A①始めることを困難にしているのは何か、②薬局内での対応から始まる在宅医療という2つの観点からお伝えします。
① 始めることを困難にしているのは何か
在宅医療を始められないという薬剤師の方に話を聞くと、患者情報や病状などすべて状況が整わなければ不安なのかな、と感じる時があります。在宅医療では、全部の状況と準備が整うケースは極めて稀です。
考え終わった後に行動するのではなく、行動しながら考え、訪問してから情報収集することもあります。
処方薬の全容を把握できていなくても、残薬の有無を確認し、情報が不確かであることも多い認知症の方のお薬手帳を確認し、病院で処方内容を聞くなどして、関係する人たちが全員で情報を集め、支援体制を構築していきます。
外来調剤の業務とはギャップがありますから、心の準備がむずかしいかもしれません。また、在宅医療の依頼は突然発生することもあるので、事前の準備ができずに開始するのは心理的なプレッシャーにもなります。
こうした、心理面での要因は、日本在宅薬学会をはじめ、地域薬剤師会などでスキルやネットワーク面から支援できたらと考えています。
② 薬局内での対応から始まる在宅医療
「患者さんの住まいに行くこと」が在宅医療の始まりでも、すべてでもありません。
始め方の一つとして、実は薬局の中で、すでに在宅医療は始まっていることをお伝えします。
【例】薬局の中で接する目の前の高齢者の方
薬剤師は服薬指導の一環として情報提供し、生活改善を支援します。「介護度が悪化し、在宅療養しなければならなくなる状態を防ぐ」、このことはいずれ訪れるその方の「在宅医療」に、経時的にかかわり始めていることにほかなりません。
Q2でもお伝えしたように、経済状況は患者さんの行動選択、行動変容を左右します。病院や診療所と違って、薬局は費用をかけずに医療者に相談が可能です。必要に応じて、適切なサービスや他職種につなげることもあるでしょう。薬局内での対応から、患者さん支援の相談の輪を広げましょう。
この時、日常のケアに必要な医薬品に関わる生活上の観察ポイントや注意点などを、しっかりと他職種や本人・家族に伝えることが重要です。
副作用とその初期症状などに気を付ければ、変えられる未来があります。アンテナとネットワークを広げ、観察力と洞察力を持つことです。
現場で「在宅薬学」を実践するポイント
整備されつつある、薬学教育における在宅医療の臨床教育体制
教育システムの特徴や医療全体から見た薬学教育のポイントを
Q&A形式で解説いただきます
一般社団法人 日本在宅薬学会 副理事長
アイビー薬局取締役 副社長
手嶋 無限先生(薬剤師)