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厚労省が「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」を改訂
従来と異なる考え方で抗悪性腫瘍薬が臨床開発されていることなどが背景に 2021.06.01健康・医療

厚生労働省(厚労省)は令和3年3月31日、都道府県に対して、「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」についての通知を発出した。これは、平成17年に改訂した「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」を、現時点における科学的知見に基づき、約15年ぶりに改訂したものである。この改訂の背景には、免疫チェックポイント阻害薬など、従来と異なる考え方で抗悪性腫瘍薬が臨床開発されている、という状況がある。

ポイント

  • 第Ⅰ相試験は、一律に入院は規定せず、緊急対応可能な環境下で患者管理
  • 免疫チェックポイント阻害薬の特性などについての記載を追記
  • がん遺伝子検査に基づいた希少なサブタイプに関しての記載を追記

第Ⅰ相~第Ⅲ相試験を探索的試験・検証的試験に大きく分ける

厚労省は平成3年、「抗悪性腫瘍薬の臨床評価ガイドライン作成に関する研究班」の研究に基づき、「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」を作成・通知した。その後、抗体治療薬や分子標的薬などが開発されたことを踏まえて、同ガイドラインを平成17年に改訂した(以下、旧ガイドライン)。それから約15年が経過する間に、免疫チェックポイント阻害薬、がん遺伝子検査に基づく希少なサブタイプを対象とした分子標的薬など、従来とは異なる考え方で抗悪性腫瘍薬が開発されるようになってきた。そのような現状を踏まえて、旧ガイドラインを改訂し、令和3年3月31日に「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(以下、新ガイドライン)として、都道府県に通知した。

同通知では、新ガイドラインについて、現時点における科学的知見に基づく基本的考え方をまとめたものであり、学問上の進歩等を反映した合理的根拠に基づいたものであれば、必ずしもここに示した方法を固守するよう求めるものではない、と説明している。また、今後の取扱いについて、医薬品製造販売承認申請に際し、新ガイドラインに基づいて作成された資料を、通知日(令和3年3月31日)より、申請資料に添付することができるが、通知日前に開始されている試験の結果については従前の例による、としている。

新ガイドラインの構成(目次)は下表のとおりで、旧ガイドラインと比べると、構成が異なり、内容的にはⅥ章(希少がん、希少なサブタイプの抗悪性腫瘍の臨床評価)が追加された形になっている。また、臨床開発については、①忍容性、安全性、薬物動態を評価し用法・用量を検討する第Ⅰ相試験、②有効性、安全性を探索的に評価する第Ⅱ相試験、③従来の標準的治療と臨床的有用性を比較する第Ⅲ相試験――というように段階的に進めることが一般的だが、新ガイドラインにおいては、近年では薬剤の特徴などにより、第Ⅰ相試験で拡大コホート(患者群)を設定し、有効性・安全性を探索して第Ⅱ相試験を省略したり、第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験を1つの試験として実施する場合もある、と指摘。それを踏まえて、「探索的試験」を第Ⅰ相試験、第Ⅰ/Ⅱ相試験(第Ⅰ相試験に第Ⅱ相試験の一部を追加したもの)、第Ⅱ相試験、「検証的試験」を第Ⅲ相試験、第Ⅱ/第Ⅲ相試験(第Ⅱ相試験と第Ⅲ相試験を一連の試験として行うもの)として大きく二つに分けて、それぞれ指針を示している。

「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の構成

  1. Ⅰ.緒言
  2. Ⅱ.背景
  3. Ⅲ.概要
  4. 1.抗悪性腫瘍薬の定義
  5. 2.抗悪性腫瘍薬の臨床試験の種類
  6. 3.抗悪性腫瘍薬の臨床開発における基本的考え方
  7. 4.探索的試験の一般的な考え方
  8. 5.検証的試験の一般的な考え方
  9. Ⅳ.探索的試験
  10. 1.第Ⅰ相試験
  11. 2.第Ⅰ/Ⅱ相試験
  12. 3.第Ⅱ相試験
  13. Ⅴ.検証的試験
  14. 1.第Ⅲ相試験
  15. 2.第Ⅱ/Ⅲ相試験
  16. Ⅵ.希少がん、希少なサブタイプの抗悪性腫瘍の臨床評価
  17. 1.基本的事項
  18. 2.希少がん
  19. 3.希少なサブタイプ
  20. 4.マスタープロトコル
  21. Ⅶ.結言
  22. 関連ガイドライン・通知

