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会員限定経済学から見る病院薬剤師業務

第4回 スムーズな地域連携を実現する上で―栄養管理・感染管理に見る病院薬剤師の役割―

経済学から見る病院薬剤師業務第4回は、第3回の「急性期から在宅まで、医療連携の中での患者さんの逆流防止」という点について、更に踏み込んで解説します。本稿では、再度、臨床薬学と経営学の中間領域をご専門にされている日本経済大学大学院教授赤瀬朋秀先生にご登場いただきました。

Interview

Q.赤瀬先生には、第3回で高度急性期から急性期、あるいは、回復期・慢性期から在宅への流れを逆流させないことが、地域包括ケアを機能させる上で重要だとお話しいただきましたが、その点について詳しくお聞かせください。

赤瀬先生: 地域包括ケアという大きな枠の中で、医療改革における第一歩として「医療機関の機能分化と連携」が進められています。第6次医療法改正に伴う病床機能報告制度も始まりましたので、今後は、この点に関する取り組みは加速度的に進むものと思われます。
 そのような状況下、高度急性期から急性期、あるいは、回復期・慢性期から在宅への患者さんの流れを円滑にすることが、より重要視されるようになると思われます。
 すなわち、患者さんの流れがスムーズでないと、医療機関の連携が円滑に機能しなくなります。例えば、術後回復期の患者さんに何らかの合併症が発症して急性期に戻ったり、在宅復帰後に早い段階で肺炎が悪化して再入院したりするなどの例は、本来あるべき病床の運用に支障をきたすことになってしまいます。

 平成26年度の診療報酬改定の際に、7対1、10対1入院基本料の特定除外制度の見直しが話題になりました。この議論の中で特定除外にあてはまる患者の状態が、日本看護連盟のホームページに説明されています*1。例えば、90日超の入院が注目されましたが、実はその他にも、「全身麻酔その他これに準ずる麻酔を用いる手術を実施し、当該疾患に係る治療を継続している状態(当該手術日から30日間)」といった項目があげられています。特定除外項目に該当するこのような患者さんを急性期や回復期を担う医療機関に速やかに移さなければならなくなると、高度急性期を担う医療機関にはより一層の術後ケアの充実が求められることになると思われます。外科医は手術が成功したら次の患者の手術をしなければならない、そうなると、術後ケアは、看護師はもちろんチームで担うほうがよいとの考えに至ります。そのチームには、薬剤師をはじめ、栄養士やリハビリテーション技師が必要だと考えています。

*1 日本看護連携 看護連盟ニュース 2013年12月17日 「特定除外制度とは」
http://www.kango-renmei.gr.jp/news/2971/

Q.医療機関の連携を効果的な形で実現する上で、あるいは患者フローの適正化という観点から、栄養管理と感染管理が特に重要とのことですね。

赤瀬先生:特に、栄養管理と感染管理は手術の成果に直結するケアだと思います。手術が成功しても、術後の合併症によって入院が長期化すると、その後の連携に支障をきたすこともあるでしょう。したがって、術後合併症やそれに伴う入院の長期化に影響を与える要因を排除することが重要です。その手段として、術前や術後の栄養管理が重要ではないかと思います。特に、NST(栄養サポートチーム)には、薬剤師が積極的に介入することが重要だと考えております。消化器機能に影響する医薬品の情報提供や、患者の栄養状態の把握、栄養摂取方法の決定やプランの立案、モニタリング・再評価に積極的に関与することによって、患者の栄養状態を最良の状態にすることができると思います。

栄養管理におけるアウトカム事例

State of nutrition support teams.
DeLegge MH, Kelly AT (2013).
Nutr Clin Pract; 28, 691-697.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24170578

 臨床的ならびに医療経済的な観点から、栄養状態の管理の重要性やNSTの利点についてレビューした論文。
 主に術後の入院患者を対象としたいくつかの調査によると、栄養不良の発生率は30~55%と報告されている。これは、在院日数延長やコスト増に関連する問題である。栄養管理については、NSTの介入による栄養状態や臨床転帰の改善、コスト削減といった効果が実証されている。たとえば、NSTによるケア群とNSTではない単独ケア群(チームによる栄養管理ではない群)を比較した研究では、NSTによるケア群において死亡率が23%減少、在院日数が11.6%減少、再入院率が43%減少し、コストベネフィットにおいても、NSTの活動にかかる費用1ドルに対して4.20ドルの利益が見込まれるという報告がされている(Hassell et al., 1994)

 また、感染管理の視点も重要です。ICT(感染制御チーム)における薬剤師の役割は、抗菌薬の適正使用、TDMに基づく処方設計、エビデンスや最新情報に基づく感染制御・副作用対策の情報提供など多岐にわたります。ICTは、手術に伴う感染症リスクを最小限にさせ、重篤化の回避、早期回復・退院の流れをスムーズにすることも可能と思われます。感染管理における薬剤師業務の経済効果に関するエビデンスは前号で紹介しましたが*2、不適切な感染管理が医療経済上どの程度の損失を生むのかについて改めて確認すると、その大きさに驚かされます。

*2 今浦他 (2011). 集中治療室における薬剤師によるMRSA感染症治療への介入効果.
YAKUGAKU ZASSHI 131(4), 563-570.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21467796

感染症管理における医療損失について

耐性菌発現時における病院の財務的損失-MRSAを 中心に-.
大幸淳・赤瀬朋秀(2006).
月刊薬事,48(10),83-87.

