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会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第2回 医療経済的な成果の視点より浜松医科大学医学部附属病院の薬剤部の取り組みとマネジメントについて

第1回企画にご登場いただいた川上純一先生が薬剤部長を務める浜松医科大学医学部附属病院(静岡県浜松市・今野弘之病院長、613床)では、約40名の薬剤師が薬剤部及び臨床業務、教育・研究に従事し、それらの分野で成果をあげています。 同薬剤部の考え方について医療経済的な観点も踏まえて、教授・薬剤部長の川上純一先生、副薬剤部長の青野浩直先生(業務・マネジメント担当)、堀雄史(かつひと)先生(教育・安全管理担当)のお三方にお話をうかがいました。

Interview

病院内での戦略的な薬剤師配置

Q.医療経済的な成果の観点からも重要な「医療安全の取り組み」について、浜松医科大学医学部附属病院薬剤部の現場で、取り組んでらっしゃる特徴的な事例についてお教えください。

堀先生:まず基本的な取り組みとして、医療安全管理室のカンファレンスに薬剤部として積極的に参加していることが挙げられます。当院では週1回1時間のカンファレンスがおこなわれています。しかし、その1時間で1週間分のインシデント全てに対応することは困難です。そのため、薬剤部として、ゼネラルリスクマネージャー(GRM)から事前に薬剤関連の情報を収集したり、情報交換をしたりと、能動的に他部署との連携を図る事に力を入れています。
 薬物療法に関するインシデントが病院内で起こった場合、当院では薬剤部が医療安全に積極的に関与していることから、他職種が遭遇したインシデントに対し、インシデントの誘発を防ぐしくみ作りや業務内容の改善を薬剤部が作成し対応するケースが多々あります(図1)。 図1 医療安全に関する薬剤部の取り組み

堀先生:一例が、与薬オーダーシステムの使用法の改善です。 当初、看護師への投薬指示は「mL」表記などによる用量単位でしたが、医師が処方をオーダーする当院のシステムは本数単位で、この違いにより投与量に関するエラーリスクが存在しました。多くのスクロールが必要な画面の最下部に、用量単位の指示を入力するコメント欄はありましたが、見落とし等も発生し、確認しづらいという難点がありました。そのため、本数単位ではなく用量単位での入力への変更を検討し、画面のスクロールとコメント欄の確認を病院内に周知しました。

Interview

川上先生:与薬に関する教育・啓発としては、看護師に対する教育の場にも薬剤部が参加しています。教育・研修の段階から薬剤部のメンバーがコミットすることで与薬エラーや点滴ミスなどについての意識付けをしています。日々の業務では、特にICUやNICU等での処方・指示では細かい調整が必要となりますので、医師の意図が看護師に正確に伝わっているか、病棟薬剤師が確認することで果たす役割が重要になります。

青野先生:また、ICUでは使用薬剤と点滴ルートが多いため、配合変化や投与速度などのチェックを病棟薬剤師がおこないます。カンファレンスへの参加や、エビデンスに基づいた薬剤の使用法に関する医師・看護師への情報提供等により、安全面に関する基本的な取り組みは根づきつつあると考えます。

Interview

川上先生:医薬品の取り違えなどの表面的エラーを防ぐことも不可欠ですが、薬剤師にとって治療学的な安全性を守ることも、薬学的専門性を最も求められる重要な役割です。そのことを念頭に、治療期間や在院期間の短縮につなげるための処方提案なども積極的におこなっています。

川上先生:当院では経営・管理上の主軸機能である手術部やICUに数年前から戦略的に薬剤師を配置しました。ハイケアユニットの管理や手術室との連携、院内感染対策などに積極的に取り組み、病院の機能をうまく回すために薬剤師の専門能力を最大限に発揮させることは、安全管理や他職種の負担軽減のみならず、経営的な視点からも大きな意義があると考えています。

日常業務の中での臨床研究への取り組み:業務の標準化に向けて

Q.患者さんの安全を守り、なおかつ薬剤部の業務がさらに発展していくために取り組まれていることはあるのでしょうか?

川上先生:当院では、日常業務の場である病棟やICU等における患者を対象とした臨床研究を薬剤師が数多くおこなっています。
臨床研究を通じて涵養(かんよう)される科学的能力や思考力は、より良い薬剤業務を行うためにも欠かせません。日々の業務が最優先ですが、当薬剤部ではすべての薬剤師が何らかのかたちで臨床研究や実務研究にも取り組んでいます。

浜松医科大学医学部附属病院における近年の研究事例

Impact of CYP3A5*3 on plasma exposure and urinary excretion of fentanyl and norfentanyl in the early postsurgical period.
Tanaka, N., Naito, T. et al. (2014).
Therapeutic Drug Monitoring, 36(3), 345–52.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24365989
52名の手術患者を対象に、薬物代謝酵素の遺伝子型の違いが、麻酔や鎮痛に使われるフェンタニルの術後の体内動態に影響があるのかを評価した論文。フェンタニルの持続点滴静注を受けている成人患者について、手術後のフェンタニルおよびその代謝産物であるノルフェンタニルの血漿中濃度や尿排泄を調査した結果、遺伝子型の違いにより血漿中濃度に顕著な差が確認された。また、フェンタニルとノルフェンタニルの尿細管分泌が血漿中濃度にわずかに影響することも示された。これらの知見は術後疼痛管理の最適化に有用な情報になる。

