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会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第10回 システムから見る持参薬管理業務と経済的評価―横浜新緑総合病院の取り組み―

経済学から見る病院薬剤師業務第10回は、横浜新緑総合病院薬剤部長・藤本康嗣先生と薬剤部係長・山浦紋子先生にご登場いただき、「システムから見る持参薬管理業務と経済的評価」というテーマで横浜新緑総合病院の取り組みについて、お話いただきました。

Interview

横浜新緑総合病院における持参薬管理システム構築の経緯と成果

Q.横浜新緑総合病院では、入院患者さんの持参薬管理のために、早くからシステムを導入されているとのことですが、そのシステム導入の背景と経緯についてお教えください。

藤本先生:厚生労働省医政局通知(医政発0430第1号平成22年4月30日)において、持参薬管理は「薬剤師を積極的に活用することが可能な業務」として、「入院患者の持参薬の内容を確認した上で、医師に対し、服薬計画を提案するなど、当該患者に対する薬学的管理を行うこと」と明記されています。この通知により、持参薬管理は病院薬剤師の重要な業務の一つとして明確に位置付けられたと考えられます。
 持参薬は患者さんの財産であると同時に、公費による医療資源でもあります。特に当院のような診断群分類(DPC)対象病院では、持参薬の有効活用がコスト削減に直結することもあり、積極的に活用すべきと考えます。しかし、社会的にみると持参薬を使用したことによる医療事故も起きているため、持参薬管理には薬学の専門家である薬剤師の介在が不可欠です。

山浦先生:当院における持参薬管理では、これまでにいくつかの問題が指摘されていました。入院患者さんの持参薬の服用や継続に関して、従来は主治医からの手書きの指示せんを元に調剤や服薬指導を実施していましたが、多種多様な薬剤が対象となったり、乱雑に保管されていたりすることなどから生じる不備が多く、薬剤部の側から持参薬に関する「報告書」を医師に作成するようになりました。これがシステム導入のきっかけです。

藤本先生:現在、電子カルテにて報告書を作成していますが、運用開始当初は紙媒体でした。当時は薬剤部へ持参薬が届けられる(図1①)と鑑別、整理して服用指示書を兼ねた報告書を作成し、医師へフィードバックしました(同②)。報告書を受けた医師は継続すべきか否かを判断し、報告書へ記入し薬剤部へ戻してもらいます(同③)。それを基に当院独自の継続依頼書を作成し、患者さんの服薬が開始となっていました。継続依頼書は持参薬から当院処方への切り替え日や、持参薬の代替え薬が一目で分かるツールで、カルテに保管をしておき、切り替え日が近づくと医師への依頼を立て、処方を出してもらうのに利用していました。これにより持参薬を効率よく利用できていました(同④)。
 その後、上記の流れに沿って服薬指示書と継続依頼書を容易に作成できる持参薬管理支援ソフトを構築し、以前から導入していた薬剤管理業務支援システム(webシステム)を連動させることで持参薬と当院処方薬の一括管理を行っていました。

Q.システムの導入にあたり配慮や工夫された点がありましたらお聞かせください。

山浦先生:持参薬を無駄なく使用するためには、医師による服薬継続の判断と、病棟看護師の協力が必要です。持参薬管理システムの導入にあたっては、多忙な医師や看護師に負担なく、しかも漏れなく確認してもらうために、なるべく手間がかからない簡便な方法でチェックできるようにしました。また、薬剤管理業務支援システム(webシステム)に連動しているため、同一画面で持参薬と当院処方薬の履歴確認ができ、安全面においても考慮していました。
 現在は、持参薬管理支援ソフトではなく、電子カルテによる持参薬管理をしています。電子カルテには継続依頼書の代わりとなるシステムも備わっており、院内のどこにいても端末からチェック、オーダーができるようになっています。また、電子カルテと薬剤管理業務支援システム(webシステム)が連動しているため以前と同様に同一画面での薬歴確認ができています。
 紙媒体から始まり、持参薬管理支援ソフトを経て、現在の電子カルテによる運用になりました。持参薬利用にあたっては、処方薬との重複オーダーの予防、当院処方薬へのスムーズな切り替えがポイントで、紙媒体の頃よりこれが可能となっていたので、薬物治療の質と安全性の向上に貢献できてきたと考えています。

持参薬管理システムによる医療経済評価

Q.横浜新緑総合病院で導入された持参薬管理システムでは持参薬管理と同時にコスト管理も行うことができるとうかがいました。

藤本先生:当院ではオーダリングシステムや薬歴管理についても比較的古くから電子化しており、持参薬管理についてのシステムを導入した際に、それらのシステムに登録された薬価を自動抽出できるように組み込みました。持参薬管理は重要な業務ですが、薬剤師の業務負担も大きくコストもかかるため、持参薬管理によって病院に対し医療経済的な貢献ができることを病院経営側に示すことも大切です。そこで薬剤部では、持参薬管理によって得られるコスト削減額を算出し、業務負担に見合った経済性が担保されているかについて調査しました*1。その結果、持参薬の平均月間使用金額から持参薬管理にかかる月間人件費を差し引いた868,843円が月額のコスト削減額であることが分かりました。この調査結果からも、持参薬管理業務が医療経済的に十分に評価できる業務であることがうかがえます。持参薬管理システムを導入し同時にコスト管理も行うことで、薬剤師の医療経済的な貢献を視覚的にとらえられるようになり、病院経営側にも分かりやすく示すことができたと考えています。

