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会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第17回 在宅医療を支える病院薬剤師の役割

薬局薬剤師を研修生として受け入れ、在宅医療に必要な知識・手技の教育を提供する「在宅医療薬剤師レジデント制度」を設立し、大学病院として保険薬局の在宅医療支援を行っている秋田大学医学部附属病院 薬剤部長 三浦昌朋先生にご登場いただレジデント制度の成果や今後の展望についてお話いただきました。

Interview

地域のニーズと多方面からの支援によって始まった
「在宅医療薬剤師レジデント制度」

Q.レジデント制度設立の背景についてお聞かせください。

三浦先生:秋田県は広大かつ高齢化が非常に進んだ土地である故、薬剤師が在宅医療に介入しなければならない状況に直面していました。我々はそれに対応するため、大学病院として在宅医療に対応できる薬剤師を育てる必要性を感じていました。このように近未来を見据えて早期に取り組まなければならない課題として、そして教育機関の使命として、レジデント制度の創設を考えていたのです。
 このような時に薬局と病院、両方の立場の薬剤師の先生から、制度設立の後押しとなる意見を聞くことができました。
 在宅患者さんを支える薬局薬剤師の先生は、薬局の薬剤師が在宅医療に十分に対応可能な臨床スキルを得るためには、ある程度長期の研修を受ける必要があるのではないかと私の所へ相談に来てくれたのです。

さらに病院薬剤師側のお立場である名古屋大学医学部附属病院薬剤部部長の山田清文先生と、千葉大学医学部附属病院薬剤部部長の石井伊都子先生からは、両先生を講演の演者としてお招きした際にレジデント制度の重要性について言及されており、在宅医療に参画できる薬剤師を長期の研修によって育成するという構想を支持していただいたのです。
 運営にあたっては、当大学大学院医学系研究科医学教育学講座教授の長谷川仁志先生をはじめとする各診療科の先生方に、レジデント生の育成にご協力いただけることとなりました。
このように地域のニーズに応えようとする病院内外の先生方のご支援の下で、レジデント制度は順調にスタートを切ることができました。

Q.研修の内容について教えてください。

三浦先生:在宅医療に欠かせないのは主として高カロリー輸液の調製です。どんな種類にも対応できるよう午前中は毎日ミキシングの研修があります。あらゆる種類の輸液を扱うことで、配合変化をはじめいろいろなことを学べます。
 一方午後は完全にフリーとなっていますが、在宅の患者さんが多い消化器内科を中心に学んでもらっています。その中で検査値、痛み、認知機能(MMSE:Mini-MentalState Examination)などの評価が、どのように処方に活かされているのかを学びます。
 また、在宅医療は総合的な知識が求められるところなので、褥瘡・感染・緩和ケア・NST(Nutrition Support Team=栄養サポートチーム)など在宅医療に関わる複数のチームに参加してもらいます。最初は右も左も分からなくても、チーム内の先生や先輩薬剤師に気軽に質問ができるので、何回も参加していくうちに自ら行動できるようになっていきます。薬局勤務経験者には早速現場に入ってもらいますが、新人の方も基礎から学べる体制を整えています。これは教育機関でもある大学病院で学ぶレジデント制度ならではの環境ですね。

三浦先生:薬局勤務経験者のレジデント生は、半年くらい経つと病院の現場に慣れて自発的に動けるようになり、病院のチームの中で薬局薬剤師ならではの視点を持って業務に取り組もうとする能動的な姿勢が見られるようになります。たとえば最近修了したレジデント生は、退院前カンファレンスでいろいろな職種のスタッフの中に入り、入院中の引継ぎや退院後の対応にも積極的に意見を出してくれました。彼は病院の中で業務を行いながらも退院後に患者支援を行う薬局の立場として参加していたのだと思います。数日間の研修を受けるだけでも非常に知識が高まりますが、彼のようにチームに参画しているという意識の芽生えは長期の研修でしか得られない成果だと思います。

