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タスク・シフティングに関するヒアリングが終了
医師の労働時間短縮に向けて厚生労働省医政局が実施 2019.08.15健康・医療

厚生労働省(以下、厚労省)では2019年6月17日、7月17日、26日に「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング」(以下、ヒアリング)を行った。その結果、現時点でタスク・シフティングが可能な業務はどれか、課題は何かが、かなり明確になった。

ポイント

  • 現在でも2007年に厚労省が発出した「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」が考え方の基本
  • 病院団体が薬剤師・看護師・臨床工学技士の業務拡大など提案
  • 医師の勤務時間のうち7%はタスク・シフティングが可能

医師の労働時間短縮に向けてタスク・シフティングに取り組む

わが国において現在、医師と他の職種との役割分担について基本的な考え方として用いられているのが、2007年12月28日付けで厚労省医政局長が発出した通知「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(以下、平成19年通知)である。当時、全国で「医師不足」が叫ばれていたことを背景に、同通知が発出されることとなった。

それから約10年後、政府が「働き方改革」を打ち出した。その一環として、2024年4月から、改正された労働基準法に基づき医師(勤務医)に対して時間外労働の上限規制が適用されるため、医師の負担を軽減し、労働時間を短縮することが、喫緊の課題となっている。

その「働き方改革」を背景に、厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」が2018年2月27日、医師の労働時間短縮に向けた「緊急的な取組」として「既存の産業保健の仕組みの活用」など6項目を挙げた。その項目の一つが、各医療機関におけるタスク・シフティングの推進で、①初療時の予診、②検査手順の説明や入院の説明、③薬の説明や服薬の指導、④静脈採血、⑤静脈注射、⑥静脈ラインの確保、⑦尿道カテーテルの留置(患者の性別を問わない)、⑧診断書等の代行入力、⑨患者の移動――などを例示。それらについて平成19年通知などの趣旨を踏まえ、原則として医師以外の職種に分担して実施することで医師の負担を軽減する、としている。

職能団体や学会など計30団体からヒアリング

その「働き方改革」という大きな動きの中で、厚労省医政局は2019年6月から7月にかけて3回にわたり、日本医師会をはじめとする計30団体を対象にヒアリングを実施した。これは、厚労省の外部の有識者ではなく、同省医政局の局長をはじめとした幹部職員、担当の審議官などが参加し、行っている。

ヒアリングの対象となった30団体は下表のとおりで、それらのうちの学会は、日本専門医機構において基本領域学会と位置づけられている18学会の中から選ばれている。

ヒアリングの対象となった団体の分類

【職能団体】14団体 【学会】13団体
公益社団法人 日本医師会 一般社団法人 日本脳神経外科学会
公益社団法人 日本義肢装具士協会 一般社団法人 日本病理学会
公益社団法人 日本視能訓練士協会 一般社団法人 日本形成外科学会
一般社団法人 日本言語聴覚士協会 一般社団法人 日本外科学会
公益社団法人 日本臨床工学技士会 公益社団法人 日本麻酔科学会
公益社団法人 日本理学療法士協会 公益社団法人 日本皮膚科学会
公益社団法人 日本診療放射線技師会 公益社団法人 日本精神神経学会
一般社団法人 日本救急救命士協会 公益社団法人 日本整形外科学会
一般社団法人 日本作業療法士協会 公益社団法人 日本医学放射線学会
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
公益社団法人 日本薬剤師会 一般社団法人 日本救急医学会
公益社団法人 日本歯科医師会 公益社団法人 日本産科婦人科学会
公益社団法人 日本助産師会 公益社団法人 日本小児科学会
公益社団法人 日本看護協会 【医療関係団体】2団体
【研究会/職能団体的組織】1団体 一般社団法人 日本専門医機構
特定非営利活動法人 日本医師事務作業補助研究会 四病院団体協議会

注:各分類においてはヒアリング(3日間)の順番(当初予定)で記載している

 6月17日に開催された第1回ヒアリングでは、日本医師会が、タスク・シフティングなどに関する基本的な方針を示した。

また、第3回ヒアリングでは、日本医師会とも密接な関係にある日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会で構成する四病院団体協議会(以下、四病協)が対象となった。四病協では、薬剤師・看護師・臨床工学技士の業務拡大などとともに、医療現場における救急救命士の業務確立、麻酔業務におけるタスク・シフティングを提案した。ここでいう麻酔業務とは軽度な全身麻酔のことで、標榜医や経験を積んだ医師による「自科麻酔」が可能である、としている。

種々のタスク・シフティングの中でも重要度あるいは優先順位という観点からは、四病協が具体的に提案したものに注目する必要がある。

薬剤師へのタスク・シフティングは推進しやすい状況

四病協では、現行制度において薬剤師が実施できるにもかかわらず十分に活用されていない業務として、①医師との協働によるプロトコールに基づいた投薬の実施・薬剤選択、②多剤併用薬に対する処方提案、③副作用の状況把握、服薬指導、④抗菌薬の治療コントロール処方の提案――などを挙げるとともに、それらについては医師の包括的指示と同意がある場合、医師の最終確認・再確認を必要とせず、薬剤師が主体的に業務を行うことを明確化する、とした。

一方、第2回ヒアリングで、日本薬剤師会が、医師や医師以外の職種が担う業務のうち薬剤師に移管可能な業務として、①医師の処方関連業務の支援および簡素化、②医師と薬剤師間の処方内容に関する問い合わせ等の簡素化、③薬物療法のモニタリングの実施とその結果に伴う処方内容の見直しの提案、④薬物療法に関する説明や薬に関する患者情報の提供等のサポート、⑤入退院時における医療機関と薬局間および医療機関と他の医療機関間の薬物療法に関する情報連携、⑥薬剤の適正使用のための実技指導の実施、⑦定期的に患者の副作用の発現状況や服薬状況の確認等を行うための分割調剤――などを挙げた。

