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会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第9回 高齢者の薬剤安全管理における病院薬剤師の役割とその医療経済的価値

経済学から見る病院薬剤師業務第9回は、鳴門山上病院診療協力部長・薬剤科長の賀勢泰子先生にご登場いただき、「高齢者の薬剤安全管理における病院薬剤師の役割とその医療経済的価値」というテーマで、高齢者の薬剤安全管理における課題や、院内・院外における情報共有の必要性とそのための取り組みについて、お話しいただきました。

Interview

高齢者の薬物療法における課題と薬剤安全管理の重要性

Q.高齢者の薬剤管理における特徴と課題について、お聞かせください。

賀勢先生:高齢者の薬剤管理では、患者さん本人の要因、家族や家庭環境の要因、医療機関側の要因など、複数の要因が複雑に絡み合って服薬コンプライアンス(あるいはアドヒアランス)が低下しやすいという特徴があります。この特徴は、複数の慢性疾患を合併し多科を受診するため、長期に多剤併用しなければならない高齢の患者さんに特に見受けられます。
 患者さん本人の要因としては、服薬能力の問題があります。一般的に高齢者は生理機能、認知機能、運動機能が低下しているため、それらに伴う服薬能力の問題によって薬物療法上の問題が生じている可能性が考えられます。たとえば、生理機能としては、腎機能や肝機能などの低下や多剤併用によって、薬剤の代謝に時間がかかる、排泄されずに蓄積される、副作用が出現しやすいといった問題が生じることがあります。認知機能については、理解力や言語能力、視力、聴力、記憶力などの認知機能の低下によって、薬剤の適切な管理が難しくなっている場合、自覚症状や抱えている問題を上手に伝えることができないことで問題の発見が遅れる可能性があるため、チームによる観察と配慮が特に必要となります。運動機能については、嚥下能力の低下によって内服そのものが困難な場合には、剤形変更や薬剤変更、投与方法の工夫や変更などの薬学的ケアが必要となります。
 さらに、上記のような患者さん本人の要因以外にも、家族や家庭環境の要因も患者さんの服薬コンプライアンスに影響を及ぼします。高齢者では、患者さん自身が服薬管理をすることが困難なケースも多く、ご家族との関係性や同居人の有無、ご家族の積極的な協力が得られるか否か、といった居住環境や家族関係、社会関係といった患者さんを取り巻く環境要因も重要です。特に、薬物療法の継続が難しい環境に置かれている場合には、薬剤師の積極的な関与が必要となることもあります。
 その他に、患者情報の共有など医療機関の連携体制も、服薬コンプライアンスに影響を及ぼす要因の一つといえます。医療機関が変更される際に、医療提供者間のコミュニケーション不足が生じてしまうと、適切な薬物療法の継続が難しくなる場合もあります。
 このように、薬剤管理を継続する上で、患者さんの抱えている問題や置かれている環境は個人差が非常に大きく、高齢者とひとくくりにして考えることはできません。こうした多様性を踏まえ、クリアすべき課題を把握し、管理するための個別のアセスメントとケアが求められます。そのため、病院薬剤師には、高齢者の薬物療法に必要な患者情報を収集・評価し、その情報を院内他職種と共有できるよう積極的に働きかけることが求められます。