新ガイドラインでは主として3つの点を改訂

新ガイドラインでは、対象とする抗悪性腫瘍薬について  「悪性腫瘍の増大・転移および再発の抑制、これらによる延命・症状やQuality of Life(QOL)の改善等の何らかの臨床的有用性を示して薬事承認を得ようとする薬剤である」と定義している。また、補足的に「抗悪性腫瘍薬には低分子化合物、抗体、細胞療法、ワクチン等、多様なものがあるが、ウイルスを用いた治療やキメラ抗原受容体T細胞(Chimericantigen receptor T cell、CAR-T)等の再生医療等製品に関しては、医薬品における考え方が参考になるものの、製品の特徴として医薬品と異なった考え方を必要とする部分があるため本ガイドラインの対象とはしない」と説明している。

新ガイドラインと旧ガイドラインの定義を比較すると、大きくは違わないが、QOLの改善が追加されている。

また、新ガイドラインでは、今回の改訂の要点として、次の3つを挙げている。

  1. ① 第Ⅰ相試験では原則入院での患者管理が求められていたが、治験環境の整備を踏まえ、緊急対応可能な環境下での患者管理に変更した。
  2. ② 免疫チェックポイント阻害薬の特性に応じた記載を追記した。
  3. ③ がん遺伝子検査に基づいた希少なサブタイプを対象とした分子標的薬の特性に応じた記載を追記した。

第Ⅰ相試験は安全性の確保が困難な場合は入院による管理下で評価

まず、第Ⅰ相試験ついては、主として、対象患者に関することが改訂されている。

毒性が強い抗悪性腫瘍薬の第Ⅰ相試験については、健康な人ではなく、がん患者を対象とする。標準的治療によって延命や症状緩和が得られる可能性のあるがん患者は、対象とすべきではない。ただし、ヒトで問題となる毒性が生じないと予測される薬物の第Ⅰ相試験は、健康な人でも実施可能な場合がある。

第Ⅰ相試験は、一律の入院を規定するものではない。しかし、未知および予想外の有害事象が生じる可能性があるため、緊急対応可能な環境で評価する必要がある。また、十分な安全性の確保が困難な場合は、入院による管理下にて評価する。

また、第Ⅰ相試験の対象患者は、概略、次のような条件を満たすものとする。

  1. (a) 原則として組織診または細胞診により悪性腫瘍であることが確認されていること。
  2. (b) 治験参加の時点で、通常の治療法では効果が期待できないか、または学会の診療ガイドライン等で認められた標準的治療がない悪性腫瘍を有する患者であること。
  3.  (c) 十分な生理的な代償機能があり、造血器、心臓、肺、肝、腎などに著しい障害や重篤な合併症のないこと。
  4.  (d) 前治療の影響がないか、または治験薬投与時の有害事象を適確に評価し得る程度に軽度であること。
  5. (e) 腫瘍縮小効果と有害事象が観察できるよう、十分な期間(例えば3カ月以上)の生存が期待できること。
  6.  (f) 薬物動態に影響する合併症等、有害事象の判定を困難にする要因がないこと。

免疫系に作用する抗悪性腫瘍薬は長期間に亘り安全性のデータを収集

旧ガイドラインが作られた平成17年当時には免疫チェックポイント阻害薬は存在せず、旧ガイドラインでは「免疫」という用語も使われていない。新ガイドラインでは、免疫チェックポイント阻害薬あるいは免疫について、さまざまな形で取り上げている。

