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医師が診療の求めに応じないことが正当化される場合とされない場合について整理
今後、応招義務についての行政解釈の基本に 2020.01.17健康・医療

厚生労働省(厚労省)医政局長は2019年12月25日、都道府県に対して「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」の通知(以下、通知)を発出した。これは、「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究(平成 30年度厚生労働省行政推進調査事業費補助事業)」の報告書を踏まえて、医師が診療の求めに応じないことが正当化される場合とされない場合について整理し、基本的な考え方、具体的な例などを示したものである。今後、応招義務についての行政解釈は、通知を基本とする。

ポイント

  • 「働き方改革」という新たな状況を踏まえて応招義務の解釈を示す
  • 応招義務は国に対する義務であって、患者に対する義務ではない
  • 応招義務は医師・歯科医師個人が負うが、それを雇用する医療機関も患者に対し必要にして十分な治療を与える責務を負う
  • 労使協定・労働契約の範囲を超えた指示等は、労働関係法令上の問題で応招義務の問題ではない

応招義務は国に対する義務であって、患者に対する義務ではない

医師法第19条第1項では「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」としていて、これが応招義務についての規定となっている。歯科医師法第19条第1項にも、同様の規定がある。

近年、政府が「働き方改革」を推進する中で、医師の負担を軽減するという観点から、あらためて医師の応招義務(応召義務)の解釈、それについての周知が課題となってきた。応招義務を拡大解釈すると、医師の過重労働につながることになりかねない。そこで、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」は2018年9月19日、医師の応招義務を議題として取り上げ、「医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究」について中間整理して、報告した。この報告が今回の通知の基準となっている。

通知では、応招義務に関して、基本的考え方を示したうえで、患者を診察しないことが正当化される事例を整理している。また、基本的考え方については、①診療の求めに対する医師個人の義務(応招義務)と医療機関の責務、②労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等について、③診療の求めに応じないことが正当化される場合の考え方――に分けて、次のように説明している。

  1. ① 診療の求めに対する医師個人の義務(応招義務)と医療機関の責務
    応招義務は、医師・歯科医師が国に対して負担する公法上の義務であって、患者に対する私法上の義務ではない。また、応招義務は、医師・歯科医師が個人として負担する義務として規定されている。その医師・歯科医師を雇用し、患者に対応する医療機関については、医師・歯科医師個人の応招義務とは別に、医療機関としても、患者に必要にして十分な治療を与えることが求められる。
  2. ② 労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等について
    労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等については、使用者と勤務医の労働関係法令上の問題であり、応招義務の問題ではない。
  3. ③ 診療の求めに応じないことが正当化される場合の考え方
    医療機関の対応として患者を診療しないことが正当化される場合とされない場合、医師・歯科医師個人の対応として応招義務に反する場合と反しない場合について、最も重要な考慮要素は、患者について緊急対応が必要であるか否か、つまり病状の深刻度である。そのほかの重要な考慮要素は、診療を求められたのが診療時間・勤務時間内であるか同時間外であるか、患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係、といったことである。
   

緊急対応が必要、不要な場合で区分して判断

 

通知では、患者を診療しないことが正当化される事例について、緊急対応が必要な場合(症状の深刻な救急患者等)と不要な場合(病状の安定している患者等)に区分したうえで、それぞれ整理をしている。

 

まず、緊急対応が必要な場合は、診療を求められたのが診療時間内・勤務時間内か、時間外かによって、正当化されるかどうかが異なる。

   
緊急対応が必要、不要な場合で区分して判断
   

外国人患者においても原則として日本人と同様に判断

 

以上の考え方に基づき、通知では、個別の事例について、①患者の迷惑行為、②医療費不払い、③入院患者の退院や他の医療機関の紹介・転院等、④差別的な取り扱い、⑤訪日外国人観光客をはじめとした外国人患者への対応――に、大きく分けたうえで、具体例を示し、患者を診療しないことが正当化されるか否かを整理し、説明している。

 

それらのポイントは、下表のとおりである。

   

個別事例ごとの整理 診療を行わないことが正当化される例

事例 診療しないことが
正当化される
①患者の迷惑行為
診療内容と関係ないクレーム等を繰り返す
②医療費の不払い
以前に医療費の不払いがあったことのみが理由 ×
支払い能力があるにもかかわらず悪意を持って支払わない患者
保険未加入等、支払い能力が不確定 ×
自由診療において支払い能力のない患者
③退院、他の医療機関の紹介・転院等
医学的に入院の継続が必要ない場合の退院
症状に応じて地域の医療機関を紹介、転院
④差別的な取り扱い
年齢、性別、人種・国籍、宗教等のみの理由 ×
言語が通じない、宗教上の理由等で、
結果として診療行為が著しく困難
特定の感染症の罹患等、合理性のない理由 ×
1類・2類感染症等、制度上、
特定の医療機関で対応すべき感染症
⑤ 訪日外国人観光客
宗教的な問題で肌を見せられない等 ×
帰国することで医療を受けることが可能等 ×
文化や言語の違い等で診療行為が著しく困難
  1. 注 :〇印は診療しないことが「正当化される」という意味
    ×印は診療しないことが「正当化されない」という意味
  2. 出典:厚生労働省「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」

なお、外国人患者(上記参照)においても、診療しないことが正当化されるか否かは、原則として、日本人患者と同様に判断する。