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厚労省が16の重篤副作用疾患別対応マニュアルを改定
最新の知見に基づき副作用の判別基準、治療方法などで新たな記載 2021.06.01健康・医療

厚生労働省(厚労省)および独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は令和3年4月2日、16の重篤副作用疾患別対応マニュアルを改定、公表した。同省は、平成17年度からこれまでに75の重篤副作用疾患別対応マニュアルを作成・公表しているが、同28年度から、それらの改定を進めている。今回改定が行われたのは、心室頻拍、出血性膀胱炎、尿閉・排尿困難、アカシジア、セロトニン症候群、新生児薬物離脱症候群、重度の下痢、急性膵炎(薬剤性膵炎)、麻痺性イレウス、消化性潰瘍、偽膜性大腸炎、再生不良性貧血、薬剤性貧血、血栓症、播種性血管内凝固、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の16の疾患が副作用として出現したときの対応マニュアルである。

ポイント

  • 現時点で75疾患のマニュアルが作成されている
  • マニュアルは患者編と医療関係者編で構成
  • ステロイドとの関係が証明されていない特発性大腿骨頭壊死症マニュアルは削除

これまでに37疾患のマニュアルを改定

厚労省は、平成17年度から重篤副作用総合対策事業として、重篤副作用疾患別対応マニュアルの作成に着手した。それまでの副作用対策は個々の医薬品側から見たものだったが、医薬品の使用により発生する副作用疾患に着目し、その副作用疾患を予測・予防する副作用対策を行うために活用するのが、重篤副作用疾患別対応マニュアルである。

実際にその作成の作業をしているのは、厚労省の委託により関係学会で組織されたマニュアル作成委員会で、それに対して日本病院薬剤師会が協力をしている。関係学会において作成されたマニュアル(案)は、厚労省の重篤副作用総合対策検討会に提出され、ここでのコメントを踏まえて修正し、完成することになる。

重篤副作用疾患別対応マニュアルは、令和3年4月時点で、75の疾患についてのマニュアルが作られている。各マニュアルの構成は、「患者の皆様へ」として簡潔に分かりやすく述べているページ、「医療関係者の皆様へ」として詳細な説明をしているページに大きく分かれる。また、「医療関係者の皆様へ」については、①副作用の早期発見と早期対応のポイント、②副作用の判別基準(判別方法)、③判別が必要な疾患と判別方法、④副作用が発現した場合の主な治療方法、⑤典型的症例――などについて記載している。

それらの作業により初期に作られたマニュアルは、平成28年度の段階で作成から約10年が経過し、その間に新たな知見も得られている。そこで厚労省では同28年度から5年間の計画として、重篤副作用疾患別対応マニュアルの改定に取り組んでいる。実際に、マニュアルの最初の改定版ができあがったのが同29年6月(2疾患)で、以後、同30年6月(8疾患)、令和元年9月(11疾患)と続いた。そのような流れの中で、同3年4月、16疾患のマニュアルの改定がなされた。(別表参照)

重篤副作用総合対策検討会で改定案を検討

その16の疾患のマニュアルの改定案は、令和2年9月2日にオンラインで開催された第12回「重篤副作用総合対策検討会」において、関係学会から報告された。そこでの意見を踏まえて各マニュアルの修正の作業を行い、それらが正式な改定版となり、厚労省とPMDAが同3年4月2日に公表した。各マニュアルの改正点(案)について同検討会で報告されたのは、主として、次のようなことである。

『尿閉・排尿困難』については、大きくは変わらないが、過活動膀胱の治療薬のβ3アドレナリン受容体作動薬の中には抗コリン薬を併用した場合、強く尿閉の症状が出ることがあるということを、参考例として入れている。

『出血性膀胱炎』については、基本的には前回のマニュアルを踏襲しているが、免疫チェックポイント阻害薬による出血性膀胱炎の記載を加えている。また、治療法として、高圧酸素療法についての説明を追加した。

『新生児薬物離脱症候群』については、妊娠中の多剤服用に注意すること、アルコール摂取歴を確認することなどについて、新たに記載した。

『卵巣過剰刺激症候群』については、発症予防法について現在の知見に基づいて整理し直した。また、人工授精(体外受精)が関係する症例を追加した。

『血栓症』については、抗線溶薬の「特に注意すべき点として、急性前骨髄性白血病(APL)に合併する線溶優位型DIC(播種性血管内凝固症候群)では、APL に対してオールトランス型レチノイン酸(ATRA)が投与されるとAPL細胞中の組織因子に抑制がかかる。そこに抗線溶薬が投与されると急激に凝固亢進に傾き、全身性血栓症を発症するため、絶対禁忌である」とした[重篤副作用疾患別対応マニュアル 血栓症 (血栓塞栓症、塞栓症、梗塞)]。

『播種性血管内凝固』については、昭和63年の旧厚生省DIC診断基準を用いていたのを、平成25年から日本血栓止血学会が提唱しているDIC診断基準に変更した。また、治療方法について、新発売の遺伝子組替え型トロンボモジュリン製剤の記載を追加した。

『薬剤性貧血』については、まず、用語について「網状赤血球」を「網赤血球」へ、「LDH」を「LD」へ、それぞれ変更した。また、新規薬剤として免疫チェックポイント阻害薬による薬剤性貧血を取り上げるとともに、抗菌薬による薬剤性貧血/薬剤性溶血性貧血の記載を増やした。

