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厚労省が「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」の通知
「高齢者の医薬品適正使用の指針」を活用するための業務手順書として作成 2021.05.10健康・医療

厚生労働省(厚労省)は令和3年3月31日、都道府県などに対して、「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」の通知を出した。厚労省の高齢者医薬品適正使用検討会は平成30年から令和元年にかけて、「高齢者の医薬品適正使用の指針」と同指針の各論編を取りまとめたが、それらが十分に活用されていないことから、ポリファーマシー対策を進めるためのツール、業務手順書として「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」を作成。それを周知するために厚労省が今回、通知を発出した。

ポイント

  • ポリファーマシーとは「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」
  • ポリファーマシー対策は、まず、職員に対するアンケート調査などで院内の現状を把握することから
  • ポリファーマシー対策では院内の医療チーム、既存ツールを活用する
  • 運営規程などの“ひな型”としての様式事例集も利用する

「指針(総論編)」でポリファーマシーを定義

高齢化の進展に伴って、加齢による生理的な変化、併存する複数の疾患を治療するための医薬品の多剤服用などにより、安全性の問題が生じやすいという状況があることを踏まえて、厚労省の高齢者医薬品適正使用検討会(以下、検討会)は平成30年5月、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(以下、「指針(総論編)」)を取りまとめた。そこで最も問題視しているのは、ポリファーマシーという状態である。

「指針(総論編)」では、ポリファーマシーの定義を「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態である」としている。ただし、ポリファーマシーとは何剤以上であるといった定義はない。「指針(総論編)」は、高齢者におけるポリファーマシー対策、ポリファーマシーの解消に重点を置いたものとなっている。その構成(目次)は下表のとおりである。

「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」の構成(目次)

  1. 1.ポリファーマシーの概念
  2. 2.多剤服用の現状
  3. 3.薬剤見直しの基本的な考え方及びフローチャート
  4. 4.多剤服用時に注意する有害事象と診断、処方見直しのきっかけ
  5. 5.多剤服用の対策としての高齢者への薬物投与の留意事項
  6. 6.服薬支援
  7. 7.多職種・医療機関及び地域での協働
  8. 8.国民的理解の醸成
  9. 別添
  10. 別表1 高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点
  11. 別表2 その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト
  12. 別表3 代表的腎排泄型薬剤
  13. 別表4 CYPの関与する基質,阻害薬,誘導薬の代表例
     (特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)
  14. 別紙 薬物動態、腎機能低下時及び薬物相互作用について

また、検討会では令和元年6月、「指針(総論編)」の各論編(以下、「指針(各論編)」を取りまとめた。これは、生活・環境の移行に伴って関係者の留意すべき点が変化することを念頭に、患者の療養環境として、①外来・在宅医療・特別養護老人ホーム等の常勤の医師が配置されていない施設、②急性期後の回復期・慢性期の入院医療、③その他の療養環境(常勤の医師が配置されている介護施設等)の3つを取り上げ、それぞれの留意事項を明確化したものである。

9割以上の病院で手順書が存在せず

厚労省では令和元年度に、医療現場でのポリファーマシー対策の実態を把握するために、「高齢者の医薬品適正使用推進事業に係る実態調査」として、病床数100床以上の全病院5,369施設の薬剤部長を対象にアンケート調査(以下、アンケート調査)を行った。併せて、ヒアリング調査で、好事例なども集めた。

アンケート調査によると、ポリファーマシーの定義(前述)を正確に理解していたのは50.2%。それを単なる多剤併用であると理解していたのは44.0%であった。

また、「指針(総論編)」もしくは「指針(各論編)」(以下、「指針(総論編)」と「指針(各論編)」を合わせて「指針」という)の内容をよく理解していたのは18.8%、ある程度理解していたのは43.6%である。院内での「指針」の周知については、「周知していない」が 63.3%で最も多い。また、「指針」の内容を引用したポリファーマシーの解消を目的とした手順書などについては、93.6%が存在しないとしている。

そのような状況と課題が明らかになったため、検討会では、それらの課題を解決するツールとして、ポリファーマシー対策を行う実際的なポイントをまとめた業務手順書を作ることにした。それが、このほど、「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」(以下、「業務手順書」)としてまとまった。併せて、好事例となる施設でのポリファーマシー対策に関する組織の規程・要領や報告書などが“ひな型”として使えるように、様式事例集も作られた。

ポリファーマシー対策の始め方、進め方を具体的に示す

業務手順書は3つの章で構成し、主として、ポリファーマシー対策を始める前の準備と課題への対応(第1章関係)、ポリファーマシー対策の実際の進め方(第2章関係)について説明している。(下表)

また、様式事例集については、いわゆるテンプレート(ひな型)としてWord形式またはExcel形式のファイルとして、厚労省の高齢者医薬品適正使用検討会のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17788.html)からダウンロードできるようになっている。

「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」
構成(目次)

  1. 第1章 ポリファーマシー対策の始め方
  2. 1. ポリファーマシー対策を始める前に
  3. 2. 身近なところから始める方法
  4. 3. ポリファーマシー対策を始める際の課題と対応策
  5. 第2章 ポリファーマシー対策の進め方
  6. 1. ポリファーマシー対策の体制づくり
  7. 2. ポリファーマシー対策の実施
  8. 3. 様式事例集
  9. 第3章 本書の検討体制

