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肝炎対策の推進に関する基本的な指針を改正
肝がんの罹患率をできるだけ減少させることを具体的な指標として設定する 2022.05.01健康・医療

厚生労働省(厚労省)は令和4年3月7日、「肝炎対策の推進に関する基本的な指針の一部を改正する件」を告示し、約6年ぶりに、肝炎対策基本法に基づく「肝炎対策の推進に関する基本的な指針」を改正した。今回の改正では、基本的な方向として「肝炎の完全な克服」の達成を明記したうえで、肝硬変または肝がんへの移行者を減らすことを目標とした。また人材の育成に関しては、肝炎医療コーディネーター間の情報共有や連携がしやすい環境の整備に努める、としている。

ポイント

  • 「肝炎の完全な克服」を達成することで肝硬変・肝がんへの移行者を減らす
  • 肝炎患者等の人権尊重についての取組を推進する
  • 肝炎医療コーディネーターが情報共有・連携しやすいよう環境の整備に努める

肝炎対策基本指針は9つの事項で構成

「国内最大級の感染症」ともいわれるB型肝炎とC型肝炎の対策の基本理念を定め、総合的に対策を推進するため、平成21年の臨時国会で議員立法として肝炎対策基本法(以下、基本法)が成立し、同22年1月1日に施行されるとともに、厚労省に審議会として肝炎対策推進協議会が設置された。同協議会の委員は20名で、うち患者側の委員が7名と比較的多く、がん対策推進協議会などと同様に患者側の意見が反映されやすい構成になっている。

基本法第9条第1項では「厚生労働大臣は、肝炎対策の総合的な推進を図るため、肝炎対策の推進に関する基本的な指針(肝炎対策基本指針)を策定しなければならない、と規定している。また、同条第2項で、肝炎対策基本指針(以下、基本指針)では次の9つの事項について定める、としている。

  1. ①肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向
  2. ②肝炎の予防のための施策に関する事項
  3. ③肝炎検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項
  4. ④肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項
  5. ⑤肝炎の予防及び肝炎医療に関する人材の育成に関する事項
  6. ⑥肝炎に関する調査及び研究に関する事項
  7. ⑦肝炎医療のための医薬品の研究開発の推進に関する事項
  8. ⑧肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項
  9. ⑨その他肝炎対策の推進に関する重要事項

それらを踏まえて、肝炎対策推進協議会が基本指針の原案を作った。それを受けて政府は平成23年5月16日、基本指針を決定、告示した。

また、基本法第9条第5項では、基本指針については少なくとも5年ごとに検討を加え、必要があると認めるときには変更しなければならない、と規定している。それに基づき、政府は平成28年6月30日、基本指針の改正を行った(以下、旧指針)。

肝炎対策推進協議会の患者側委員の意見が多く採用される

旧指針の策定から約5年が経過したため、肝炎対策推進協議会では令和3年5月21日に開催した第26回協議会から、その改正に向けて本格的に議論を始めた。また同日、同協議会の患者側委員7名が連名で、旧指針の改正にあたっての意見を提出した。その柱は、①肝炎対策の究極目標としての「肝炎の完全克服」の明示、②肝炎対策の到達点の検証とあらたな検討、③肝炎ウイルス検査および肝炎医療の均てん化の実現、 ④偏見・差別の解消-人権教育の視点の導入――の4つである。

肝炎対策推進協議会では令和3年11月、3回目の議論において旧指針の改正案をまとめた。この改正案では、患者側の意見(前述)が多く採用されている。

その改正案とパブリックコメントを踏まえて、政府は令和4年3月7日、「肝炎対策の推進に関する基本的な指針の一部を改正する件」を告示した。改正された同指針(以下、改正指針)のポイントは下表のとおりである。

