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厚生労働省が「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」を策定
判断能力と成年後見制度の利用の有無などで3ケースを想定 2019.07.01健康・医療

厚生労働省(以下、厚労省)は2019年6月3日、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)を策定し、都道府県などに対して通知した。その背景には、少子高齢化が進み、頼れる親族のいない単身世帯の人が増えていて、認知症の人も増えている、という状況がある。厚労省では、そのような状況を踏まえて、医療機関や医療関係者が身寄りのない患者にも必要な医療を提供できるように、ガイドラインとして取りまとめた。

ポイント

  • 頼れる親族のいない単身世帯の増加などが背景に
  • 「身元保証・身元引受等」の機能・役割を規定
  • 身寄りがない人に対応する医療機関の方針が明確化

消費者委員会の建議、成年後見制度利用促進基本計画が直接の契機に

ガイドラインを実際に作成したのは、2018年度厚生労働行政推進調査事業費補助金[地域医療基盤開発推進研究事業「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」班(以下、研究班)]である。厚労省が研究班を立ち上げ、ガイドラインの策定に取り組む直接的な契機となったのは、まず、内閣府の消費者委員会が2017年1月31日に「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」を取りまとめたこと。また、同年3月24日に成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定されたことである。

その「身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての建議」は、①身元保証等高齢者サポート事業に対して、消費者保護の観点から、消費者庁と厚労省が行うべきこと、②高齢者が身元保証人等のいないことのみを理由に病院・介護保険施設から入院・入所を拒まれないなど、安心して入院・入所できるよう厚労省が取り組むべきこと、③消費者庁、厚労省、国土交通省は、消費者が安心して身元保証等高齢者サポートサービスを利用できるよう情報提供を積極的に行うこと――を柱としている。

また、成年後見制度利用促進基本計画では、今後取り組むべき重要施策として、医療・介護等に係る意思決定が困難な成年被後見人への支援、成年被後見人の死亡後における成年後見人による死後事務の範囲などを挙げている。

研究班では、それらで挙げられた事項を踏まえて、ガイドラインを作成した。その構成(目次)は下表のとおりである。

ガイドラインの構成 (目次)

1.ガイドラインの背景・目的
2.ガイドラインの基本的な考え方
  1. (1)ガイドラインの支援の対象者
  2. (2)ガイドラインにおける「身元保証・身元引受等」の機能・役割
  3. (3)身寄りがない人への対応において考えられる支援
  4. (4)本人の意思・意向の確認と尊重
  5. (5)成年後見制度と「身元保証・身元引受等」
3.医療機関における身寄りがない人への具体的対応
  1. (1)本人の判断能力が十分な場合
    1. ①緊急の連絡先に関すること
    2. ②入院計画書に関すること
    3. ③入院中に必要な物品の準備に関すること
    4. ④入院費等に関すること
    5. ⑤退院支援に関すること
    6. ⑥(死亡時の)遺体・遺品の引き取り、葬儀等に関すること
  2. (2)判断能力が不十分で、成年後見制度を利用している場合
    ①~⑥同上
  3. (3)判断能力が不十分で、成年後見制度を利用していない場合
    ①~⑥同上
4.医療に係る意思決定が困難な場合に求められること
  1. (1)医療・ケアチームや倫理委員会の活用
  2. (2)成年後見人等に期待される具体的な役割
5.事例集
6.おわりに
7.資料編
  1. (1)用語の説明
  2. (2)支援シートの活用

「身元保証人・身元引受人等」に医療行為の同意の権限はない

ガイドラインの対象は、身寄りがない人だけでなく、家族や親類に連絡がつかない状況にある人、家族の支援が得られない人も想定している(以下、それらの人も含めて「身寄りがない人」)。それらの人たちにおいては、いわゆる身元保証・身元引受の機能・役割が重要となり、ガイドラインでは、それについて次のように定義している。

まず、「身元保証・身元引受等」の機能・役割について、①緊急の連絡先に関すること、②入院計画書に関すること、③入院中に必要な物品の準備に関すること、④入院費等に関すること、⑤退院支援に関すること、⑥(死亡時の)遺体・遺品の引き取り・葬儀等に関すること――の6項目を挙げている。

