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「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が公布
医療保険制度における給付と負担の見直しを実施 2021.08.02健康・医療

令和3年の通常国会で成立した「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が同年6月11日に公布された。同法律の柱は、①後期高齢者で一定所得以上ある者について窓口負担を2割に、②傷病手当金の支給期間の通算化、③子ども・子育て支援の拡充、予防・健康づくりの強化、④医療扶助においてオンライン資格確認の仕組みを導入――などで、主要な条項は令和4年4月1日に施行される。

ポイント

  • 令和4年度後半に、後期高齢者で一定所得以上ある者の窓口負担を2割に。後期高齢者の約20%が該当
  • 傷病手当金について、出勤に伴い不支給となった期間は、その分の期間を延長し、支給期間の通算化を行う
  • 生活保護制度の医療扶助にオンライン資格確認の仕組み導入へ

すべての世代が公平に支え合う全世代対応型の社会保障制度の構築へ

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(以下、改正健康保険法)の提案の理由について、令和3年5月25日に開催された参議院・厚生労働委員会で、厚生労働大臣が次のように説明した。

少子高齢化が進展し、令和4年度以降、「団塊の世代」が75歳以上の高齢者となり始める中、現役世代の負担上昇を抑えながら、すべての世代が安心できる社会保障制度を構築することが重要である。このような状況を踏まえ、医療保険制度における給付と負担の見直しを実施するとともに、子ども・子育て支援の拡充や、予防、健康づくりの強化などを通じて、すべての世代が公平に支え合う全世代対応型の社会保障制度を構築することを目的として、法案を提出した。

また、同法案のポイントとして、次の点を挙げた。

①後期高齢者医療の窓口負担について、負担能力に応じて負担いただくとの考えに基づき、「現役並み所得者」以外で、一定の所得や年収以上である被保険者の負担割合を2割とする。

傷病手当金について、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるよう、支給期間の通算化を行う。現在の傷病手当金の支給期間は、同一傷病に対して支給を開始した日から最長1年6カ月間で、実際に受給した期間とは関係なく、1年6カ月後に受給期間が終了となる。2022年1月1日以降、出勤に伴い不支給となった期間は、その分が延長されて1年6カ月間経過後も支給を受けられるようになる。

また、任意継続被保険者について、健康保険組合の規約で定めることにより、その保険料の算定基礎となる標準報酬月額を被保険者の資格喪失時の標準報酬月額とすることを可能とする。健康保険の任意継続被保険者とは、退職して被保険者の資格を失った後も一定の条件のもと継続して被保険者になれる仕組みのこと。しかし、任意の申出により途中でやめることはできない。2022年1月1日以降、被保険者が任意で資格喪失の手続きを行い、スムーズに次の公的医療保険に切り替えられるようになる。これにより健康保険組合の負担が軽減する可能性がある。

②子ども・子育て支援の拡充を図るため、短期の育児休業の取得に対応して、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には、その月の保険料を免除する。また、国民健康保険の保険料について、未就学児に係る被保険者均等割額を減額し、その減額相当額を公費で支援する制度を設ける。

③すべての世代の予防・健康づくりの強化を図るため、保険者が保健事業を行うに当たり、労働安全衛生法などによる健康診断の情報を活用し、適切かつ有効に保健事業を行うことができるよう、事業者等に対して健康診断の情報を求めることを可能とする。また、健康保険組合などが保存する特定健康診査の情報を後期高齢者医療広域連合へ引き継ぐことを可能とする。

④国民健康保険(国保)制度の財政運営の安定化を図るため、都道府県が国保の財政安定化基金を国民健康保険事業費納付金の著しい上昇の抑制などのために充てることを可能とする。また、都道府県国民健康保険運営方針について、都道府県内の市町村の保険料水準の平準化や財政の均衡に関する事項を記載事項に位置付ける。

⑤生活保護制度の医療扶助について電子資格確認の仕組みを導入する。

改正健康保険法の概要、施行の時期などについて、厚労省は下表のようにまとめている。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律の概要