高齢者の薬剤安全管理における病院薬剤師の役割-鳴門山上病院の取り組みから

Q.高齢者の薬物療法における個別のアセスメントとケアを実践するために、鳴門山上病院で行っている取り組みについて、お聞かせください。

服薬能力の評価と処方設計支援:薬剤師業務の観点から

賀勢先生:当院では、薬剤師が患者さんと初めて関わるときには必ず、服薬能力の評価を行っています。患者さんが薬物療法の必要性や方法を理解されているか、薬剤を自分で取り扱い、飲むことができる身体能力が維持されているか、嚥下能力はどの程度か、などを評価します。経口投与の場合、薬を飲みこんで吸収されて初めて薬の効果が出ますので、たとえば、嚥下障害があって飲み下せない、吐き出してしまうといった問題が生じている場合には、剤形の工夫ができていないということになります。また、体内に取り込むところでの障害が生じている場合には、経鼻や経管、胃瘻などが必要となります。このように、患者さんの服薬能力の状態に応じて、剤形や調剤の工夫が必要かどうかを判断し、必要と考えられる薬学的ケアを行っています。
 嚥下障害がある場合、簡易懸濁法を採用することもあります。簡易懸濁法は、錠剤やカプセル剤を温湯に入れて崩壊・懸濁させて経管投与する方法で、嚥下障害がある患者さんなどに有用です。ただし、配合することで成分が変化してしまう薬剤は個別に投与する、懸濁させて時間が経過すると徐放性が変化して効果が変化してしまう薬剤は服用する直前に懸濁するなど、投与上の細かい注意点があります。中には、粉砕することで効力がなくなる薬剤などもありますので、患者さんの嚥下能力に応じた処方であるか、経管栄養チューブを介しての投与に対する薬学的ケアの基準が満たされているかを評価することは、薬剤師の重要な役割です。薬剤の物理・化学的特性を理解した上での薬学的ケアができるのが薬剤師であり、投与上の注意や経管栄養に対する留意点を医師や看護師などの他職種と共有した上で実践することが、薬剤師に求められると考えます。
 また、当院では、一人ひとりの患者さんにより適切で安全な薬物療法を提供できるよう、入院時に薬剤師から医師への処方設計支援(処方設計の提案)を行っています(図1)。具体的には、薬剤師が患者さんの検査データなどから投与量などの処方設計を資料として作成し、事前に提案するようにしています。たとえば、患者さんの腎機能に合わせた減量、増量、回数変更などの処方設計を提案します。持参薬についても、患者さんの服薬能力を考慮して、この薬剤は飲みやすい、あるいは飲みにくい、簡易懸濁をするときは個別に投与したほうがいいなどの判断を、薬剤師が医師にお伝えします。以前は、医師が作成した処方を見てから処方変更を提案していた時期もありましたが、事前に薬剤師からの情報があるほうが医師としても処方設計がしやすくなったのではないかと思います。また、患者さんの情報をきちんと把握してマッチングを確認した提案ができることで処方にも反映されやすくなり、入院中に何かあったときにも薬剤師に相談しやすくなったのではないかと思います。
 このように、処方設計の提案を薬剤安全管理の入り口とする流れを作ってきたことで、薬剤師の意見がより受け入れてもらいやすくなり、チーム医療の一環に薬剤師がしっかり組み込まれるようになったのではないかと考えています。

Q.慢性疾患をもつ高齢の患者さんの薬剤管理において特に工夫されている点はありますでしょうか?

持参薬管理と処方の適正化

賀勢先生:高齢の患者さんは慢性的に複数の疾患を有しており多数の薬剤を服用していることから、入院時の持参薬が多いという特徴があります。そこで、入院時には、まず、薬剤師がその患者さんに処方されているすべての薬剤を把握し、重複投与や過量投与の有無を確認します。入院時すぐには難しい場合でも、入院期間中に継続的に患者さんの状態をモニタリングしながら、徐々にでも処方の適正化を図るようにしています。当院における2014年10月~2015年1月のデータによると(図2)、入院前平均9.0種類の服用薬は、入院時処方提案および処方見直しによって7.5種類となり、4週後は6.5種類、8週後は5.8種類、12週後は4.9種類に漸減していました。また、入院時11種類以上を服薬する患者さんは13.8%でしたが、4週後に3.3%、8週後には0%に減少しました。このように、在宅療養中の高齢の患者さんにおいて、入院を契機に処方の適正化を行うことで薬剤数の削減や多剤併用を回避することが確認できています。

 薬剤数を削減することで、意識がはっきりする、起きたり歩いたりすることができるようになるなど、患者さんが日常生活動作を取り戻せるケースも少なくありません。その際、嚥下の造影検査に基づくリハビリを行ったり、嚥下機能に影響する薬剤の検討や、回復レベルに応じた剤形や嚥下補助剤などを選択することによって、経口摂取(レビン抜去)*注1ができるようになることもあります。そして、口からものを食べられる喜びが、患者さんのさらなる自信と元気の源になるのです。このように、入院中の持参薬管理と処方整理によって処方の適正化を図ることは、医療機関と患者さんの双方にとって薬剤管理面での負担軽減、医療費の削減をもたらすだけでなく、患者さんのADL改善やQOL向上にもつながっています。
 また、ある程度時間をかけながら処方の適正化を図ることができるのは、当院のような回復期・慢性期病院ならではの薬剤師の役割でもあると思います。結果的には、退院後の在宅での医療費抑制にも結びつくことになりますので、医療経済的観点からも重要な役割ではないかと考えます。