学会抄録:横浜新緑総合病院における持参薬管理業務の経済評価に関する研究*1

当院における持参薬管理システムの構築(第二報)持参薬の経済性の検討.
藤本康嗣,山浦紋子他(2011)
第13回日本医療マネジメント学会(2011年)ポスター発表
日本医療マネジメント学会雑誌,12(suppl.2),376-376.

 持参薬の経済性を検討するために、横浜新緑病院における持参薬管理業務にかかわる件数・作業時間を算出し、実際に活用された持参薬のコストと比較した研究(調査期間2010年10月~2011年3月)。その結果、持参薬管理の月平均件数は381件、業務時間は平均30分/件、一日あたり平均5.71時間/を持参薬管理業務に充てていることが確認された。一方で活用された持参薬の使用金額(月平均)は1,172,644円で横浜新緑病院における持参薬管理業務を通じたコスト削減額は担当薬剤師の人件費相当額303,201円(2,124円×5.7hrs×25日換算)を引いた868,843円に上ることが示された。

Q.近年、飲み残し残薬についても医療費削減効果の視点から議論が行われていますが、横浜新緑総合病院での現状とその評価に関する取り組みについてお教えください。

山浦先生:持参薬管理業務を行っていると、飲み残し残薬が非常に多いことを痛感します。その原因の一つに、服用薬剤の種類や回数が多いためにコンプライアンスが低下することが考えられます。飲み残しがあるにも関わらず、それを把握せずにさらに処方を続けることで残薬が増え続けていくという事態が生じています。
 増え続ける残薬を廃棄することは、医療費の浪費であり、可能な限り避けるべきです。しかし、そもそも、その根底にあるコンプライアンスの低下は、治療の停滞から疾患の悪化、さらなる医療費の増大という悪循環を招きます。この悪循環を断ち切るために、持参薬管理を徹底し残薬を有効に活用することも、薬剤師に求められる重要な使命と考えます。

藤本先生:当院で、2012年に持参薬を整理・鑑別し、飲み残し残薬を抽出したところ、持参薬のうち13.7%(約28万円)が飲み残しであるという推計結果が出ました*2。ただし、「明らかに飲めていないもの」だけを抽出し、分析した結果であるため、実際には、飲み残しの割合はもっと高くなることが推測できます。
 残薬の有無の確認は、薬剤服用歴管理指導料の算定要件にもなっています。持参薬をしっかり管理し、残薬を無駄なく有効に活用することは、医療経済の観点からも多大な貢献といえるでしょう。

学会抄録:横浜新緑総合病院における飲みのこし残薬の経済的評価の研究*2

持参薬管理から見える飲みのこし残薬の実態 (第二報) ~医療経済から見た残薬~
藤本康嗣, 山浦紋子他(2013).
第15回日本医療マネジメント学会(2013年)ポスター発表
日本医療マネジメント学会雑誌,14 (suppl), 425-425.

 2012年7月の1ヵ月間に新緑総合病院に入院した入院患者の持参薬延べ1392品を対象に、服用できずに残薬となっていたと推測される薬剤を抽出し、その金額を試算した。対象となった入院患者数は345人中216人、持参薬鑑別報告書件数は351件、平均持参薬品目数は一人当たり5.47品目であった。
金額ベースでの持参薬に対する飲み残し残薬の割合は13.7%で、277,737円相当であった。服用薬剤の種類の多さ、服用回数の多さがコンプライアンスの低下を招き、残薬として廃棄される要因であると指摘した。

持参薬管理による医療安全と今後の課題

Q.持参薬管理システムの導入により、患者さんの医療安全の視点からはどのような成果が得られたのでしょうか。また、今後の課題についてもお教えください。

藤本先生:薬剤師が患者さんに対して最も優先すべきことは、薬物治療を安全に提供することであり、それがあって初めて有効な薬物治療が実施できるといえます。そのために、当院では、病院薬剤師の最重要かつ基本的な業務の一つとして、プレアボイド報告を徹底しています。

山浦先生:当院で2010年から2年間実施したプレアボイド報告を精査・分析したところ、プレアボイド報告のうち36.2%(171件)が持参薬関連でした1)。このうち、報告内容として多かったのは、「処方薬(注射含む)との重複投与」56.1%(96件)、「誤転記・誤処方」33.9%(58件)でした。
 また、同時期に発生したインシデント・アクシデント事例を精査した結果、持参薬に関する報告の発生率は1.2%であり、当院処方薬に関する報告の発生率0.1%と比較すると、11.3倍も高いというデータも得られています2)。これらの結果からも、患者さんの医療安全を守るために持参薬管理が重要であることは明らかです。

