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会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第3回 高度急性期医療における薬剤師の役割への期待―ICUにおける経済的成果を参考に―

経済学から見る病院薬剤師業務第3回は臨床薬学と経営学の中間領域をご専門にされている日本経済大学大学院教授赤瀬朋秀先生にご登場いただき、高度急性期医療を中心に薬剤師の役割への期待とICUにおける薬剤師業務の経済的な評価をご紹介いただきました。

Interview

Q.高度急性期における薬剤師の役割として今後更に期待される点について、赤瀬先生はどのような点を挙げられますか。

赤瀬先生:薬剤師の病棟業務が始まった頃は、患者にクスリの説明をする服薬指導が業務の中心で、救急救命や集中治療室、手術室など、患者と「対話ができない」部署は後回しにされていたように思えます。 しかし、急性期医療にこそ、薬剤師の腕の見せどころがあり、当該領域における貢献は重要であると考えています。これらの部署には、容体が急変する患者や、重症患者が多く、処方薬の選択、投与方法、用量用法の調整等、処方のきめ細やかな微調整が患者の予後に大きな影響を及ぼす可能性があるからです。
 今後、地域における医療機関の機能分化と連携が進展していく中で、薬剤師が個々の施設の機能に応じた薬物療法を提案、実践、評価することによって、患者を連携先に紹介する流れをスムーズにさせることがポイントだと思います。患者が高度急性期から亜急性期や回復期、更に施設や在宅、-つまり上流から下流へ-と流れていく中で、薬剤師が職能を発揮することによってこのようなフローの逆流を防止することが、地域に対する医療、福祉など社会貢献の観点から考えると重要になります(図1)。

Q.先ほど急性期医療を薬剤師の「腕の見せどころ」とおっしゃいましたが、薬剤師の腕の見せどころとしては、具体的にどういう点がありますでしょうか?

赤瀬先生:救急センターや手術室など、高度急性期の重要な機能は、まず救命や手術ですが、その後のフォローアップも非常に重要で、そこに薬剤師の活躍できる場があると考えています。外科医にとって最も避けたいのは「手術は成功したのに予後が良くない」という場面です。例えば、術後せん妄によるベッドからの転落やチューブの自己抜去、経管栄養施行時にしばしば起こる誤嚥性肺炎、術後感染が長引くケースなどがこれに相当します。
 薬剤師の腕の見せどころとしては、術後や高度急性期を脱した人を速やかに一般病床に移行させることではないでしょうか。薬剤師は手術そのものにはあまり関わることはありませんが、術後という緊急性の高い医療がひと段落ついた後が重要であり、適切な感染対策や栄養管理などに積極的に介入することが望まれます。医師にとって、抗菌薬の選択、TDM、腎機能に応じた用量調整等に関する処方設計への助言は重要ですので、それによって診療プロセスの質向上にも貢献できるのではないかと思います。

Q.医療経済の観点から見ても、ICUにおける薬剤師の取り組みの成果が目に見えてくるようになりました。

赤瀬先生:そうですね。欧米ではICUに対する薬剤師の介入成果の報告はよく目にしますが
(Lada & Delgado, 2007;Leape et al., 1999など)、一方で同様の研究成果が、日本でも見られるようになりました※1。 今回ご紹介する日本の研究成果の示唆するところは、日常臨床の中で「たった一つのクスリを適正に使う」ことによって、ICU業務の診療プロセスの質向上や効率化を可能にできるということだと思います。 本研究では、抗MRSA薬の適正使用を目的とした介入だけでも、薬剤費削減、在院日数の削減など病院経営における重要な指標の改善といった成果に結びついています。今後、このような病院薬剤師の取り組みの成果を「見える化」させる事が望まれます。

邦文解説つき関連研究もご覧ください

本邦でのICUにおける病院薬剤師の介入による医療経済的な成果を評価した研究 ※1

集中治療室における薬剤師によるMRSA感染症治療への介入効果
今浦将治、木幡雄至、 他(2011)
YAKUGAKU ZASSHI,131(4),563-570
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21467796

 本研究は、MRSA肺炎と診断されて抗MRSA薬が処方された58例を対象とし、薬剤師が投与設計をした群を薬剤師介入群※、薬剤師が投与設計をしていない群を薬剤師非介入群として評価。
 結果、介入群の抗MRSA薬の投与期間は非介入群と比較して約5日間短縮し、1症例あたりの治療に要した抗MRSA薬の平均薬剤費は、有意差はないものの約3万円軽減。また、抗MRSA薬投与期間中の1症例あたりの平均医療費は、薬剤師の介入により約22万円の削減効果が認められた(p=0.03)。加えて、抗MRSA薬の投与期間を6日間短縮することにより、実医療費の削減効果は1症例あたり約53万円となり、医療費の適正化に貢献した。

※治療初期から治療終了まで抗MRSA薬の
投与設計を薬剤師が実施した患者群

Q. ICUでの病院薬剤師業務の日本の現状と今後の期待についてコメントをお願いします。

 

赤瀬先生:日本病院薬剤師会が行った平成25年度「病院薬剤部門の現状調査」によると、ICUまたはHCUなどを併設している施設は31.1%にあたる1,141施設です(精神科病院のぞく)。

