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医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議が取りまとめ
安定確保に関して三つのフェーズに分けて対応・対策を提案 2020.10.14健康・医療

厚生労働省(厚労省)は令和2年9月28日、医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議(以下、関係者会議)の取りまとめ(以下、「取りまとめ」)を公表した。関係者会議は、令和元年に外国に起因する問題から抗菌薬のセファゾリンナトリウム注射剤の安定的な供給が長期的に滞るという状況に陥ったこと(以下、令和元年のセファゾリン事案)などを踏まえて、今年3月に発足した。今回の取りまとめでは、①供給不安の予防、②早期対応、③実際に供給不安に陥った際の対応――というように、三つのフェーズに分けて対応・対策を提案している。

ポイント

  • 特に配慮が必要とされるものを安定確保医薬品として速やかに選定する
  • 供給不安の予防、早期対応、供給不安に陥った際の対応という3フェーズで対策を示す
  • 供給不安予防のための取り組みとしてサプライチェーンの複数化など

出荷調整等を実施した医療用医薬品が過去約2年間で112件

 厚労省では、出荷調整等を実施した医療用医薬品について自主的に報告するよう製薬企業に求めている。その報告数は、平成30年度が54件、令和元年度(令和2年1月末まで)が58件で、合計112件となっている。その出荷調整等を実施した主な原因は、品質問題(30%)、需要増への対応(29%)、医薬品適正製造基準(GMP)等への対応の遅れ(21%)などである。また、それらのうち後発医薬品が55%で過半数を占め、先発医薬品は34%、その他(長期に収載されている医薬品)が11%となっている。

また、令和2年2月以降、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大していることから、それによる医薬品供給への影響について厚労省が調査している。調査によると、海外での製造、輸出等が止まっていて、一定期間内に供給不安に陥る可能性のある品目も報告されており、同省では、それへの対応を始めている。

関係者会議では、医療用医薬品の安定確保が困難になる背景について、次の点を指摘している。

  1. (1)製造が外国に過度に依存していることによるリスク、サプライチェーンが複数化されていないことによるリスクがある。ちなみに、ここでいうサプライチェーンとは、原料物質(出発物質)→ 中間体 → 原薬 → 製剤の流れを意味する。
  2. (2)ジェネリック医薬品などにおいては、原料物質などの管理に対して適切なコストが割けなくなっている。
  3. (3)日本と海外では薬事に関する手続きが異なり、製造方法や製造所の変更が効率的にできない場合がある。
  4. (4)企業間の情報共有、共同した取り組みが困難な状況があり、供給不安が生じた場合、適時適切に対応できないことがある。
  5. (5)各地域での供給と在庫の状態をリアルタイムで捉えることが難しく、医療機関が在庫確保のために過剰な発注をして、品薄状態に拍車がかかる恐れがある。
  6. (6)実際に供給不安に陥った際、迅速なリカバリー(回復・復旧)が重要。併せて、今後の状況を予見できるような情報、代替薬に関する情報を提供することが肝要である。

学会への調査では安定確保が求められる医薬品としてステロイド薬が最多

今後の対応策について、「取りまとめ」では、①汎用され安定確保に特に配慮の必要な医薬品の選定、②フェーズ別の対応――という二つを打ち出している。

まず、厚労省では令和2年7月、日本医学会傘下の主要な学会に対して、汎用されていて、安定確保が求められる医療上必要不可欠な医薬品について調査している。その結果、58学会から551品目(成分)が提案された。最も多かったのは、11学会が提案したプレドニゾロン(ステロイド薬)。次が、9学会が提案したヘパリンナトリウム (抗凝固薬)である。

「取りまとめ」では、それら主要な学会が特に必要としている医薬品を踏まえて、切れ目のない医療供給のために必要で、安定確保について特に配慮が必要とされるものを安定確保医薬品として速やかに選定するよう、提案している。また、安定確保医薬品については、例えば次のようなカテゴリーで分け、個別の対策を行う、としている。

  1. (イ) 対象疾患が重篤であること
  2. (ロ) 代替薬または代替療法がないこと
  3. (ハ) 多くの患者が服用(使用)していること
  4. (ニ) 各医薬品の製造の状況(製造の難しさ、製造量等)やサプライチェーンの状況等

ただし、品目(成分)によっては多数の企業が参入している場合もあり、供給や対応の責任の所在があいまいになる恐れがあるため、企業間で協力するスキームが必要である、と指摘している。

三つの段階・時期に分けて対応策を示す

次に、「取りまとめ」では、フェーズ別の対応として、①供給不安を予防するための取り組み、②供給不安の兆候をいち早く捕捉し早期対応に繋げるための取り組み、③実際に供給不安に陥った際の取り組み――というように、三つの段階・時期に分け、対策を示した。

