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厚労省が「薬剤耐性(AMR)に関する小委員会」を開催
薬剤耐性対策アクションプランの進捗状況が明らかに 2019.11.17健康・医療

厚生労働省(厚労省)は2019年10月30日、厚生科学審議会の「薬剤耐性(AMR)に関する小委員会」(以下、小委員会)を開き、世界的な取り組みとして2016年から始まった薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの進捗状況などについて報告した。それによると、ヒトにおける抗菌薬使用量は減少傾向にあるが、特定の耐性菌の分離率はほとんど減少していない。また、19~39歳の世代に抗菌薬処方率が高くなっている。

ポイント

  • ヒトにおける抗菌薬使用量は減少傾向に
  • 特定の耐性菌の分離率はほとんど減少していない
  • 19~39歳の世代で抗菌薬処方率が高い

2016~2020年のAMR対策アクションプランを閣議決定

抗微生物薬の不適切な使用が原因となり、それが効かない薬剤耐性(AMR)菌が世界的に増加していることを踏まえて、WHOが2011年、AMR対策の必要性を国際社会に訴えた。その後、先進7カ国(G7)などでAMR対策が始まり、2016年にわが国で開催されたG7伊勢志摩サミットでも、AMR対策が課題として取り上げられた。また、その一環として、わが国では2016年4月、2016年から2020年までの「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」(以下、アクションプラン)を閣議決定した。

アクションプランは、①普及啓発・教育、②動向調査・監視、③感染予防・管理、④抗微生物製剤の適正使用、⑤研究開発・創薬、⑥国際協力、を柱として、6分野に関する「目標」や、その目標ごとに「戦略」および「具体的な取り組み」等を盛り込んでいる。(下表参照)

薬剤耐性対策アクションプランの構成

分野 目標
1 普及啓発・教育 薬剤耐性に関する知識や理解を深め、専門職等への教育・研修を推進
2 動向調査・監視 薬剤耐性および抗微生物製剤の使用量を継続的に監視し、薬剤耐性の変化や拡大の予兆を適確に把握
3 感染予防・管理 適切な感染予防・管理の実践により、薬剤耐性微生物の拡大を阻止
4 抗微生物製剤の適正使用 医療、畜水産等の分野における抗微生物製剤の適正な使用を推進
5 研究開発・創薬 薬剤耐性の研究や、薬剤耐性微生物に対する予防・診断・治療手段を確保するための研究開発を推進
6 国際協力 国際的視野で多分野と協働し、薬剤耐性対策を推進
  1. 出典:厚生労働省「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(概要)」

ヒトに関して8項目の目標を設定

アクションプランにおいては、ヒトに関する2020年の目標として、下記の8項目を設定している。

  1. (1) 肺炎球菌のペニシリン耐性率を15%以下に低下させる。
  2. (2) 黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率を20%以下に低下させる。
  3. (3) 大腸菌のフルオロキノロン耐性率を25%以下に低下させる。
  4. (4) 緑膿菌のカルバペネム(イミペネム)耐性率を10%以下に低下させる。
  5. (5) 大腸菌および肺炎桿菌のカルバペネム耐性率0.2%以下を維持する。
  6. (6) 人口千人あたりの一日抗菌薬使用量を2013年の水準の3分の2に減少させる。
  7. (7) 経口セファロスポリン系薬、フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬の人口千人あたりの一日使用量を2013年の水準から50%削減する。
  8. (8) 人口千人あたりの一日静注抗菌薬使用量を2013年の水準から20%削減する。

小委員会では、事務局(厚労省健康局)がヒトに関するアクションプランの目標(前述)の途中経過を報告した。基準はいずれも2013年、そのポイントは次のとおりである。

  1. ○ 抗菌薬使用量(一日使用量、販売量による検討)は、2017年で7.3%減、2018年で10.6%減となっている。
  2. ○ 経口抗菌薬の一日使用量は2018年では、経口セファロスポリン系薬は18.4%減少、経口フルオロキノロン系薬は17.0%減少、経口マクロライド系薬は18.0%減少している。しかし、静注抗菌薬については10.0%増加している。