認知機能評価を
服薬方法の選択・決定に活かした取り組み

認知機能評価MMSE を用いた入院患者における服薬評価とその背景
三浦 昌朋 他 ;
薬学雑誌, 2007, 127, 1731-1738.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17917431

薬物療法中の患者にとって、服薬コンプライアンスは病気の進行、悪化、再発防止に極めて重要な意義を果たしているが、自己管理行動や認知機能が低下した高齢者にとって服薬の遵守は難しい。そこで筆者らは、60歳以上の入院患者70 名を対象にMMSE(Mini-Mental StateExamination)を実施し、その評価スケールと服薬コンプライアンス状況及び患者背景との相関を検討し、服薬自己管理能力の尺度としてMMSEが導入できるか否かの検討を行ったところ、服薬の自己管理能力とMMSE スコアとの関連性が見られ、MMSE21 点以下の患者では内服薬の自己管理が困難であり、26 点以下の患者においては服薬能力が低下する可能性があるため、服薬方法の工夫と服薬指導を強化する必要があると考えられた。これらの患者には、タイミング別服薬である一包化服薬を可能な限り実施する重要性が示唆された。最後に著者らは薬剤師の役割は、患者の認知機能を評価及び把握し、個々の患者に併せた服薬方法をコーディネートし、服薬コンプライアンスを向上させることにあり、今後、服薬自己管理能力の尺度としてMMSE の導入が勧められると結んでいる。(文献より抜粋)

薬局薬剤師が薬歴調査を行うにあたっての
教育訓練の必要性について指摘した報告

Completeness of medication reviews provided by community pharmacists.
Kwint HF et al ;
J Clin Pharm Ther. 2014, 39, 248-52.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24521180

ドイツの10 の地域の薬局に勤務する薬剤師が、患者の家庭において薬歴調査や臨床記録の確認を行い、drug-relatedproblems( DRPs:薬物療法上の問題点)の発生件数や内容を調査した横断研究。処方レビューのスキルを得るため、調査前に2 日間のトレーニングを実施した。患者は5 剤以上を服薬している65 歳以上の155 名を対象とした。薬局薬剤師は全553 件のDRPs を発見し、患者1 人当たり平均3.6±2.8 件を同定した。一方、処方レビューを長年にわたって行っている経験者は全1012 件のDRPs を発見し、患者一人当たりでは平均6.5±3.2件のDRPs を同定した。また薬局薬剤師は患者一人当たり2.6±3.2 件、経験者は7.5±3.3 件の処方変更の提案を行った。最も違いが大きかったのが、検査値や患者の身体症状のモニタリングから得られるDRPs の件数であり、その差は約4 倍近くに上った(薬局薬剤師75 件に対し、経験者284 件)。この違いが見られた理由としては、実践経験の有無によるものであることが考えられた。一方、2 日間のトレーニングであっても、薬局薬剤師は臨床上問題があって処方変更を要するDRPs を、経験者と同程度かそれ以上に多く指摘できるようになったことが成果として得られた。著者らはトレーニングによって処方レビューのスキルが向上されることが示唆され、さらにDRPs を見逃さずに臨床上の問題と紐づけて捉えるためには、継続的な教育訓練が効果的であると結んでいる。(文献より抜粋)

レジデント制度の狙いと成果

薬局と病院との距離感が近くなったこと

Q. 自発的に動けるようになるというのは、病院内のノウハウが分かってくるためと思いますが、人間関係も構築できたからということもあるのではないでしょうか。

三浦先生:レジデント制度の一番の狙いはそこで、チームに参画するのも顔見知りを作り、気軽に連絡できる相手を作ってもらいたいという理由からなのです。薬局で分からないことがあると、病院の薬剤師が皆持っているPHS に電話をかけてくれます。教授のドクターに直接電話をする修了生もいるくらいです。制度が始まる前までは、薬局からの問い合わせとしては紙面やメールでの事務的なやり取りがあるくらいで、このようなコミュニケーションは想像ができませんでした。疑義照会の質も高まり、病院と薬局との距離がぐっと縮まりましたね。
 また研修が終わってからも薬剤部カンファレンスに参加するために病院に来る人がいます。症例報告から薬のパンフレットに至るまで、どのように見て考えればいいのか常に勉強する必要があるので、我々のカンファレンスから刺激を受けて薬局に戻っていくようです。