『再生不良性貧血』については、厚労省「特発性造血障害に関する調査研究班」によって提案されている診断基準、重症度分類に沿い、検査値などを示している。また、治療方法において、トロンボポエチン受容体作動薬を追加している。

『偽膜性大腸炎』については、ほとんどがクロストリジオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル菌によるものだが、学術名であった「クロストリジウム」が「クロストリジオイデス」に変更されたので、その記載も変更している。「Clostridioides(Clostridium)difficile 感染症診療ガイドライン」(日本化学療法学会・日本感染症学会)に基づいて改定を加えた。治療法に関しては、新たに、C. difficile に選択的抗菌活性を持つマクロライド系抗菌薬について記載した。

『重度の下痢』については、新たに、免疫チェックポイント阻害薬による腸管粘膜障害などについて記載。また、判別が必要な疾患と判別法において、顕微鏡的腸炎について記載した。

『消化性潰瘍』については、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を中心とした抗潰瘍薬の予防投与が有効と報告されているが、その予防投与は再発予防のみに保険適用であること(潰瘍の一次予防における投薬は保険適用となっていないこと)を明記した。また、治療方法において、PPIの効果、プロスタグランジン製剤以外の防御因子増強剤の有効性、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による消化粘膜障害、カリウムイオン競合型胃酸分泌抑制薬の有効性などについて追記している。

『麻痺性イレウス』については、リスク因子として精神疾患を追加。患者・家族が早期に認識し得る症状として、嘔吐を追記した。また、治療方法に関して、高圧酸素療法を追記している。

『急性膵炎(薬剤性膵炎)』については、改訂アトランタ分類により、急性膵炎に伴う局所合併症としての膵周囲液体貯留の分類に変更があったことに対応し、内容を大幅に修正している。また、それについて理解しやすいように、「改訂アトランタ分類における膵炎後貯留の分類」の図表も追加している。

『アカシジア』については、精神科領域で最も用いられている診断基準であるDSMが改訂され、DSM-5となったので、これに基づいた分類に書き直した。治療方法については、我が国や海外でもよく用いられているモーズレー処方ガイドライン第13版をベースにして、記載内容を変更した。また、典型的症例について、うつ(鬱)から統合失調症に変更し、アカシジアの原因薬剤を取り上げている。

『セロトニン症候群』については、副作用の判別基準として、Hunterの基準(The hunter serotonin toxicity criteria)を追加記載した。また、主要な原因薬剤であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)についての記載を増やしている。

『心室頻拍』については、主として発作性心房細動に対して抗不整脈薬を投与すると、かえって副作用としての心室頻拍が出現するということが背景にある。しかし、最近ではカテーテルアブレーションという手技が非常に進歩し、抗不整脈薬による副作用の頻度も減っている。また、この十数年間、新しい抗不整脈薬は開発されていない。そのため、今回の改定はマイナーチェンジにとどまっている。

新たに5つのマニュアルの作成に取り組む

第12回「重篤副作用総合対策検討会」では、重篤副作用疾患別対応マニュアルの1つとして平成23年に作られた特発性大腿骨頭壊死症マニュアルについて、日本整形外科学会からの要望を踏まえて、削除することで合意した。同マニュアルでは、骨壊死に陥る原因について主としてステロイドを想定しているが、ステロイドの投与と特発性大腿骨頭壊死症の発生の直接的な関係は証明されていない。それにもかかわらず、このようなマニュアルがあることは誤解を招き、患者がステロイドによる適切な治療の機会を失ってしまう恐れがあるというのが、主な理由である。

一方で、新たにマニュアルとして、「副作用発現臓器・領域別総論」、「免疫チェックポイント阻害薬の副作用に関するマニュアル」、「リチウム中毒」、「医薬品によって誘発される、あるいは退薬時に起こるせん妄」、「ベンゾジアゼピン系やバルビタール系などの治療薬依存(物質関連障害)」の作成に取り組んでいる。

また、既存のマニュアルのうち改定されていないものが38あり、これらの改定作業にも取り組んでいる。

なお、今回改定された16のマニュアルも含めて、重篤副作用疾患別対応マニュアルとしてこれまでに公表された全マニュアルが、PMDAのホームページ(下記アドレス)からダウンロードできるようになっている。
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/adr-info/manuals-for-hc-pro/0001.html

重篤副作用疾患別対応マニュアルの作成・改定の状況

副作用名 部位 領域 作成 年月 改定
心室頻拍 心臓・循環器 平成21年5月 令和3年4月
出血性膀胱炎 泌尿器 平成23年3月 令和3年4月
尿閉・排尿困難 泌尿器 平成21年5月 令和3年4月
アカシジア 精神 平成22年3月 令和3年4月
セロトニン症候群 精神 平成22年3月 令和3年4月
新生児薬物離脱症候群 精神 平成22年3月 令和3年4月
重度の下痢 消化器 平成22年3月 令和3年4月
急性膵炎(薬剤性膵炎) 消化器 平成21年5月 令和3年4月
麻痺性イレウス 消化器 平成20年4月 令和3年4月
消化性潰瘍 消化器 平成20年3月 令和3年4月
偽膜性大腸炎 消化器 平成20年3月 令和3年4月
再生不良性貧血 血液 平成19年6月 令和3年4月
薬剤性貧血 血液 平成19年6月 令和3年4月
血栓症 血液 平成19年6月 令和3年4月
播種性血管内凝固 血液 平成19年6月 令和3年4月
卵巣過剰刺激症候群(OHSS) 卵巣 平成23年3月 令和3年4月
  1. 参考:PMDAホームページ「重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療関係者向け)」資料