*注1 レビン:レビンチューブの略で、経鼻胃管(鼻から胃に挿入する管)のこと。

Q.効果的な情報共有を行うための取り組みについて、お聞かせください。

院内他職種との連携:チーム医療を機能させる院内システムの工夫

賀勢先生:病院薬剤師が職能を発揮するためには、院内での他職種との連携を深めることが不可欠と考えます。各職種のスタッフが情報を共有できる仕組み、患者さんをモニタリングする体制、カンファレンスの定例化など、チーム医療を機能させるための院内システムを確立することが大切です。
 当院では、「高齢者医療を推進するにはチーム医療が不可欠」という方針のもと、情報共有のためのカンファレンスを徹底しています。入院時カンファレンス、ケアカンファレンス、退院時カンファレンス、ターミナルケアカンファレンス、リハビリカンファレンス等、入院中の時期や患者さんの状態にあわせた複数のカンファレンスが毎日行われています。たとえば、入院時カンファレンスは、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカー、栄養士などが参加します。各職種のスタッフが、事前に入手した患者さんの情報から治療やケアの方針などを共有する場として、我々薬剤師も、持参薬の状況・薬物療法の予定とその際の注意点などを伝えています。
 さらに、当院では、患者さんに関する情報を職種ごとにSOAP(Subjective, Objective, Assessment, Plan)形式で入力するようなカンファレンスシートを院内サーバー上で共有しています。お互いのもつ情報をそのシート上で事前に確認・把握した上で集合するので、カンファレンス自体は比較的短時間で済むようなシステムとなっています。シートによって前回との比較もしやすい仕組みとなっているため、カンファレンスでは、目立った変化のない患者さんの場合は要点の確認に留め、変化があり対応が必要な患者さんの場合により多くの時間をかけて相談するといった調整が可能です。薬剤師も、患者さんの変化が薬剤と関連していると考えられた場合には、その場で全スタッフに向けて処方の見直しや提案ができるため、情報共有の漏れがなくスムーズに対応しやすい仕組みとなっています。このような取り組みは、薬剤師がチーム医療の一員であることを自覚できるだけでなく、自らの職能でチーム医療に貢献できているという実感がもてるため、モチベーションの向上にもつながっています。職種間での情報共有やチーム医療を継続的に機能させるためには、このようなシステムを整えることも重要ではないかと考えています。
 薬剤安全管理をする上で患者さんがどのような問題を抱えているかを把握するためには、薬剤師のもつ情報だけでは不十分ですので、他職種との情報共有が必須となります。それができて初めて、薬剤師の情報や知識が生かせるといっても過言ではありません。また、患者さんや他職種の一言で薬学的な問題に気づくこともたくさんあります。そのためには、日頃から他職種との連携体制ができていることが重要ですので、やはり院内のシステム作りが大切ではないかと考えています。