その背景・理由について、免疫系に作用する薬物が新規抗悪性腫瘍薬の開発の大きな部分を占めるようになったとしたうえで、これらの効果や有害事象は従来の殺細胞性薬、分子標的薬とは異なった特徴を示し、臨床試験の考え方を整理する必要がある、としている。また、免疫チェックポイント阻害薬、がん遺伝子検査に基づいた希少なサブタイプを対象とした分子標的薬は、開発早期の臨床試験で有効性を評価して薬事承認が得られるなど、従来と異なる考え方で臨床開発が進められるものもあり、その傾向は加速する、と予測される。

免疫系に作用する抗悪性腫瘍薬は、治療開始から数カ月以上経過して有害事象が認められたり、投薬を終了後も免疫系の賦活状態が持続することがある。そのため、臨床試験での治療が終了した後も含めて、長期間に亘る安全性のデータを収集することが重要となる。また、免疫系に作用し得る他の抗悪性腫瘍薬が過去に使用されていたり、それを現時点で併用する場合には、その影響や相互作用も考慮する。

標準的治療に引き続く維持療法、術後補助療法など、腫瘍量が少ない状態で有効性を評価することが効率的である場合も考えられる。ただし、その場合は、十分な科学的根拠があって、試験デザインも倫理性が十分に担保されている必要がある。

また、新ガイドラインでは、検証的試験(第Ⅲ相試験など)での一般的な考え方として、免疫系に作用する抗悪性腫瘍薬は一定の割合で長期生存が期待できるなど、従来の抗悪性腫瘍薬とは異なる特徴を示す可能性があることに留意する、としている。

希少なサブタイプの臨床試験はマスタープロトコルも想定される

新ガイドラインでは、「希少がん」は罹患率によって定義されるため、特定の遺伝子異常等を有するがんを論ずる場合には「希少なサブタイプ」という用語を用いている。また、「基本的事項」として、その両者について次のような趣旨の説明をしている。

希少がんと希少なサブタイプは、異なる疾患群である。希少がんは数が少なく、そのため診療および受療上の課題が他のがんに比べて大きい疾患群とされる。希少なサブタイプは、明確な定義はないものの、臨床病理学的に定義された(比較的頻度が高い)がんのうち、非常に少ない患者のみに特徴的かつ生物学的に意義のある遺伝子異常(融合遺伝子、突然変異、遺伝子増幅等)が共通に認められる疾患群とされる。治療対象が「希少なサブタイプ」に該当するかどうかは、その推定罹患率のみで一律に規定するのではなく総合的に判断することが望ましい。

希少なサブタイプの臨床試験については、マスタープロトコル(後述)も想定される。すなわち、一般的な臨床試験では、単一のがん種において、単一の薬剤の評価が行われている。しかし、希少なサブタイプの場合、新ガイドラインでは、単一の治験実施計画書(プロトコル)で複数の薬剤または複数のがん種に関して並行して評価するマスタープロトコルによる試験デザインを用いることもあり得る、としている。

その臨床試験では、腫瘍縮小(奏効割合)を主要エンドポイントとして設定することは可能である。この場合、全生存期間、無増悪生存期間、奏効期間等も可能な限り副次的エンドポイントに設定する。

薬物の作用機序や非臨床試験の成績から、有効性との関連性が示唆されたバイオマーカーがある場合は、バイオマーカーを検出するためのコンパニオン診断薬も臨床試験で評価する必要がある。また、遺伝子変異等のバイオマーカーの検出には、原則として一定の分析性能(真度、精度等)を有することが確認された検査薬を使用する。異なったがん種でも当該の遺伝子異常が有する生物学的意義が共通である場合には、それをバイオマーカーとして、がん種横断的に一つの臨床試験で有効性・安全性を評価することも考えられる。

なお、厚労省が新ガイドラインを策定するに当たって、同ガイドライン案を公開し、意見募集(パブリックコメント)を行い、その内容について令和3年3月31日に公表しているが、「マスタープロトコルについて『希少がん、希少なサブタイプ』の項に記載した理由は何か」とのコメントに対して、「『希少がん、希少なサブタイプ』の臨床開発において、近年、マスタープロトコルを用いたものが認められることから、『希少がん、希少なサブタイプ』の項において言及しています」と回答している。