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会員限定経済学から見る病院薬剤師業務

第5回 退院後の居宅療養患者さんに対する病院薬剤師の役割

経済学から見る病院薬剤師業務第5回は、大阪薬科大学の准教授恩田光子先生にご登場いただき、「退院後の居宅療養患者さんに対する病院薬剤師の役割」というテーマで退院後の居宅療養患者さんに対する病院薬剤師および保険薬局薬剤師の役割や地域連携のあり方、さらに医療従事者間の情報共有を通じた治療アウトカムの向上についてお話しいただきました。

Interview

居宅療養患者さんが直面する薬物療法上の問題について

Q.先生は、居宅患者さんに対する薬物療法上の問題とその解決策についての研究1)に取り組まれています。退院後、居宅患者さんにはどのような薬物療法上の問題が生じているのでしょうか。

恩田先生:患者さんが退院し居宅療養へと移る際、多剤併用による潜在的に不適切な薬物療法(Potentially Inappropriate Medication; 以下PIM)、ならびに有害事象(Adverse Drug Events; 以下ADE)などのリスクに直面します。わたくしどもが行った大規模調査2)を通じ、退院後の在宅医療患者さんの薬物療法におけるPIM発生が、対象となった5447件のうち、48%で確認され、そのうち8%でADEの発生が確認されました(全体の約3.8%)。PIMについては、入退院とは関係なく外来や診療所での処方で発生している場合と、退院後も入院中の処方を踏襲し、どこからもチェックが働かずに発生する場合がある点を区別する必要はありますが、欧米と比べて日本に特徴的な傾向があります。それは日本では欧米に比べて向精神薬が多く使われているという点です。本研究でADEにつながった薬剤のほとんどが向精神薬や中枢神経系の薬(図1)で、認知症高齢患者さんにおけるPIM発生への関連要因のひとつが「中枢神経系薬の有無」という結果1)もあることから、PIMおよびADEを考える上で重大な事項であると考えています。

1) Tanaka, Y., Onda, M. et al. (2014). An Attempt at Objective Evaluation of the Current Situation of Concomitant Drug Use for Dementia Outpatients at Community Pharmacies. 医薬品情報学, 15(4), 155–164.

2) 恩田他(2013).薬剤師が提供する在宅医療サービスのアウトカム検証. 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業「地域医療における薬剤師の積極的な関与の方策に関する研究」平成25年度総括・分担研究報告書(代表:今井博久):69-101.

居宅療養患者さんに対する病院薬剤師の役割

Q.居宅患者さんにおけるPIMやADEといった問題を回避するために、病院薬剤師にはどのような役割が求められるでしょうか。

退院前のチェック

恩田先生:まず、問題につながる処方を解消するために、病院薬剤師には退院の段階でもう一度全ての薬が居宅においても必要か否かをチェックしていただくとよいと思います。入院中は患者さんに関わるスタッフが多いため、多くの薬剤であっても服用が可能で、アドヒアランスのチェックも比較的容易です。 しかし、自宅に戻られて患者さんや家族の方々だけでの服薬管理や剤形チェックははたしてどの程度可能でしょうか。 退院時に、居宅療養の環境を想定して院内でチェックすることでPIMやADEの発生を防ぐことができると思います。それに加えて、その後も刻々と患者さんの状態は変わっていくと思うので、定期的に外来や地域ベースで経過をみて、必要であれば処方の見直しをかけていくようなシステムがあるといいのではないかと考えます。

