A私が日常的にチェックするバイタルサインは血圧、脈拍、「経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)」で、場合により聴診も行います。
本テーマの前半編の総論でも触れましたが、初心者の方が始めやすいのは血圧とSpO2の2つです。どちらもガイドラインの数値にとらわれすぎず、その患者さんにとっての「普段」と比べて変化があるか? に注目すること、そして変化があれば度合いと原因を薬剤以外の要素も踏まえて考えることが大切です。
<血圧のポイント>
手技の練習が必要になりますが、電子血圧計でなくアネロイド血圧計(※)が使いこなせるようになると、年齢、性別、疾患も含め個々人で脈拍音が違い、さらには同じ患者さんでも日によって異なることがよくわかります。
※アネロイド血圧計:アネロイドは「液体を使わない」を意味するギリシャ語で、水銀を使用せずに測定できるタイプの血圧計。正確性が水銀を使用する血圧計に比べ劣るときがあるが、コンパクトで安全性が高い。
<SpO2のポイント>
血圧にもいえることですが、在宅医療においてはあまりガイドラインの基準値が参考にならないときが多々あります。
SpO2も基準値は95%以上と言われていますが、在宅医療では呼吸器、循環器疾患の患者は少なくありません。そこで、呼吸不全の定義に当てはまる1つの目安として90%をクリティカルな指標にしてもよいでしょう。
<便利なツール>
訪問薬剤管理指導に持ち運びしている血圧計、パルスオキシメーターといったフィジカルアセスメントに使用しているツールのなかで、1つご紹介したいのは、血圧測定時に腕をのせるツールとしてのマニキュア台です。
数千円台でインターネットでも入手でき、これがあることで血圧測定時の安定感がまったく変わるのでお勧めです。
便利なツールと活用ポイント
チーム医療では互いに理解できる「共通言語」を使用した情報共有がスムーズな連携の第一歩。多職種との連携が求められる今後の薬剤師業務において、バイタルサインは最低限必須の共通言語です。
在宅医療の現場において、バイタルサインをとる手技「フィジカルアセスメント」と連携にあたっての情報共有の実際という観点で、ポイントや便利なツールを解説いただきます。
株式会社エーアンドエム
しなの薬局 長岡赤十字病院前店
安澤 泰永先生(管理薬剤師)