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臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討の取りまとめを公表
「革新的な医薬品等の研究開発の推進」、「研究の信頼性確保」が柱に 2022.08.01健康・医療

厚生労働省(厚労省)は令和4年6月3日、厚生科学審議会臨床研究部会による「臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討のとりまとめ」を公表した。同「とりまとめ」は、現在の臨床研究法の施行の状況、臨床研究を取り巻く状況の変化などを踏まえて、①革新的な医薬品等の研究開発の推進、②研究の信頼性確保を柱として、今後の対応の方向性について整理している。

ポイント

  • 国際整合性の観点から、多施設共同研究でも統一的な運営ができるようにする
  • いわゆる観察研究について、臨床研究法の対象となる範囲を明確にしていく
  • 医療機器を用いた研究の臨床研究法への該当性に関して相談窓口の設置を

臨床研究法施行に至る経緯と特定臨床研究の制度の新設

平成25年から26年にかけて不適正な臨床試験が複数行われたことが、社会的にも高い関心を呼んだ。厚労省では臨床研究についての信頼を回復するため、同26年4月に「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」を設置。同検討会がまとめた報告書を踏まえて、政府は平成28年の通常国会に臨床研究法案を提出、翌29年の通常国会で成立した。こうして、臨床研究法は平成29年4月14日に公布、翌30年4月1日に施行された。

臨床研究法の目的は、臨床研究の実施に関する手続などを定めることにより、臨床研究に対する国民の信頼を確保し、臨床研究の実施を推進し、保健衛生の向上に寄与する、というもの。そのポイントは次のとおりである。

  1. ①医薬品等(医療機器含む)の臨床研究において、特定臨床研究という新たな概念を設け、実施に関する手続等を定める。特定臨床研究とは、(a)特に臨床研究の対象者の生命・身体へのリスクが高い未承認または適応外の医薬品等を用いる臨床研究、(b)医薬品等の製造販売業者等から資金の提供を受けて実施する臨床研究、である。
  2. ②特定臨床研究を行うには、まず、研究実施者が、厚生労働大臣の認定を受けた臨床研究審査委員会(CRB)に研究実施計画を提出し、審査を受ける。そのうえで、同計画を厚生労働大臣に提出し、同大臣が定める実施基準に従って、特定臨床研究を実施する。また、その研究に起因するものと疑われる重篤な疾病等が発生した場合には、同大臣に報告しなければならない。これらに違反する場合には、厚生労働大臣が改善命令や研究の停止命令等を行うことができる。
  3. ③臨床研究に対する信頼を確保するため、医薬品等の製造販売業者等による資金の提供に関する情報を公表する制度等を定める。

臨床研究法の施行により、医薬品等の臨床研究は、治験(承認申請目的の臨床試験)、特定臨床研究、「その他」に大きく分かれる。法律との関係は、治験は医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(通称GCP省令)による基準を順守する義務がある。特定臨床研究は、前述のように臨床研究法による基準を順守する義務がある。また、「その他」については、臨床研究法による基準を順守することの努力義務があるとされていて、義務ではない。

また、それら以外では「手術・手技の臨床研究」があるが、臨床研究法の対象外とされている。

臨床研究法の付則第2条第2項で、施行後5年以内に、この法律の規定に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる、としている。その検討は、厚労省の厚生科学審議会臨床研究部会が行う。同部会は令和3年12月、臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討の中間取りまとめ(以下、「中間取りまとめ」)を、公表。また、その後も検討を重ね、令和4年6月に「臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討のとりまとめ」(以下、「とりまとめ」)として、今後の対応の方向性について整理した。

「とりまとめ」の構成は下表のとおりで、「革新的な医薬品等の研究開発の推進」と「研究の信頼性確保」を柱としている。その中心をなす「革新的な医薬品等の研究開発の推進」については、①臨床研究実施体制の国際整合性、②研究の法への該当性の明確化、③手続の合理化――などについて、具体的な方向性を示している。

臨床研究法施行5 年後の見直しに係る検討のとりまとめ 構成/目次

  1. Ⅰ はじめに
  2. Ⅱ 基本的な考え方
  3. Ⅲ 各検討項目について
  4. 革新的な医薬品等の研究開発の推進
  5. 1.臨床研究実施体制の国際整合性
  6. (1) 研究全体の責任主体の概念について
  7. (2) 特定臨床研究で得られた情報の薬事申請における利活用について
  8. (3) いわゆる観察研究に関する臨床研究法の適用範囲について
  9. (4) 疾病等報告の取扱いについて
  10. 2.研究の法への該当性の明確化
  11. (1) 適応外使用に関する特定臨床研究の対象範囲について
  12. (2) 医療機器に関する臨床研究法の適用範囲について
  13. 3.手続の合理化
  14. (1) 届出・変更手続の合理化、届出のオンライン化について
  15. (2) 利益相反申告手続の適正化について
  16. 研究の信頼性確保
  17. 1.透明性の確保
  18. (1) 利益相反申告手続の適正化について(再掲)
  19. (2) 研究資金等の提供に関する情報公表の範囲について
  20. (3) 重大な不適合の取扱いについて
  21. 2.研究の質の確保
  22. (1) 臨床研究審査委員会の認定要件について
  23. Ⅳ おわりに

研究を統一的に管理する「試験の計画・運営の責任を負うべき者」の設定へ

新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、新しい治療法を世界同時に適用できることの重要性が認識されたが、革新的な治療法を世界に先駆けて安全に導入するには、日本の治験・臨床研究の実施環境の国際整合性を向上させる必要がある。