肝炎対策基本指針の改正のポイント

事項 項目 改正のポイント
第1 肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向
  1. ○ 国としての肝炎対策の全体的な施策目標として、受検・受診・受療・フォローアップの推進、B型肝炎に対する根治薬の開発等の肝炎総合対策を推進することにより、「肝炎の完全な克服」を達成することで、肝硬変・肝がんへの移行者を減らすことを目標とし、肝がんの罹患率を出来るだけ減少させることを指標として設定する。
  2. ○ 肝炎総合対策を推進するに当たっては、肝炎ウイルス検査及び肝炎医療の均てん化を図ることが重要であるものの、依然として、各地域の取組状況に差がある。そのため、関係者が地域の実情や特性を把握しつつ、それらに応じた取組を推進することが必要である。
第2 肝炎の予防のための施策に関する事項
  1. ○ B型肝炎ワクチンの定期接種、C型肝炎患者のインターフェロンフリー治療等の推進に引き続き取り組む。
第3 肝炎検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項
  1. ○ 肝炎ウイルス検査の未受検者に対して、肝炎ウイルス検査に関する効果的な広報に取り組む。
第4 肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項
  1. ○ 国、肝炎情報センター、地方公共団体、医療機関等は、肝炎患者等が個々の病態に応じた適切な肝炎医療を受けられるよう、肝炎患者等自身が診療についての正しい知識を得られるよう取り組む。
第5 肝炎の予防及び肝炎医療に関する人材の育成に関する事項
  1. ○ 地方公共団体は、国、拠点病院等と連携して、肝炎医療コーディネーターの育成後もその活動状況の把握に努めるとともに、肝炎医療コーディネーター間の情報共有や連携がしやすい環境の整備に努める。
第6 肝炎に関する調査及び研究に関する事項
  1. ○ 「肝炎研究推進戦略」に基づく肝炎研究を一層推進するとともに、肝炎対策を効果的に実施できるよう各種の行政研究を進める。
第7 肝炎医療のための医薬品の研究開発の推進に関する事項
  1. ○ 肝炎治療に係る最近の動向を踏まえ、特にB型肝炎、肝硬変及び肝がんを含むがんの治療に係る医薬品の開発等に係る研究を促進する。
第8 肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項
  1. ○ 国は、様々な機会を利用して肝炎患者等及び患者家族等に対する偏見や差別を解消するために、地方公共団体、学校教育関係者、患者団体等の様々な関係者と連携し、肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重に係る推進の方策を検討し、これらの取組を進める。
第9 その他肝炎対策の推進に関する重要事項
  1. ○ 国及び肝炎情報センターは、都道府県間での肝炎医療の均てん化に資するよう、その実施状況に鑑み、適切な情報提供や助言を地方公共団体、拠点病院等に対して行うとともに、更に必要な意見交換を行うものとする。
  1. 出典:第29回肝炎対策推進協議会(令和4年3月18日開催)資料1「肝炎対策基本指針について」

C型肝炎はウイルス排除薬の開発で撲滅が視野に入る状況に

改正指針は旧指針と同様に第1~第9までの9つの事項(前述)で構成されていて、第1の事項である「肝炎の予防及び肝炎医療の推進の基本的な方向」において基本的な考え方を示している。改正指針は基本的な考え方において、旧指針にはなかった「『肝炎の完全な克服』を達成すること」を追記したのが、大きな特徴である。「肝炎の完全な克服」を達成することで、肝硬変または肝がんへの移行者を減らすことを目標とし、肝がんの罹患率をできるだけ減少させることを具体的な指標として設定する、としている。

その背景について、改定指針の前文に当たる箇所で次のように説明している。

世界保健機関(WHO)が、公衆衛生上の脅威としての肝炎ウイルスの排除達成を令和12年までに目指すことを持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献する目標として掲げている。公衆衛生上は、現在、C型肝炎はウイルス排除薬の開発により、その撲滅が視野に入る状況となってきたが、B型肝炎に対する根治薬の開発および既に実用化されているC型肝炎の抗ウイルス療法の活用により、肝炎ウイルスを高い確率で体外に排除することを可能にし、「肝炎の完全な克服」を目指すことが必要である。

また、旧指針を改正するに当たって患者側の委員が偏見・差別の解消と人権教育の視点の導入を要望したが、それについては主として、改正指針の第8の事項である「肝炎に関する啓発及び知識の普及並びに肝炎患者等の人権の尊重に関する事項」で反映されている。また、第1の事項において基本的な考え方として「肝炎患者等の人権尊重について取組を推進することは、感染症患者全体の偏見や差別の解消に資するものであり、国は、このような観点から、地方公共団体、学校教育関係者および患者団体等の様々な関係者と連携し、その方策の検討を進める必要がある」と、具体的に記載された。