 MRSA感染症に焦点を当て、院内感染に伴う財務的損失と院内感染対策の具体的事例を経済的観点から考えた論文。
 本邦での院内感染に起因する医療費損失は1兆7000億円に達する。MRSA感染1件あたりの平均医療コストが230万円との試算もあり、院内感染に関わる医療費損失は重要な問題である。加えて、DPCの拡大に伴い、院内感染に対する医療資源投入や在院日数延長は病院の財務的損失に直結する。また、院内感染に対する訴訟に伴う病院側の損失は過去の訴訟事例では1500万円~1億5千万円に上っている。
 そのような中、院内感染の発生状況の調査・分析・フィードバックを行うことによって院内感染が減少する報告や、抗MRSA薬使用に対し薬剤師によるTDM解析サービスを行なうことで医薬品使用の適正化・コスト削減が図れたといった報告が出てきている。医療事故・院内感染ともに医薬品の関与が大きいことから院内薬剤部門の役割は大きく、経営を担う部門として機能拡大が求められている。

Q.今後病院薬剤師のNSTやICTへの取り組みとして、更に期待される取り組みとは何でしょうか。

赤瀬先生:病棟薬剤業務実施加算やチーム医療の加速から、病院薬剤師が病棟に滞在する時間が長くなり、医療チームの一員として活躍できる環境が増えてきていると思います。その中で栄養管理や感染管理に病院薬剤師が積極的に関わることによって患者が受けるメリットは大きいと思います。一般社団法人日本病院薬剤師会の調査(平成25年度)によると、全国の調査対象病院の3,674施設中ICTが活動している施設は77.6%(2,851/3,674施設中)であり、ICTに薬剤師が介入している施設は93.9%(2,678/2,851施設中)でした。一方で、NSTが活動している施設は65.2%(2,395/3,674施設中)であり、NSTに薬剤師が介入している施設は87.5%(2,092/3,674施設中)と、いずれも高い割合です。このように、病院薬剤師のNSTやICTに対する介入は進んでいると思われますが、限りなく100%を目指してほしいと思います。
 さらに、病院薬剤師は在宅における栄養管理や感染管理にも間接的に貢献できるのではないかと考えています。今後の在宅医療の現場では、病院で実践しているレベルの栄養管理や感染管理の必要性を感じます。
 ご存知の通り、在宅医療における患者ケアは、かかりつけ医を中心とし、看護師など他職種とのチーム単位での取り組みが基本です。しかし、訪問看護師は様々な役割が求められている中で、さらに充実した栄養管理や感染管理を求めると負担が大きくなります。そのような中で、保険薬局薬剤師が、栄養管理や感染管理を通して在宅医療を円滑に実践するための活動に貢献できると考えています。在宅医療に取り組む診療所の医師から処方箋を応需する薬局は、積極的に居宅患者の管理に関わっていける立場にあります。また、サービス付高齢者住宅、介護老人保健施設等、高齢者が集まる施設で、常勤薬剤師のいない施設は、訪問薬剤師が大いに活躍できる場だと思います。特に、手洗いなどの初歩的な感染管理の促進、肌の状態、むくみ、口臭や尿、便などの異常がないか等、患者の栄養状態の初歩的な確認は、保険薬局薬剤師で十分対応可能だと思います。病院薬剤師は、そのような体制が取れるように、保険薬局薬剤師への情報提供や実務レベルのトレーニング支援などの働きかけができる存在であると思います。

Q.保険薬局薬剤師が居宅患者の栄養管理や感染管理に積極的に取り組むことも期待されますが、病院薬剤師がそのサポートに貢献できるということですね。

 

赤瀬先生:我々は、薬薬連携という言葉をよく使いますが、それがどのレベルで行われるのが望ましいのか再確認してもよいと思います。現状の合同の研修会中心から、さらに進化させて地域における栄養管理や感染管理の実践に踏み込んで支援する、実務者トレーニングの内容に踏み込んで支援する等の視点で、より深い連携が望ましいと考えます。そのことによって、在宅医療の実践に貢献し、結果的に自分たちの病院への患者の再入院を防ぐことにも繋がるのではないでしょうか。患者フローの逆流防止への効果的な取り組みになるのではと思います。そのためには、「地域において、院内と同じレベルのNSTやICTを機能させる」ことがポイントだと思います。 Interview 病院薬剤師は、自身の地域でどのように活動したらよいのか、自院のおかれた外部環境を再確認し、必要に応じた見直しも求められます。
 病院薬剤師は、“保険薬局の薬剤師との協働を通して地域にアプローチしやすい”という他職種とは異なる強みがあります。病院薬剤師の先生方の中には、NST専門療法士や抗菌化学療法認定薬剤師など、専門資格を持ってご活躍されていらっしゃる方も多いと思いますが、地域医療、在宅医療の面などあらゆるシーンでますます活躍されることを期待しております。

Last Update:2015.2.25