  1. 1.全ての世代の安心を構築するための給付と負担の見直し
  2. (1) 後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し【高齢者の医療の確保に関する法律】
  3. 後期高齢者医療の被保険者のうち、現役並み所得者以外の被保険者であって、一定所得以上(※)であるものについて、窓口負担割合を2割とする。
  4. ※課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は後期高齢者の年収合計が320万円以上)。政令で規定。
  5. ※長期頻回受診患者等への配慮措置として、外来受診において、施行後3年間、1ヶ月の負担増を最大でも3,000円とする措置については、政令で規定。
  6. (2) 傷病手当金の支給期間の通算化 【健康保険法、船員保険法】
  7. 傷病手当金について、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるよう、支給期間の通算化を行う。
  8. (3) 任意継続被保険者制度の見直し【健康保険法、船員保険法】
  9. 任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しや、被保険者からの申請による資格喪失を可能とする。
  10. 2.子ども・子育て支援の拡充
  11. (1) 育児休業中の保険料の免除要件の見直し 【健康保険法、船員保険法、厚生年金保険法 等】
  12. 短期の育児休業の取得に対応して、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については1月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とすることとする。
  13. (2) 子どもに係る国民健康保険料等の均等割額の減額措置の導入【国民健康保険法、地方税法】
  14. 国民健康保険の保険料(税)について、子ども(未就学児)に係る被保険者均等割額を減額し、その減額相当額を公費で支援する制度を創設する。
  15. 3.生涯現役で活躍できる社会づくりの推進(予防・健康づくり・重症化予防の強化)
  16. ○ 保健事業における健診情報等の活用促進 【健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律 等】
  17. ① 労働安全衛生法等による健診の情報を保険者が保健事業で活用できるよう、事業者に対し被保険者等の健診情報を求めることを可能とする。
  18. ② 健康保険組合等が保存する特定健診等の情報を後期高齢者医療広域連合へ引き継ぐこと等を可能とする。
  19. 4.その他
  20. (1)国民健康保険の財政安定化基金を、都道府県が国民健康保険事業費納付金の著しい上昇抑制等のために充てることを可能とする。【国民健康保険法】
  21. (2)都道府県国民健康保険運営方針について、保険料の水準の平準化や財政の均衡に関して記載事項に位置付ける。【国民健康保険法】
  22. (3)医療扶助においてオンライン資格確認を導入する。【生活保護法、社会保険診療報酬支払基金法、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律】
  23. 施行期日
  24. 令和4年1月1日(ただし、1(1)は令和4年10月1日から令和5年3月1日までの間において政令で定める日、2(1)は令和4年10月1日、
  25. 2(2)及び4(1)は令和4年4月1日、4(2)は令和6年4月1日、4(3)は一部を除き公布の日(令和3年6月11日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日)
  1. 出典:第143回社会保障審議会医療保険部会(令和3年6月25日開催)資料

2割負担となる外来患者への経過措置も設ける

今回の法改正において社会的な関心が最も高かったのは、後期高齢者で一定所得以上ある者について窓口負担を2割にすることである。

まず、現行制度では、後期高齢者で課税所得145万円未満(住民税が課税されている世帯で年収383万円未満)は「一般」として、窓口負担は1割となっている。  また、課税所得145万円以上(年収383万円以上)が「現役並み所得」として、窓口負担が3割となっている。この階層が、後期高齢者(約1,815万人)のうち約7%(約130万人)を占めている。

改正健康保険法では、「現役並み所得」に関しては変更せず、「一般」の最上位階層について窓口負担を2割(以下、2割負担)とする。2割負担の所得基準は、課税所得が28万円以上(所得上位30%)かつ年収200万円以上、というものである。この2割負担の対象者は約370万人で、後期高齢者の約20%にあたる。それに「現役並み所得」の者を加えると、後期高齢者の約27%が、窓口負担が2割または3割となるわけである。

その施行日は令和4年度後半(令和4年10月から同5年3月までの各月の初日)とされており、今後、政令で定めることになる。それについて、保険者などからは、なるべく早くしてもらいたい、という要望が出ている。

