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難病の分野で全ゲノム解析、全ゲノム医療の実現へ
2019年中にも、がんと合わせて全ゲノム解析等の実行計画を策定 2019.11.01健康・医療

厚生労働省は2019年10月8日、第1回「難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会」を開き、①全ゲノム解析等の対象となる疾患と数値目標、②全ゲノム解析等に必要な体制整備、③難病のゲノム医療推進に関する実行計画、などについて検討を始めた。これは、政府が今年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」などで、難病等については遺伝子治療を含む全ゲノム情報等を活用した治療法の開発を推進するとしていることへの対応である。がんの分野では2019年6月から遺伝子パネル検査に保険適用がなされ、ゲノム医療が本格的に始まったが、難病の分野でもゲノム医療の導入に向けて大きく動き始めたことになる。

ポイント

  • 100万人の検査を目指す英国等を参考に日本でも全ゲノム解析へ
  • 全ゲノム領域を探索することで、原因究明、診断・治療法の開発に期待
  • 全ゲノム解析の対象とする疾病の優先順位など検討

早期の診断の実現に向けて遺伝学的検査の実施体制の整備へ

政府は、がん・難病等のゲノム医療を推進するにあたり、次のような方針を打ち出すとともに、2025年度までの工程表も示した。

がんについては、

  1. ・全ゲノム医療を実現しがんの克服を目指す
  2. ・患者同意および十分な情報管理体制のもと、質の高い全ゲノム情報と臨床情報を、国内のがんゲノム情報管理センターに集積
  3. ・当該データを、創薬などの革新的治療法や診断技術の開発等に幅広く活用できる体制を整備し、個別化医療を推進する。

難病等については、

  1. ・より早期の診断を実現させる
  2. ・遺伝学的検査の実施体制の整備や、遺伝子治療を含む全ゲノム情報等を活用した治療法の開発を推進する。

このため、10万人の全ゲノム検査を実施し、今後、100万人の検査を目指す英国等を参考にしつつ、これまでの取り組みと課題を整理したうえで、数値目標や人材育成・体制整備を含めた具体的な実行計画(以下、全ゲノム解析等の実行計画)を、2019年中を目途に策定する。

それらの政策は、厚生労働省のデータヘルス改革推進本部が2019年9月9日に決定した「今後のデータヘルス改革の進め方について」(既報)にも取り入れられている。

全ゲノム検査のコストを大幅に下げられる可能性がある

すでに、がんの領域では2019年6月から遺伝子パネル検査が保険適用され、がんゲノム医療が本格的に始まろうとしている。ただし、全ゲノム検査は、遺伝子パネル検査とは規模において全く異なる。例えば「今後のデータヘルス改革の進め方について」(前述)では両検査を比較し、次のような趣旨の説明をしている。

遺伝子パネル検査は、がんに関連する複数の遺伝子(100~500個)、約200万塩基対を選択的に検査している。一方、全ゲノム検査は全ゲノム領域(全ての遺伝子約25,000個とそれ以外の領域)、約30億塩基対を検査するものである。全ゲノム領域となると、大半は機能がわかっていない。その未解明な領域を探索することで、がんや難病の原因究明、新たな診断・治療法につながることが期待される。

また、全ゲノム検査が注目されるようになった背景として、世界的に見てそのコストが下がっていること、日本でもコストを大幅に下げられる可能性があることが挙げられる。

そのコストに関して、厚労省が2019年3月8日に開催した第2回「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」で、ある構成員が、日本では全ゲノム検査を行うための機器や試薬は全部海外のメーカーのものを使っていて、おそらく世界で最も高額になっているという状況を説明したうえで、「これは、各分野でばらばらに検査をしているから。がんの分野と難病領域を分けて予算もおりているしそれぞれに解析しているから効率が悪い」と指摘。「例えて言えば、いま手元にあるこの鉛筆を買うのにみんなが1本ずつコンビニに買いに行っているのと同じで、これは箱で買ってみんなで分ければもっと安く手に入る」と述べている。

がんの全ゲノム検査については今後、がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議の下に設置される「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」において検討されることになるが、がんと難病を合わせて全ゲノム検査ができる体制が整備されれば、そのコストも大幅に下がる可能性がある。