都道府県において肝炎医療コーディネーターの養成が進む

改正指針では、人材の育成に関して、肝炎医療コーディネーターを重視している点も特徴となっている。

肝炎医療コーディネーターについては、平成20年度から適用した感染症予防体制整備事業実施要綱に基づいて、養成が始まった。旧指針で肝炎医療コーディネーターの育成が明記されたため、都道府県においてその養成が進んでいる。

肝炎治療コーディネーターの役割は、①地域や職域に肝炎への理解を浸透させること、②肝炎患者・家族からの相談に対する助言、③行政や肝疾患診療連携拠点病院などの相談窓口への案内、 ④肝炎ウイルス検査の受検の勧奨、⑤陽性者に対する専門医療機関の受診の勧奨、⑥医療費助成などの制度の説明――など。その配置先としては、同拠点病院ほか医療機関、市町村・保健所、検診(健診)機関、薬局、介護事業所、民間企業・団体、医療保険者、患者団体などが想定されている。

改正指針では、第3の事項「肝炎検査の実施体制及び検査能力の向上に関する事項」、第4の事項「肝炎医療を提供する体制の確保に関する事項」、第5の事項「肝炎の予防及び肝炎医療に関する人材の育成に関する事項」それぞれにおいて、肝炎医療コーディネーターについて記載している。

その中心となるのは第5の事項で、「地方公共団体は、国、拠点病院等と連携して(中略)肝炎医療コーディネーター等の人材の育成と活躍の推進に取り組む」との方向を示している。また、その際の肝炎医療コーディネーターの基本的な役割や活動内容等について、「国が示す考え方を踏まえ、都道府県等においてこれらを明確にした上で育成を進めることが重要である」としたうえで、「地方公共団体は、国、拠点病院等と連携して、肝炎医療コーディネーターの育成後もその活動状況の把握に努めるとともに、肝炎医療コーディネーター間の情報共有や連携がしやすい環境の整備に努めることが重要である」と指摘している。

肝炎対策推進協議会で厚労省が国と自治体の取組状況などを報告

厚労省は令和4年3月18日に開催した第29回肝炎対策推進協議会で、改正指針の概要、肝炎対策の国および各自治体の取組状況について説明した。

まず、令和4年度予算案での肝炎対策予算案は173億円(令和3年度予算額173億円)で、①肝疾患治療の促進(令和4年度予算案88億円)、②感染ウイルス検査と重症化予防の推進(同39億円)、③地域における肝疾患診療連携体制の強化(同5億円)、 ④国民に対する正しい知識の普及(同2億円)、⑤研究の推進(同38億円)の5つを柱としている。

改正指針や旧指針では「国及び地方公共団体が肝炎対策を実施するに当たっては、その目標、具体的な指標等を設定し、定期的にその達成状況を把握し、必要に応じて施策の見直しを検討することが重要である」と、基本的な考え方を示している。それを踏まえて、令和2年度では47都道府県で数値目標を定めているのが44、数値目標以外の目標を定めているのが3となっている。

わが国では、B型肝炎ウイルスのキャリア数が約110~120万人(平成27年)、患者数が約19万人(同30年)、C型肝炎ウイルスのキャリア数が約90~130万人(同27年)、患者数が約30万人(同30年)と推計されている。

それらの診療体制としては、いわゆる拠点病院方式をとっている。その全国レベルでの中心となるのが、国立国際医療研究センターの肝炎・免疫研究センター/肝炎情報センターである。都道府県レベルで肝疾患診療連携拠点病院を原則1カ所(令和4年3月時点で47都道府県・71施設)、2次医療圏に肝疾患専門医療機関を1カ所以上(同約3,700施設)、それぞれ選定する。国民は、肝炎ウイルス検査を受けるとともに、診療所・病院などの紹介により肝疾患専門医療機関を受診することになるが、同医療機関からの逆紹介もある。

肝炎医療コーディネーターについては、令和2年度末で47都道府県において計2万4,197名が養成されている。その職種は多様だが、看護師、保健師、病院薬剤師、臨床検査技師、医療機関職員、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、行政機関職員(保健師除く)、医師、調剤薬局薬剤師、企業や団体の健康管理担当などが比較的多い。

なお、令和4年度診療報酬改定では、情報通信機器を用いた場合の医学管理等の評価として肝炎インターフェロン治療計画料について609点(対面の場合は700点)を設定するとともに、脂肪性肝疾患で慢性肝炎または肝硬変の疑いがある患者に対する超音波減衰法検査(200点)を新設している。