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厚労省が「脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドライン」を通知
近年の脂質異常症改善薬の開発・審査を巡る状況の変化に対応 2021.09.01健康・医療

厚生労働省(厚労省)は2021年7月6日、都道府県に対して「脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドライン」(以下、新ガイドライン)を通知した。これは、近年の脂質異常症改善薬の開発・審査を巡る状況の変化に対応するため、1988年に作成した従前の「抗高脂血症薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(以下、旧ガイドライン)を廃止し、新たにガイドラインを作成したものである。新ガイドラインでは、現時点での科学的知見に基づき、種々の評価方法、対象集団、安全性などについて説明している。

ポイント

  • 新ガイドラインは血清LDL-C低下薬、血清non-HDL-C低下薬、血清TG低下薬ほかに適用
  • 有効性の評価項目は「脳心血管イベントと死亡」、脂質値、血管障害ほか
  • 高齢者、臓器障害を有する被験者、小児、女性が特殊集団とされ、臨床試験において特別な配慮が必要

総コレステロールに替わってLDL-Cが主たる危険因子として扱われるように

旧ガイドラインは、抗高脂血症薬として開発される経口剤の臨床的有用性を検討するための臨床試験の計画、実施、評価方法などについて手順を示したものである。その作成から30年以上が経過し、この間に、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007 年版」で、高脂血症が脂質異常症と表され、総コレステロールに替わってLDL-C(low density lipoprotein-cholesterol)が主たる危険因子として扱われるようになった。治療薬についても、脂質異常症改善薬という概念で捉えられるようになっている。また、旧ガイドラインが作成されて以降、脂質異常症に対する新たな治療法が開発されているが、現在でも難治性の脂質異常症の患者は多く、全世界で治療薬の開発が進められている。

そのような現状を踏まえて、2018年度および2019年度の厚生労働行政推進調査事業費補助金「脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドラインの合理化・国際整合化に向けた研究」として、新ガイドラインが作成された。

新ガイドラインは、血清LDL-C低下薬、血清non-HDL(high density lipoprotein)-C低下薬、血清TG(triglyceride)低下薬、および低HDL-C血症改善薬を含む、脂質異常症改善薬の臨床評価に適用する。その構成は下表のとおりである。

脂質異常症改善薬の臨床評価に関するガイドラインの構成

  1. 1. 緒言
  2. 2. 対象範囲・対象集団
  3. 2.1. 本ガイドラインの対象範囲
  4. 2.2. 試験の対象集団
  5. 3. 脂質異常症改善薬の評価
  6. 3.1. 有効性の評価項目
  7. 3.1.1. 脳心血管イベントと死亡
  8. 3.1.2. 脂質値(LDL-C、HDL-C、TG、non-HDL-C)
  9. 3.1.3. 血管障害(標的臓器障害)
  10. 3.1.4. 急性膵炎
  11. 3.2. 有効性の評価方法
  12. 3.2.1. 脳心血管イベント発生率と死亡率の評価
  13. 3.2.2. 脂質値の評価
  14. 3.2.3. 血管障害(標的臓器障害)の評価
  15. 4. 患者の選択(年齢・性別・合併症)
  16. 5. 臨床試験の方法と設計
  17. 5.1. 薬力学
  18. 5.2. 薬物動態
  19. 5.3. 臨床試験
  20. 5.3.1. 用量探索的試験
  21. 5.3.2. 検証的試験
  22. 5.3.2.1. 単独療法としての脂質異常症改善効果の検証
  23. 5.3.2.2. 他の脂質異常症改善薬と併用した脂質異常症改善効果の検証
  24. 5.3.2.3. 臨床転帰における有効性の検証
  25. 6. 安全性
  26. 6.1. 安全性における標的臓器
  27. 6.2. 脳心血管イベントに対する安全性
  28. 6.3. 併用薬
  29. 6.4. 新規作用機序薬
  30. 7. 特殊集団
  31. 7.1. 高齢者
  32. 7.2. 臓器障害を有する被験者
  33. 7.3. 小児
  34. 7.4. 女性
  35. 8. 法的根拠と関連ガイドライン

膵炎の発症防止を目標に臨床開発されるものも対象に

新ガイドラインが対象とする脂質異常症改善薬は、①高コレステロール血症、②高TG血症、③低HDL-C血症、④家族性高脂血症(家族性高コレステロール血症)のうちの1つあるいは複数の改善による粥状動脈硬化の進展抑制や脳心血管イベントの抑制と膵炎の発症防止を目標に臨床開発されるものである。

脂質異常症改善薬の臨床評価のための対象は、目的とする効能・効果によって適切な集団を選択する。脂質異常症の診断には、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」などを参照し、家族性高脂血症の診断には、厚労省特定疾患「原発性高脂血症調査研究班」の原発性高脂血症分類などを参照して、適切な集団を評価の対象とする。

主観の入りやすいイベントを評価項目に入れる場合はあらかじめ診断基準を定義

脂質異常症改善薬の有効性の評価項目としては、①脳心血管イベントと死亡、②脂質値(LDL-C、HDL-C、TG、non-HDL-C)、③血管障害(標的臓器障害)、④急性膵炎――などを用いることができる。

