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「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 報告書」を公表
令和6年度からの第8次医療計画を視野に入れた報告書に 2022.08.01健康・医療地域共生社会

厚生労働省(厚労省)は令和4年6月9日、「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」の報告書を公表した。同報告書では、令和6年度から始まる第8次医療計画の策定を視野に入れ、精神保健医療福祉についてのニーズのある人が病状の変化に応じて多様なサービスを身近な地域で切れ目なく受けられるようにすることが必要、と基本的な考え方を示した。そのうえで、精神保健に関する市町村等における相談支援体制、不適切な隔離・身体的拘束をゼロとする取組など、対応の方向性をまとめている。

ポイント

  • 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の考え方が基本に
  • 第8次医療計画では地域における多職種・多機関の連携体制の構築を
  • 医療保護入院から任意入院への移行や退院促進を

医療計画では平成25年度から精神疾患が加わり「5疾病・5事業」に

厚労省の平成29年患者調査によると、精神疾患を有する総患者数は約419.3万人で、うち入院が30.2万人、外来が389.1万人となっている。その入院患者の9割以上に当たる約27.8万人が精神病床に入院している。近年、入院患者は減少傾向だが、外来患者は増加傾向にある。また近年、措置入院患者は1,500人前後で推移していて、その約2/3は「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」である。この措置入院患者を除いた入院患者のほとんどは任意入院または医療保護入院(後述)で、それぞれ50%前後の割合となっている。

医療計画においては、平成25年度からの第6次医療計画で、従前の「4疾病・5事業」に精神疾患と在宅医療が追加され、「5疾病・5事業および在宅医療」となった。平成30年度からの第7次医療計画は計画期間が6年となり、令和6年度からの第8次医療計画には既存の「5事業」に新興感染症等の感染拡大時における医療が追加され、「5疾病・6事業および在宅医療」となる。

第6次医療計画では、大きな方向性として、地域包括ケアシステムの考え方が加わった。また、医療計画とは直接の関係はないが、政府レベルでは平成28年頃から、「地域共生社会」の実現に向けての施策が展開されている。それらの動きを踏まえて、厚労省の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」が令和3年3月、報告書を取りまとめた。同報告書では、精神障害の有無や程度にかかわらず医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加、地域の助け合いなどが包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」を構築する、という方向を打ち出している。また、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」は地域共生社会の実現に向かって行くうえで欠かせないもの、としている。

報告書は総論と各論で構成

厚労省は、そのような大きな状況を踏まえ、特に令和6年度からの第8次医療計画を視野に入れ、令和3年10月に「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」(以下、検討会)を設置した。検討会は半年間で13回の会合を開き、同4年6月に報告書(以下、報告書)をまとめた。

報告書の構成/目次は下表のとおりで、総論と各論からなる。

その総論では、精神疾患の現状を説明したうえで、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」を構築するうえでの課題などを指摘するとともに、検討会での検討事項を挙げ、今後の対応のあり方などを示している。

地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会
報告書の構成(目次)

  1. 第1 総論
  2. 第2 精神保健に関する市町村等における相談支援体制について
  3. 第3 第8次医療計画の策定に向けて
  4. 1.第8次医療計画の基本的な考え方
  5. 2.第8次医療計画における指標例等
  6. 3.第8次医療計画の精神病床における基準病床数の算定式
  7. 第4 精神科病院に入院する患者への訪問相談について
  8. 第5 医療保護入院
  9. 1.医療保護入院の見直しについて
  10. 2.医療保護入院の同意者について
  11. 3.本人と家族が疎遠な場合等の同意者について
  12. 4.精神医療審査会について
  13. 第6 患者の意思に基づいた退院後支援
  14. 第7 不適切な隔離・身体的拘束をゼロとする取組
  15. 第8 精神病床における人員配置の充実について
  16. 第9 虐待の防止に係る取組

市町村等における相談支援体制の整備を進めるため国が措置

報告書では各論として、対応の方向性を具体的に示している。その各論の最初に取り上げられているのが、精神保健に関する市町村等における相談支援体制についてである。ここでの基本的な考え方は、身近な市町村で精神保健に関する相談支援を受けられる体制を整備することである。