Interviewそのうち専従または専任(1日平均5割以上従事)でICU業務に当たっている施設は24.9%にあたる150箇所にすぎません。一方で、米国で行われた病院薬剤部に対する調査※2によると、回答のあったICU保有施設のうち、62.2%がICUにおいて専任の薬剤師業務の提供を行っているとの結果もあります。日米における医療制度上の違いや訴訟リスクに関する環境を考慮する必要がありますが、その点を踏まえても、病院薬剤師のICUにおいて更に貢献していける可能性を感じる報告であると思います。今回ご紹介した論文は、今後高度急性期医療における薬剤師業務のさらなる展開を示唆させる重要な報告であると思います。

米国におけるICUでの薬剤師配置の実態を調査した論文 ※2

Critical care pharmacy services in United States hospitals.
Maclaren, R. et al. (2006)
The Annals of Pharmacotherapy, 40(4), 612‒8
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16569803

 ICUを備える米国内の全ての病院、3238施設を対象に質問紙郵送調査を実施(対象業務項目は、臨床、教育、運営、学術研究の4分野)。返送率は11.8%で、382施設から回答を得た(ICU数=1,034)。それによると、62.2%のICU施設が専任のフルタイム薬剤師による臨床業務を提供しており、同施設の薬剤師は週あたり平均で4.4±1.5日、全業務時間の43%を臨床業務に費やしていた。もっとも多く行われていたICUでの臨床業務はDI活動(83.9%)で、次いで薬物療法の評価(78.8%)、薬物変更への介入(78%)、薬物動態モニタリング(75.2%)などと続いた。

Q.今後、高度急性期医療の中で薬剤師が更に役割を発揮していく上で求められる視点とはどのようなものでしょうか。

Interview赤瀬先生:まず、薬剤部門として、自院が地域においてどのような役割を担うのか確認することが大切ではないかと思います。当該地域において、上流から下流までの医療がどのように展開されるのか、そして自院がどのフェーズの医療を担うのかによって薬剤部門の役割は大きく変わると思います。
 今回は高度急性期に着目しましたが、ICUにかかわる薬剤師は、自院の機能に応じた役割を理解したうえで、薬剤部門と関連部署を包括的な視点で考えてみる事がポイントだと思います(図2)。例えば病院のミッションとして「高度急性期を更に充実させる」というテーマを掲げている場合、「自分たちの職能でその充実のために何ができるか」、そのために他部署との連携や役割分担がどうあるべきかという視点を持つことが重要になるかと思います。

 極端な例をあげますが、ある急性期病院で、「救急車の受け入れを5,000台から6,000台に増やす」という目標を持ったとしましょう。これを院内すべての部署で共有できないと、他部門の関係者は「救急センターと救命病棟の話だから一般病棟は関係ない」と考えるかもしれません。しかし、救急車の台数を増やすためには、救急の処置が終わった人をスムーズに一般病棟に移し、ベッドを空ける必要があります。そのためには一般病棟の医療者にはベッドをコントロールして救急からの受け入れを迅速に行うという役割が求められます。このように、一見関係がなさそうな病院の目標も院内の多くの部署と密接に関連することがあります。目標達成のためには、薬剤部門を含め各部署が目標に対し役割分担・共有をすることがとても重要になるのではないでしょうか。

 急性期医療を担う薬剤師としてその役割を更に発揮するためには、地域における自院のミッションを理解し、部署や病棟単位、チーム単位で自分たちの役割を考えていくことが必要です。日本の急性期医療において、薬剤師が活躍できる場はまだまだたくさんあると思っています。今回ご紹介した論文・海外事例などもご参考になれば幸いです。

ICUにおける薬剤師業務の医療経済的な成果を述べた関連研究

救急部門における薬剤師介入の文書化と関連コストの回避

Documentation of pharmacists’ interventions in an emergency department and associated cost avoidance.
Lada, P., & Delgado, G. (2007).
American Journal of Health-System Pharmacy, 64(1), 63-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17189582

米国の救急病院において薬剤師の介入により医薬品コストの大幅な削減に成功した事例。市街地外傷センター救急部においてTDMの実施、薬物投与量の調整、看護師の質問への回答などを通じて行われた介入研究。介入は4ヵ月間、2150回にわたり、経済評価の指標は医薬品の費用のみが用いられた。期間中の推定で100万ドル以上のコスト削減、1年換算で309万ドル相当の削減が見られた。

医師回診への薬剤師の参加とICUにおける薬物有害事象

Pharmacist participation on physician rounds and adverse drug events in the intensive care unit.
Leape L. L., et al. (1999).
The Journal of the American Medical Association, 282(3), 267–70.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10422996

米国における教育病院のICU(介入群)とCCU(対照群)の患者125名を対象に362回にわたり実施された介入研究。回診に同行、処方エラー回避を目的とした相談などの業務を通じて有害事象58件の回避が可能になった。回避した副作用を数量化したところ、1年換算で270,000ドル相当のコスト削減を示した。

Last Update:2015.1.15