現行の臨床研究法に基づいて多施設共同研究を実施する場合、それぞれの実施医療機関の研究責任医師が、そこでの研究の計画・運営の責任を負っている。また、医療機関ごとに他施設共同研究にかかわる手続きをすることになっているため、医療機関によって手続きに差異がみられることもある。そこで、「とりまとめ」では、今後の対応の方向性として、多施設共同研究の運営体制が統一されるよう、臨床研究の実施体制について「研究の計画・運営の責任を負うべき者」と「研究の実施に責任を有する者」の役割や機能を整理したうえで、研究ごとに、その研究の実施を統一的に管理する「試験の計画・運営の責任を負うべき者」を設定する、としている。また、製造販売後臨床試験(再審査・再評価に係る試験を除く)については、臨床研究法の対象とはせず、薬機法下で別途適切な基準に準拠して実施できるようにする。

国際整合性の観点からは、いわゆる観察研究についても検討が必要となる。すなわち、いわゆる観察研究は、原則として、臨床研究法の対象である臨床研究からは除外されている。しかし、臨床研究法では、いわゆる観察研究について明確な定義がないため、研究の現場で混乱も生じている。例えば軽微な追加検査を伴う観察研究は、研究者が観察研究だと考えていても、CRBにおいて臨床研究法の対象から除外されていないケースもある。

今後の対応の方向性としては、臨床研究法の対象となる臨床研究の範囲を明確にする。具体的には、①あらかじめ作成した研究計画に従って、研究対象者に対し医薬品等を使用する研究、②個々の研究対象者の病状に応じて、当該者にとって適切な医療として、医薬品等を使用する研究の中でも、研究対象者への傷害・負担が大きい検査等を研究目的で診療に追加して行う研究(その障害・負担が通常の医療と大きく異なる場合)――を、その範囲とする。それにより、いわゆる観察研究であっても②に相当するようなものは、臨床研究法の対象となる臨床研究の範囲に含まれるようになる。

医療機器についての臨床研究法に関する Q&A や事例集を関係者に広く周知

研究の臨床研究法への該当性の明確化については、医療機器の取扱いが主な課題となった。医療機器も特定臨床研究の対象となるが、非侵襲・低侵襲なものが存在し、これらを特定臨床研究の対象とするのは過剰な規制ではないか、との指摘がある。また、医療機器については、薬機法や医療機器規制国際整合化会合(Global Harmonization Task Force、GHTF) においては、リスクに応じたクラス分類によって規制の内容を変えており、臨床研究法においても医療機器ごとのリスクに基づき取り扱うべきではないか、との指摘がある。

それを踏まえて、厚生労働科学特別研究事業において臨床研究法が医療機器開発研究に与えた影響の実態把握に向けた調査研究が行われた。それによると、CRBや倫理審査委員会(IRB)ごとに、特定臨床研究に該当するか否かの判断にばらつきがある。そのため、臨床研究法の対象外であることが明確になるように研究内容を変更したことで、研究を始めるのが遅れたケースもある。また、それらの要因として、CRBやIRBが医療機器に精通していないことが指摘されている。

「とりまとめ」では、今後の対応の方向性として、次の3点を挙げている。

  1. ①医療機器を用いた研究に関して臨床研究法への該当性等を相談できるよう、相談窓口の設置を進める。
  2. ②特定臨床研究の該当判断に迷った事例等の収集を定期的に行い、随時、事例集を更新していく。
  3. ③関係学会等の協力を得て、臨床研究法に関する Q&A や事例集をCRB、IRB、工学部の研究者等を含めた関係者に広く周知していく。

COIの一元管理が可能となるようなデータベースの構築を

特定臨床研究の実施計画については、 国への提出やCRBでの審査において、研究の本質に関わらないような事項まで変更の手続が求められることが、研究者にとって過重な負担となっている。例えば「軽微な変更」であれば、その変更後10日以内にCRBへの通知と厚生労働大臣への届け出を行えばよいので、研究の本質に関わらない「軽微な変更」の範囲を拡大することで負担の軽減になる。

負担の軽減については、「中間取りまとめ」で指摘されており、厚労省では、特定臨床研究の実施計画等の国への提出をオンライン化した。また、臨床研究法施行規則を改正し(令和4年4月1日施行)、「軽微な変更」に該当する事項を追加した。

臨床研究の透明性・信頼性の向上を図るうえで利益相反(COI)管理は重要だが、それに関する手続きは煩雑である。また、所属機関(実施医療機関)が事実確認する際にも、所属医師等の全ての収入を把握しておらず、自己申告とならざるを得ない場合もあり、COIに関する事実確認が不十分との指摘、あるいはその確認の意義を問う指摘もある。

そのCOI管理について、「とりまとめ」では、臨床研究法における特定臨床研究のみならず国内の医学系研究に関するCOIの一元管理が可能となるようなデータベースを構築することが望ましい、としている。

臨床研究審査委員会の更新要件を見直す

もう1つの柱である「研究の信頼性確保」では、①透明性の確保、②研究の質の確保――についてまとめている。前述のCOI管理については①においても再掲されており、重要な課題といえよう。

また、研究の質の確保については、CRBの認定要件が取り上げられている。例えば、CRB が特定臨床研究の実施計画を審査するためには、厚生労働大臣の認定を受ける必要がある。その認定の有効期間は3年で、更新には年11回以上の開催が要件となっていた。しかし、CRBは、特定臨床研究の実施件数に比べて多く設置されていて、審査能力には大きなばらつきがある、と指摘されていた。

それらの問題が「中間取りまとめ」で指摘されたことを踏まえて、厚労省は臨床研究法施行規則を改正し(令和4年4月1日施行)、一定の経過措置を設けたうえで、新規の審議件数は3年間で6件以上(ただし毎年1件以上)、かつ開催回数は毎年7回以上というように見直しを行った。

なお、厚労省では、更新要件を満たさないCRBについては円滑な廃止に向けて準備を進めるものとする、としている。