そのような整備を市町村が進めていくため、国が例えば次のような措置を講じる。

  1. ①市町村が精神保健に関する相談支援を積極的に担うことができるよう、精神障害者に加え、精神保健に関する課題を抱える者に対しても相談支援を行うことができる旨を、法令上規定する。
  2. ②国および都道府県の責務として、市町村による相談支援の体制の整備が適正かつ円滑に行われるよう、必要な援助を行わなければならない、とする。
  3. ③市町村と精神科医療機関・精神科の医師や他科の医師の連携による支援体制の整備を図る必要がある。

第8次医療計画では精神科救急医療体制と一般救急医療体制との連携等の指標も

第8次医療計画の策定の方向性としては、地域における多職種・多機関が有機的に連携する体制を構築することが重要である、としている。その観点から、医療計画での「精神疾患の医療体制の構築に係る指針」(厚労省医政局地域医療計画課長通知)に、医療、障害福祉・介護、その他サービスを切れ目なく受けられる体制の整備に関する内容を、新たに記載する。

報告書では、その体制の整備について平時と緊急時に大きく分けている。平時においては、かかりつけの医療機関に通院し、障害福祉・介護その他のサービスを利用しながら、本人の希望に応じた暮らしができるよう、支援する。また、緊急のニーズへの対応については、入院治療(急性期)へのアクセス、受診前相談、入院外医療としての夜間・休日診療、電話対応、在宅での診療、訪問看護などについて、都道府県が精神科病院、訪問看護事業所などと連携しながら必要な体制整備に取り組むことが望ましい。

医療計画では、医療提供体制の構築にあたって都道府県は、一定の指標により現状を数値で客観的に把握しなければならない、とされている。第8次医療計画における指標については、「普及啓発、相談支援」、「地域における支援、危機介入」、「診療機能」、「拠点機能」の段階ごとに、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの各指標例を定める。併せて、現行の第7次医療計画にも段階ごとの各指標例を定める。また、普及啓発や人材育成を目的とする研修等の実施回数、受診前相談・入院外医療の充実、都道府県等における精神科救急医療体制と一般の救急医療体制との連携等の指標を新たに設けるべきである、としている。

入院医療を必要最小限にするために予防的取組の充実を

検討会において当初、医療保護入院について、将来的な廃止を求める患者・家族側の立場の構成員と廃止に否定的な医療提供側の構成員との間で考え方に大きな開きがあった。医療保護入院とは、医療と保護のために入院の必要があると判断された患者について、家族等が患者本人に代わって入院に同意するという仕組みで、精神保健指定医などの診察が必要とされる。その患者に連絡のとれる家族等がいない場合は、代わりとして市町村長の同意が必要である。

報告書では、医療保護入院の対応の方向性について、①入院医療を必要最小限にするための予防的取組の充実、②医療保護入院から任意入院への移行、退院促進に向けた制度・支援の充実、③より一層の権利擁護策の充実――の3つの視点を基本とすべき、とした。

入院医療を必要最小限にするための取組としては、例えば訪問診療・訪問看護の充実、外来患者に対する相談体制の充実、地域の多職種・多機関の連携など、「包括的支援マネジメント」を推進する。将来的な廃止か存続かで意見が対立する中で妥協点を示したことになる。

また、医療保護入院から任意入院への移行のため、医療保護入院の入院期間を定め、精神科病院の管理者は、その期間ごとに医療保護入院の要件を満たすか否かの確認を行うようにする。

やむを得ない処置として身体拘束ができる3要件について「告示」で規定を

検討会の議論に関して、マスコミも含めて社会的な関心が高かったのが、身体拘束をゼロとする取組についてである。

現在、身体拘束についての基準は「処遇基準告示」と呼ばれている「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」(昭和63年厚生省告示第130号)での「基本的な考え方」において示されている。具体的には「身体的拘束は、制限の程度が強く、また、二次的な身体的障害を生ぜしめる可能性もあるため、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないものとする」としている。そこに用語としては出てこないが、その趣旨は、やむを得ない処置として身体拘束を行うことができるのは、①切迫性(本人または他者の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い場合)、②非代替性(身体拘束以外に代替する方法がないこと)、③一時性(身体拘束は一時的なものであること)の3要件をすべて満たした場合である、ということである。

報告書では、その「基本的な考え方」の記述を踏まえて、「処遇基準告示」上で、切迫性・非代替性・一時性を要件として明確に規定すべきである、としている。

なお、その3要件と対応する用語などについては、厚労省が平成13年に作成した「身体拘束ゼロへの手引き」などをとおして、介護や障害福祉の現場ではある程度知られている。