ログイン・会員登録

会員の方

ID・パスワードをお持ちの方は、
こちらからログインください。

パスワードをお忘れの方はこちら

認証キーの承認をされる方はこちら

2016年1月より会員IDがメールアドレスに統一されました。

会員登録されていない方

会員限定コンテンツのご利用には、会員登録が必要です。

新規会員登録

サイトマップお問合わせ

  • 新規会員登録
  • ログイン

会員限定 経済学から見る病院薬剤師業務

第1回 臨床・経済的アウトカムから見る病院薬剤師業務と今後の期待

日頃の病院薬剤師業務を経済学でひもとく本企画の第1回は、日本病院薬剤師会常務理事および日本薬剤師会常務理事としてご活躍されている、浜松医科大学教授・医学部附属病院薬剤部長の川上先生にご登場いただきます。臨床・経済的なアウトカムの視点から見た、病院薬剤師業務の付加価値や、今後への期待などをお話いただきました。

Interview

病院薬剤師にとっての臨床・経済的アウトカムについて

病院薬剤師業務に対する臨床・経済的アウトカムがテーマということで、みなさんになじみ深い診療報酬における病棟薬剤業務のお話からお聞かせください。平成24年度の新設から2年が経過しましたが、病棟薬剤業務実施加算の届出施設は全国で1,100程度、500床以上の病院でも3-4割に過ぎないとの現状をどのようにお考えでしょうか。

川上:病棟薬剤師業務実施加算の算定要件を満たすのは容易ではないと思います。また、加算点数だけでは薬剤師の人件費をカバーしきれないという声があるのも事実です。一方で、中央社会保険医療協議会が行った検証調査の結果では、病院経営上のメリットだけでなく、勤務医の負担軽減や、チーム医療を推進するきっかけになったという高い評価が得られています。今後も薬剤師の貢献範囲をさらに広げていく上では、経営上の収益だけに偏らない見方が必要です。経営的な目線と、患者さんや社会的立場からの目線の両方をバランスよく持ち、限られた財源を国民のメリットにつなげる姿勢をしっかりと示すことが重要だと考えます。

病院経営的な視点、患者・社会的な視点で具体的に病院薬剤師業務をどのように評価すればよいかお聞かせください。

Interview

川上:病院薬剤師の業務は様々な観点でのメリットを持っています。医療経済的に病院薬剤師業務の付加価値を見ると、それは病院経営的な視点、患者・社会の視点それぞれにおいて表現されます。例えば、2010年の研究(図1)などによると、病院薬剤師の業務を通じて患者さんの在院日数を短縮したり、薬剤コストを削減したりといった、コスト削減、あるいはコスト発生防止は、病院経営上のメリットに限らず、患者さんのQOL改善の視点においても大きな価値があると示されています。
 特に、長期療養施設や精神科での在院日数の短縮、急性期医療における感染症の合併症予防や副作用の防止による追加コストの削減、在宅や外来治療へのスムーズな移行などは、病院薬剤師の活躍が今後益々期待される分野です。薬剤師は、診療報酬が直接算定できる業務だけでなく、患者・社会的な視点での経済的メリットにつながるような業務にも積極的に取り組み、成果を示していくべきでしょう。

邦文解説付き先行研究もごらん下さい

具体的な事例 -先行研究より-

川上:実際に、病院薬剤師業務の医療経済価値を評価した先行研究を見ると、具体的にその内容が理解できます(図2)。これらの欧米の先行研究は、病院薬剤師業務がどの程度付加価値があるのかを理解する上で目安になります。海外の事例のため、医療提供体制や保険制度の違いからそのまま参考にできるものではないかもしれませんが、一つ一つの業務成果は日本の我々にとっても参考になるものではないでしょうか。個々の薬剤師や薬剤部門において、日々の業務が診療報酬という“分かりやすい”形に限らず、広い意味での臨床的・経済的なアウトカムに大きく貢献しうると考えています。 さらに、退院時の管理指導については平成26年度改定で病棟薬剤業務実施加算の努力義務になりました。地域包括ケアにおいて退院時の管理指導は、外来や在宅医療など退院後のケアにつながる重要な位置付けにあり、今後も積極的な取り組みが望まれます。そこで、退院時指導が経済的な視点でどの程度の成果を見込めるのか、参考として近年の研究例を下記に紹介します。

退院時指導、急性期医療、再入院率低下、コスト削減

病院全体の薬学サービスの実践モデルが再入院率と救急科訪問率に及ぼす影響

Effects of a hospitalwide pharmacy practice model change on readmission and return to emergency department rates.
Anderegg, et al. (2014)
Official Journal of the American Society of Health-System Pharmacists,
71(17), 1469‒79.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25147171
カナダの大学附属病院の急性期病棟において、薬剤師チームによる入退院時指導の取り組みを紹介した研究事例。2ヶ月間、入院患者3,316名 に対して薬歴管理、退院の決定、退院後の投薬プラン指導の介入を行った結果、特にハイリスク患者358名の退院後30日以内の再入院率と救急科訪問率の有意な低下を達成した。1年あたりのコストに換算すると$780,000の削減になると試算している。