それらの多くが平成19年通知において、薬剤師を積極的に活用することが可能な業務としてすでに明示されている。また、それらの多くは四病協の提案と趣旨が共通している。したがって、薬剤師へのタスク・シフティングは推進しやすい状況にあるといえよう。

看護師へのタスク・シフティングには課題が多い

看護師へのタスク・シフティングについて、四病協では、看護師が実施すべき行為を医師が一括して指示すること(包括的指示)も可能と考えられるが、包括的指示が成立するための具体的な要件は明確ではない、と指摘。一般的な臨床現場において医師が患者の病態の変化を予測し、その範囲内で包括的指示を行うことができることは有効なタスク・シフティングとなる、としている。

一方、第3回ヒアリングにおいて、日本看護協会が、医師から看護師へのタスク・シフティングとして、①特定行為研修制度の活用の推進、②看護師が判断可能な範囲の拡大、を挙げた。その②については、例えば療養上の世話に必要な薬剤を看護師が判断・使用できるようにすることなどのほか、米国などで実施されているナース・プラクティショナー(仮称)による医療提供を提案した。しかし、後者は、新たな資格であり、立法化の措置あるいは法改正も必要となるため実現は難しい。

 このように、看護師の業務が幅広いため、具体的にどのようなタスク・シフティングに重点を置いて推進するか、まだ日本看護協会、日本医師会および四病協の間でコンセンサスができていないのが実情である。

臨床工学技士へのタスク・シフティングは実施可能な業務の整理も必要

四病協では、現行制度において直ちに実施可能な臨床工学技士の業務として、①心・血管カテーテル業務における、清潔野での使用する生命維持管理装置およびカテーテル関連機器の操作および接続、②人工呼吸装置の使用時の吸引による喀痰等の除去、③血液浄化装置の先端部(穿刺針)のバスキュラーアクセスへの穿刺および抜去、④医師の具体的指示を受けて行わなければならない法令上の特定の行為(動脈留置カテーテルからの採血ほか)を挙げている。また、現行制度で実施可能な業務を整理し、業務範囲の見直し、拡大を行う、としている。

 一方、第1回ヒアリングにおいて、日本臨床工学技士会は、医師等が担う業務のうち臨床工学技士に移管が可能と考えられるものについて29項目を挙げたが、そのうち現行法により実施可能なのは、①心・血管カテーテル治療時、医師が行うカテーテル操作などの補助、②心臓植込みデバイスに対する遠隔モニタリングのデータの読み込みおよび記録、③人工呼吸器からのウィーニング、④輸液ポンプ等を用いた静脈ラインからの薬剤の投与、⑤内視鏡下外科手術における医師が行う手術手技の補助、⑥在宅医療に関わる医療機器管理――の6項目程度である。 このように、臨床工学技士へのタスク・シフティングについては、日本臨床工学技士会と四病協の間で例示するものがあまり一致していない。今後、現行制度で実施可能な業務を整理する必要がありそうだ。

救急救命士へのタスク・シフティングは法改正も視野に

救急救命士については、法令上、処置可能な場所は傷病者の発生場所から救急用自動車内というように、業務・活動範囲が制限されている。到着した医療機関においては、業務・活動ができない。四病協では、救急医療の現場など医療機関内での救急救命士の活用は有効なタスク・シフティングとなり得るとして、医療機関内で救急救命士が対応できるよう法改正を踏まえた検討が必要である、と指摘した。また、第2回ヒアリングにおいて、日本救急救命士協会も、それを課題の一つとして挙げ、法令改正や現行法解釈の変更も視野に入れる必要がある、としている。

医師事務作業補助者では電子カルテの記載なども可能

ヒアリングの対象となった職能団体・学会のほとんどは医療・医学系だが、唯一、事務系なのが日本医師事務作業補助研究会である。名称に「研究会」とあるが、医師事務作業補助者の職能団体としての要素も持っている。その医師事務作業補助者は、国家資格ではなく、診療報酬制度に基づくものである。

 同研究会では、第1回ヒアリングにおいて、医師や医師以外の職種が担う業務のうち 医師事務作業補助者に移管可能な業務として、①検査手順の説明業務、②医療記録(電子カルテの記載)、③各種統計資料(症例登録等)の作成――などを挙げた。いずれも現行法のもと実施可能だが、スキル不足・マンパワー不足によりタスク・シフティングが進んでいない状況にある、という。

医師の勤務時間のうち7%はタスク・シフティングが可能

医師の働き方改革に関する検討会(前出)が2019年3月28日に取りまとめた報告書では、同検討会が2018年2月に取りまとめた「緊急的な取組」(前述)について、さらに推進する必要があるとして、あらためて医師の労働時間を短縮するためにタスク・シフティングを行うことの意義を強調している。例えば、厚労省の研究班の調査結果などに基づいて推計すると、医師においては、平均1日約40分程度が他職種へ移管でき、これは医師の勤務時間のうち約7%に相当する、としている。

このほど行われた3回にわたるヒアリングで、タスク・シフティングとして現時点で具体的に何が実施可能か、何が課題なのかが、かなり明らかになった。医師の「働き方改革」と労働時間の短縮に向けて、実施可能なタスク・シフティングについては早く実行することが期待されている。