- <POINT>
- ・厚生労働省は「次世代型の保健医療システム」構想を推進
- ・医療や保健といったヒトの健康に関する情報にパラダイムシフトが起きる
- ・2020年に本格始動を目指し、さまざまな取組みが実施
2018年から起きる3つのパラダイムシフト
次世代型の保健医療システムでは、ヒトの健康に関する情報に、「つくる」「つなげる」「ひらく」という3つのパラダイムシフトが起きます。
このうち
医療現場で起きるのが「つなげる」パラダイムシフトです。
- システム構築にあたっての論点の例
- ・世界でも画期的な試み
データの海外流出を保護する必要や、外資企業や海外研究機関等との協力体制が検討されています
- ・AI 診療の法律的な責任
ヒトが行う医療行為(手術、治療又は診断する方法)は特許として認められないが、AI が行う医療行為は特許として認められる? といった検討がなされています
- ●医療ビッグデータ
医療から生まれるデータ(カルテ、レセプト)などをソースにした、患者一人ひとりの薬剤処方歴、手術歴、診断歴、入院歴といった情報を蓄積しているデータ。
2014 年に閣議決定された健康・医療戦略でも利用促進の旨が盛り込まれている。
Real World Data (RWD)と呼ばれることも多い。
- ●地域医療連携ネットワーク
地域の医療機関等の間で患者情報をICTを活用して共有するネットワークを構築し、医療サービスの質の向上や効率的な医療の提供を目指す。
- ●医療等マイナンバー
医療等分野で患者・国民一人ひとりを確実に識別できる全国共通のユニバーサルID
医療現場は、薬剤師業務はどう変わる?
現場で起きる「つなげる」パラダイムシフト
現在、保健医療に関するデータは、医療機関(カルテ等)、薬局(調剤録)、自治体(予防接種記録・健診等)などでバラバラに保有されています。
また、個人でも母子健康手帳やお薬手帳などの情報を持っていますが、必要なときにすぐ活用できなかったり、紛失している情報もあるでしょう。
宇宙に大小浮かぶ星雲のように、相互のデータに一貫性や統一性がない状態です。
現場で行われている「つなげる」パラダイムシフトとは、こうした情報を国民一人ひとりの一生涯という「タテ串」で通じた保健医療情報としてつなげ、ICT によって最適で効率的な保健医療サービス提供につなげようとする試みです。
- ●EHR:Electric Health Record(エレクトリックヘルスレコード/ 電子健康記録
電子カルテなど、医療機関や施設で保存されている患者個人の医療情報
- ●PHR:Personal Health Record(パーソナルヘルスレコード/ 個人健康記録)
電子お薬手帳など、患者個人が保存する身体の状況や各種検査の数値等の健康情報
- ●ライフコースデータ
1 人のひとの出生から死亡までの一連の健康情報
パラダイムシフトで得られる4つの価値
厚生労働省はこうした取組みにより、①ビッグデータ活用やAIによる分析、②データ活用によるイノベーション、③ICT活用による遠隔診療や見守り、④地域や全国の健康・医療・介護情報ネットワークの4つの価値が生まれると提示しています。
- ① ビッグデータ活用やAIによる分析
現在診断や治療が難しい疾患でも、個人の症状や体質に応じた迅速・正確な検査・診断・治療が受けられる可能性
Real World Data (RWD)と呼ばれることも多い。
- ② データ活用によるイノベーション
疾患に苦しむ方に最適な治療や新たな薬を届けることができる可能性・魅力的な健康に関するサービスを自分に合ったサポートの形で受けられる可能性
- ③ ICT活用による遠隔診療や見守り
専門の医師がいない地域や生活の中で孤立した型にも医療や支援を届けることができる可能性
- ④ 地域や全国の健康・医療・介護情報ネットワーク
どこでも誰でも、自身の健康や医療に関する情報を安全に共有され、切れ目のない医療・介護を受けることができる可能性
ビッグデータの活用により現場に起こるパラダイムシフトについて解説しました。
次回更新の「後編」では在宅医療のフィールドに起きる変化について紹介します。
ビッグデータ共有時代の
薬剤師業務の変化と在宅医療(前編)
佐々木 淳(医師/医療法人社団悠翔会 理事長) 小枝 伸行(薬剤師/八尾市立病院 参事)