退院時指導、感染症、チーム医療、コスト削減

退院後外来にて非経口経路で感染症治療を受ける患者に退院前より医療チームが介入する影響について

Impact of a multidisciplinary team review of potential outpatient parenteral antimicrobial therapy prior to discharge from an academic medical center.
Heintz, B. H. et al. (2011)
The Annals of Pharmacotherapy, 45(11), 1329‒37.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21990938
米国の大学附属の第3次医療機関にて、感染症専門の薬剤師や医師を含むチームが退院前に処方の決定、処方前試験の実施判断、患者の様態管理の介入を行った結果、入院日数の短縮化およびカテーテル挿入治療の回避によってコスト削減に結びついた事例。1年間、536名の入院患者に対して処方の最適化に関する介入を行ったところ、1件あたり平均$620.70のコスト削減を達成した。薬剤師をチームの中心に置いた、安全性に配慮した移行期ケアの実践例を紹介している。

薬剤師が取り組むべき「医療安全」とは

病院にとって医療安全は経営管理上の大きな柱として捉えることができます。一方で、経済的視点からも川上先生は薬剤師の主要な役割として「医療の安全を守る」という点に力点を置かれています。その視点に立ち、病院薬剤師が日常業務で意識して取り組むべきことはどのようなことだとお考えですか。

Interview

川上:薬剤師にとっての「医療安全」には、主に3つの視点があると考えられます(図3)。薬剤師に求められる「薬学の専門性」という観点からの医療安全については、副作用の軽減、相互作用の回避、院内感染の防止、合併症の予防などが挙げられます。例えば、がん化学療法の副作用が激しい場合に抗がん剤の投与を減らすと、本来達成できるはずの化学療法の効果が落ちてしまいます。予想される副作用に対し事前に対応して軽減する、あるいは患者さんが受け入れられるような状態に持っていくことができれば本来の治療が完遂でき、治療効果が上ることで患者さん・病院にとっての本来の費用対効果が得られるわけです。
加えて、院内ニーズの視点では、医療者による医薬品の取り違え等の投薬エラーを予防し、「共に働く同僚を守る」という役割もあります。どんな職種の人でも薬を安全に扱えるように、啓蒙・教育する、あるいは院内の体制を整えるところに専門性を発揮する事が重要と思います。例えば、他の医療者も安心して調剤後の薬を取り扱える体制づくりを行うと共に、薬剤師は医師への処方提案など薬学的専門性の求められる業務に多くの時間を割けるようにする、といった考え方もあると思います。これも薬剤師が求められている費用対効果の一つであると私は考えています。
対患者さんの視点ということでは、「薬の専門職」として信頼してもらうところにあるのではと思います。薬剤師は、他の医療者には言いにくいことでも相談できるという、第三者的立場として患者さんと接することが可能です。例えば、薬の副作用などによって医療不信に陥っている患者さんが、薬剤師に相談してくださることもあります。副作用のことも含め薬への理解を深めることで、患者さんのアドヒアランスが上がったり治療に前向きになれたりすることがあります。また、副作用の初期症状を事前に伝えることで、安心して治療に取り組んでもらえることもあります。薬の使い間違いや治療を妨げるような副作用を予防・最小化する、患者さんの薬物治療に責任を持つ、そんな役割が薬剤師には期待されていると思います。こういった患者さんのニーズに応えることも、患者さんの利益を守り、医療安全、医療の成果に結びつくのではないかと思います。
総じて、これら薬剤師が取り組む3つの医療安全が、結果として、病院経営上、そして患者・社会にとっての経済的価値につながるのだと思います。

今後の病院薬剤師の益々の役割の発揮を考える上で、読者のみなさんへのメッセージをお願いします。

Interview

川上:薬剤師が価値ある業務を提供していることを、薬剤師自身が患者さんや社会に説明できることが重要です。その上では、医療経済的な視点で自身の業務を再確認することは、現状の取り組みを再考する上で大いに役立ちます。自分たちの服薬管理指導が患者さんのその後の治療成果にどうつながるのか、薬剤師業務と社会とのつながりをイメージしたり、現在受け 持っている業務とその後に続く業務フローとの関係を意識したりすることは、仕事のやりがいにつながります。自分たちが行う業務が、社会における疾病管理にプラスに働いていくという実感によって、職業人としての専門性を伸ばしたり、プライドを高めたりすることができるのではないでしょうか。ファーマシューティカルケアの概念を最初に提唱したヘプラーは薬剤師業務のミッションについて次のように述べています。「薬剤師の専門性は、すべての薬剤師が個々の患者さんにとっての安全で効果的な薬物療法を保証し、その社会的な責任を受容することによってのみ完遂することができる。」このことを念頭に日々の業務に励んでいただければ幸いです。