地域との連携判断とその働きかけ

恩田先生:病院薬剤師は退院のタイミングや薬物療法上のリスクを把握できる立場にあるので、地域との連携が必要か否か、またその連携内容について地域に伝えていくことができると思います。これまではなかなか病院薬剤師が入院患者さんの退院情報を入手しづらいため、積極的な関与が難しかったという側面がありました*1。しかし、病棟薬剤業務実施への加算により、病棟に常駐する病院薬剤師が増え、患者さんの退院情報を入手しやすくなったという好条件があります。退院後の薬物療法に関して、保険薬局との連携が必要なケースだと判断した場合には、地域連携室に担当の保険薬局の方を呼ぶことを提案するなどの働きかけが期待できます。また、退院時の調整を担当する地域連携室だけでは、病院薬剤師との連携が必要かどうかの判断は難しいと思いますので、病院薬剤部の側から働きかけるのが理想的だと思います。これを通常の退院調整業務のひとつに組み込んでいけるのであれば、病院薬剤師が地域で果たす役割も増えていくのではないでしょうか。

病院薬剤師への退院情報の未共有が退院時指導への参加を妨げていたことを示した研究*1

Identifying barriers to medication discharge counseling by pharmacists.
Walker SA. et al. (2014).
The Canadian Journal of Hospital Pharmacy, 67(3), 203-12.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24970940

 重大な投薬エラーの発生するリスクがある移行期ケアにおいて、退院時服薬指導を受けた患者さんの割合と、薬剤師が退院時服薬指導を行うのを妨げている要因について調査した研究。急性期病院8施設から退院し、リハビリ施設や緩和ケア施設など他の施設に移行した患者さんについて調査したところ、退院時服薬指導を行うべき403人の患者さんのうち、指導が実施されたのは29%の116人にすぎなかった。最も多くのケースで退院時服薬指導実施上の阻害要因となったのは、患者さんの退院時服薬指導の実施を薬剤師に知らせることを怠ったことによるものだった。また、退院時服薬指導を行う際に、処方薬の説明や薬物情報リストの作成、及びそのファックス送信業務に時間がかかり、それらが制約となっていることも指摘された。診療科ごとでは、総合内科や腫瘍内科で退院時服薬指導の実施率が低かった。退院後も薬物治療管理が必要となる腫瘍内科では、準備に多くの時間がかかることが退院時指導への参加を妨げる要因のひとつとなっている可能性がある。

共同退院時指導の実施と保険薬局薬剤師との連携

恩田先生:一方で、地域との連携が必要な場合、共同退院時指導を実施しているのであれば、保険薬局薬剤師に参加をしてもらえるように地域の保険薬局に声がけしてみるのはいかがでしょうか。地域の保険薬局に参加してもらうことで、その後の患者さんのフォローをより充実したものにすることが可能です。ただし現状では、実際に地域の保険薬局が退院時カンファレンスに参加している例は多くありません(図2)。
 前述の調査結果2)から、多くの保険薬局の薬剤師が退院時カンファレンスに参加する意思があることも示されています。保険薬局薬剤師の側へ病院薬剤師との連携業務の実施可能性についてたずねたところ、 「病院薬剤師―地域連携室―薬局薬剤師の3者間での入退院情報の共有と連携強化」「患者の同意の下、病院薬剤師が病棟において退院計画を把握し、薬局薬剤師と情報共有する」「薬局が病院の地域連携室と連携し、患者の同意の下、「かかりつけ薬局の選定」を退院時支援業務に含めてもらう」の3項目で、いずれも「実施可能」との回答が半数を超えました(「実施可能である」「どちらかといえば、実施可能である」の合計)。保険薬局は、いつ誰が退院するかがわからないので、声がかからなければ動けません。しかし、上記の結果を見ると声がかかりさえすれば、万難を排しても参加する保険薬局が多数派だと思います。両者の連携がひとつの仕組みとして成立し、それが広く受け入れられるようになれば状況は良くなると思います。

