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会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第15回 がん外来化学療法の進展と病院薬剤師への期待

経済学から見る病院薬剤師業務第15回は、がん研究会有明病院(以下、がん研有明病院) 院長補佐・薬剤部長 濱 敏弘先生にご登場いただき、近年のがん化学療法の進展や、患者さんの高齢化などを背景にした病院薬剤師業務の現状、今後薬剤師に求められる専門性についてお話しいただきました。

Interview

Q.まず、近年のがん化学療法を取り巻く環境と、その中で求められる薬剤師の役割について教えていただけますか。

濱先生:近年の化学療法を取り巻く環境の変化はとても大きいものがあります。一つ目は、医学・薬学の進歩と検診の普及により、がんは早期に発見され、早期治療されるようになりました。薬物治療に関しても、新薬の開発による治療そのものの進歩と治療選択肢の拡がりに加えて、副作用対策としての支持療法も充実してきました。それに伴い、治癒をめざす患者さん、延命やQOLの維持・改善を目指す患者さんそれぞれの治療目的に応じた薬剤師の対応が求められるようになってきました。

 二つ目は、入院から外来へという治療環境の変化です。患者さんにとっては好ましいことですが、医療者から見ると、外来治療の場合、在宅での副作用の状況や程度、服用状況などの把握が困難になります。入院治療では、患者さんに起こる副作用を継時的にモニタリングでき、容易に把握できますが、外来治療では線で対応できていたことが点でしか対応できないというデメリットがあります。患者さんの在宅時の状況把握のため、治療日誌を付けることの指導も重要になってきました。

 三つ目は、高額な治療費と、医療の進歩による治療成績の向上に伴って、患者さんの治療結果に対する期待が大きくなり、期待通りに治療が進行しなかった場合の不満も大きくなっていると感じています。また、がん患者の高齢化の進行も相まって、治療ゴールの多様化が進んできたことを感じます。

 このように、多様な患者さんそれぞれの要求に合った医療が求められ、かつ患者さんの高い期待がある中、薬剤師は、個々の患者さんにとって最良な薬物療法とはどういうものか考えなくてはならない段階であると考えています。 薬は、同じ量を服用しても、人によって効果にばらつきが出ます。また、適正に使用しないと副作用が現れ、正しく使ったとしても副作用が現れることもあります。薬のもつこのような性質から、商品としてみると、薬は不完全な商品といえます。しかし、不完全でも必要としている患者さんが大勢いることは確かです。薬剤師業務の本質、あるいは専門性は、この不完全な商品である薬を安全に使うことにあると思います。

Q.薬剤師外来など、病院薬剤師のがん化学療法への体系的な介入により、医療安全への貢献※1のみならず、医師の負担の軽減、効率化等、経済的なメリットにもつながっているという報告※2もなされています。医療経済や効率の観点から、病院薬剤師業務がどのように貢献しているか、濱先生の所感を教えていただけますか。

濱先生:2010年の「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進」についての医政局長通知(http://www.jvnf.or.jp/1004301.pdf)、2012年の病棟薬剤業務実施加算(http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/h24_01-03.pdf)の新設、2014年のがん患者指導管理料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000037675.pdf)の新設などにおいて、チーム医療における病院薬剤師の役割が明確化されてきており、薬剤師の介入を診療報酬で評価する制度もわずかではありますが進んできているように思います。

 これらの制度の背景には、「医師の業務負荷軽減」があることが伺われます。従来は、各専門職の機能分化が十分でなく、医師にさまざまな業務が集中しやすい背景がありました。このような状況では、本来の医師の業務を圧迫し、効率が下がってしまいます。上記の通知は、チーム医療を推進し、医師をはじめとする各専門職の役割を明確に割り振り、効率化することを目的としたものです。(図1)いいかえると、薬剤師ができることは薬剤師が行いましょうということの後押しであると考えます。