そのように、経口抗菌薬の一日使用量は減少傾向を示しているが、2020年には2013年の水準の2/3に減少させるという目標とは隔たりがある。一方、静注抗菌薬の一日使用量は増加傾向を示しており、2013年の水準から20%削減するという目標達成は難しい状況である。

また、2018年における特定の耐性菌の分離率は次のようになっている。

  1. ○ 肺炎球菌のペニシリン非感受性率(2020年目標値15%以下)は38.3%。
  2. ○ 黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率(同20%以下)は47.5%。
  3. ○ 大腸菌のフルオロキノロン耐性率(同25%以下)は40.9%。
  4. ○ 緑膿菌のカルバペネム耐性率(同10%以下)は、イミペネムで16.2%、メロペネムで10.9%。
  5. ○ 大腸菌のカルバペネム耐性率(同0.2%以下)は、イミペネム、メロペネムともに0.1%。
  6. ○ 肺炎桿菌のカルバペネム耐性率(同0.2%以下)は、イミペネムで0.3%、メロペネムで0.5%。

それらの分離率の全体的な状況について、事務局では「減少傾向にない」とコメントした。

市民レベルでは基礎知識の向上はみられない

次に、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター(以下、AMR臨床リファレンスセンター)より、医療分野からの報告が行われた。

AMR臨床リファレンスセンターでは医療従事者向け教育啓発活動として、2017年度から、AMR対策臨床セミナー、公衆衛生セミナーなどを開催するとともに、eラーニングのコンテンツも公開している。

市民向け教育啓発活動としては、小さな子を持つ親の世代をメインターゲットとして、ウェブサイト、イベント、医療機関などさまざまなルートを活用してAMR対策や抗菌薬適正使用の認知度と基本知識の向上に取り組んでいる。

その評価として、インターネットを使って市民レベルの意識調査も行っている。例えば、2017年9~10月の調査で「かぜに抗生物質が有用」との設問において正答を選択しなかった割合は44.0%で、それから2年後の2019年9月においてもその割合は43.9%とほとんど変わらず、市民レベルでは基礎知識の向上はまだみえていない。

また、AMR臨床リファレンスセンターでは、年代別に見た非細菌性上気道感染症(いわゆる「かぜ」)に対する抗菌薬処方率について報告した。それによると、全年代(平均)での抗菌薬処方率は31.65%だが、それが19~29歳では43.26%、30~39歳では42.47%と比較的高くなっており、同センターでは「教育啓発が必要である」とコメントした。

抗微生物薬適正使用の手引き」改訂の作業も進める

それらの報告を受けた小委員会の構成員から、まず、AMRに関する日本の取り組みの全体状況について、「各国が日本を注目している。日本がインセンティブで推し進めていることに、驚いている。また、行政のサポートもある」とのコメントが出た。そこでいうインセンティブとは主として診療報酬上の評価のことで、2018年度診療報酬改定では、例えば入院において抗菌薬適正使用支援加算(100点、入院初日)、小児科外来において小児抗菌薬適正使用支援加算(80点)が新設されている。

それについて、構成員からは「前回(2018年度)の診療報酬改定で小児科に加算が付いたのが大きかった。今後は、耳鼻科などにも反映させていかなければならない」との発言があった。別の構成員は、2020年度診療報酬改定に向けての中央社会保険医療協議会(中医協)の議論において、AMRへのさらなる対応も論点の一つになっていることについて「画期的である」と評価した。

そのように取り組みの成果が出ている一つの背景として、看護界を代表する構成員が、感染管理の認定看護師が抗菌薬適正使用支援チームあるいは感染制御チームなどに加わっていることを、紹介した。

また、別の構成員からは「数値目標のためにやるのではなく、適正使用のためにやる。それは、ここで確認しておきたい」との発言が出た。

なお、事務局では、学童期未満の急性気道感染症、急性下痢症、急性中耳炎などについてまとめた「乳幼児編」を追加した「抗微生物薬適正使用の手引き」第二版(案)を報告し、構成員から意見を聞いた。それを踏まえて今後、ブラッシュアップするとともに、ダイジェスト版の作成なども検討する。