藤本先生: 持参薬管理には、薬剤部のみならず、他部門との連携を含め、病院全体で取り組むことが必要です。そして、病院だけではなく保険薬局等、地域との連携を強化することも、今後の課題として重要だと考えています。特に、飲み残し残薬を減らすためには在宅療養中の患者さんのコンプライアンス向上が必須であり、病院薬剤師と保険薬局薬剤師の連携が不可欠です。現在でも病院周辺の保険薬局とは情報交換を行っていますが、まだ連携が十分とはいえません。密なコミュニケーションによりお互いの顔がみえる関係を築き、患者さんの入院中や退院後の治療状況を踏まえた上で、適正な服薬を継続するための薬薬連携にまで高めていく必要があると考えています。
 退院後のフォローとしては、退院時服薬指導を確実に実施するだけでなく、薬局との連携を深めるためのツールとして、当院独自の「書類3点セット」を活用しています。具体的に、入院中に治療で使用したすべての薬剤を記入した「薬歴管理表」、退院後も継続して使用する薬剤の説明が記載された「退院時服薬指導書」、「おくすり説明書」を専用の封筒に入れ、すべての患者さんにお渡しします。そして、退院後、最初に保険薬局に行く際に、薬剤師に必ず手渡してもらうよう説明しています。
 また、外来で化学療法をしている患者さんに関しては、患者さんの同意を得た上で、現在病院で実施している化学療法のレジメンと血液検査データをお薬手帳に記載しています。それにより、病院での治療内容を保険薬局でも共有でき、適正な処方や指導、副作用の早期発見等が期待できます。
 今後も、病院内外における医療連携、薬薬連携を強化し、当院の強みである持参薬管理システムを活用しながら、適切な薬物治療をサポートしていきたいと考えています。

1)学会抄録:山浦紋子,藤本康嗣他(2012).当院における持参薬管理の現状(第一報)プレアボイド報告事例の分析.
第14回日本医療マネジメント学会(2012年)ポスター発表,日本医療マネジメント学会雑誌,13(suppl), 395-395.
2)学会抄録:山浦紋子,藤本康嗣他(2012).当院における持参薬管理の現状(第二報)インシデント・アクシデント
事例の分析. 第14回日本医療マネジメント学会(2012年)ポスター発表,日本医療マネジメント学会雑誌,13(suppl), 395-395.

関連文献

持参薬チェックによる医療費の節減効果

伊勢 雄也, 中嶋 基広, 片山 志郎.(2010)
薬局 61(9), 49-53.

 日本医科大学病院における持参薬管理業務への薬剤師参画による有用性と実用性の評価、医療費節減効果を評価した研究。DPC対象病院である日本医科大学病院において、看護師が対応していた持参薬チェック業務を薬剤師が共同で行うことにより、1ヵ月あたり537,876円(71.8件/358.2剤)の薬剤費を節減できることが示唆された。また、業務導入半年経過後に看護部へのアンケートを実施し、69.3%が「採用・不採用が分かるようになった」、76.1%が「薬剤師が確認することで安心できる」と回答し、持参薬管理業務を通してリスクマネジメントや看護業務の簡素化への一定の評価を得た。

プライマリケアにおける返却薬剤の分析

An analysis of returned medicines in primary care.
Langley, C., Marriott, J., Mackridge, A., & Daniszewski, R. (2005).
Pharmacy World & Science : PWS, 27(4), 296–9.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16228627

 英国において家庭医(GP)と関連の地域薬局に返却された薬剤の返却理由や量と種類について探索した研究。薬剤が返却された理由のおよそ半分(48%)が医師による処方の変更や停止によるもので、23.7%が患者の死亡や過剰処方によるもの、3.5%が有害事象によるもの――と続いた。最も返却数が多かったのが循環器領域の薬剤で、全体の28.5%を占めた。筆者らは未使用の残薬が国民保健サービス(NHS)の財政負担となっていることを指摘し、さらなる研究が必要であるとした。

地域薬局への返却薬剤(残薬)についての分析

Analysis of medications returned to community pharmacies.
James, T. H., Helms, M. L., & Braund, R. (2009).
The Annals of Pharmacotherapy, 43(10), 1631–5.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19776296

 ニュージーランドの地域薬局24ヵ所に対して患者やその家族から自発的に返却された残薬について、返却された理由や当初の処方用量に占める残薬の割合、適応分野などを調査した研究。期間中に薬局に返却された2704件のうち、返却された理由は患者の死亡(22%)、必要以上の処方(17%)、期限切れ(8%)、薬剤変更(11%)、用量変更(3%)、不明(39%)であった。また、返却された残薬件数のうち半数(51%)が当初の処方量の75%以上を残したままで返却されており、なかでも呼吸器・アレルギー系領域の吸入薬については、返却件数の75%以上が75-100%の用量を残したままで返却されていた。この結果から吸入テクニックの指導などを通じて喘息患者の薬物療法アウトカムに対して薬剤師が重要な役割を果たしうることが示唆された。

Last Update:2016年2月