レジデント生の気付き~検査値・時間軸と処方薬との結びつき~

三浦先生:先にも述べましたが、研修の中でレジデント生は処方された薬と検査値の結びつきについて学ぶ機会がありますが、彼らはそこに新鮮さを覚えるようです。処方せんに検査値を載せる場合は、項目数に上限を設けることがありますが、病院内にいるとすべての検査値を見ることができ、さらには時系列で把握できることに大きな学びを感じるようです。例を挙げると、レジデント生が薬物相互作用を確認するとき、投薬初日に相互作用が見られなければ「薬物相互作用なし」という報告をすることがあります。
その時我々は「薬物相互作用はすぐには表れないこともあるので、○日後も確認すべきである」ということを教えることになります。大学で学んだ教科書では説明しきれない部分ではありますが、病院の現場にいると、この薬を飲むとどのくらいの時間間隔で腎機能の確認をすべきかといった薬物治療の実際が分かるため、時間軸でも患者さんをとらえなければならないことがものすごく勉強になっているとレジデント生は言っています。

病院側の気付き~地域に対してなすべきことが見えてきた~

三浦先生:レジデント生を受け入れて以来病院側にも大きな収穫がありました。それは薬局出身の人たちと働くことで、我々にはなかった薬局薬剤師としての視点や考え方を知ることができたことです。特に自分たちがいかに恵まれた環境に置かれているかということに気付くことになりました。薬局は、医師も看護師も近くにおらず、患者さんの病気の詳細が把握しづらいところです。病院にいる我々は、チーム医療のありがたさや検査値がわかるありがたさに気づいたことによって、患者さんのために、普段の業務にも新しい知見の習得にももっと励まなくてはという意識が高まりました。

三浦先生: 実際に業務に影響があった一例を挙げますと、退院時の引継ぎを充実させようという意識が高まったことがあります。保険薬局で患者さんに有意義な服薬治療の指導をしてもらうために、薬歴だけでなく、処方の意図やアレルギー歴などもきちんと書いて伝えることになりました。
 このような変化があったのは、何のためにその薬が処方されたのかという理由が、薬局の立場ではわからないということに気づいたからです。このように連携先がおかれている状況が見えたことで、病院が地域に対してやらなければならないことが明確になってきました。

退院時の薬歴・処方情報伝達の重要性について指摘した報告

Problems with continuity of care identified by community pharmacists post-discharge
Bouvy ML et al ;
J Clin Pharm Ther. 2017, 42, 170-177.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27943349

オランダの地域薬局が、入院前から退院時の処方の確認時に発見した薬歴管理上の問題点について、その発生頻度と内容について調査した横断研究。44 の薬局において403 名の成人患者の処方確認を行ったところ、処方せん1枚当たり2.9±2.0 件のケアの継続性に係わる問題があることが指摘され、これらは92.3%(n=372)の処方せんにおいて確認された。指摘事項全1154 件の内訳は、31%(n=356)が処方内容について(適応不明、禁忌・重複・薬物相互作用の存在、レジメン・投与量・薬剤・剤型の不明瞭な変更等)、34%(n=392)が管理上の問題(必要書類の不備、在庫不足等)、35%(n=406)が患者教育の必要性(投与方法の指導、アドヒアランスの遵守等)であった。処方内容に関する問題は、入院前の薬歴が入手できないこと(n=106)および退院後の処方変更(n=55)から生じたものであった。また退院後の服薬に関する知識を患者に指導する必要性が高いことも示された。地域薬局の薬剤師は、退院時の薬剤情報が不十分な環境に置かれているため、退院時の処方確認のプロセスを実施するこ と、薬物情報の電子的な管理・共有方法を標準化すること、これらの作業に多職種が係わる必要性を筆者らは指摘している。(文献より抜粋)

