院も、2017年4月に検査値付き処方箋の発行を開始しました。これに先立ち、近隣薬局の薬剤師を対象に、検査値に基づく疑義照会に関する研修会を定期的に開催したところ、毎回100名ほどの方が熱心に参加してくださいました。
 さらに、6年制薬学教育を受けた薬剤師が増えてきたことも、薬局薬剤師の意識変化に影響しているようです。6年制のカリキュラムでは、病院と薬局でそれぞれ11週間、合計22週間の実務実習を受け、病院実習ではチーム医療の考え方や意義を深く学びます。こうした経験を積んだ薬剤師は薬局においても「病院や他の医療スタッフと連携していく」という認識で業務を行っており、このような認識が薬局薬剤師全体にも波及しているようです。
 最後に、地域包括ケアシステムが構築されていくなかで、在宅医療における薬剤管理の重要性がクローズアップされてきたことも大きな要因です。病院では看護師が薬剤の管理をしてくれますが、在宅で、服薬管理からポリファーマシー対策までを患者さんやご家族が行うことは困難です。そこで大きな役割を担うのが薬局薬剤師です。実際に、薬局薬剤師が地域に住まわれている患者さんの服薬を積極的に支援できるようにするための「患者のための薬局ビジョン」推進事業が各地で展開されています。福岡県でも関係機関・県民への啓発活動のほか、福岡県薬剤師会と福岡県病院薬剤師会の協働事業として、「ワンステップ上の疑義照会を目指す」ための検査値に基づく疑義照会研修等を実施しています。

薬剤師が職能を積極的に発揮するためには、薬剤師の本分に特化した疑義照会をすること

Q.薬剤師が職能を発揮するためには、「ワンステップ上の疑義照会」を実践できるようにしていくとうことですね。まず、「ワンステップ上の疑義照会」の定義について教えていただけますか。

神村先生:「医師が診察で聞き取れなかった患者情報を基に処方提案する疑義照会」のことであると私は考えています。医師が薬剤師に求めているのは、自身の診察では収集できなかった情報です。例えば、他の診療科から処方されている薬や患者さんの服薬状況といった、薬剤師だからこそ知りえた情報を基に処方提案するということが薬剤師の本分です。これは、薬局薬剤師に限らず、病院薬剤師にも言えることです。

Q.医師のパートナーとして、チームで薬物療法を行うということですね。

神村先生:医師は「病気を治そう」という発想で処方し、また他の医師が処方した薬は中止しにくいので、どんどん薬が増えていきます。そこを適正化するのが薬剤師の責務です。患者さんに新しい症状が現れた時、医師は「新たな病気に罹患したので、治療しよう(薬を追加しよう)」と処方を足し算で考えますが、薬剤師は「副作用ではないだろうか、減らせる薬はないだろうか」と引き算で考えます。このため、医師と薬剤師が連携することで、効果と副作用のバランスのとれた薬物療法が実現するわけです。

Q.ワンステップ上の疑義照会を実践するために、薬剤師にはどのようなスキルが必要でしょうか。

神村先生:大切なスキルが4点あります。
 まず、薬の一般名を知っていること。これは、配合剤と単剤、先発医薬品と後発医薬品の重複投与を避けるために必須の知識です。
 2点目は、薬の製剤学的特性と薬物動態を知っていることです。これが理解できていると、例えば、飲み忘れが多いので服薬回数を減らしたいという患者さんのニーズに対して、長時間作用型薬剤、徐放性薬剤、注射剤、貼付剤などを選択するという提案ができます。効くというエビデンスがあっても、薬が飲めなくては意味がありませんから、飲める方法や飲まなくていい方法(注射や貼り薬で投与)を提案するということです。これは薬剤師だからこそできる提案です。
 3点目は、検査値から処方の妥当性を判断できること。腎機能、肝機能をはじめ、検査値によって用量を設定してある薬剤がありますし、副作用が発生すると変動する検査値がありますから、検査値の読み方を勉強しておくことが必要です。
 最後に、患者さんの薬学的問題を医師に伝えるコミュニケーション技術、これが大切です。
実は、疑義照会については、医師と薬剤師の意識には大きなギャップがあることがわかっています。私たち薬剤師は、薬学部で疑義照会について教育されていますが、医師法には疑義照会に関する規定がありませんから、これを教える医学部は皆無といわれています。そのため、薬剤師法第24条において、薬剤師は処方せん中に疑わしい点があるときは、処方医に問い合わせて疑義を確かめた後でなければ調剤してはならないと規定されていることはおろか、疑義照会という言葉自体、知らない医師が多いのです。このことをふまえつつ、自ら考えうる最善の処方をしている医師の気持ちを尊重した疑義照会を行うことがとても重要だと言えます。

2)腎障害患者に対する地域薬局薬剤師の
介入効果を検討した報告

Community pharmacist intervention in patients with renal impairment.
Pourrat X, et al.
Int J Clin Pharm. 2015 Dec;37(6):1172-1179
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26385098