Q.退院時における病院薬剤師と保険薬局薬剤師の連携を促進することが大切というお考えですね。その他に病院薬剤師にできることはありますでしょうか。

恩田先生:これからは病院薬剤師と地域の医師との連携の充実も望まれます。医師との情報共有によって、漫然投与やアドヒアランス不良といった問題をより多く把握でき、処方内容の適正化につながったという報告*2もあります。両者の接点を作るための一番のポイントは情報共有するカンファレンスの機会を設けることだと思いますが、患者さんによっては病院薬剤師と地域の医師が情報共有をするために直接接点をもつことが難しい場合もあります。 その場合には、退院時サマリーを活用する方法があると思います。実際、患者さんに退院時サマリーを渡し、プライマリケア医・保険薬局に行ったときに見せてくださいというお手紙を渡す取り組みをしている病院もあります。ただ、患者さんが在宅に戻られた際にプライマリケア医・保険薬局で病院からのサマリーを見せない可能性もありますので、患者さん自身にプライマリケア医・保険薬局との情報共有がご自身のためになると理解してもらうことも重要になります。

医師-薬剤師間の連携/患者情報の共有により薬物治療アウトカムが改善した事例*2

薬剤師が提供する在宅医療サービスのアウトカム検証 ~全国調査の結果から~
恩田他(2013). 
医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業「地域医療における薬剤師の積極的な関与の方策に関する研究」平成25年度総括・分担研究報告書(代表:今井博久), 69-101.

http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201235022A

 2013年に行った全国規模の薬局調査で、訪問業務の対象となった患者5447名のケースのうち、14.4%にあたる784名で有害事象(ADE)が確認され、そのうち88.1%にあたる691件が、医師への疑義照会などの対応を通じて改善する結果が示された。また、患者さんに関する医師との情報共有について、検査値や検査に関する情報を共有している群については、共有していない群と比較し、漫然投与(p<.001)やアドヒアランス不良(p=.006)などの問題がより明確に把握できることが示唆された。

 海外では脳梗塞の患者さんに対する病院とクリニックの連携時に、紹介状へ薬物療法の表記を充実させることで、プライマリケア医が病院での処方レジメンの意図を理解し、患者さんに服薬意義を伝えることができるようになり、結果として患者さんのアドヒアランスが改善したという研究が存在します*3
 このような取り組みによって退院後の居宅療養患者さんが良好な状態で薬物治療を継続することは、その後病状が悪化して病院に逆戻りするといったことを防ぐことにもつながります。こういった事例も参考にしていただき、病院薬剤師の方々に活躍の場を広げていただければと考えております。

病院とクリニックとの連携によるアドヒアランス改善の事例*3

Providing systematic detailed information on medication upon hospital discharge as an important step towards improved transitional care.
Hohmann. C. et al.(2014).
Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, 39, 286-291.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24877212

 脳梗塞患者さんの病院とクリニックとの連携において、紹介状の薬物療法に関する記載情報の変更を通じ、退院後のアドヒアランスの改善効果を検証した研究。診療所への紹介状において、患者さん受け入れ先のプライマリケア医が、処方薬と投与歴・投与理由が一目でわかるよう、病院側の薬剤部が薬物療法報告欄を新たに作成し、入院時の処方内容、入院中の投与中止・処方変更・新規投与を行った薬剤とその理由等を明記することとした。従来の紹介状(退院時の投与薬と用法・用量のみを記載)を利用した患者さん156名と、薬物療法報告を記載した新しい紹介状を利用した156名の2群間で3か月後のアドヒアランスの差を検証したところ、全投与薬の服用率の平均値は、従来の紹介状を利用した群が83.3%であったのに対し、新しい紹介状を利用した群は90.9%と、新しい紹介状を用いた群において有意にアドヒアランスが改善した。脳梗塞患者さんの2次予防上特に重要な薬剤別の服用を見ると、抗血栓薬では、従来紹介状群の83.8%に対し新紹介状群は91.9%、スタチンにおいては従来紹介状群の69.8%に対し新紹介状群が87.7%と大幅なアドヒアランス改善が見られた。

退院時・移行期ケアにおける薬剤師業務に関する関連研究

保険薬局における認知症患者さんの併用薬使用実態とその客観的評価に関する研究

An Attempt at Objective Evaluation of the Current Situation of Concomitant Drug Use for Dementia Outpatients at Community Pharmacies.
Tanaka, Y., Onda, M.et al. (2014).
医薬品情報学, 15(4), 155–164.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdi/15/4/15_155/_article