まず、脂質異常症を治療する主たる目的は脳心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、冠動脈血行再建の実施、脳卒中)の抑制で、それらが原因となる死亡を防ぐことである。したがって、脳心血管イベントおよび総死亡の改善を示すことが、脂質異常症改善薬の有効性評価となる。また、その評価において、狭心症、一過性脳虚血、心不全、PCI/CABG(経皮的冠動脈インターベンション/冠動脈バイパス術)など、主観の入りやすいイベントを評価項目に入れる場合は、あらかじめ治験実施計画書で診断基準を定義・明確化しなければならない。

脂質値については、高コレステロール血症患者において、生活習慣の改善効果も含め、脂質異常症改善薬の投与前後のLDL-C値の低下は主要有効性評価項目とすることができる。一方、TGやHDL-C値に対する改善効果は、臨床的な有益性を示唆するデータが十分ではなく、副次的な有効性の指標として検討すべきものとなる。脂質値の評価は、原則として10時間以上の絶食下での空腹時採血により測定する。また、その評価には、通常、被験薬投与前後の変化率または変化量を用いる。

脂質異常症の標的臓器障害として、心臓、脳、腎臓、大血管などの血管障害がある。それら標的臓器の動脈硬化の進展の指標として、画像診断法が重要である。動脈硬化の定量的評価法として確立し、薬効評価に用いられ、将来の脳心血管事故を予測することが証明された画像診断は IMT(intima media thickness)、定量的冠動脈造影、冠動脈のIVUS(intra vascular ultrasound)である。

急性膵炎については、TGとの相関が示されている。例えば、著明な高TG血症に起因する急性膵炎がある。

脂質異常症改善薬の介入の前に生活習慣改善を導入

脂質異常症改善薬の有効性と安全性の評価のための試験集団は一般に、当該薬剤が対象とする脂質異常症のタイプに基づいて決められるが、その集団には両性別の患者が適切に含まれるようにする(特殊集団は後述)。

臨床試験の方法と設計としては、すべての臨床試験において、脂質異常症改善薬の介入の前に、ガイドラインなどで示された生活習慣改善(食事療法・運動療法)を導入する。また、試験期間を通して、生活習慣(飲酒、喫煙、運動)、栄養補助食品・サプリメントの摂取状況が変化していないことを記録しておく。

脂質異常症改善薬は長期間投与される薬剤であるため、総合的な安全性評価が求められる。そのため、臨床開発の初期に、潜在的な有害事象の検出と評価のできる前向きの臨床試験を計画する。その際には、薬理学的な安全性と非臨床試験における主要な毒性学的知見を考慮する。

また、個別臓器での安全性については、非臨床および臨床試験の結果から特に、肝臓、腎臓、筋肉に注意する必要がある。

75歳以上も対象に十分組み込んで臨床試験を実施

臨床試験における一般的な集団以外の特殊集団としては、高齢者、臓器障害を有する被験者、小児、女性がある。

高齢者での有効性・安全性についても十分に検討できるよう、特に75歳以上を対象に十分組み込んで臨床試験を実施すべきだが、高齢者は腎機能等が低下している場合が多く、薬物動態に注意が必要である。

臓器障害を有する被験者を臨床試験に組み入れる際には、脂質異常症改善薬の作用機序、主要な消失経路に基づいて、リスクを十分に検討する。

小児(15歳未満)については、脂質異常症改善薬の有効性・安全性が確認されていないことが多く、成長期にあるためフォローアップする項目も異なるので、注意が必要である。また、薬剤の使用には、保護者への十分な説明と同意が必要となる。

女性については、必要があれば、妊娠中の胎児への影響、閉経後の生態環境の変化による影響などの情報も含め、薬物動態における性差に関する情報についても収集する。

パブリックコメントも実施

新ガイドライン(案)については、2020年10月15日から約1カ月間、意見の募集(パブリックコメント)が行われた。厚労省では2021年7月6日、そこでの主な意見32件の概要と同省の考え方について取りまとめ、公表した。

パブリックコメントでは、non-HDLおよびTGを検証的試験の主要評価項目とするよう修正すべきとの趣旨の意見が、複数あった。それに対して厚労省は、non-HDLおよびTGを主要評価項目とすることについて、国際的に脂質異常症改善薬の有効性評価のサロゲート(代用)として確立したとは言い難い状況、と回答。それに関連して、「オメガ3脂肪酸を用いた大規模臨床試験(STRENGTH)では、TGの低下が認められた一方で心血管イベントの抑制効果は示されず、既存の治験と異なる結果であったことからも、TG低下の意義は必ずしも明らかでない」と補足している。

また、粥状動脈硬化の進展抑制や脳心血管イベントの抑制と膵炎の発症防止を目標に臨床開発される「脂質異常症改善薬」を新ガイドラインの対象としていることについて、「膵炎の発症防止」を削除することの提案もなされた。それに対して、厚労省では「脂質異常症治療の目的は脳心血管イベントの抑制と、特に著しい高TG血症の場合の膵炎の発症防止であることから、削除することは適切でないと考えます」と回答している。

なお、厚労省では、学問上の進歩などを反映した合理的根拠に基づいたものであれば、必ずしも新ガイドラインに示した方法を固守するよう求めるものではない、としている。