院外他職種との連携:薬剤安全管理の継続に向けて

賀勢先生:近年、高齢者のみの世帯が増加していることに伴い、病歴や薬歴をご自身で把握しきれていない、あるいは説明できないことや、多科受診が多いことから、高齢の患者さんの使用するすべての薬剤・薬量を薬剤師が把握することが困難という課題があります。入院時には自宅での服薬状況を、また、他施設からの転院時には紹介状やお薬手帳の情報を確認しますが、ときに、患者さんが持参した薬剤と記載内容が異なることもあります。一つの施設内で複数の診療科を受診している場合、特定の診療科からの情報しか記載されていない場合もありますので、ソーシャルワーカーなどとも連携して、施設間でしっかり情報共有をすることが重要です。このように、他施設やかかりつけ薬局からの情報をもとに、患者さんの薬物療法に関する全体像を把握し、もれなく情報を拾い集める努力が、病院薬剤師には求められます。重要な情報の把握が漏れているとトラブルにもつながりますので、非常に気をつけるべき点だと考えています。
 また、当院では、退院・転院後も入院中の薬学的ケアがきちんと継続できるように、薬剤管理サマリーを作成し、ご家族や通所リハビリ、訪問看護、あるいは転院先の医療機関との情報共有を十分に行うようにしています。通所リハビリや訪問看護のスタッフには、退院時カンファレンスに参加してもらうこともあります*1。たとえば、入院中のケアをご家族が自宅で実施することが難しい場合など、入院中の薬学的ケアを退院・転院後に継続することが困難な際は、代替案を一緒に考えるようにしています。高齢者の場合、嚥下反射が遅くなることに伴う嚥下の問題なども生じやすいので、誤嚥しにくい対策を事前にとることで誤嚥性肺炎を防ぐなど、予防的なケアも重要です。このように、退院・転院後の患者さんの状況を確認・予測しながら処方提案をすることも、病院薬剤師の重要な役割ではないかと考えます。

参考:他院における退院時の地域連携の取り組み紹介*1

医療法人東明会下総病院:療養型病院の特性を生かし、全入院患者の状況を把握。薬剤師がコーディネートするチーム医療の実践!
日本病院薬剤師会療養病床委員会.
退院時共同指導取り組み事例集(平成23年度版).

 地域に密着した代表的な療養型病院である下総病院では、入院患者の在院日数が長いという特徴を生かし、薬剤師が全入院患者の情報を詳細に把握し、有効に活用することで、入院時のサポートから、退院後の患者のQOLまでを視野に入れた、病院薬剤師主導のチーム医療を実践している。
 入院した際の看護師との連携による患者や家族からの情報収集、毎日の病棟業務として患者をラウンドすること、日々の病棟での申し送りへの積極参加といった、病院薬剤師の業務が紹介されている。こうした積極的な情報把握への取り組みは、医療従事者間の情報共有を促進し、連携のよい医療チームをつくることに貢献するとともに、退院時カンファレンスにおける、退院後に在宅介護を行う家族への正確な服薬情報の提供にもつながっている。

 当院では、入院前から地域と連携し病棟薬剤業務を実践し薬学的管理を継続したことによって、医薬品に関連するヒヤリハット件数は2013年度には466件となり、2011年度に比較して24%増加した一方で、インシデント件数は17件となり、2011年度に比較して39%減少しました(図3)。また、こうした連携および薬学的管理によって、速やかな入院受け入れが可能となり、平均在院日数は2011年度に比較して、初年度には11%減、二年目には28%、三年目には43%短縮しました(図4)1)。このように、地域連携による薬剤安全管理の継続は、医療経済的にも医療安全的にも意義があると考えられます。

1) 賀勢泰子(2014). 療養・精神病棟での実践:療養病棟における病棟薬剤業務とクリニカルインディケーター. 月刊薬事, 56(9), 27-33.

高齢者の薬剤安全管理における病院薬剤師の役割に関する今後

Q.高齢者がより安全に薬物療法を継続するための病院薬剤師の役割として、今後どのような取り組みが求められるでしょうか。また、先生ご自身が今後取り組んでいきたいと考えていらっしゃる取り組みについて、お聞かせください。

賀勢先生:今後は、退院後の服薬コンプライアンス維持・向上を目指した取り組みをさらに進めていきたいと考えています。現在は、退院時のケアはしているものの、その後に十分なフォローが行き届いているとはいえず、服薬コンプライアンスの低下によって再入院に至るケースもあります。入院中に改善した状態を維持できるよう、自宅での薬物管理をフォローし、再入院を減らすことも病院薬剤師のできることの一つだと考えています。そのためには、地域との連携が重要ですが、個人情報の取り扱いの難しさもあります。連携をスムーズに行うためには、日頃から「顔のみえる関係」を築くことが必要だと思います。そうすることで患者さんの了解を得てかかりつけ薬局に連絡をとるなどの情報共有がしやすくなります。
 地域の保険薬局、訪問診療医師、訪問看護師、保健師、ケアマネージャーなどとの連携は、院内のようにはまだできていないのが現状です。他の地域では「顔のみえる関係」の構築に取り組んでいる実践例もありますので、そのような取り組みを当院でも浸透させ、院内と同じレベルで「院外のチーム医療」を確立していくことが、今後の課題と考えています*2
 繰り返しになりますが、薬剤師だけの力では、高齢者の薬物療法を支えることはできません。薬剤師は薬物療法の専門家ですが、医師や看護師、ソーシャルワーカーなど他職種との連携があって初めて、薬剤師の知識や技術を活かすことができるのです。患者さんに寄り添いつつ、チームで連携していくことで薬剤師の職能も広がり、患者さんの利益、ひいては医療経済的にみた場合の社会の利益にもつながっていくと考えています。