また、その施行から3年間、2割負担となる外来患者への経過措置として、外来受診の負担増加が最大でも月3,000円に収まるようにする。

国会で「長瀬効果」、「長瀬式」に関して議論

令和4年度後半に2割負担を導入することによる財政影響については、保険者、医療関係者ともに関心が高かった。

厚労省は、令和4年度全体(満年度)に拡大してみた場合の財政影響について、給付費全体で1,880億円減と推計している。その内訳は、後期高齢者支援金(現役世代の負担)720億円減、後期高齢者保険料(高齢者の保険料)180億円減、公費980億円減、である。

また、その試算では、実効給付率が変化した場合に経験的に得られている医療費の増減効果(いわゆる長瀬効果)を見込んでいる。つまり、自己負担が従前の1割から2割になる階層が出てくるので、これらの階層では受診行動の変化、受診抑制が起こり、その分、医療費や給付費が減少することになる、と考えられるのである。ちなみに、長瀬効果の「長瀬」とは、戦前から戦後にかけて社会保険の分野で活躍した長瀬恒蔵氏(後述)のことである。

その長瀬効果について、改正健康保険法案を審議する国会で何度も議論が行われた。

まず、2割負担を導入することにより給付費全体で1,880億円の減少があると推計されているが(前述)、そのすべてが患者負担が増えたことによるというわけではなく、推計減少額のおよそ半分の900億円は長瀬効果を見込んでいることが国会の質疑で明らかになった。

また、長瀬効果を現代に当てはめてよいのか、大きな議論となった。令和3年5月27日に開催された参議院・厚生労働委員会では、野党の委員が次のような趣旨の質問をした。

「長瀬式は、長瀬恒蔵氏が1935年に表した傷病統計論の中で発表されている。これは、当時の健康保険と警察共済の給付率の違いによって医療費の水準が異なることについて実績値から割り出した式である。長瀬氏は当時、厚生省すらなかった時代、内務省社会局の数理技官であった。国民医療費が巨額化し、医療保険体系も非常に複雑化する中、90年近く前の二次関数式を参考指標にすることは構わないが、それに代わる新しい指標はないのか。厚生労働省としてそうした研究は行っているのか」

それに対して、田村・厚生労働大臣が次のように答弁している。

「現在の長瀬式の計算方法は、高齢者医療に一部負担が設けられた昭和58年2月から平成9年9月までの実績を基に係数を計算している。だから、以前の長瀬式の係数とは変わってきているわけである。学術的にも今、長瀬式に代わるものはないと言われている。例えば、平成18年に高齢者において現役並み世帯の方々に自己負担3割を導入したが、このときの結果を見ると、長瀬効果の理論的には受診日数が0.4日減るであろうということに対して、実績値が0.5日(減少)であり、おおむね一致している」

つまり、「長瀬式」といっても90年近く前の数式を使っているのではなく、厚労省では、昭和58年2月から平成9年9月にかけての実績に基づいて修正している。また、最近の実績値との関係も確認したうえで、今回、いわば最新版の長瀬式を使用したのである。

参議院で12項目の附帯決議

改正健康保険法を成立させるに当たり、令和3年6月3日、参議院・厚生労働委員会で12項目の附帯決議を採択したが、内容としては、2割負担の導入に関することが多い。

その附帯決議の1番目の項目で、2割負担の対象となる後期高齢者において受診抑制されることで疾病の重症化につながらないよう、必要な取り組みを進めることとしたうえで、「窓口負担割合の見直しが後期高齢者の受診に与える影響を把握するとともに、いわゆる長瀬式について、現代の受療行動等に対応した信頼性の高い推計が可能となるよう研究を進めること」としている。今後、その対応として、厚労省において、長瀬式について検討する研究班が作られる可能性がある。

また、オンライン資格確認システムの本格運用が令和3年10月までに開始されることになっているが、改正健康保険法に基づき、生活保護制度の医療扶助にオンライン資格確認の仕組みが遅くとも令和6年の6月初めまでに導入される。それに関して、附帯決議の9番目の項目で、被保護者の個人番号カード(マイナンバーカード)取得の支援、医療機関などにおけるオンライン資格確認システムの導入支援を進めること、としている。

なお、令和3年6月25日に開催された第143回社会保障審議会医療保険部会で参議院での附帯決議について、同部会委員から「とても大事なことをまとめていただいた」と評価する発言があった。