  10. 様式事例集
  11. 様式01 高齢者薬物療法適正化委員会規程
  12. 様式02 ポリファーマシー対策チーム運営要領
  13. 様式03 持参薬評価テンプレート
  14. 様式04 持参薬評価表
  15. 様式05 訪問薬剤管理指導報告書
  16. 様式06 服薬情報提供書
  17. 様式07 施設間情報提供書
  18. 様式08 薬剤管理サマリー
  19. 様式09 薬剤管理サマリー
  20. 様式10 退院時のお薬について(お薬手帳を用いた情報提供の例)
  21. 様式11 介入状況報告書

院内の勉強会やカンファレンスでポリファーマシーを取り上げる

業務手順書の第1章では、ポリファーマシー対策を始める前の準備、始め方のポイントなどについてまとめている。

まず、院内の現状を把握する。例えば、現場の職員がポリファーマシーやその原因となる多剤服用に関して実際に困っていることについて、調査する。業務手順書では、困っていることの例として「入院時の持参薬に実際には服用していない薬剤が含まれている」、「服用薬剤数が多く、看護師による服用方法の説明・管理が難しい」などを挙げている。

次に、院内外の理解を深めるようにする。例えば、勉強会やカンファレンスで、ポリファーマシーを取り上げる。

ポリファーマシー対策については、担当者を決め、小規模から始めるようにする。院内で活動している医療チーム、既存ツールを活用する。その医療チームについては、栄養サポートチーム(NST)、皮膚・排泄ケアチームといった専門医療チームだけでなく、例えば入院前支援チーム、退院支援チームなどの活動に、ポリファーマシー対策の視点を加える。また、既存ツールとしては、例えば診療情報提供書、薬剤管理サマリー、お薬手帳、電子カルテ、服薬情報提供書などがあり、ポリファーマシー対策の観点での記載を加えることができる。

ポリファーマシー対策を始める際の課題について、業務手順書では、①人員不足で、対象患者の抽出や、検討する時間を作れない、②多職種連携が十分でない、③お薬手帳がうまく活用されていない、④ポリファーマシーであるかを判断することが難しい、⑤医師が自科以外の処方薬を調整することが難しい、⑥病態全体をとらえることが難しい、⑦見直し後の処方内容をかかりつけ医へフィードバックする体制が構築されていない、⑧患者の理解が得られない――などを挙げ、第2章において、それらの対応策を示している。

施設内だけでなく地域内・地域包括ケアも視野に入れる

第2章では、ポリファーマシー対策の進め方について具体的に説明している。

まず、ポリファーマシー対策の体制づくりとして、ポリファーマシーの概念、対策の目的を確認する。また、運営規程などをつくる際には、業務手順書に付属している様式事例集を参考にする。

人員体制については、施設内だけでなく地域内・地域包括ケアも視野に入れ、例えば看護師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)などの役割を決め、多職種連携を行う。

ポリファーマシー対策の成果をモニタリングするための指標としては、処方見直しの対象となる患者数、対象患者の処方薬剤数など基本的なもののほか、①ポリファーマシー対策に関する地域における活動回数(勉強会、会合など)、②ポリファーマシーに関与した職員数、③処方見直しを行った患者に対する退院後の処方内容の維持状況――などがある。

ここではデジタル化も重要で、例えば電子カルテ、電子版お薬手帳などを活用する。また、個人情報を扱うので、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(個人情報保護委員会・厚生労働省、令和2年10月一部改正)、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5.1版」(厚生労働省、令和3年1月)などを踏まえて対応する。

入院前や入院中に対象患者をスクリーニングする

ポリファーマシー対策を実施する場合について、業務手順書では、入院患者への対応、外来患者への対応を分けているが、人員・人材などの関係もあり、入院患者への対応が中心となる。

入院患者への対応の場合、大きな流れとしては、次のようになる。
【入院前】
 ①対象患者のスクリーニング
 ②院外の医療機関・薬局へ情報提供を求める
 【入院時】
 ③患者に対する情報の把握、対象患者のスクリーニング
 【入院中】
 ④カンファレンスまたは病棟で、処方の見直しを検討
 (患者・家族の意向も確認)
 ⑤入院中の主治医による処方内容の検討
 ⑥患者・家族への説明
 ⑦入院中のモニタリング
 【退院時】
 ⑧患者・家族への説明
 ⑨院外の医療機関・薬局への情報提供
 【退院後】
 ⑩連携先の医療機関・薬局などによるモニタリング

この一連の取組は、入院前あるいは入院時、対象患者をスクリーニングすることから始まる。

そのスクリーニングの定量的条件について、業務手順書では、「自院他院問わず、入院前に内服を開始して一定の期間(例:4週間)以上経過した内服薬が一定の種類数(例:6種類)以上処方されている」などの例示をしているが、その薬剤種類数については目的に応じて10種類以上に限定してもよい、としている。また、定性的条件としては、「患者や家族が処方見直しを希望している」、「入院前の医療機関から処方見直しに関する依頼がある」が、例示されている。

なお、業務手順書は、あくまでも、前述の「指針」を活用するためのものであり、職員の啓発活動、勉強会などにおいては、「指針」を教材として活用し、それらの内容を理解してもらうことが重要となる。