 チーム医療で各専門職の役割が明確化され、治療プロセスの中で協働・連携することにより、チームが提供する医療の質の向上というメリットも得られます。薬剤師の介入により、特に外来診療の効率化と、高質で安全な医療の提供ができるようになってきました。上記の参照論文にもあるように、外来化学療法室(ATC)への薬剤師配置により副作用マネジメントが充実し、薬物の適正使用につながるなど、アウトカムの向上も報告されているようです。これらの評価は、安全と効率化という視点からの評価であり、残念ながら、まだ医療経済という視点からの成果はできていないと考えます。なぜなら、今の薬剤師の介入は、医師が診断に基づき選択したレジメンに対して、患者指導、モニタリングに基づく処方提案という段階であるからです。薬物治療に関して、複数の治療の選択肢がある場合、薬剤師が治療効果と医療経済の両方の視点から評価した上で治療法を提案することが普通になってくれば素晴らしいと思います。しかし、残念ながらそこまではまだできていないのが現状と思います。

 当院の薬剤師外来においても、医師をはじめとする医療従事者からは高いレベルでの薬の安全提供につながっているとの評価をいただいている一方で、医療費のことまで考えるには至っていないように思います。

 現状では医療経済という観点からは、必ずしも貢献度が高いとはいえない部分があることは否定できませんが、安全性を強化するという点において薬剤師は貢献できている。今はまだそれをアピールする段階とも思っています。

外来がん化学療法施行患者に対する薬剤師介入による
副作用・疼痛の改善への貢献※1

外来がん化学療法施行患者に対する薬剤師介入による副作用および疼痛改善効果についての定量的評価
若杉 吉宣 他;
医療薬学, 2015, 41(3), 173-178.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/41/3/41_173/_article/-char/ja/

外来がん化学療法患者に対する薬剤師の処方提案による副作用と疼痛の改善効果を、副作用のグレーディングとフェイススケール(Face Scale;表情による疼痛の評価尺度)を用いて定量的に評価した。薬剤師による医師への処方提案331例のうち、95.8%の処方提案が採用され、うち266例において副作用のグレーディングとFSを評価することができた。そのうち、135例の処方提案において患者の有意な副作用の改善と疼痛の改善が認められた。また、薬剤師の介入前後を比較すると、薬剤師の介入後において 副作用のグレード,FS いずれのスコアも有意に改善が得られた。これらの結果から、外来がん化学療法において、がん性疼痛などの早期の緩和ケアの施行を含めたがん診療全般への薬剤師の介入による副作用マネジメントと疼痛コントロールは有効であるとしている。(文献より抜粋)

外来がん化学療法における薬剤師の参画による治療アウトカムの向上※2

Pharmacists contribute to the improved efficiency of medical practices in the outpatient cancer chemotherapy clinic.
Iihara H et al;
Journal of Evaluation in Clinical Practice, 2012, 18, 753-760.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21414113

本邦において、がん外来化学療法に携わる薬剤師のアウトカムを調査した研究。がん領域専門薬剤師2名が2007年4月から2009年3月の期間中、外来化学療法に携わり、患者教育や副作用モニタリング等に月間75時間を費やした。結果として、薬剤師が外来化学療法に費やした時間とほぼ同等の時間分医師の業務負担を減じ、医師による診療患者数が従来の1.4倍増、病院収入においては2倍の収益増につながったとしている。また制吐剤の適正使用によって嘔吐の改善がみられ、また、制吐剤の薬剤費を16%削減することができたとしている。(文献より抜粋)

Q.がん研有明病院において、診療プロセスの中で薬剤師は薬剤師外来を通してどのように関わっているのでしょうか。

濱先生:当院では、化学療法の75~80%を外来で実施しています。初回は教育の目的もかねて入院で治療を行っていますが、二回目以降は原則外来治療となります。現在、薬剤師外来という言葉には明確な定義はありませんが、当院では、医師の診療前に行う薬剤師の介入を薬剤師外来としています。

 例えば、経口薬による外来治療を選択する患者さんに対しては、副作用のモニタリングだけではなく、服薬状況の確認、治療効果の検討など、患者さんの状態の詳細な確認が必要です。経口薬による外来治療では、辛い副作用を経験しながら薬を自分で飲まなければならないことに耐えられず、決められた通りに服薬できない患者さんもいます。実際に、医師の診察では服薬できていると報告している患者さんでも、持参薬を確認すると、残薬があり、指示通り服用していないケースも見られます。

