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保健医療分野AI開発加速コンソーシアムが今後の方向性など取りまとめ
1月に実施した「中間整理」では“障壁”となるものを指摘、解消の方向を示す 2019.07.15健康・医療

厚生労働省(以下、厚労省)の保健医療分野AI開発加速コンソーシアム(以下、コンソーシアム)は2019年6月8日、第8回の会合を開き、「議論の整理と今後の方向性」について取りまとめ、健康・医療分野、介護・福祉分野においてAI(人工知能)の開発・利活用が期待できる領域を俯瞰し、今後の取り組みの方向性などを示した。保健・医療分野でAIを活用することのメリットの一つとして、患者個人に最適な治療法や薬剤の選択が可能となることなどが考えられる、としている。

ポイント

  • AI開発は重点6領域を中心に展開
  • インフォームド・コンセントなどにみられる種々の“障壁”
  • AIに学習させることに伴う現場の負担増が課題
  • 負担軽減に向けた取り組みが必要

AI開発での“障壁”について2019年1月に「中間整理」を実施

厚労省は「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」が2017年6月に取りまとめた報告書を踏まえて、ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援を、特にAI開発を進めるべき重点6領域(以下、重点6領域)としてきた。2018年7月に発足したコンソーシアムでは、重点6領域のうち、わが国の強みが発揮できると期待されている画像診断支援領域を取り上げ、2019年1月に「中間整理」を行い、迅速に対応すべき事項とその方向を示した。また、画像診断支援領域においてAIを開発するには患者の医療情報を使うため、AIを開発する途上で生じる障壁(ロードブロック)を同定して、その対応について検討した。

学術研究機関と企業が共同で学術研究を行う場合にオプトアウトの手続きでよい場合もある

そのロードブロックに関する議論において中心となったものの一つが、インフォームド・コンセントである。AI開発に患者の医療情報を使用する場合、学術研究と企業による活用では、インフォームド・コンセントの方法が異なる。例えば、学術研究であれば、いわゆるオプトアウトの手続きでよい場合がある。オプトアウトとは、個人情報保護法第23条第2項に基づく第三者提供の方法で、あらかじめ本人に対して、第三者に提供される個人データの項目、提供の方法、本人の求めにより第三者提供を停止すること、その停止の方法などを必ず通知したうえで、個人情報保護委員会に届け出たときは、個人データを第三者に提供できる、という規定である。これは、医療界で使われている「黙示の同意」という用語の概念に似ているが、同じではない。

一方、患者の医療情報を企業が活用するのであれば、個人情報保護法に基づき、いわゆるオプトインとして、本人から事前の同意を得ておく必要がある。それについて、コンソーシアムでは、患者と接することの少ない診療科(病理・放射線など)において、オプトインで大量のデータを集めることは困難である、という指摘が出た。

これに対して、「中間整理」では、学術研究機関と企業が共同で学術研究を行う場合について、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の適用範囲として、オプトアウトによる手続きで医療情報を活用することが可能である場合(個人情報保護法第76条1項第3号による適用除外)があることを改めて周知する、としている。

画像にラベルを付けてAIに学習させることにも障壁が

AIに画像診断の学習をさせるためには、アノテーション/ラベリングが重要である。例えばCT画像やMRI画像からAIががんを識別・発見する精度を高めるには、それらの画像においてがんの部位にしるし(ラベル、タグ)を付けたうえで読み込ませ、学習させる必要がある。そのラベル(タグ)を付けるなど一連の行為が、アノテーションと呼ばれる。しかし、現場の医師がアノテーションを行うとしたら負担も大きく、その質を担保するには人材の確保も必要となる。また、アノテーションが診療報酬で評価されているわけではない。

そこで「中間整理」では、アノテーション作業の負担を軽減する方策として、アノテーションの自動化技術の研究促進を検討。また、質の高いデータを収集する持続可能な方策を確立するために専門医制度との連携を検討。さらに、分野横断的なデータの分析を可能とする体制/システムを確立するために標準的なデータ収集フォーマットに関するガイドラインの策定などを検討する、としている。