国内28都道府県からランダムに抽出された薬局120箇所から抽出された335人の患者さんの情報を元に、認知症治療薬と他の薬剤との併用処方に対する評価と、潜在的に不適切な処方(PIM)の発生と関連する要因を探索した研究。処方箋の発行元の医師の専門性と中枢神経系用薬の併用がPIMの有無に関連していることが示された。

退院後の薬剤師による処方確認が再入院率とコスト削減に与える影響に関する研究

Postdischarge pharmacist medication reconciliation: Impact on readmission rates and financial savings.
Kilcup, M. et al. (2013).
Journal of the American Pharmacists Association, 53, 78-84.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23636160

再入院ハイリスクと認められた患者さんに対し、退院後3~7日目に、地域の薬剤師が電話によって処方確認や薬物療法のレビューを行った介入群(n=243)と、非介入群(n=251)の再入院率やコスト削減効果を調査した研究。退院後7、14、30日目の再入院率(介入群vs非介入群)は、0.8% vs 4%(P=0.01)、5% vs 9%(P=0.01)、12% vs 14%(P=0.29)であり、退院後7、14日目において有意に低下が認められた。患者さん100名あたりのコスト削減効果は約介入群で35,000ドル、1年に換算すると約1,500,000ドルに上った。一方、患者さん全体の80%で退院後に少なくとも1件以上の処方エラーがあることがわかった。退院後3~7日目に、薬剤師による薬物療法のレビューを受けることは、再入院率の低下とコスト削減効果につながることが示唆された。

退院直後の高齢患者における薬物関連問題の同定に関する研究

Identification of drug-related problems of elderly patients discharged from hospital.
Ahmad, A. et al. (2014).
Patient Preference and Adherence, 8, 155–165.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3920925/

退院後の高齢者の処方薬物を薬剤師がレビューしたことによって、数多くの薬物療法の問題点の洗い出しを行った報告。60歳以上で5剤以上処方されている患者340名のうち、ほとんどの患者さん(95.9%)になんらかの問題があり、問題点は処方薬剤数に比例して増加が認められた。処方のレビューで発見された問題点としては、明確な指示がないまま処方薬剤が中止されている、不必要に長く投薬している、不適切な薬剤選択、処方された用量が過少、薬物間相互作用などが上位に上がった。また、患者さんインタビューによって発見された問題の上位は、副作用の発現や服薬に関する知識不足であった。疾患別では、肺疾患と2型糖尿病患者に多くの問題点があることが認められ、薬剤師の薬剤管理指導への積極的な取り組みが求められる結果となった。

アメリカにおける薬局ベースの移行期ケア活動の実態~国勢調査~

Variations in pharmacy-based transition-of-care activities in the United States: A national survey.
Kern, K. A. et al. (2014).
The American Journal of Health-System Pharmacy, 71(8), 648-656.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24688039

移行期ケアにおける薬剤師の役割を評価するために、全米の病院薬剤部長1246人に対し、入退院時の処方確認や入院歴、服薬指導、退院後のフォローアップなどへの薬剤部の関与について調査を行った研究。調査はオンラインで行われ、393名から回答を得た。入院時に薬剤師が患者さんの服薬歴を完全に把握しているのは、全回答者の27%にとどまり、入院時の処方歴と処方確認の実施者は看護師とする回答が 半数を占めた。また、薬剤師が退院前に患者さんに服薬アドヒアランスをサポートするツールを提供する等の退院後のサポートも日常的には行われておらず、患者さんへの服薬指導も特定の薬剤(ワルファリンなどの抗凝血剤など)や、30日以内の再入院リスクが高い疾患(肺炎、がん、心筋梗塞、慢性疾患など)に限られる傾向が明らかになった。これらの移行期ケアにおいて薬剤師が役割を担う上での障害として、薬局スタッフ人材の不足による時間的制限や、薬剤師が移行期ケアに関わることへの医師や看護師らの理解不足が挙げられた。

Last Update:2015年3月