病院・薬局チームがもたらした医療経済効果

三浦先生:最近、当薬剤部が薬局と一緒に、患者さんの在宅診療の移行にあたり、ポリファーマシー対策への取り組みが行われました(院外未発表)。病院薬剤師は、かかりつけ薬局となる薬剤師へ薬歴、投薬窓口での様子、薬識などの情報提供を行い、かかりつけ薬剤師は、家庭医の往診に同行し、自宅での服薬管理状況や残薬などの確認を行いました。この取り組みの目的は、残薬発生の原因を多職種で抽出し、診療ガイドラインに沿った高齢の患者さんにとっての適切な薬物療法を考えるにあたって、薬剤師としてどのように在宅医療への介入を行うべきか検討することが目的でした。この取り組みによって、薬剤師が家庭に出向いて患者さんの状況を把握する重要性が再認識され、さらに介護・福祉職をはじめ、患者さんと接するあらゆる人に、薬の相談に薬局に来てもらうような働きかけが必要だといった意見も出されました。
 同時に、発見された大量の期限切れや過去の中止薬の総廃棄金額を計算したところ、非常に大きな額となったことも明らかになりました。これは一例ですが、こうした症例をたくさん集めていけば経済的なメリットを示すことができると考えています。

継続的な処方確認による費用対効果を検証した報告

Cost analysis and cost-benefit analysis of a medication review with follow-up service in aged polypharmacy patients
Malet-Larrea A et al ;
Eur J Health Econ. 2017, 18, 1069-1078
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27913940

スペインの4 県に所在する178 件の薬局の高齢の多剤服用患者1,403名に対し、継続的な処方確認を行うことによって得られる費用対効果について解析した研究報告。処方確認方法や患者・医師との面接指導を受けた保険薬局薬剤師による介入を、毎月半年間にわたって行ったところ、介入群(n=688)は非介入群(n=715) と比較し、半年間で患者一人当たり平均97 €の医療費の削減につながったことがわかった。本研究では介入によるポリファーマシーの解消には至らなかったが、救急外来訪問や再入院に関する件数・費用については、介入群の方に減少傾向が見られた( 救急外来訪問:介入群30 件(総コスト1756.5 €)非介入群59 件(3454.4 €)、再入院:介入群11 件(総コスト64,846.4 €)非介入群31件(215,382.5 €))。処方確認には人件費等のコストが掛かるが、このような取り組みに対して1 €の投資をすることで、3.3-6.2 €の医療費削減効果が示唆された。筆者らは、保険薬局の薬剤師による積極的な介入によって、医療資源のより効率的な使用が期待されると述べている。(文献より抜粋)

課題と展望

Q. レジデント制度を始めてからの難しさや課題はありますか?

三浦先生:難しさはほとんどないと思います。一つだけ挙げれば、研修期間が長期に渡るため、一度薬局を辞めなければならないことから、レジデント生にとって経済面での課題はあるかもしれません。
 これからの展望としては、できれば薬局でリーダー格の人により多く参加してもらって、彼らを中心に研修で得たノウハウを薬局内で伝授していってほしいと思います。ある程度経験を積まれ、薬局のニーズや在宅医療がどのようなものか知ってい る場合では、学ぶ量と質が非常に高いものとなるからです。さらに薬局間のリーダー格の人たちがつながれば一つのチームができあがるので、彼らに研究会や勉強会を立ち上げてもらい、地域の在宅医療を発展させていってほしいと願っています。
 このようにしてレジデントを修了した皆さんの介入によって在宅患者さんの薬物療法が良い方向に向かえば、患者さんと接する医療職や介護職の方々にレジデント制度の重要性をより実感していただく契機となるでしょう。そうなれば将来的に、レジデント生の受け入れ体制が当院のみならず、さらに拡充していくことも期待できます。「かかりつけ薬剤師さんにもっとみてほしい」。在宅患者さんのそういった声により多く応えていける基盤を築けるよう、これからも努力を続けていきたいと考えています。

Last Update:2017年12月