AIを使っても医師は最終的判断の責任を負う

その「中間整理」とは別に、コンソーシアムにおいて議論となったのが、AIを用いた診断・治療等の支援を行うプログラムの利用と、医師法第17条の「医師でなければ、医業をなしてはならない」という規定の関係である。厚労省は、その関係について、AIを用いた診断・治療支援を行うプログラムを利用して診療を行う場合についても、診断・治療等を行う主体は医師であり、医師はその最終的な判断の責任を負う、と説明した。

ただし、コンソーシアムの構成員から、AIが普及する将来のこととして、「AIに相談せずに医師のみが判断をして結果としてあやまちがあった場合、民法上、医師に責任があるのか」との質問が出た。それについて、参考人が「大事な点である。今後、問題が起こってくる可能性がある」と答弁した。

そのような将来の状況を見据えて、AIと医師の関係について、今回の「議論の整理と今後の方向性」では、AI技術の進歩は目覚ましいことから、人間とAIの協働などに関する他の分野での議論や技術的進展を見ながら、今後も継続的な議論が必要と考える、としている。

「議論の整理と今後の方向性」で俯瞰図を示す

コンソーシアムでは「中間整理」を行った後、重点6領域よりも幅広い分野でAIの利活用について検討し、健康・医療・介護・福祉分野においてAIの開発・利活用が期待できる領域について、①予防、②診断・治療支援、③介護・認知症――に大きく分け、その具体的な領域、基盤などについて、俯瞰図で示した。(下図参照)

また、新たに検討が必要な課題として、データの入力作業の負担軽減、電子カルテの標準化などを挙げている。人材育成も課題だが、これについてはAI技術者に対する医療の教育、医療関係職種に対するAIの教育、という二つの方向がある。

健康・医療・介護・福祉分野においてAI開発・利活用が期待できる領域

健康・医療・介護・福祉分野においてAI開発・利活用が期待できる領域

*インクルージョン技術:多様性と社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)の実現をサポートする技術群のこと。ここでいう社会的包摂とは、社会参加を促し、誰も排除しない、多様な人々の多様なニーズを満たすような取り組みを意味する。その対義語が「社会的排除」である。

**オミックス解析:生体分子について網羅的に解析すること。それにより、疾患の予防、診断、治療、予後の質の向上を目指す。

出典:厚生労働省「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム議論の整理と今後の方向性」

医療安全へのAIの応用などについても検討

重点6領域のうち、ゲノム医療に関しては、2019年6月から遺伝子パネル検査が保険適用となり、その対象の患者のゲノム情報、臨床情報が、国立がん研究センターの「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT)に蓄積されていく。そのような新しい状況に伴ってがんゲノム領域の現場では診療情報を入力する負担の増加が予想される。今回の「議論の整理と今後の方向性」では、その負担軽減が課題となっており、そのための取り組みが他領域へも横展開されることが期待される、としている。

介護・認知症領域については、まず現場のニーズを把握しつつ、介護従事者の負担軽減や質の高い介護サービスの提供に役立つようなAIの導入を進める。

手術支援については、外科領域におけるデータにはアナログのものが多いため、まず、それらをデジタル化、構造化する取り組みが必要となる。

また、コンソーシアムでは、重点6領域以外に、医療安全へのAIの応用などについても検討している。例えばインシデントレポートなど構造化されていないデータから必要な情報を吸い上げ、医療従事者に対してアラームを鳴らすような仕組みが構築されれば、医療事故防止につながる。そのような観点からのAIの開発・利活用も期待される。

今後の方向性については、政府の統合イノベーション戦略推進会議が今年6月11日に決定した「AI戦略2019 ―人・産業・地域・政府全てにAI―」において健康・医療・介護についての具体的な目標が掲げられていることなどから、政府全体の枠組みとも連携しながら、AI開発・利活用の加速を行っていくこととする、としている。