フランスの地域薬局24件を対象とし、腎障害(あるいはそのリスク)のある患者のDRP特定において、トレーニングを受けた薬剤師の介入による効果を評価するプロスペクティブ観察研究の報告。薬剤師は、専門のトレーニングを受けた後、65歳以上で2種類以上の糖尿病/高血圧薬を処方されている患者について、血清クレアチニン値を検討し、算出したeGFRによりCKDであるかどうかを判断した。
腎障害に関するDRPは全体の21%に発生しており、その40%が地域薬局薬剤師により特定され、処方医に連絡された。そのうち33%が処方変更となり解決した。地域薬局薬剤師の介入により腎障害に関するDRPが減少する可能性が示唆される結果となった。(文献より抜粋)

医師と薬局薬剤師が顔の見える関係を築くために

Q.地域全体でワンステップ上の疑義照会を目指していくにあたり、病院薬剤師に期待される役割とはどのようなところにありますか。

神村先生:医師と薬局薬剤師の橋渡し役になることではないでしょうか。ただし、それは、病院薬剤師が薬局薬剤師の疑義照会を医師に伝言するということではなく、医師と薬局薬剤師が顔の見える関係を築くためのお手伝いをするということです。
 薬局薬剤師の疑義照会が増えてきたとはいえ、薬局薬剤師が医師に直接疑義照会をすることが難しい場合は多々あるかと思います。薬局薬剤師にとって、まったく面識のない医師に対して疑義照会をするというのはなかなかハードルが高いものですし、また、医師の方でも、顔が見えない薬局薬剤師から問い合わせを受ければ、戸惑うこともあるかもしれません。ここをどうクリアするかが、今後、疑義照会をさらに推進にして、薬物療法の安全性を担保するうえでのひとつのカギになるでしょう。それをコーディネートするのは病院薬剤師の役割です。

3)疑義照会の内容から
薬局薬剤師に必要な能力を検証した報告

疑義照会の内容からみる薬の専門家としての薬局薬剤師の責務
山本 晃之 他
医薬品情報学, 2016, 18巻4号295-300
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdi/18/4/18_295/_article/-char/ja/

著者らの勤務する薬局(神女薬局 山口県周南市)における疑義照会の内容を詳細に検討した結果の報告。平成28年4月1日から7月26日までの4か月間において、処方せん受付け回数は15,872回、疑義照会を行ったのは239回(1.51%)であり、うち225回(94.14%)が処方変更となった。処方変更となった225回のうち、薬学的疑義照会は83回(36.9%)であった。
さらに、薬学的判断に複数の能力や知識が必要であった疑義照会事例6例について具体的に検討したところ、薬学的判断においては医薬品情報といった知識のほかに、例えば、患者との対話のなかで授乳中であるかどうかを確認する、既往歴を確認するなど、患者や医療機関とのコミュニケーション能力が求められることが明らかになった。(文献より抜粋)

 例えば、当院の薬剤部では3年ほど前から、近隣薬局の薬剤師と当院の医師を交えて、薬薬連携の研修会を年に3~4回のペースで開催しています。当院の医師もしくは薬剤師による基調講演と、そのテーマに関するグループワークという二部構成で、グループワークでは、当院の薬剤師と近隣薬局の薬剤師、そして基調講演を担当した医師も加わって、顔を突き合わせてのディスカッションを行います。お互いに言葉を交わし、自然と顔見知りになれるこうした取り組みは、薬局薬剤師が医師に直接疑義照会を行える関係づくりにつながっていくでしょう。地道ですが、地域全体で疑義照会を推進していくため、腰を据えて、じっくりと取り組んでいくことが大切だと考えています。

4)地域薬局の薬剤師に対する
トレーニング効果を検証した報告

Community Pharmacist Training-and-Communication Network and Drug-Related Problems in Patients With CKD: A Multicenter, Cluster-Randomized, Controlled Trial.
Lalonde L et al ;
Am J Kidney Dis. 2017 Sep; 70(3):386-396.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28663062

カナダ ケベック州において地域薬局の薬剤師に対するトレーニング効果を検討した多施設共同クラスターランダム化試験の結果報告の報告。地域薬局207件を受診しているCKD患者442例を対象として、トレーニングを受けた薬剤師が対応する群(トレーニング群)とトレーニングを受けていない薬剤師が対応する対照群にランダムに割り付けた。
トレーニング受講後1年時点の調査で、トレーニング群において発生した薬剤関連の問題(Drug-related problems: DRP)平均値は患者一人あたり2.16から1.60に減少、対照群においては1.70から1.62へ減少していた。両群間の減少差は-0.32 (95% CI, -0.63 ~ -0.01)であり、トレーニング群では対照群に比べてDRPが減少している傾向が示された。トレーニングを受けた群では、知識および臨床能力についても対照群に比べて向上が認められた。(文献より抜粋)

Last Update:2018年9月