ファーマシューティカルケアにおける機会と責任

Opportunities and responsibilities in pharmaceutical care.Hepler, C. D., & Strand, L. M. (1990) Am J Hosp Pharm, 47(3),533 –543. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2316538
ファーマシューティカルケアの概念を世界で初めてヘプラーが提示した論文。薬剤師は調剤等の内向きな役割にとどまらず、社会善に対する貢献こそがその本分であると、当論文を通し喝破している。90年当時、米国では、投薬エラーに起因した副作用により、12,000人の死者、15,000件の入院が毎年報告されており、その社会的課題を背景に、薬物治療の安全に責任を持つ事こそ薬剤師の本分であるとした。

病院薬剤師さんの介入事例参考文献

1)【病院業務全般、有害現象回避、コスト削減】

タイトル(日本語):大学附属病院における臨床薬剤師の介入がもたらす経済的アウトカム
2012年にアイルランド最大の大学付属病院において長期間にわたり実施され、病院全体に対するコスト回避の成果を顕著見られた事例。薬剤師による介入が行われた1年間、全てのケースを後ろ向きに評価。2,147件の介入が対象となり、処方経路、頻度、タイミング、服薬量などの見直しを通じた介入の結果、有害事象をトータルで3,417件回避し、710,000ユーロ相当のコスト回避を実現した。

タイトル(英語):Cost-outcome description of clinical pharmacist interventions in a university teaching hospital.
著者:Gallagher, J. et al. (2014).
掲載誌:BMC Health Services Research, 14, 177.
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=4020601&tool=pmcentrez&rendertype=abstract

2)【DI、TDM・業務見直し、在院日数短縮、コスト削減】

タイトル(日本語):臨床介入によるコスト削減と回避
臨床薬剤師の活動時間を改善すべき指標の一つとして設定した米国の急性期病院における介入事例。治療の最適化(DI活動、薬物動態の助言、TDMの実施、用法用量や投与経路の調節など)を通じて在院日数延べ372日短縮。10ヵ月間、4,050回にわたる介入の結果、推定で460,000ドルの削減を実現した。

タイトル(英語):Cost savings and avoidance from clinical interventions.
著者:Mutnick, A. H. et al. (1997).
掲載誌:Official Journal of the American Society of Health-System Pharmacists, 54(4), 392–6.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9043561

3)【感染症、在院日数短縮、死亡率減少、コスト削減】

タイトル(日本語):教育病院における感染症制御プログラムのアウトカム
薬剤師による感染性制御分野での大規模介入を通じ顕著な効果が確認された事例。米国の教育病院において2年間、7,219名を対象に介入が行われた。処方制限と未使用の抗菌注射薬の処方に対する見直しを通じて、平均在院日数が2.4日短縮、死亡率1.67%減少という臨床上のアウトカム向上が認められた。費用コストの面でも研究期間中に291,885ドルの削減、抗菌注射薬費が31%削減された。

タイトル(英語):Outcomes of an antimicrobial control program in a teaching hospital.
著者:Gentry, C. A. et al. (2000).
掲載紙:Official Journal of the American Society of Health-System Pharmacists, 57(3), 268–74.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10674779

4)【病棟業務、コスト削減、在院日数短縮】

タイトル(日本語):第3次医療機関における薬剤師の介入による経済的および臨床的アウトカム
薬剤師の病棟業務が薬局と病院両方におけるコスト削減に貢献することを明らかにした研究。米国の3次医療の教育病院において、9カ月間、のべ867名に対する介入を実施した。その結果、各介入の平均で医薬品費を約300ドル、病院費を約1,600ドル削減した。また、在院日数も1.3日短縮した。具体的な介入内容は、回診への同行、医薬品情報の提供、薬物治療の相談、治療変更の提案などであった。

タイトル(英語):Pharmacist influence on economic and morbidity outcomes in a tertiary care teaching hospital.
著者:Boyko, W. L. et al. (1997).
掲載紙:Official Journal of the American Society of Health-System Pharmacists, 54(14), 1591–5.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9248601

<その他お薦めの文献>
 全米薬剤師の臨床業務を対象とした大規模調査を定期的に行い、その臨床的・経済的アウトカムについて示唆に富んだ研究報告がございます。ご参考までにご紹介いたします。

5)【病院薬剤師の配置、投薬エラー】

タイトル(日本語):米国病院における臨床薬学業務、薬剤部の人員配置および有害事象
1998年に米国の584病院(患者数約196万)を対象に、薬剤師の臨床業務および薬剤部のスタッフ配置と有害事象発生率との関連をデータベースより解析した大規模調査研究。薬剤師が行う12業務と薬剤部スタッフの増員が有害事象発生件数の低減に大きく貢献している。このような取り組みを行わない場合、有害事象発生率34.9%増、入院日数13.64%増、死亡率53.4%増、年間薬剤費185万ドル増、総コスト1,174万ドル増と報告している。

タイトル(英語):Clinical pharmacy services, pharmacy staffing, and adverse drug reactions in United States hospitals.
著者:Bond, C. a, & Raehl, C. L. (2006).
掲載紙:Pharmacotherapy, 26(6), 735–47.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16716127

Last Update:2014.11.13