参考:他の地域における「顔のみえる関係」構築の実践例*2

独立行政法人国立病院機構福井病院:患者中心の医療を!!院内のスタッフの熱意から生まれた地域勉強会 医療連携への第一歩は、顔が見える関係作りから
日本病院薬剤師会療養病床委員会.
退院時共同指導取り組み事例集(平成23年度版).

 退院時共同指導だけでは不十分な地域の医療連携を強化するための情報交換の場として、福井病院を拠点に、病院薬剤師、調剤薬局薬剤師、各診療所の医師、訪問看護ステーションの看護師、介護事業所や社会福祉協議会のスタッフ、ヘルパーなどが参加する勉強会「嶺南地区 顔の見える会」が発足。ここでは薬剤師が先導役となりながら、地域で働く様々な職種の人々が垣根を取り払い、地域の医療連携をより積極的に進めるべく、活発なディスカッションが行われている。その結果、退院時共同指導だけでは時間の都合などで実現が難しかったスタッフ間の連携、たとえば調剤薬局薬剤師と病院薬剤師の連携などが可能となっており、「顔のみえる関係」の構築が医療連携に効果的であることを示す好例となっている。

高齢者の薬剤安全管理に関する関連研究

外来通院中の高齢患者における服薬状況報告でみられる不一致

Discrepancies in reported drug use in geriatric outpatients: relevance to adverse events and drug-drug interactions.
Tulner, LR., et al.(2009)
American Journal of Geriatric Pharmacotherapy, 7(2), 93-10.,

http://www.researchgate.net/publication/24432283_Discrepancies_in_reported_drug_use_in_geriatric_outpatients_relevance_to_adverse_events_and_drug-drug_interactions

 外来通院中の66歳以上の高齢者の服薬について、患者・家族が報告する内容と、医師の処方内容、薬局での処方薬剤が一致しているかを調べたオランダの研究。120名の対象者のうち、104名(86.7%)で、患者・家族の報告内容と、医師の処方内容、薬局での処方薬剤の3者間で1つ以上の不一致が生じ、90名(75.0%)で、患者・家族の報告内容と医師の処方内容の不一致が生じていた。これらのケースの多くでは、4種類以上の薬剤を併用し、複数の医師にかかっていた。また、29名(24.2%)が、医師の誤記入による有害事象を経験していた。それらのうち、薬局が関知していないケースもあった。多剤併用中の患者においては特に、医師の誤記入による有害事象が生じている場合もあること、また、服薬状況を確認する際には、処方医と薬局からの情報だけでなく、患者・家族からの情報収集も重要であることが示唆された。

外来通院中の高齢患者における処方レビューの機能的/経済的効果

The short-term effect of interdisciplinary medication review on function and cost in ambulatory elderly people.
Williams, ME., et al.(2004).
Journal of the American Geriatrics Society, 52, 93-8.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14687321

 多剤併用中の高齢患者の処方薬について、薬剤師を中心とした多職種チームで処方レビューを行い、レジメンを変更することによる機能的・経済的な効果について検討した研究。5種類以上の薬剤を処方されている高齢患者133名を対象とし、処方レビューを行った群57名と行わなかった群76名とで、6週間の介入前後の身体・認知・情動機能、健康状態、服薬状況を比較検討した。その結果、服薬状況については、処方レビューを行った群では、平均4.5錠の処方削減提案が行われ、実際に患者が承諾した場合の削減数は平均1.5錠。それによって、26.92ドル/月の薬剤費が削減された(全ての処方削減提案が実施されたと仮定しての見込みは、約4倍の96.36ドル/月の薬剤費削減)。一方、処方レビューを行わなかった群の薬剤費削減額は、6.75ドル/月だった。身体・認知・情動機能、健康状態については、群間で有意差は認められなかった。処方レビューの実施は、人的資源や時間をある程度要するが、薬剤師による介入の費用効果性を検証する試みの一つとして意義があるといえる。