単一遺伝子性疾患、多因子性疾患、新規疾患などに大別して検討

難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が2015年1月1日に施行され、それに基づいて難病医療費助成制度が始まるとともに、難病の医療提供体制の整備が進んでいる。難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)は333あり(2019年10月現在)、実際に助成対象となる指定難病(特定医療)受給者証を所有しているのは約89万人となっている(2017年度末現在)。また、333の指定難病のうち60疾病については、その診断のための遺伝学的検査について保険適用がなされている。

厚労省では、全ゲノム解析等の対象とする難病について、難病法に基づく指定難病に限らず、難病法第1条で定義する難病(発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの)全般を想定している。ただし、実際には、遺伝子との関係が明確でない難病もある。そこで、同省では、難病について、①単一遺伝子性疾患(単一の遺伝子の変異により起こる遺伝性疾患)、②多因子性疾患(複数の遺伝子に加え、環境・生活習慣や老化が関わって発症する疾患)、③現時点で疾患概念が確立していない新規疾患――に大別し、全ゲノム解析の必要性、目的、優先順位をつけることについて、「難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会」において検討することにしている。(下図参照)

難病の全ゲノム解析等の対象疾患の考え方について(イメージ)

難病法上の難病「発病機構が不明、治療方法未確立、希少疾病、長期療養が必要」の4つの要件を満たすもの。

指定難病 333疾病「発病機構が不明、治療方法未確立、希少疾病 (患者数が人口の概ね0.1%程度)、
長期療養が必要、客観的診断基準の確立」の5つの要件を満たすもの。

単一遺伝子疾患が含まれる疾病 約230疾病・単一遺伝性疾患のみ(約150疾病)
・単一遺伝性疾患と多因子性疾患の混在(約80疾病)

  1. 注)指定難病のうち、遺伝学的検査が診断に当たって必須とされる指定難病を順次保険収載している(現在60疾病)。
  2. 出典:第1回「難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会」での資料4

それらの分類に関して、事務局(厚労省健康局難病対策課)が実施した指定難病における遺伝子関与の調査の結果概要(10月8日時点暫定版)を今回の検討会で報告した。それによると、指定難病(333疾病)における遺伝子関与については、46%が単一遺伝子性疾患のみ(すべての患者が単一遺伝子性疾患)、24%が単一遺伝子性疾患と多因子性疾患の混在(患者の一部は単一遺伝子性疾患と考えられ他の一部は多因子性疾患と考えられる疾病)、30%が多因子性疾患のみ(すべての患者が多因子性疾患)、となっている。

対象となる疾患の数値目標、体制整備、人材育成など検討

「難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会」が検討するのは、①全ゲノム解析等の対象となる疾患と数値目標、②全ゲノム解析等に必要な体制整備、③全ゲノム解析等に係る人材育成、などである。また、「がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議」の下に設置される「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」も、がんに関して同様の検討を行う。同検討会と同部会による合同の会議も想定されていて、そこでの結論を踏まえて、2019年中を目途に政府/厚労省が全ゲノム解析等の実行計画を策定する。

第1回「難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会」では、3人の専門家からヒアリングなども行った。全ゲノム解析等の対象について、それらの専門家からは、①全エクソーム(タンパク質に翻訳される領域)解析のスクリーニングが終了した未解決例を優先、②指定難病の中で患者数が多く、遺伝率が高いことが示されている疾患を優先、といった意見が出た。また、患者のみでは限界があるので両親の全ゲノム解析を考慮すべき、との指摘もあった。

そのヒアリングも踏まえて、構成員から「臨床情報とゲノム情報を統合することが重要である」、「臨床情報を標準化して集めることが必須である」との意見が出た。全ゲノム解析等の目的について、「日本の患者だけでなく、東アジア、東南アジアの人々の福祉に寄与することもその目的の一つに加えられるとよい」との要望が出た。また、患者団体を代表する構成員からは「診断がつかずに困っている患者さんがいる。地方では、難病の専門家にかかるのが難しく、全ゲノム解析の対象になれない」との発言があった。

今後、同検討会では、さらにヒアリングなどを行うとともに、全ゲノム解析等の実行計画の策定に向けて、「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」(前述)と合同の会議も開き、検討を進めることにしている。