Plasma exposure of free linezolid and its ratio to minimum inhibitory concentration varies in critically ill patients.
Yagi, T. et. Al. (2013).
International Journal of Antimicrobial Agents, 42(4), 329–34.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23988716
重篤なMRSA感染患者に対し、抗菌薬の血中薬物動態をモニタリングすることの臨床的な意義について検討した論文。ICUにおいてリネゾリドの静注を受けているMRSA感染患者20名の血液サンプルを評価した結果、遊離形濃度は腎障害と低アルブミン血症の患者において変動が大きいことが確認された。2名の患者においては、通常の用法・用量ではAUC/MIC値が有効域に達していないことが分かった。重篤なMRSA患者では有効なAUC/MIC値を維持するために、リネゾリドのモニタリングが必要であることが示唆された。

堀先生:当院での業務や研究には、独自に構築したデータベースシステムも活用されています。患者さんの年齢や性別などの基本情報から疾患情報、検査データ、治療内容まで、全ての情報を一元化してデータベースに記録しています。また、処方提案のための登録情報も記録しているため、ある処方提案を通じてどのように治療法が変化したか、または副反応が起きたかということを時系列で確認することができます。これらはデータベースがあるメリットの一つと考えています。
 実際の薬剤疫学研究への活用例としては、抗がん剤治療時に使用する制吐剤の使用実態調査や、副作用の発現率の解析などがあります。日々の業務の中で蓄積される情報を二次的に活用できるため、効果的に検証を進めることができます。

浜松医科大学病院の臨床研究データベースを用いた研究

Detection of fluoroquinolone-induced tendon disorders using a hospital database in Japan.
Hori, K. et al. (2012).
Pharmacoepidemiology and Drug Safety, 21(8), 886-9
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22532516
ニューキノロン系抗菌薬の副作用として知られる腱障害の発生について、浜松医科大学のデータベースを利用し、疫学的に調査した研究。浜松医科大学で過去13年間にわたりニューキノロン系抗菌薬を処方された外来・入院患者17,147人のうち0.082%にあたる14人が腱障害を発症していたことが示された。これは、非ニューキノロン系抗菌薬を処方された患者の発症リスク(0.013%; n=38,517人)の6.29倍(CI:2.27-17.46)に相当し、有意に高い結果であった。日本国内においてニューキノロン系抗菌薬の腱障害発生リスクに関するデータは報告がなく、貴重なデータとなった。

薬剤部の成果向上に向けたマネジメントについて

Q.川上先生が、医療経済的な観点も含め、薬剤部の成果を向上していく上で、特に意識されているマネジメントについてお教えください。

川上先生:部員の考え方や業務への取り組みの程度にはもともとは個人差がありますが、きめ細かい職員教育や病院内での情報共有などを通じて、低い方ではなくより高い方に標準を引き上げていきたいと考えています。そういう環境での薬剤師一人ひとりの実績の積み重ねが、結果として薬剤部としての大きな成果や評価につながると信じます。
 職員教育では、各自がそれぞれ担当している業務や業務外 (研修・研究)ごとに具体的な目標を持たせ、一年後に評価した上で翌年度の目標を設定することを数年前から行ってきました。人事面談も原則として年に1回以上は設けて目標を設定してもらいます。薬剤管理指導の件数や病棟業務に関わる回数など、測定可能な実績を目標として設定しますが、実績(数や量)だけでなく、それを達成するための行動目標も大事だと指導しています。

Interview

川上先生:また、薬剤師は診療報酬だけで評価される職種ではないので、経営陣に向けて診療報酬と結びつけたアピールをしすぎると、直接的に報酬に関わらない業務はないがしろにしても構わないという誤解につながる可能性があります。
 そのため、直接的に量的な成果を求めるよりも、成果を上げられる環境づくりを優先させる事が重要と考えます。気持ちよく仕事に取り組める、課題が生じても部全体で解決できる、業務を効率化して時間外は自己研鑽に時間やエネルギーを投資できるなど、環境を整えることで薬剤師の考え方や業務や研究への取り組み状況も変化します。その結果、それが指導件数等を含めた薬剤部全体としての臨床的、経済的および学術的な成果につながるのだと思います(図2)。

 経営側も、薬剤管理指導件数、薬剤コスト、医療安全など、病院経営上重要なポイントは常にチェックしています。当薬剤部では、幸いにも薬剤部の環境づくりが実を結びつつあることもあり、薬剤管理指導件数は年々増えています。一方で、当院では客観的な評価として患者満足度も重視しており、その調査結果では「薬剤師からの説明」「薬剤師の態度、言葉遣い、身だしなみ」の評価が年々上昇しています。管理指導件数のような病院経営上の量的な成果に限らず、真に患者に必要な薬物治療の質を高める組織行動を薬剤師がとる事が重要だと思います。

Last Update:2015.01.19