 これらの薬物療法上の問題に関して、限られた医師の診察時間のなかですべてを確認するというプロセスより、薬の専門家である薬剤師の目線から、服薬状況や患者さんの副作用等、患者さんの薬物治療にかかわる事柄を確認し、その後に医師の診察というプロセスを経るほうが、医師・薬剤師の複数の視点から患者さんの状態を確認できるうえ、医師の診療時間の短縮や効率化も期待できます。

 上記の考え方から、当院では、医師の診察前に薬剤師外来を行い、服薬状況、非血液毒性の評価、必要な支持療法薬を確認し、薬剤師がカルテ上に整理・記載し、医師は患者さんの診察と同時に薬剤師が外来で確認した事項を参照することにしています。(図2)

 薬剤師外来で薬剤師が十分な時間をかけて患者さんと関わることにより、これまでより副作用への対応や支持療法を通した安全性や効果の担保へのより細やかな対応が可能になりました。その上、これまでの薬剤師が投薬の段階で介入していたプロセスと比較して、疑義照会のために医師の診察を中断する必要がなくなり、効率のいい診察にもつながったと思います。

Q.「薬物提供における安全性の担保」という役割を担うための、病院薬剤師の専門性として先生が重視されることは何でしょうか。

濱先生:連携や機能分化を背景に、プロトコルに基づく薬物治療管理(Protocol Based Pharmacotherapy Management:PBPM)が推進されていますが、薬剤師はプロトコルを遵守した薬物提供に徹していては十分とは言えないと私は感じています。様々な業務が標準化されていく中で、薬剤師に必要な専門性は、標準治療のプロトコルでは対応できない部分に至るまで、薬物療法全体をマネジメントする力だと考えています。

 例えば、抗悪性腫瘍薬と血管新生阻害薬を併用している患者さんが、薬剤師外来で、足首から下の強いしびれと、歩行の障害を訴えたとします。そこで、薬剤師は副作用を評価し、医師には末梢神経障害グレード3と報告し、末梢神経障害の支持療法として神経障害性疼痛抑制剤の処方を提案します。しかし、プロトコルに記載されているここまでの対応では、他の医療従事者でもカバーすることができます。

 プロトコルには、「このグレードの末端神経障害があった場合には神経障害性疼痛抑制剤を使用する」と標準的な治療方法が記載されていますが、例えば、クレアチニン・クリアランスの値に応じて初期投与量を変えなければいけないなど、処方条件がある薬剤もあります。このような薬剤の投薬の際、腎機能を確認し、適正な処方かを検討するなど、薬学的知識をもって、個々の患者さんの「標準治療」から外れる部分にいたるまで安全性を評価して薬物療法全体をマネジメントできること※3が、安全な化学療法の提供における薬剤師の専門的な薬物療法への参画の価値であり、求められる本来の職能です。近年は認定資格の取得に注目が集まっているようですが、現場では抗がん剤や各がん種のスペシャリストではなく、臨床に関わる総合的な力が必要とされています。がんに特化した専門性を高めることも大切ではありますが、まずは薬物療法全体について、高いレベルのジェネラリストを目指してほしいと思います。

PBPMに伴うリスクに対する病院薬剤師の安全性への貢献※3

個人ファイル管理を用いた監査方法の評価
古谷 良太 他;
日本病院薬剤師会雑誌, 2016, 52(5), 539-542.

がん化学療法の施行においてレジメン登録,レジメンに基づく処方監査は標準的な業務となりつつある。がん専門病院であるがん研有明病院においても,レジメン登録制やオーダリングシステムの導入を行ってきたが,依然として薬剤師による疑義照会はなくなっていない。今回、薬剤師による疑義照会から注射抗がん薬処方システムの実態調査を行った。その結果、1年間で35,917枚のがん化学療法の処方せんのうち245枚について疑義照会が行われており、その際に薬剤師が疑義照会に至る情報源としては患者のカルテと個人ファイルが78%を占めていた。現状のシステムでは対応できない事例において、薬剤師によるカルテや個人ファイルを用いたがん化学療法の処方監査方法が安全性を担保していることが示唆された。(文献より抜粋)

Last Update:2017年9月