その6項目の役割を期待されている人または団体が「身元保証人・身元引受人等」である。ただし、ガイドラインでは、医療行為の同意は本人の一身専属性が極めて強いものであり、それは他の者に移転する性質のものではないので、「身元保証人・身元引受人等」に医療行為の同意の権限はないと考えられる、としている。ちなみに、成年後見制度(法定後見制度)は民法に基づき、判断能力の不十分な人たちを保護・支援するための制度であり、成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人、以下同)の基本的な役割は本人(成年被後見人)の財産管理を行ったり、代わって契約の締結をすることである。医療行為の同意は役割として想定されていないが、「身元保証・身元引受等」に求めている役割・機能の一部はカバーできる。

それらの機能・役割も踏まえて、医療機関においては、身寄りがない人への対応として、①医療・ケアチームとの連携、②当該患者の状況に応じた介護・福祉サービスの相談、③一部負担金の減額・免除・支払猶予や無料低額診療事業、生活困窮者自立支援制度、生活保護制度などの行政サービスへの相談、④支払い方法の相談、⑤成年後見制度、日常生活自立支援事業など権利擁護の制度の利用相談、といったものが考えられる。

まず緊急連絡先となれる人がいるか確認する

ガイドラインでは、身寄りがない人について、①本人の判断能力が十分な場合、②判断能力が不十分で、成年後見制度を利用している場合、③判断能力が不十分で、成年後見制度を利用していない場合――という三つのケースを想定し、それぞれについて、「身元保証・身元引受等」の機能・役割として挙げている6項目(前述)について、医療機関側の対応などを具体的に説明している。

その三つのケースのうち、医療に係る意思決定が困難という意味で最も注意を要するのは、判断能力が不十分で、成年後見制度を利用していない場合(上記のケース③の場合)であろう。それについては、前述の6項目に対応する形で、医療機関側は次のような取り組みをする。

まず、親族や友人・知人などで緊急連絡先となれる人がいるか、確認する。入院計画書に関して理解できないと認められるほど判断能力が不十分で、説明できる家族等がいない場合は、本人への説明を試みたうえで、その旨をカルテに記載する。入院費等に関しては、可能な限り、本人に対して、普段どのように金銭管理をしていたのか聞き取りをする。例えば、金銭管理のみかかわっていた人がいる場合は、本人の意向を確認したうえで、その人に連絡を取る。入院費の未払いを防ぐ工夫として、本人の保険証を確認する。日常的な金銭管理が今後も難しいと判断される場合は、成年後見制度の利用も視野に入れて、本人の住所地の地域包括支援センターあるいは市町村の障害福祉部門などに相談する。成年後見制度の利用があれば、退院支援もスムーズに進む。なお、親族等がいない場合、死亡時の遺体・遺品の引き取り、葬儀などは市町村が行うことになる。

入院費等については成年後見人等が代行支払いをする

成年後見制度での成年後見人等の業務には、成年被後見人に提供する医療に係る決定・同意は含まれていない。しかし、本人が成年後見制度を利用しているのであれば、一連の過程で、さまざまな形で成年後見人等にかかわってもらうようにする。

例えば、判断能力が不十分で、成年後見制度を利用している場合(前述のケース②の場合)、医療機関は、まず成年後見人等に緊急の連絡先になることができるか、確認する。成年後見人等が緊急の連絡先にならない場合でも、医療費の支払いなどに関わるので、本人の状況や治療経過などを伝える。成年後見人等は診療契約の代理権を持つので、入院計画書に関することを説明する。また、入院費等については成年後見人等が代行支払いをすることになるので、それについても成年後見人等に相談する。ただし、それは成年被後見人の財産から支払うものであり、成年後見人が保証人として自ら入院費を負担するといったことは必要ない。なお、遺体・遺品の引き取り・葬儀等に関して、成年後見人等のうち保佐人・補助人以外の成年後見人であれば、家庭裁判所の許可のもと、死後事務の一部を行うことができるので、成年後見人に相談をする。

なお、本人の判断能力が不十分な場合であっても適切な医療が受けられるようにするには、厚労省が2018年3月に改訂した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(以下、プロセスガイドライン)を踏まえて対応することも重要で、その対応は「人生会議」とも呼ばれ、最も基本となるものである。医療機関においては、プロセスガイドラインについても目を通しておくことが望ましい。