高齢患者の退院後の薬物療法継続における問題点

Identification of drug-related problems of elderly patients discharged from hospital.
Ahmad, A., et al. (2014) .
Patient Preference and Adherence, 4(8), 155–65.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24523581

 慢性疾患で多剤併用中の高齢患者について、退院後の処方内容を薬剤師がレビューし、問題点を数多く洗い出した研究。5種類以上の薬剤を処方されている60歳以上の患者340名のうち、退院後、95.9%で少なくとも1つ以上の薬剤関連の問題(Drug-related problems: DRP)が生じていたか、生じる可能性が高く、78%で2つ以上のDRPが生じていた。また、処方薬剤数が多いほど、DRPの数が有意に増加する傾向が認められた。主なDRPは、明確な症状に基づかない処方、不必要な長期間の処方継続、処方量が不十分、薬剤選択が不適切、等だった。併せて行った患者インタビューからは、副作用に対する不安、服薬に関する知識不足などの問題が明らかになった。疾患別では、Ⅱ型糖尿病患者においてDRPが有意に多い傾向が認められた。これらの結果から、高齢者の薬剤安全管理に、薬剤師がより積極的に関与することが求められる。

高齢者服薬コンプライアンスに影響を及ぼす諸因子に関する研究

Factors influencing Noncompliance with Medication Regimens in the Elderly.
葛谷雅文,他(2000).
日本老年医学会雑誌,37,363-370.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/37/5/37_5_363/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/37/5/37_5_363/_pdf(本文PDF)

 入院中の65歳以上の患者109名を対象に、身体・認知・情緒機能や社会的状態の評価と服薬コンプライアンス評価を行い、服薬コンプライアンスに関与する因子を検討した研究。その結果、高齢者の服薬コンプライアンスは、患者の服薬用法や薬効の理解度との関連が高いことが示唆された。この結果から、高齢者の服薬コンプライアンス向上のためには、服薬用法や薬効の理解がポイントとなるため、服薬指導の内容をより充実させることが求められる。

錠剤の大きさが虚弱高齢者の服薬に与える影響―服薬模擬調査による検討―

Effect of size of tablets on easiness of swallowing and handling among the frail elderly.
三浦宏子・苅安 誠(2007).
日本老年医学会雑誌,44,627-633.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/44/5/44_5_627/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/44/5/44_5_627/_pdf(本文PDF)

 虚弱高齢者73名を対象に、大きさの異なる各錠剤の服用における、嚥下機能の低下と服薬行動との関連性、錠剤のサイズと取り扱いに要する時間の関連性を調べた研究。日常生活機能評価、嚥下機能評価、ならびに、模擬的に服薬する場面を設定した実地調査を実施。実地調査では、直径が異なる5種のサンプル錠(6mm、7mm、8mm、9mm、10mm)を口に含むまでの動作について、飲み込みやすさと取り扱い性の主観的評価を実施するとともに、取り扱い時間を計測。その結果を、嚥下機能低下群(42名)と正常群(31名)で比較検討した。嚥下機能が低下している場合、複数回に分けて服薬する傾向があり、錠剤サイズと取り扱い時間が比例することが示唆された。また、客観的評価と主観的評価を併せて総合的に考えると、虚弱高齢者の服薬に適した錠剤サイズは7~8mmであることが示唆された。高齢期における服薬は、飲み込みやすさだけでなく、取り扱い性にも大きく左右されるといえ、特に、身の回りの介助が必要で、かつ嚥下機能も低下傾向にある虚弱高齢者では、「飲み込みやすさ」と「取り扱いやすさ」の両面を追及していく必要があると考えられる。

Last Update:2015年8月