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厚労省の検討会が循環器病の診療情報の活用について報告書
急性期医療現場、診療提供体制の構築、公衆衛生などに診療情報を活用 2019.08.03健康・医療

厚生労働省(以下、厚労省)は2019年7月8日、「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」の報告書(以下、報告書)を公表した。厚労省では、報告書に基づき、まずモデル事業として、循環器疾患である脳梗塞、脳出血、急性冠症候群、急性心不全など6疾患の患者を対象に診療情報を収集し、検証を行う。急性期医療現場、診療提供体制の構築、公衆衛生などでの活用を目指す。

ポイント

  • 循環器病は介護が必要となる主要な原因
  • 対象は脳梗塞、脳出血、急性冠症候群、急性心不全など6疾患
  • 急性期入院の診療情報を収集し、急性期医療現場で活用

循環器病が医科診療医療費の2割で最多、介護の主要な原因にも

 厚労省は2019年1月、「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」(以下、検討会)を設置した。それには、2018年の臨時国会で「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(以下、脳卒中・循環器病対策基本法)が成立したことを受けて、同省が非感染性疾患(Noncommunicable diseases、以下「NCDs」)のうち循環器病に着目した、という背景がある。

 NCDsには循環器病、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病などがあり、世界的に見るとNCDsによる死亡は毎年約4,100万人、死因の約7割を占めていて、その中でも循環器病による死亡が約1,790万人で最も多い。わが国では、脳卒中や心臓病など循環器病による死亡は、がんに次いで多い。医療費(医科診療医療費)の面では2018年度において循環器病が19.7%を占め、がん(悪性新生物)を5.6ポイント上回り、最も高くなっている。また、循環器病は、発症後早急に適切な治療を始める必要があり、回復期や維持期にも再発・増悪を来しやすく、介護が必要となる主要な原因でもある。

 検討会では、まず循環器病の診療情報を集め、現状を把握することが循環器病対策を進めるうえで重要であるとして、その枠組みを報告書において提案した。

個人情報の保護など安全管理を十分に講じる

 循環器病の診療実態に関する調査として厚労省の患者調査や日本脳卒中データバンク、循環器疾患診療実態調査(JROAD)など、複数の研究あるいは診療情報のデータベースがあるが、それぞれ目的や収集の方法・規模が異なるため、循環器病全体として情報をまとめるのは難しい。

 そのため検討会では、公的な情報収集の枠組みが必要であるとして、次のように目的、当面の収集方法、体制、対象疾患などについて整理した。

 目的は、急性期入院の診療情報を収集し、急性期医療現場(救急搬送、医療機関搬入直後など)で活用すること、正確な患者数や罹患率に基づいて診療提供体制の構築や公衆衛生に活用することである。

 対象とする疾患は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群、急性大動脈解離、急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)を基本とする。これは、関連学会での議論や医療計画での「5疾病・5事業」に関する例示を踏まえてのものである。

 診療情報収集の対象とする施設は、まずは協力が得られる医療施設とする。それには、関連学会が認定する医療施設や救命救急センターを含んでいる。また将来的には、医療計画の「5疾病・5事業」において脳卒中や心血管疾患を担う医療機関として記載されている施設も対象とすることを検討する。

 各医療機関から収集した診療情報を管理・提供するために、循環器病情報センター(仮称)を設置する。また、実際にその機能を担うのは国立循環器病研究センターが適当である、と考えられる。

 循環器病情報センター(前出)が管理する診療情報は、医療機関などが急性期医療に活用すること、国・地方自治体・大学・研究機関の研究者などが公衆衛生に活用することが想定される。また、民間事業者なども含めて幅広く利活用されることも想定されるが、それには利用の公益性や透明性を確保し、個人が特定されないようにするなど安全管理措置を実施したうえで、段階的に拡大を図っていくことが望ましい。

 診療情報の収集・利活用においては、個人情報保護委員会と厚労省が2017年4月14日に策定した「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に基づき、個人情報の保護など安全管理を十分に講じる。また、診療情報は匿名ではなく顕名で収集することになるので、患者にその趣旨を説明し、同意を得られた範囲で情報を収集する。

具体的な登録項目も示す

 診療情報として収集・登録する項目は、医療現場で入力の負担にならないように、最低限必要なものとする。報告書では、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群、急性大動脈解離、急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)それぞれについて、具体的な項目(案)を示している。

 それらのうち脳梗塞については、①基本項目、②病態や重症度等に係る項目、③危険因子に係る項目、④検査・治療内容等、⑤退院時情報等――を大項目としたうえで、下表のような項目(案)となっている。その大項目については、他の疾患においてもほぼ同様である。

登録項目案<脳梗塞>

基本項目
  • (1) 病院等の名称/受診地
  • (2) 氏名
  • (3)~(11) 略
病態や重症度等に係る項目
  • (12) 病型
  • (13) 入院時NIHSS(National Institutes of Health
    Stroke Scale)
危険因子に係る項目
  • (14) 糖尿病
  • (15) 脂質異常症
  • (16) 高血圧症
  • (17) 腎臓病
  • (18) 喫煙歴
検査・治療内容等
  • (19) 心房細動
  • (20) 責任血管病巣
  • (21) 主幹動脈の閉塞・狭窄
  • (22) 静注血栓溶解(rt-PA)療法実施の有無
  • (23) 急性期血管内再開通療法実施の有無
  • (24) 外科治療実施
  • (25) 急性期リハビリテーション開始日
退院時情報等
  • (26) 退院日
  • (27) mRS(modified Rankin Scale)
    (退院時、入院(発症)前)
  • (28) 退院転帰、入院(発症)前の生活
  • (29) 介護保険利用の有無(退院時、入院前)
  • (30) 退院時処方

今後設置される循環器病対策推進協議会に注目する必要が

 報告書では、今後の方向性として、まずはモデル事業として循環器病の診療情報の収集をする、としている。また、その検証を行ったうえで、全国規模のシステムの構築、運用を目指す。将来的には、国の「レセプト情報・特定健診等情報データベース」(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan;NDB)のデータと合わせて活用することも考えられる。また、電子カルテから処方内容や検査所見などの情報を収集し、入院と外来の診療を含めて長期にわたって情報をつないでいく方法も考えられる。

 モデル事業においては、患者に対する説明文書、同意書について統一的なものを検討する。また、診療情報の活用については、診療情報を登録した医療施設が限定的にアクセスするなど、慎重に運用を開始する、としている。

 遅くとも2019年12月13日までに施行される脳卒中・循環器病対策基本法(前述)は、今回の報告書に基づく施策の方向性に大きな影響を与えると思われる。これは厚労省が直接関与しない議員立法として成立したものだが、同省に循環器病対策推進協議会を設置し、その意見を聴きながら循環器病対策推進基本計画を策定することになっている。また、同基本法第18条第2項で、国および地方公共団体の努力義務として「全国の循環器病に関する症例に係る情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする」と規定しており、それと今回の報告書との関係も整理しなければならない。

 いずれにしても中長期的には、今後設置される循環器病対策推進協議会での審議に注目する必要がありそうだ。