各フェーズでの対応のポイントは下表のとおりである。

取りまとめの骨子

  1. (1)供給不安を予防するための取り組み
  2. ①カテゴリーを考慮しつつ、厚労省で各社の協力のもと、サプライチェーンを把握(マッピング)
  3. ②在庫積み増しや、複数ソース化、 サプライチェーンの 国際展開等を要請(国もカテゴリーを考慮しつつ、支援検討)
  4. ③ 流通改善の取り組みや既存の仕組みの活用

  5. (2) 供給不安の兆候をいち早く捕捉し早期対応に繋げるための取り組み
  6. ④ 定期的な自己点検の 実施。可能な場合には、判断のための客観的な数量的基準を設定
  7. ⑤ 供給不安時の対応の事前整理、供給不安情報の事前報告(報告の対象は、安定確保医薬品以外も含む)、供給不安情報を必要に応じて公表(公表の仕方は要検討)

  8. (3) 実際に供給不安に陥った際の対応
  9. ⑥ 各医薬品、代替薬の医療現場での使用のされ方を考慮し、 必要に応じた診療指針等の記載内容の見直し
  10. ⑦ 品質規格基準について国際整合化の観点から見直しの検討
  11. ⑧ カテゴリーを考慮しつつ 、 安定確保スキームの実施
  1. 出典:医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 取りまとめ

供給不安を予防するために、薬価制度上の既存の仕組みの活用なども

最初のフェーズである「供給不安を予防するための取り組み」において対策の中心になるのは、在庫の積み増し、複数ソース化などである。そのため製造販売業者等は、原薬や出発物質等の製造国のリスク情報を収集し、今後の供給に関するリスク評価を実施したうえで、必要な対策を検討する。

具体的な対策としては、例えば原薬等の在庫積み増し、出発物質を含めたサプライチェーンの複数化、原薬等の国内製造への移行、原薬等の共同購入や共同備蓄、原薬製造企業との適切な契約の締結、などがある。ただし、国内生産への移行も重要だが「安定確保やリスク低減の観点から、日米欧の国際連携や国際展開についても検討が必要である」としている。

また、薬価制度上の既存の仕組みの活用、流通の改善、診療指針の整理などについても検討する。その流通の改善については、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」に基づき、単品単価契約を進めているが、安定確保医薬品についてはこれが徹底されるよう、品目の情報公開とガイドラインに基づく単品単価契約など流通改善の取り組みを普及徹底することが必須の要件である、と指摘している

早期対応に繋げるために、対応策を事前に検討して社内で共有

次のフェーズである「供給不安の兆候をいち早く捕捉し早期対応に繋げるための取り組み」の基本となるのは、供給不安に陥った場合の対応策を事前に検討し、社内で共有しておくことである。具体的な対応策としては、供給不安時の情報共有の手順の整理、欠品・出荷調整に至った理由と供給再開見込時期に関する情報提供、医療現場に対する供給の優先順位の策定、代替薬の整理(代替薬の製造販売業者との事前調整ほか)、代替薬や代替療法に関する関係学会との事前相談、医療現場からの照会等に対応する窓口の設置、などがある。

また、このフェーズでは、供給不安に関する国への報告、関係者との情報共有も行う。これに関する当面の対応として、安定確保医薬品以外のものも含め医薬品の供給不安に関する情報について、国が製造販売業者に報告を求めるための明確なルールを定める、としている。

実際に供給不安に陥った際には、令和元年のセファゾリン事案を参考に

最終的なフェーズである「実際に供給不安に陥った際の取り組み」としては、令和元年のセファゾリン事案時の対応を参考に、緊急度の高い医療機関に対し、当該医薬品、その代替薬を迅速に提供する仕組み(以下、安定供給スキーム)を、事前に準備する。令和元年のセファゾリン事案に際し、同年9月から実施した安定供給スキームとは、次のようなものである。

医療機関が、注射用のセファゾリンナトリウムおよび代替薬が入手できず、治療や手術が実施できない可能性を予見したため、その状況、通常取引している卸売販売業者名および連絡先、令和元年11月末までに必要と見込まれる注射用のセファゾリンナトリウムまたは代替薬の量、その見込みの計算方法などを、厚労省に連絡した。その連絡を受けた同省は、当該医療機関からの情報を関係する製造販売業者と共有。また、製造販売業者と卸売販売業者との連携を促し、当該医療機関に必要な薬量が供給できるよう調整した。

なお、「取りまとめ」では「おわりに」において、医療用医薬品の安定確保については、切れ目のない医療提供の観点から今後益々重要となってくると予測したうえで、継続した安定確保策の検討と更新を期待する、としている。